境界性人格障害

 人間は成長していく中で、「十人十色」といわれるような様々な個性を獲得しながら発達を続けていきます。前向き・陽気・几帳面・怒りっぽい・神経質・おおらか・飽きっぽいなど、性格を表す言葉は数え上げればキリがありません。誰もが様々な性格をもっている中で、中にはその一部分が極端に偏ったようになり、社会生活を送る上で自分も他人も苦しませてしまうようになる人がいます。こうした人々のことを、精神医学の分野では「パーソナリティ・ディスオーダー」と呼ぶようになり、日本では「人格障害」と呼ばれるようになりました。なかでも、気分の波が激しく感情が極めて不安定で、良い・悪いなどを両極端に判定したり、強いイライラ感が抑えきれなくなったりする症状をもつ人は「境界性人格障害」に分類されます。
 「境界性」という言葉は、「神経症」「統合失調症」という2つの心の病気の境界にある症状を示すことに由来します。例えば、「強いイライラ感」は神経症的な症状で、「現実が冷静に認識できない」という症状は統合失調症的ものです。 

 境界性人格障害は人口の約2%に見られ、若い女性に多いといわれています。

境界性人格障害の特徴
 よく見られる症状として、主に以下のようなことが挙げられます。
 ・現実または妄想で、人に見捨てられることを強く恐れ、不安を抱いている
 ・対人関係の変動が激しく、コミュニケーションが安定しない
 ・気分や感情がめまぐるしく変わり、周囲の人々がついてこられない
 ・感情のブレーキが効かず、ちょっとしたことで癇癪(かんしゃく)を起こしたり、激しく怒り、傷つきやすい
 ・自殺のそぶりや自傷行為を繰り返し、周囲に動揺を与える
 ・自己を損なう行為(薬物・アルコール・セックス・万引き・過食・買い物など)に依存しやすくなる
 ・いつも空虚な気持ちを抱き、幸せを感じにくい
 ・生きることに対して辛さや違和感を持ち、自分が何者であるかわからない感覚を抱いている
 ・強いストレスがかかったとき、一時的に記憶がなくなり、精神病状態に似た症状を起こしやすい

境界性人格障害が発症する原因
 境界性人格障害が発症する原因は、はっきりとは解明されていませんが、おおまかな原因として「遺伝」と「環境」が大きく関わっていると考えられています。
 「遺伝」にまつわる要因としては、もともと境界性人格障害になりやすい性格傾向をもって生まれてくる人がいることです。
 「環境」にまつわる要因としては、幼児期の虐待や、母親との愛情関係がうまく築けなかったことが大きく関わると分かっています。まず、幼い時期は母親との愛情関係を築くのに重要な時期であることは言うまでもありませんが、仮に安定的な関係が築けない場合、その後の自己の確立や感情のコントロールに大きく影響を及ぼし、人格形成に関わることが解明されてきています。子どもが成長してもなお、母親離れ・子離れがうまくできず、親子ともに依存している状態(共依存)にある人や、成長の課程で親が子供を褒めたり認めたりせず、欠点ばかり指摘して子供を否定し続け、子どもが親の価値観に合わせ過ぎた「真面目な優等生」で育ってしまった場合など、本人の自己否定感が強くなり、幸せを感じることができにくくなっている人も発症しやすいでしょう。
 このように、遺伝的な要因をもった人が、育った環境によって境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)を引き起こすことが多いようです。

境界性人格障害の治療法
 主な治療法は2つです。
 「気分の落ち込み・強い不安感・怒りの感情・冷静でいられない」などの症状に対しては、抗うつ剤抗不安薬などの薬を用いて治療します。並行して、精神科医や臨床心理士によるカウンセリングや行動療法で根気よく治療して行きます。
 双方において、一番大事なことは、本人の「治りたい・治したい」という気持ちです。
 治療では、過去のつらい出来事やできれば知らぬふりをしたい事ともきちんと向き合わなければいけません。
 また、治療期間も人によっては長期にわたることもあります。境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)の特徴である、対人関係の不安定さは医師や心理士との間にも起こると考えられますが、医師や心理士を信頼し、「治りたい・治したい」気持ちを忘れずに長い目で治療に取り組みましょう。

 

 人格障害は、原則として認定の対象となりません。例外的に「境界性人格障害」については、その症状が精神病との中間的な性格を持つため、症状が重篤な場合は対象とされています。被害関係妄想・幻聴を生じるなどの精神病(統合失調症)の病態を示す場合の認定例があります

 

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