休職

 休職とは、労働者に労務を提供させることが不可能又は不適当であるような事由が生じた場合に、その身分関係を継続させつつ、一定の期間に限ってその労働者の労働義務を免除するという制度です。

休職事由は様々で、
・業務外の病気や負傷を理由とする傷病休職
・私的な事故を理由とする事故欠勤休職
・留学や公職への就任に伴う自己都合休職
・起訴された従業員につき、社会的信用や企業秩序の維持、あるいは懲戒処分が決定されるまでの待機を目的として行う起訴休職
・他社への出向にともなう自社での不就労に対応する出向休職
などがあります。

  休職制度は、法律で規定されているわけではありません。会社が任意で定める制度ですから、設けるかどうかは会社の自由です。

 どのような場合に休職を命ずることができるかは、基本的には就業規則などの定めによります。

 就業規則に規定する場合は、
 ・適用される社員の範囲
 ・休職となる事由
 ・休職中の賃金
 ・休職期間
 ・復職
 ・休職期間が満了した場合の取り扱い
など、詳細に規定する必要があります。慎重に規定を設ける必要があります。

・適用される社員の範囲

 病気休職の適用を受けられる基準としては、一定の勤続期間経過した者に与えるようにするのが好ましいでしょう。

・休職となる事由

 どのような休職事由を定めるかは、会社の自由ですが、休職の事由や発令時期を明確にしておくことが必要です。

・休職期間

 解雇の予告期間(労働基準法第20条)とのバランスから、休職期間は30日以上とするのがよいでしょう。

 私傷病の場合の休職期間は勤続年数に応じて差をつけるのが一般的です。
  例
   勤続5年未満・・・・・・・3月
   勤続5年以上10年未満・・・6ヵ月
   勤続10年以上・・・・・・・1年

 休職期間は会社が正式に休職が発令した日から起算するように決めます。会社の裁量によって定めることはトラブルの原因となりかねません。

 一般に私傷病休職については、医師の診断書の提出を求める企業が多いようです。医師の診断書の提出のみを休職の要件とすることは少なく、「欠勤が引き続き1ヵ月間に及んだ場合に」というように一定の欠勤期間を超えることなどの要件を設けるのもよいでしょう。a1400_000384

 私傷病で欠勤が継続するケースで、現在は「精神障害疾病」が多くなっています。一般に精神疾患にかかっている場合は、欠勤が断続的に続いた上で、出社するということを繰り返すことが多いようです。就業規則に「1ヵ月欠勤が続いたとき」という規定では、休職を命ずることは難しくなります。欠勤が継続していなくても、不完全な労務提供しかできないとの理由でも休職の取扱いができるようにしておくべきでしょう。

 いったん復職したものの同一事由により休職を繰り返す場合は、最初の休職期間の始まりをスタート時点として、再休職の休職期間は最初の休職期間の延長として期間を通算します。就業規則の規定で、『同一の事由による休職、又は類似の事由による休職は通算する』通算規定を設けるとよいでしょう。

 休職期間中は労働義務が免除されているため、年次有給休暇を取得することはできません。ただし、年次有給休暇の付与日数の要件である勤続勤務要件をみる場合、休職期間は通算しなければなりません。

  休職期間を勤続年数に含めるかどうかは、会社が任意に決めることができます。

 休職期間を勤続年数に含めるかどうかは、「その都度会社が定める」のではなく、就業規則にて休職事由ごとにあらかじめ定めておくのが望ましいものです。

 私傷病休職、自己都合休職、公職休職の期間は、勤続年数から控除するのが一般的です。

 出向休職による休職の期間は、勤続年数に算入される場合が多いです。

 退職金の算定期間については、勤続年数に算入しなくても差し支えありません。

・休職中の賃金

 賃金については、従業員の都合による休職は会社が任意に決めることができます。

 休職期間中の賃金は、「ノーワーク・ノーペイの原則」により無給とするのが一般的です。

 私傷病で休職する者に対しては、勤続年数により一定期間賃金を支給してあげることもよいことです。

 社会保険料については、従業員負担分を徴収する義務があります。

 賃金その他(社会保険料等)について一般と異なる扱いをする場合には、「賃金規程」等別規程にて明記するのがよいでしょう。

就業規則規定例
第○条 (休職期間)
 休職期間は次のとおりとする。ただし、試用期間中の従業員は対象から除外する。
(1) 傷病休職  勤続年数により、休職を発令した日から次の通りとする。

勤続年数

休職期間

5年未満

3ヵ月

5年以上10年未満

6ヵ月

10年以上

1年

(2) 自己都合休職  2ヵ月
(3) 業務上の必要性により、関係会社又は関係団体の業務に従事するとき  会社が必要と認めた期間
(4) その他特別の事情があって会社が休職させることを適当と認めたとき  会社が必要と認めた期間
2 第1項第1号の休職において、同一事由による症状再発の場合は、再発後の期間を前回の休職期間に通算する。この場合、休職の中断期間が3ヵ月未満の場合は、前後の休職期間は連続しているものとみなし、中断期間を含めて休職期間に通算する。
3 業務外の傷病による休職が1ヵ月を超える場合は、会社は、医師の診断書の提出を求めることがある。この場合、会社指定の医師の診断書の提出を求めることがある。
4 休職期間は、原則として、勤続年数に通算しない。ただし、第1項第○号の休職の場合はこの限りでなく、会社の裁量による。

 休職期間中に休職事由が消滅すれば、休職は終了します。

 休職期間が満了した場合の扱いとしては、労働者が職場に復帰するものと、期間満了の時点で休職理由が消滅していないときには解雇がなされ、あるいは労働契約の自動終了(自動退職)という効果が発生するものとがあります。

  傷病休職などで期間満了により自動退職の効果が生ずる場合、期間満了時に傷病から回復していれば、使用者の復職の意思表示がなくとも、労働契約の終了という効果は発生しないと解されますが、それには、従前の職務を支障なく行いうる状態に復帰したことが原則として必要となります。ただし、休職期間終了時にそうした状態に達していない場合でも、相当期間内に治癒することが見込まれ、かつ当人に適切なより軽い業務が現に存在するなどには、使用者は復職を拒めないものと考えられます(エール・フランス事件 東京地裁 昭59.1.27  東海旅客鉄道事件 大阪地裁 平11.10.4)。

 精神疾患では長期療養が必要でして、3年程度の休職期間が満了してもなお回復せず、職務遂行に耐えられない場合に、はじめて普通解雇することが認められるとされています。しかし、精神疾患は休職期間満了時に治癒したかどうかの判断が難しいものです。話し合いや有利な条件を提示して、退職に合意してもらうことも1つの方法となると思います。

 事業者は、伝染病の疾病、本人および他人に害を加える恐れのある精神障害、労働により著しく病勢を増悪させる心臓等の疾病その他疾病で、厚生労働省令で定めるものにかかった労働者について、あらかじめ産業医その他専門の医師の意見を聴いたうえで、その就業を禁止しなければならなりません(労働安全衛生法第68条、労働安全衛生規則第61条)。事業者(企業)は、疾病等にかかった労働者を休職させることになります。

 業務上災害および通勤災害労働者災害補償保険法の取り扱いがあります。業務上災害および通勤災害には、さらに労働基準法の災害補償規定が適用されますので、就業規則上の病気休職は、業務外災害を対象にすることになります。

 長期療養性の高い疾病等が医療技術水準の向上などにより治癒することが多くなり、一般的に療養期間が短くなってきています。このため、就業規則の規定も、休職期間を短く設定するようになってきています。

 

 病気休職者の健康保険の資格

  被保険者の資格の喪失は、業務に使用されなくなった場合に生じるものです。病気欠勤のため一時的に給料の支払がされてない状態で、欠勤していて給料の支払いがないという理由で資格を喪失させることはできません給料の支払がなくて被保険者から保険料の控除ができなくても、事業主と被保険者の双方で相談し処理すべきものになります。毎月の保険料の支払い方法や、場合によっては会社の立替払いなどの対策を明確に規定しておくことが重要です。

 病気による休職により、低額な休職給が支給されている場合、病気という一時的な現象で増減する報酬は継続的なものとは認めらないため、定時決定の際には計算の対象にはならず、また随時改定の対象にもなりません。このため、社会保険料についても減額等の変更はありません。

 休職が長く続き、雇用契約関係が形式的になって職場への復帰も見込めないという場合には、事実上使用関係がないものと判断されて喪失させることがあります。

 

休職と雇用保険について

 傷病を理由とする退職の場合は、10月以後でも被保険者期間6ヵ月(退職以前の2年間で、各月の出勤日数が11日以上あるものが対象)あれば、雇用保険の失業等給付は「特定受給資格者」として受給できます。3ヵ月の給付制限もありません。退職の理由は自己都合であることには変わりありませんが、離職票の離職理由欄には、「病気療養のため」と記入するようにします。  

 雇用保険の被保険者資格は、会社に在籍している限り継続します。しかし、11日以上の出勤がなければ、受給資格に関る「被保険者期間」には反映しません。原則的に、雇用保険の受給資格期間は1年しかありません。「受給資格期間」の延長措置をしておくことです。

 復職

(判例)

アロマカラー事件 東京地裁決定(昭和54年3月27日)
石川島播磨重工業事件 東京地決定(昭和47年12月13日)
近畿大学事件 大阪地裁判決(昭和41年5月31日)
電々公社事件 東京地裁判決(昭和56年2月13日)
電電公社武蔵野通研事件 東京地裁判決(昭和51年12月23日)
豊田自動織機製作所事件 名古屋高裁判決(昭和48年3月15日)
福島郵便局事件 最高二小判決(昭和49年5月9日)

 

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