障害者の雇用促進

障害者雇用促進法での「障害者」

 障害者雇用促進法における障害者とは、「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」とされています。

身体障害者

「身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)」の1級~6級の障害を有する者、7級の障害を2つ以上重複している者

  障害の種類には、視覚障害、聴覚障害、平衡機能障害、音声・言語機能障害、そしゃく機能障害、肢体不自由、心臓機能障害、じん臓機能障害、呼吸器機能障害、ぼうこう又は直腸機能障害、小腸機能障害、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害、肝臓機能障害があります。

重度身体障害者

身体障害者障害程度等級表の1級又は2級の障害を有する者、3級の障害を2つ以上重複している者

  (障害者数の算定や障害者雇用納付金の額の算定などの際に、その1人を2人として計算します。)

身体障害者であることの確認

原則として、身体障害者手帳の交付を受けているかどうかによって行います。

 

知的障害者

 児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医又は障害者職業センター(以下、「知的障害者判定機関」)によって知的障害があると判定された者。

重度知的障害者

 知的障害者判定機関により知的障害者の程度が重いと判断された者

  (障害者数の算定や障害者雇用納付金の額の算定などの際に、その1人を2人として計算します。)

知的障害者であることの確認

  原則として、都道府県知事が発行する療育手帳又は知的障害者判定機関の判定書によって行います。

 

精神障害者

  次に掲げる者であって、症状が安定し、就労が可能な状態にある者

1) 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者

2) 統合失調症、そううつ病又はてんかんにかかっている者

  なお、1)に該当する者を雇用しているときは、各企業の雇用率(実雇用率)に算定できることとなります。障害者雇用納付金、障害者雇用調整金及び報奨金の算定においても同様の取扱いです。

精神障害者であることの確認

  精神障害者保健福祉手帳の交付を受けているかどうかによるほか、医師の診断書、意見書等により確認を行います。

 

発達障害者

  次の障害を有するために日常生活又は社会生活に制限を受ける者

自閉症、アスベルガー症候群その他の広汎性発達障害  学習障害  注意欠陥多動性障害

 その他、これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの

  発達障害者は雇用義務の対象には含まれず、また実雇用率に算定することもできませんが、求人開拓や職業指導の対象には含まれています。

  発達障害者というだけでは実雇用率に算定することができませんが、他の障害が認定されて、精神障害者保健福祉手帳や療育手帳をお持ちになる方は算定されます。

その他の障害者

  難病等の慢性疾患者や高次脳機能障害者など障害者手帳のない方は、雇用義務の対象には含まれず、実雇用率に算定対象とすることもできませんが、求人開拓や職業指導の対象には含まれています。 

 

 障害者の雇用を促進するため、障害者に適した職種又は職域について障害者の優先雇用を図り、また、障害者が雇用されるのに伴い必要となる施設又は設備の整備などを助成します。  また、障害者がその能力に応じて適当な職業に従事することができるようにするため、職業指導・職業訓練・職業紹介を実施します。

 

障害者雇用率

 障害者の雇用の促進等に関する法律は、国・地方公共団体・常時労働者を使用する事業所などに働く人のうち一定率以上が身体障害者又は知的障害者であるよう義務づけています。

事業主に対する援助

 障害者の雇用を促進するために、事業主に対していろいろな援護制度を設けています。   

1 障害者雇用調整金の支給

 常用労働者が200人を超える事業主で、 障害者雇用率を超えて身体障害者、知的障害者又は精神障害者(精神障害者保健福祉手帳所持者)を雇用する事業主に対し、その超えて雇用している障害者1人につき月額2万7,000円が支給されます。

2 報奨金の支給

 常用労働者200人以下の事業主であって、一定数(各月の常用労働者の4%の年間合計数又は72人のいずれか多い数) を超えて身体障害者、知的障害者又は精神障害者(精神障害者保健福祉手帳所持者)を雇用する事業主に対し、その一定数を超えて雇用している障害者1人につき月額2万1,000円が支給されます。

3 助成金の支給

 障害者を雇用するために、職場環境を整備したり、適切な雇用管理を実施するための費用を助成する各種の制度が設けられています。

 平成28年4月に新たな障害者雇用促進法が施行されました。改正後は「精神障害者」も障害者枠に入り、よって法定雇用率も引き上げに。障害者の差別禁止も加えられ、より平等に障害者と接する工夫がされています。

 

障害者雇用促進法の改正前との違い

1 障害者の範囲の拡大

 第1条では「身体障害者または知的障害者の雇用義務等に基づく」だったのが、改正後は一括して「障害者」となっています。「精神障害者」も追加されたからです。精神障害者にはADHDを代表とする発達障害やてんかんも含まれます。

 また、「障害者とそうでない者との均等な機会および待遇の確保、並びに障害者がその有する能力を有効に発揮できるようにするための措置」という前置きがされています。国はより障害者を差別をなくすことや積極的に雇用することに重点を置いているのです。

2 差別禁止

法では「雇用の分野における障害を理由とする差別的取扱いを禁止する」とあります。

「差別的取り扱い」とは

  車いすや人工呼吸器を使っているから不採用にする・解雇すること

  給料を下げる、給料を低くする、昇級をさせない

  研修や実習を受けさせない

  食堂や休憩室を利用させない

3 合理的配慮の提供義務

 事業主は障害者の能力が発揮できるように壁となるさまざまなことを解決しなければなりません。障害者でない人と同じスタートラインに立って働けるようにするべきです。

「合理的配慮の提供義務」

 採用試験の時間をのばす

 問題用紙は点訳や音訳をする

 車イスを使う人には、机の高さが調節できるようにする

 知的障害がある人には図や絵を使ってわかりやすく説明する

4 苦情処理・紛争解決援助

 障害者である労働者から相談や苦情がきたときは自主的に解決しましょう。 努力義務に止まってはいますが、都道府県労働局調が助言や指導を勧告できるようになり、新しく設けられた調停制度の対象にもなっています。

5 法定雇用率が上がります

 国は事業主に対して、障害者雇用率に合った身体障害者・知的障害者の雇用を義務付けています。民間企業の法定雇用率は2.0%ですが、この障害者雇用率は平成30年3月31日までとなっています。 

法定雇用率の算定基礎に精神障害者を追加(平成30年4月施行)

 これからは法定雇用率の「障害者」にも「精神障害者」追加され、法定雇用率も上がりますが、企業に負荷がかからないように、平成30年から5年間だけは法定雇用率を下回っても良いようです。

6 納付金制度に変化

 納付金制度とは雇用率が未達成な企業は、月に不足人数×5万円を払う制度のことです。

 平成27年の4月からは100人以上の企業まで対象が広がりました。

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従業員を新たに雇い入れる場合
 ・障害者トライアル雇用奨励金
 ・障害者短時間トライアル雇用奨励金
 ・障害者初回雇用奨励金(ファースト・ステップ奨励金)
 ・中小企業障害者多数雇用施設設置等助成金
 ・精神障害者等雇用安定奨励金(重度知的・精神障害者職場支援奨励金)
 ・精神障害者等雇用安定奨励金(精神障害者雇用安定奨励金)
 ・発達障害者・難治性疾患患者雇用開発助成金

障害者が働き続けられるように支援する場合
 ・障害者作業施設設置等助成金
 ・障害者福祉施設設置等助成金
 ・障害者介助等助成金
 ・職場適応援助者助成金
 ・重度障害者等通勤対策助成金
 ・第2種重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金

従業員等の職業能力の向上を図る場合
 ・障害者能力開発助成金