総則
総則には、一般的に、就業規則の目的や、適用範囲、従業員や社員の定義といった内容が記載されます。これらは絶対的必要記載事項ではないため、会社がその内容を比較的自由に規定することができます。例えば「はじめに」などと題して経営者の思いのたけを存分に書いてもよいですし、経営理念や経営方針、社是・社訓といったことを書くこともできます。
なお、会社の「経営理念」は就業規則に絶対記載しなければならないかというと、そのようなことはありません。経営理念とは、自社にとって会社経営はこうあるべきだという根本的な考え方です。従って、経営理念は労働者の労働条件ではないので、法律上記載するものではなく、記載は任意ということになります。
その他、就業規則全体に関わってくる規定(会社の組織体制や、勤続年数等の計算方法など)は、この総則に記載するのが通常です。
○目的
就業規則を定めた目的を記載します。企業目的ではありません。
就業規則は労働条件や服務規律等様々な就業に関する内容を記載していることを明確にしているということです。
本規程に労働者の就業に関するすべての事項が定められているわけではありません。本規程に定めがない事項については、労基法等関係法令の規定によることになります。
就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効となります。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準によることになります(労働契約法第12条)。
また、就業規則は法令又は事業場に適用される労働協約に反してはなりません(労基法第92条)。
就業規則規定例 第○条(目 的) 2 本規則の定めのない事項については、労働基準法その他の関係法令に定めるところによる。 |
○適用範囲
就業規則を適用する従業員の範囲を記載します。
就業規則は、すべての労働者について作成する必要があります。しかし、就業規則は、すべての労働者について必ずしも同一のものでなければならないわけではありません。
注意すべき就業規則規定例 第○条(適用範囲) |
このような規定では、福利厚生制度、休職制度を適用する予定のないパートタイマーにも、これらの規定が適用されることになります。
特に、準社員などを雇用している場合、個別の規定について準社員にも適用されるかどうか明確にしておかないと、「賞与をもらえるはずだ」「退職金の額が低い」など本人からの不満が出る恐れがあります。正社員に適用される規定と準社員に適用される規定を明確にしておいた方がよいでしょう。特に、正規社員と臨時社員の間でよく賃金格差が問題になります。
適用範囲の定めについては「この就業規則がだれに適用されるのか」という非常に重要な条文となります。
「社員」という表現では、捉え方によって「従業員全体」にも「正社員のみ」にも解釈する事ができてしまいます。同じ言葉でも会社によってそれぞれ該当する人が異なることがあります。会社の実情に照らしてきちんと実態に合い、読み手に複数の解釈の余地を与えることのない、明快な内容を心がけましょう。
この規則に定められた内容は、雇用期間の定めのない労働契約により会社の業務に継続して従事する正社員に適用されます。パートタイマー・アルバイト・嘱託など就業形態が特殊な勤務に従事する人、または雇用期間の定めのない労働契約であってもその名称にかかわらず正社員と異なる形態で勤務している人については、原則としてこの規則を適用せず、雇用契約書またはその人に適用する特別な規則によって本規則と異なる定めをした場合はその定めによるものとします。
大興設備開発事件(大阪高裁平成9年10月30日判決)では、「高齢者やパートタイムの従業員に適用される就業規則が別に定められていたものでもなく、本件就業規則の規定の内容が従業員全般に及ぶものとなっていて、高齢者には適用しないという定めはないのであるから、本件就業規則は高齢者であるXにも適用されると解するのが相当である。」といった判断がされています。適用を除外すべき人についてはきちんと検討したうえで就業規則上に明確に記載しておく必要があります。
この規定自体も、定めていない会社が多くあります。この規定が無いために、 パート社員との間で賞与や昇給、年次有給休暇、退職金などについて、大きなトラブルになりかねないのです。また、パートタイマー労働法によりますと、パートタイマーに適用される就業規則を別立てで作成することが望ましいとのことです。
また、会社において請負契約と称する者であっても、実際の契約形態が労働契約である場合、労働基準法(就業規則)の適用を受けます。
パートタイマー、アルバイト、嘱託等は、別規則を作成するとよいでしょう。
適用範囲について、別個の就業規則(例:パートタイム就業規則)を定めるときはその旨を本則に定めます。
除外規程がない場合、パートタイマーにも退職金を払うことになりかねません。「パートタイマー、アルバイト、嘱託等は、正社員の就業規則から適用を除外する。」のように除外規定を定め、パートタイマー、アルバイト、嘱託等は、別に定めるとよいでしょう。
就業規則規定例 |
注意すべき就業規則規定例 第○条(適用範囲) |
このような規定を設けてあっても、その上で就業規則において正規従業員、パート、アルバイト等の定義を明確に区別しておかないとトラブルの原因となります。従業員の定義として以下のようにすべきでしょう。
就業規則規定例 第○条 (従業員の定義) (2) 有期契約従業員 : (3) パートタイマー : (4) アルバイト従業員 : (5) 嘱託 : |
〇従業員の種類
就業規則規定例 第○条(従業員の職種) |
○規則の遵守
就業規則規定例 第○条(規則の遵守) |
労基法第2条において、労働者及び使用者は、就業規則等を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならないと規定されています。
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