年次有給休暇

休暇等

 「休日」という用語と「休暇」という用語は混同しやすいものですが、「休日」は労働の義務のない日を指し、「休暇」は本来は労働義務があるがそれを免除される日を指すとされています。

休日と休暇の違い

 

休日

 「休日」とは、労働契約や就業規則等によってあらかじめ「労働義務がない日」と定められている日のことです。

 この日休むことについて、 会社は基本的にあれこれということができません。

(その例外が「休日労働」ということになります。)

 休日において労働した場合、休日は労働義務のない日、すなわち「所定労働日ではない」ので 所定労働時間がありません。 よって、「休日」の労働は「所定外労働」となり、割増賃金の対象となります。

 

休暇

 一方、「休暇」とは、本来は労働義務のある(働くべき)日について、労働者側の申し出により「労働義務を免除する日」のことをいいます。

 休暇日は本来労働日、ということは「所定労働日」となり、所定労働時間が存在します。ですから、「休暇」となっている日を取り消して労働した場合は所定外労働に該当せず、これだけでは割増賃金の対象となりません。夏休みや冬休みが「休日」だと、割増賃金が高くなるということです。

 

 休日か休暇かの違いは割増賃金の計算にも影響します。

 1年間で夏休みと冬休み合わせて10日の休みがある場合、この夏休みと冬休み10日間が「休日」か「休暇」かによって割増賃金の金額は変わってきます。

割増賃金の単価(A)は

  割増賃金計算に算入すべき賃金(B)/1年間の平均所定労働時間(C)

で計算されます。

 この分母にあたる「1年間の平均所定労働時間(C)」は
  1年間の所定労働日数(D)×1日の所定労働時間

 つまり、夏・冬休み10日間が「休日」なら休日が増える
 →1年間の所定労働日数(D)が減る
 →割増賃金計算の分母(C)が減る
 →仮に(B)が同じであれば
 →結果として割増賃金単価(A)は増える。

 つまり、夏休みや冬休みが「休日」だと、割増賃金が高くなるということです。

 

○年次有給休暇

 雇入れの日から6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対しては最低10日の年次有給休暇を与えなければなりません(労基法第39条第1項)。

 また、週の所定労働時間が30時間未満であって、週の所定労働日数が4日以下あるいは年間の所定労働日数が216日以下の労働者(以下「所定労働日数が少ない者」といいます。)に対しては、通常の労働者の所定労働日数との比率を考慮して、労基則第24条の3で定める日数の年次有給休暇を与えなければなりません(同条第3項)。

 所定労働時間や所定労働日数が変動する労働者の場合、本条第1項又は第2項のいずれに該当するかに関しては、年次有給休暇の「基準日」において定められている週所定労働時間及び週所定労働日数又は年間所定労働日数によって判断することとなります。ここでいう「基準日」とは、年次有給休暇の権利が発生した日のことであり、雇入れ後6か月経過した日、その後は1年ごとの日のことをいいます。

 年次有給休暇の基準日を個々の労働者の採用日に関係なく統一的に定めることもできます。この場合、勤務期間の切捨ては認められず、常に切り上げなければなりません。例えば、基準日を4月1日に統一した場合には、その年の1月1日に採用した労働者についても3か月間継続勤務した後の4月1日の時点、すなわち法定の場合よりも3か月間前倒しで初年度の年次有給休暇を付与しなければなりません。

 通常の労働者の年次有給休暇の日数は、その後、勤続年数が1年増すごとに所定の日数を加えた年次有給休暇を付与しなければなりません(労基法第39条第2項)。

 継続勤務期間とは、労働契約の存続期間、すなわち在籍期間をいいます。継続勤務か否かについては、勤務の実態に即し実質的に判断しなければなりません。この点、例えば、定年退職して引き続き嘱託として再雇用した場合や、パートタイム労働者であった者を正社員に切り替えた場合等実質的に労働関係が継続しているときは、継続年数に通算されます。

 出勤率が8割以上か否かを算定する場合、
・業務上の負傷又は疾病により休業した期間
・産前産後の女性が労基法第65条の定めにより休業した期間
・育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律76号。以下「育児・介護休業法」といいます。)に基づく育児・介護休業期間
・年次有給休暇を取得した期間
については出勤したものとして取扱う必要があります。なお、本規程例第23条第2項に定める生理休暇について、年次有給休暇の出勤率の算定に当たって出勤したものとみなすことも、もちろん差し支えありません。

 出勤率が8割に達しなかったときの翌年度は、年次有給休暇を与えなくても差し支えありません。この場合、年次有給休暇を与えなかった年度の出勤率が8割以上となったときは、次の年度には本条に定める継続勤務期間に応じた日数の年次有給休暇を与えなければなりません。

 年次有給休暇は日単位で取得することが原則ですが、労働者が希望し、使用者が同意した場合であれば半日単位で与えることが可能です。また、事前に年次有給休暇を買い上げて労働者に休暇を与えないことは法違反となります。

 なお、年次有給休暇の請求権は、消滅時効が2年間であるため、前年度分について繰り越す必要があります。

 年次有給休暇は、計画的付与の場合を除き、労働者の請求する時季に与えなければなりません。ただし、労働者が請求した時季に年次有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、使用者は他の時季に変更することができます(労基法第39条第5項)。

 本条第4項に定める年次有給休暇の計画的付与制度とは、労働者の代表との間で労使協定を結んだ場合、最低5日間は労働者が自由に取得できる日数として残し、5日を超える部分について、協定で年次有給休暇を与える時季を定めて労働者に計画的に取得させるものです(労基法第39条第6項)。

 年次有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額や精皆勤手当、賞与の額の算定に際しての年次有給休暇取得日を欠勤として取扱う等の不利益な取扱いをしてはなりません(労基法附則第136条)。

 年次有給休暇の取得の当日の請求は、事後報告と判断され、どう判断するかは会社の裁量に任されています。当日に届出された場合、これは拒否することが可能です。なぜなら、会社には上記の時季変更権があるため、時期変更の検討する期間が必要だからです。よって、通常は「○日前までに」、連続休暇する場合は「1週間前までに」などの規定を設けることも可能と考えます。

 ただ、会社がこの当日の請求に応じるとしても問題はありません。当日の届け出は急の疾病などによるものが多く、全て拒否するのは問題です。事後許可制を設けておくことが重要と考えます。

 なお、運用上、事後に使用者に申し出することで有給休暇扱いにしている会社で、急病等のやむを得ない理由によって当日に突然休んだ場合、例えば申し出のあった労働者が気に入らないということで「事後の有給休暇の請求を認めない」とするような使用者側の裁量権の濫用があった場合は、違法と判断されることになります。

 「事後の振替請求もできる」とだけ規定してある場合は、労働者の権利といった誤った認識をさせることがあり、直前での請求を助長させ、事業の運営に影響を及ぼしかねません。事後の振替請求は、基本的には急病といった事態を想定したものであり、事後請求はあくまでも使用者の「承認」という裁量に委ねる旨の規定とすべきでしょう。

 就業規則で明確に年次有給休暇の請求方法・時期について定めておく必要があります。

就業規則規定例

第○条 (年次有給休暇)
 ・・・
 ただし、突発的な傷病その他やむを得ない事由により欠勤した場合で、あらかじめ届け出ることが困難であったと会社が承認した場合には、事後の速やかな届出により当該欠勤を年次有給休暇に振り替えることができる。ただし承認は会社の裁量に属するものとし、必ず行われるものではない。

 

就業規則規定例

第○条(欠勤への休暇振替)
 従業員が傷病、事故、その他やむを得ない事由により欠勤した場合は、本人の申出があった場合、会社は年次有給休暇へ振り替えることができる。

 

就業規則規定例

第 条(年次有給休暇)
 ・・・
 年次有給休暇を取得しようとする者は、所定の様式によりその取得日および理由を記載し、原則として3日前までに所属長に申し出なければならない。ただし、会社は業務の都合により取得日を変更することができる。

 

就業規則規定例

第○条 (年次有給休暇)
 ・・・
 年次有給休暇の取得届は、緊急やむを得ない場合を除き、事後の届出は受理しない。当該提出届の提出締め切り日は原則として希望日の3日前とする。

 

注意すべき就業規則例

第 条 (年次有給休暇)
 ・・・
 年次有給休暇を取得する場合は、所定の届出書に利用目的を記載した上、あらかじめ会社の承認を得なければならない。会社は、利用目的がふさわしくないと認めるときは、承諾しないことがある。

 「年次有給休暇の利用目的は労働基準法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは使用者の干渉を許さない労働者の自由である、とするのが法の趣旨であるとするのが相当である」との判例があります(白石営林署事件 最2小 昭48.3.2)。

注意すべき就業規則例

第○条 (年次有給休暇)  
  ・・・
 年次有給休暇を取得しようとする従業員は、少なくとも2日前までに所属長に許可を申請しなければならない。

 休暇権は法律上当然に発生するため、「許可」とは相容れないものです。

 

「事業の正常な運営を妨げる場合」に行使できる時季変更権の行使

 会社が、この『時季変更権』を行使する場合には労働者は申告した期間に、有給休暇を取得できないことになります。この時季指定件を行使できる「事業の正常な運営を妨げる場合」とは、判例や通達でかなり狭く限定されています。通常の理由では時季変更権は行使できない場合が多いと思います。そこで、時期変更の勧誘を行うわけです。つまり、そこは忙しいから、別の時にとってくれないか? と上司が聞くわけです。一般的には、それに同意して改めて時季指定権を行使して休みの期間を申告するわけです。

 有給を一度に取得する日数に制限を設けることは、原則として出来ません。かといって、急に1週間や2週間も休まれては、仕事にならない場合もあるでしょう。ですから、それらを防止できるような規定を盛り込む必要があります。

 有給を一度に取得する日数に制限を設けることは、原則として出来ません。かといって、急に1週間や2週間も休まれては、仕事にならない場合もあるでしょう。ですから、それらを防止できるような規定を盛り込む必要があります。

 年次有給休暇の時季変更権について、就業規則には必ず記載しましょう。

就業規則規定例

第○条 (年次有給休暇)
 ・・・
 年次有給休暇は、本人の請求があった時季に与えるものとする。ただし、従業員が請求した時季に年次有給休暇を取得させることが、事業の正常な運営を妨げる場合は、他の時季に取得させることがある。

 年次有給休暇の取得を許可制とすることは禁止されています。

 有給を一度に取得する日数に制限を設けることは、原則として出来ません。かといって、急に1週間や2週間も休まれては、仕事にならない場合もあるでしょう。ですから、それらを防止できるような規定を盛り込む必要があります。

 「年次有給休暇の利用目的は労働基準法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは使用者の干渉を許さない労働者の自由である、とするのが法の趣旨であるとするのが相当である」との判例があります(白石営林署事件 最2小 昭48.3.2)。

 

○年次有給休暇の消化の順番

 その年度(付与された年度)に使用されなかった年次有給休暇は、次年度に限り繰り越しできます。

 労使間に特に取り決めがない限り、繰越分から使われていくことになりますが、繰越した年次有給休暇と新たに発生した年次有給休暇については、どちらから先に使用するかについては労働基準法に規定がありません。

 民法第488条1項(2つの同種の債務を負担している場合、返済者は充当すべき債務を指定できるというルール)が代わりに適用されます。

 つまり、債務(年次有給休暇の付与)を負担している者(会社)は、2つの同種の債務(繰り越し分・新規分)どちらから先に付与するか、この消化順は決めて良いということです。この消化順を「就業規則で定める」ということです。

 この順番を決めていない(会社が指定しない)場合には民法第488条2項が代わりに適用されて、本人(従業員)が指定する事になってしまいます。本人が指定する場合、普通は繰り越し分から使うでしょう。特に「新規付与分から消化」するルールを設定するという場合は、しっかり就業規則に定めておくとよいでしょう。

就業規則規定例

第○条(年次有給休暇)
 ・・・
 年次有給休暇に前年度繰り越し分と本年度分がある場合は、前年度繰り越し分より請求に基づいて付与するものとする。

 

○年次有給休暇の賃金の取扱い

 使用者は、年次有給休暇を取得した労働者に対し賃金を支払わなければなりません。

 年次有給休暇の賃金の算定として、 
 ① 平均賃金
 ② 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
 ③ 健康保険法に定める標準報酬日額に相当する金額
3つの方法があります。

 原則として、① 平均賃金 か ② 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金 のいずれかを支払えばよいことになっています。いずれを選択するかは、就業規則その他に明確に規定することが必要です。年次有給休暇日の賃金は、就業規則の絶対的必要記載事項としての賃金に該当します。

 ①の平均賃金 とは、算定すべき事由の発生した日以前3ヵ月間に、その労働者に対して支払われた賃金の総額を、その期間の総暦日数(休業日も含む)で除した金額をいいます。
 例外として、賃金締め切り日がある場合は、直前の賃金締め切り日から起算します。  
 なお、1円未満の端数が生じた場合は切り捨てます。

 ②の通常の賃金 においては次の要件があります。
・月給制の場合は欠勤控除しないこと。
・年次有給休暇の際の賃金も、就業規則の絶対的必要記載事項の賃金に該当するため、就業規則に定めておく必要があること。
・就業規則に年次有給休暇の算定基準を明確に定めておくこと。

健康保険法に定める標準報酬日額に相当する金額 について
 例外的に、労働者の過半数を代表する者との書面による労使協定により、健康保険法に定める標準報酬日額に相当する金額を支払うことを定めることができます。
 この場合は、必ず標準報酬日額に相当する金額を支払わなければならず、平均賃金等を支払うことはできません。また、標準報酬日額を支払う旨を就業規則等に定めておかなければなりません

 年次有給休暇取得日の賃金の取扱について、就業規則に明確に定めましょう。

就業規則規定例

第○条 (年次有給休暇)
 ・・・
4 年次有給休暇を取得した期間、産前産後休暇期間、育児休暇期間、介護休暇期間及び業務上の傷病による休業期間は、出勤率算定に際し出勤したものとみなして算定する。

5 年次有給休暇を取得した場合は、通常の賃金を支払うものとする。

 年次有給休暇の賃金計算方法は、働いたものとみなす賃金の支払よりも平均賃金を取るほうが安くなることが多くなります。就業規則に定めて運用することで可能となります。

 

○年次有給休暇の計画的付与

就業規則規定例

第○条 (年次有給休暇)    
 ・・・ 
4  第3項の規定にかかわらず、従業員の過半数を代表する者との書面による協定により、各従業員の有する年次有給休暇日数のうち5日を超える部分について、あらかじめ時季を指定して与えることがある。

5  当該年度に新たに付与した年次有給休暇の全部又は一部を取得しなかった場合には、その残日数は翌年度に繰り越される。

 変更の必要があって、計画的付与日を変更するためには、計画的付与を定めた労使協定そのものを変更する必要があります。 例えば、次のように、就業規則に指定日(計画的付与の日)を変更することがある旨を定めておくとよいでしょう。

就業規則規定例

第○条 (年次有給休暇)  
 ・・・ 
 この協定の定めにかかわらず、業務遂行上やむをえない事由のために指定日に出勤が必要と認められる場合には、会社は従業員代表と協議のうえ、本協定条に定める指定日を変更することができるものとする。

 ただし、この場合にも、変更した指定日について労使協定を締結しなければなりません。

 

○半日単位の年次有給休暇

 原則として、年次有給休暇の取得単位は「1日単位」ですが、従業員から年次有給休暇の「半日」請求があった場合、会社として半日単位に分割して与える義務はありません。しかし、年次有給休暇の取得率を一層促進するためには、半日付与が有効であるとの見地から、「半日単位の年次有給休暇は、本来の取得方法による年次有給休暇の阻害とならない範囲内で運用される限りにおいては、むしろ年次有給休暇の取得促進に資するものである」(平7.7.27 基監発第33号)とした行政解釈を根拠に、年次有給休暇の半日付与制度が認められています。

 年次有給休暇の半日付与をする場合の「半日」については、法令上の定めはありません。事業所の状況に応じて定めることができます。

 一般的には、文字どおり「半日」である正午を境にする方法が用いられています。概ね「所定労働時間の半分」となるように定めればよいので、休憩時間をはさんで前後を半日と計算しても差し支えありません。

 使用者が半日付与を認める場合は、就業規則に明示する必要があります。

 年次有給休暇は、原則として労働日を単位に付与するものですので、仮に半日休暇の請求があった場合にも、就業規則に半日単位に付与する旨の定めがない場合には、半日休暇を与えることができないことになります。

 分割した年休の請求を認める就業規則上の規定や契約内容となった慣行がある場合には、使用者はこれに従い請求に応じる義務があるといえます。(高宮学園事件 東京地判平7.6.19)

就業規則規定例

第○条(年次有給休暇の半日分割付与)
 年次有給休暇は、原則として1労働日を単位として与えるが、従業員から特に申し出があった場合には、当年度に付与された休暇のうち5日を限度として半日を単位として分割して請求することができる。この場合の取得日の所定労働時間は4時間とする。

 午前中の半日を付与した場合、午後から出社した従業員がそのまま終業時刻を越えて就労してしまう場合があります。この場合、実労働時間が法定労働時間内であれば割増賃金の問題は生じませんが、年次有給休暇を付与した意味がなくなってしまい、労務管理上望ましくありません。そのため、「年次有給休暇は1日単位で与えるものとする。ただし、会社の裁量によって半日単位を認めることとし、この場合の取得日の所定労働時間は4時間とし、4時間を超えた時間は出勤とみなす」といった労働時間管理を含めた規定を設けるのがよいでしょう。

 

○時間単位の年次有給休暇

 年次有給休暇は 「1日単位」で取得することが原則ですが、事業場で労使協定を締結すれば、1年に5日分を限度として時間単位でも取得できます。 

 この制度導入により、一定の日数分の年次有給休暇を「日単位」で取得するか、 「時間単位」で取得するかを、労働者が自由に選択することができます。

 あくまでもその取得方法を選択するのは対象労働者ですので、労働者が1日単位で取得することを希望した場合に、会社が時間単位に変更することはできません。

 

 この制度は全ての会社に「時間単位取得を実施する義務がある」わけではなく、あくまでも労使間で「時間単位の取得を協定(約束)した場合」のみ導入することができる制度です。導入しようとする場合には、会社ルール=就業規則の変更とあわせて 「労使協定の締結」をしなくてはなりません。 

この労使協定について、監督署へ届出は不要です。

就業規則規定例

第○条(時間単位の年次有給休暇)
 会社は、労使協定に基づき、前条の年次有給休暇の日数のうち、1年について5日の範囲内で時間単位の年次有給休暇(以下「時間単位年休」という。)を付与する。この5日には、前年の時間単位年休の繰越分を含めるものとする。
2 時間単位年休付与の対象者は、全ての従業員とする。
3 時間単位年休を取得する場合の1日の年次有給休暇に相当する時間数は、以下の通りとする。
 (1) 所定労働時間が5時間を超え6時間以下の者  6時間
  (2) 所定労働時間が6時間を超え7時間以下の者  7時間
 (3) 所定労働時間が7時間を超え8時間以下の者  8時間
4 時間単位年休は、1時間単位で付与する。
5 本条の時間単位年休に支払われる賃金額は、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金の1時間当たりの額に、取得した時間単位年休の時間数を乗じた額とする。
6 上記以外の事項については、前条の「年次有給休暇」と同様とする。

時間単位取得導入時の注意点・ポイント

 対象労働者の範囲
 所定労働日数が少ないパートタイム従業員も、事業場で労使協定を締結すれば、時間単位で取得できるようになります。

 ある一定の従業員を対象外としようとする場合は、それが「事業の正常な運営」を妨げるときに限られます。取得目的などを限定することによって対象者の範囲を定めることはできません。(育児のため、等の限定をすることはできません)

時間単位として与えることができる日数
 前年度からの繰越しがある場合は、その繰越し分も含めて5日以内となります。 

時間単位年休1日の時間数
 1日分の年次有給休暇が何時間分の年次有給休暇に当たるかは、労働者の所定労働時間を基に決めることとされています。

 時間単位取得の年休として利用できる「時間数」 について、1日の所定労働時間につき1時間に満たない端数(分単位)がある場合は、その1日の中で時間単位に切り上げてから計算する点に注意。

(例)1日の所定労働時間が「7時間30分」、「時間単位取得 5日分」の場合
 1日8時間(切り上げして)計算、8時間×5日分=「40時間分」  OK
 7時間30分×5日分=37時間30分、切り上げして「38時間分」  NG

 日によって所定労働時間数が異なる場合は、1年間における1日平均所定労働時間数(1年間で決まっていない場合、決まっている期間における1日平均所定労働時間数) を基に定めます。

 1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数
 「2時間単位で取得するものとする」というようなルール決めも可能です。
 ただし、 30分単位など、「時間未満」の単位設定は認められません。
 (例:「2時間」はOKだが、「1時間30分」は不可)

時季変更権
 「時季変更権」が認められるケースは通常の年次有給休暇と同じです。

賃金額
 時間単位年次有給休暇1時間分の賃金額は、
 ①平均賃金
 ②所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
 ③標準報酬日額(労使協定が必要)
のいずれかをその日の所定労働時間数で割った額になります。
 (いずれにするかは、日単位による通常の年次有給休暇取得の場合と同様)

計画的付与
 計画的付与として時間単位年休を与えることはできません。

労使協定で定める事項
 ① 時間単位として年次有給休暇を与えることができるとされる対象労働者の範囲
 ② 時間単位として与えることができるとされる年次有給休暇の日数分(5日以内)
 ③ 時間単位年休1日の時間数
 ④ 1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数

 使用者は、労使協定により所定事項を定めた場合は、一の労働者の範囲に属する労働者が年次有給休暇を時間を単位として請求したときは、年次有給休暇の日数のうち5日以内の日数については、労使協定で定めるところにより時間を単位として年次有給休暇を与えることができることになります。

労使協定 例

 株式会社○○○○代表取締役○○と株式会社○○○○従業員代表○○は、年次有給休暇の付与単位に関して次の通り協定する。
 ・・・
2.会社は、各従業員が請求したときは、一の年度において付与する年次有給休暇のうち、5日を限度として1時間単位で取得することを認める。
3.半日単位の取得(以下「半休」という。)については、4時間単位の取得とみなす。協定の対象とする従業員は、会社における継続勤務期間が6ヵ月以上のものとする。
 ・・・
5. 本規定の有効期間は、平成○年○月○日までとし、満了日の1ヵ月前までに甲乙いずれかの申出がないときは、同一条件をもって1年まで更新するものとする。   
 ・・・

 

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