最低賃金

  最低賃金とは、セーフティネットとして国が賃金の最低限度を定め、会社は、その最低賃金額以上の賃金を必ず社員に支払わなければならないという強行法規です。そのため、仮に最低賃金額より低い賃金を労使合意の上で定めたとしても、法律により無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとみなされ、最低賃金額で計算した金額を支払わなければなりません。また、完全歩合制であっても最低賃金は適用されるため、仮に完全歩合制の営業社員がいて、その営業社員の売り上げがゼロであったとしても、実際に労働した時間に対する最低賃金額は支払う必要があります。

 最低賃金はパート社員・臨時社員・嘱託社員などの名称に係らず、すべての労働者にが適用されます。

特例として、
 ①精神または身体の障害により著しく労働能力の低い者
 ②試用期間中の者
 ③軽易な業務に従事する者
 ④断続的業務に従事する者などで、都道府県労働局長の許可を受けた場合
は最低賃金額を下回る賃金で雇い入れることができます。

 最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金に限られるため、皆勤手当、通勤手当、家族手当、残業手当などを除いた賃金の合計額で最低賃金の基準を上回ることが必要となります。たとえば、給料の内訳が基本給・職務手当・残業手当・通勤手当の場合には、基本給と職務手当の合計額で最低賃金を上回ることが必要となります。

 最低賃金には地域別最低賃金と産業別最低賃金の2種類があり、どちらも適用される場合には、高い方の賃金が適用されます。

最低賃金は金額が低いため、気にしていない会社もありますが、パート社員・アルバイト社員や営業社員で完全歩合制や基本給が低く歩合給の割合が高い場合には十分な注意が必要になります。

 なお、最低賃金を満たしているかどうかは次の計算で確認します。

時間給の場合  時間給≧最低賃金額(時間額)

日給の場合   日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

週休、月給等の場合  賃金額を時間当りの金額に換算し、最低賃金額(時間額)と比較します。

 

 最低賃金に違反した場合には罰則が定められています。

 地域別最低賃金額以上の賃金を支払わなかった場合は、50万円以下の罰金、産業別最低賃金額以上の賃金を支払わなかった場合には30万円以下の罰金に処されることがあります。

 

出来高払制の保障給

 労働基準法第27条は、労働者を出来高払制その他の請負制で使用する場合には、「労働時間に応じ一定額の賃金を保障しなければならない」と定めています。

(労働基準法第27条)

  出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。

 本規定は、出来高がたとえなくても、労働時間に応じ、一定額の賃金の保障を義務づけたものであるため、労働時間に関係なく、単に1箇月についていくらと保障するようなものは、厳密な意味では本規定の保障給とは解されず、1時間につきいくらと定める時間給であることが必要です。

ただし、月、週について定めた場合でも、実労働時間の長短に応じて増減されるようなものは、労働時間に応じたものとされます。  保障給については一定額と規定され、一定率とは規定されていません。

 労働基準法では、その保障額については定めていません。したがって、最低賃金法に基づいて都道府県ごとに定められた地域別最低賃金(産業別最低賃金が定められているときは、産業別最低賃金)が最低保障額となります。この場合、出来高払制における保障給は、「労働時間に応じ」とされていますので、最低賃金の時間額が適用されます。

最低額の定めもありませんが、通常の実収賃金とあまり差のない程度の収入が保障されるように定めることが望ましいとされています。保護は労働者が労働した場合を対象としていますので、労働者が就業しなかった場合、労働者の責めによるものである場合は、保障給を支払う必要はありません。  請負制については、全額請負制だけでなく一部請負制についても一定額の賃金の保障をすべきですが、賃金構成からみて固定給部分が賃金総額の大半(概ね6割以上)を占めている場合には、請負制で使用する場合に該当しないとしています。

 1日の所定労働時間の一部のみについて使用者の責めに帰すべき事由による休業がなされた場合であっても、当該1日について平均賃金の100分の60以上に相当する金額が支払われなければなりませんので、現実に就労した時間に対して支払われる賃金が平均賃金の100分の60以上に相当する金額に満たない場合には、使用者はその差額を支払わなければなりません。

 

労働相談・人事制度は 伊﨑社会保険労務士 にお任せください。 労働相談はこちらへ

人事制度・労務管理はこちらへ