脳性麻痺(小児麻痺)

 脳性麻痺とは、出生前や出生時、あるいは出生後間もない時期に脳に受けた外傷がもとで生じる、筋の運動制御不能、痙縮、麻痺、その他の神経障害といった一連の症状のことです。

 脳性麻痺の原因には、分娩外傷、酸素欠乏、感染症、その他重篤な疾患などがあります。
 症状には、わずかにぎこちなさを感じる程度の軽いものから、痙縮を起こすほどの重いものまであり、知的障害、行動障害、視覚障害、聴覚障害、けいれん性疾患などの症状がみられます。
 発育不良、痙縮、筋力低下などの症状を基に診断が下されます。
 脳性麻痺のほとんどの小児が死亡することなく、成人になります。
 脳性麻痺の治療法はありませんが、小児の可能性を最大限に生かすために、理学療法や特殊教育が有効な場合があります。
 脳性麻痺は乳児1,000人に2~4人の割合で発生しますが、早産児では発生率がこの10倍になります。さらに、極低出生体重児の場合は特に多くなります。

 脳性麻痺は1つの疾患ではありません。より正確に言えば、筋肉の動きをつかさどる脳の一部(運動野)が損傷を受けたことで生じるさまざまな症状のことです。同様に、脳の他の部分に損傷がみられる小児もいます。脳性麻痺の原因となる脳の損傷は、胎児期、出生時、出生後、乳児期の初期などに発生します。小児が成長し成熟するにつれて症状が変化することはありますが、脳にいったん生じた損傷が悪化することはありません。小児が5歳を過ぎてから脳に損傷を受けた場合、脳性麻痺とはみなされません。

原因
 脳に対するさまざまな種類の外傷によって脳性麻痺になる可能性があり、多くの場合、複数の原因が関与しています。原因の15~20%は、分娩時の外傷や、出生前、出生時、出生後間もない時期の脳への酸素供給不足です。風疹、トキソプラズマ症、サイトメガロウイルス感染症などの胎内感染も、脳性麻痺の原因となることがあります。早産児は脳性麻痺を特に起こしやすく、その理由の1つとして、脳血管の発達が未熟で出血しやすいためだと考えられています。血液中のビリルビン値が高いことによって、核黄疸と呼ばれる脳損傷が生じることもあります。生後1年間は、脳を覆う組織の炎症(髄膜炎)、敗血症、外傷、重度の脱水症などの重い病気によって脳に損傷が生じて、脳性麻痺になることがあります。

症状
 脳性麻痺の症状は、わずかにぎこちなさを感じる程度の軽いものから、痙縮によって小児の腕や脚がねじれて、装具、松葉づえ、車いすなどの補助具が必要になるほど重いものまで、かなり幅があります。
 脳性麻痺の主なタイプとしては、痙直型、アテトーゼ型、運動失調型、混合型の4つがあります。すべてのタイプで、話すために使う筋肉の制御が困難になっているため、話していることが理解しにくい場合があります。脳の非運動野も損傷を受けている場合があるため、多くの小児に、精神遅滞/知的障害、行動障害、視覚障害、聴覚障害、けいれん性疾患など、別の障害がみられます。

 痙直型は脳性麻痺の小児の70%を超えており、筋肉が硬くなって筋力が低下します。この筋硬直には、両腕と両脚に及ぶ場合(四肢麻痺)、主に脚と下半身に及ぶ場合(対麻痺または両麻痺)、あるいは片側の腕と脚のみに及ぶ場合(片麻痺)があります。麻痺を起こした腕や脚は発育が悪く、硬直して筋力が低下します。片脚がもう一方の脚にぶつかるように交差して歩くはさみ足歩行の小児や、つま先立って歩く小児もいます。視線が交差している、視点が定まっていない、視線がさまようなどの斜視や、その他の視覚障害が現れることもあります。痙性四肢麻痺が最も重い障害です。痙性四肢麻痺の小児では、けいれんや嚥下障害に加えて、精神遅滞(知的障害 重い場合もある)がよくみられます。嚥下障害があると、口や胃からの分泌物で息が詰まりやすくなります(誤嚥)。誤嚥により肺に損傷が生じると、呼吸困難になります。誤嚥を繰り返し起こすと、肺に回復不能な損傷を生じます。痙性両麻痺の小児では、一般に精神発達は正常で、けいれんを起こすのはまれです。痙性片麻痺の小児の約4分の1は知能が平均より低く、3分の1にけいれんがみられます。

 アテトーゼ型は脳性麻痺の小児の約20%にみられ、脳から通常の制御を受けず、筋肉が不随意的にゆっくりと動きます。腕や脚、胴体の動きは、よじれるように動く場合や突然動く場合、ピクピクと動く場合などがあります。この動きは強い感情が起こると激しくなり、睡眠中には生じません。アテトーゼ型の小児では、一般に知能は正常で、けいれんを起こすのはまれです。言葉をはっきりと普通に発音することが困難な例がよくみられ、しばしば深刻な場合があります。核黄疸によって生じたアテトーゼ型脳性麻痺の小児では、一般に感音難聴がみられ、上を向くのが困難です。

 運動失調型は脳性麻痺の約5%を占めており、体の協調がうまくとれず、動きが不安定です。運動失調型の小児では、筋力低下や筋肉のふるえもみられます。また、速い動きや細かい動きが難しく、脚の間隔を広く開いた不安定な歩行になります。

 混合型は、上に述べたタイプのうち2つが複合したもので、ほとんどが痙直型とアテトーゼ型の混合型です。この混合型は、脳性麻痺の小児の多くにみられます。混合型の小児では、重い精神遅滞/知的障害がみられることがあります。

予後(経過の見通し)と治療
 予後は、一般に脳性麻痺の型とその重症度によって決まります。脳性麻痺のほとんどの小児が死亡することなく成人になります。自身ではまったく何もできない最も重い脳性麻痺の小児だけは、平均寿命がかなり短くなります。
 脳性麻痺を治すことはできず、障害は生涯続きます。しかし、小児の活動範囲を広げ、自立性を高めるためにできることは沢山あります。理学療法や作業療法、ギプスなどによって、筋肉の制御や歩行が改善される可能性があり、特にリハビリテーションを可能な限り早期に開始すると効果が上がります。動きを制限している硬直した筋肉の腱を切断したり、伸ばしたりする手術を行うこともあります。脊髄につながる特定の神経根を切断する脊髄後根遮断術により、痙縮が抑えられることがあり、痙縮が主に脚だけで、精神の発達が良好な小児に有効な場合があります。言語療法を行うことで、かなりはっきりと話せるようになることがあり、嚥下障害にも効果があります。けいれんは抗けいれん薬で治療することができます。バクロフェン、ベンゾジアゼピン系(ジアゼパムなど)、チザニジン、ときにダントロレンなどの経口薬の服用が痙縮に有効なことがありますが、副作用のために有益性には限界があります。痙縮が強い小児では、脊髄周辺にバクロフェンを持続注入する埋め込みポンプによって効果が得られる場合がありますが、この方法はまだ実験段階で、広く使用できるものではありません。ボツリヌス毒素を痙縮している筋肉に注射することもあります。

 

  脳性麻痺は障害年金の制度では、先天性(生まれながら)の病気であると判断されるため、10年以上前のことなどの場合、カルテが破棄されているなどの理由から初診日の証明が困難な場合などがあります。
 このような場合には、診察券や第三者の証明書などを集めて障害年金の手続きをします。客観的資料初診日が認められる場合があります。1級または2級でないと障害年金が受給できないため、慎重に行うことが大切となります。

 

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