行方不明者の取扱い

  第一に一定期間勤務しない場合は当然に自然退職とする規定を就業規則においておくことです。

 例えば、豊田自動織機製作所事件(名古屋高判昭和48・3・15)では、「事故欠勤が1ヵ月以上で特別の事由が認められないときは、自然退職となる」という定めは使用者の解雇の意思表示をまつことなく、1ヵ月の事故欠勤期間満了と同時に自然退職となることを定めたものとされています。

 第二には、「事故欠勤」という言葉には従業員の都合により出勤していないという意味が込められている可能性があるので、「原因不明の不出勤」に対応するためには、「事故欠勤」という言葉を拡大して定義付けするか、「原因の如何を問わず、会社に出勤しない状態(欠務)又は従業員が会社に届け出た連絡先での会社との連絡不能となった状態(行方不明)が○ヵ月以上経過した場合は自然退職とする。但し、業務上の災害による場合等この規則に別に定める場合を除く。」などの規定をおくことです。

 第三に、自然退職後の私物の整理や退職金、未払賃金の精算事務の円滑化のため、第一、第二のような場合(実際の書き方としては、「都合により従業員が受領できない場合」程度が妥当でしょう)の精算金や私物等の受取りの使者=代行者(多くの場合、第一次的には同居の親族又は実家など)を従業員から身上届出を提出させる際に指定させ、その者に対して、これらの処理ができるようにしておくことです。

 そうではないと、いちいち供託などの方法や保管責任の問題が発生するためです。

 なお、賃金については労基法の直接払いの原則との抵触が心配されますが所定の手続に従い銀行振込がなされている場合は指定口座に振込めば問題ないでしょうし、上記のように使者として従業員自身に指定させておけば、労基署もこのような場合まで問題とすることはないでしょう(昭和22.12.4基収4093)。

 なお、以上の準備なく、行方不明者が出た場合で、親族や身元保証人が居る場合の実際の処理としては、親族から、仮に本人から異議が出た場合には親族らが責任をもって処理する旨の誓約書付きで、従業員の代理人として退職届を提出して貰うような方法が取られているようです。

 

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