肥大型心筋症

 心筋症は、「心筋そのものの異常により、心臓の機能異常をきたす病気」ですが、そのうち、肥大型心筋症は、心肥大をおこす原因となる高血圧や弁膜症などの病気がないにもかかわらず、心筋の肥大(通常左室、ときに右室の肥大)がおこる病気で、左室心筋の異常な肥大に伴って生じる、左室の拡張機能(左房から左室へ血液を受け入れる働き)の障害を主とする病気です。本症の心肥大は、通常その分布が不均一であることが特徴的で、肥大の部位・程度や収縮の程度などにより収縮期に左室から血液が出ていく部位(流出路)が狭くなる場合があり、そのような場合は閉塞性肥大型心筋症と呼ばれます。これに対する非閉塞性肥大型心筋症の他、心尖部肥大型心筋症、心室中部閉塞型心筋症、拡張相肥大型心筋症などのタイプに分類されます。診断には心エコー検査が有用で、左室肥大の程度や分布、左室流出路狭窄の有無や程度、心機能などを知ることが出来ます。
 この病気は遺伝性があります。家族性の発症が約半数に認められます。家族内発症がない方でも、同様な遺伝子異常を有する場合がありますが、原因不明の方も少なくありません。
 多くは常染色体性優性遺伝の形式で遺伝し、サルコメア遺伝子の変異が主因であることが知られています。

原因
 心筋細胞の中に、心筋の収縮に関わるサルコメア蛋白という一群が存在するのですが、この蛋白をコードしている遺伝子の変異が主な原因です。家族性の肥大型心筋症の約半数でこれらの遺伝子の変異が認められますが、残りの約半数の原因は未だ不明です。サルコメア遺伝子の変異が肥大型心筋症を引き起こす機序については不明な点が多いのですが、心筋細胞の中の様々なシグナルが複合的に関わっていることが明らかになりつつあります。

症状
 肥大型心筋症では大部分の患者さんが、無症状かわずかな症状を示すだけのことが多く、たまたま検診で心雑音や心電図異常をきっかけに診断にいたるケースが少なくありません。症状を有する場合には、不整脈に伴う動悸やめまい、運動時の呼吸困難・胸の圧迫感などがあります。また、重篤な症状である「失神」は不整脈による以外に、閉塞性肥大型心筋症の場合には、運動時など左室流出路狭窄の程度が悪化し、全身に血液が十分に送られなくなることによっても生じます。また、約5~10%の患者さんでは進行性に左室収縮能の低下と左室拡張がおこり、拡張相肥大型心筋症と呼ばれる病態に移行することがあります。拡張相肥大型心筋症に移行すると、多くの方が心機能低下に伴い、呼吸困難や動悸など様々な症状を自覚します。

治療法
 一般療法として競技性の強い過剰な運動を避けることが必要です。また、閉塞性肥大型心筋症例での流出路狭窄の程度は運動中よりも運動直後に強くなるといわれ、失神や突然死は、運動中のみならず運動直後にも見られることに注意が必要です。薬としては、左心室を拡がりやすくするためにβ交感神経受容体遮断薬やカルシウム拮抗薬を用います。心房細動という不整脈になると、心不全が急に悪化したり、塞栓症を生じたりすることがあります。このため、不整脈を抑える薬や血を固まりにくくする抗凝固療法が用いられます。また、拡張相肥大型心筋症では、心不全の治療を目的に、利尿薬や血管拡張薬などが用いられます。突然死の原因となる重い不整脈に対しては、不整脈を抑える薬、さらに植込み型除細動器が必要となることもあります。このほか、左室流出路狭窄の著しい例では、エタノール注入による心筋の焼灼術(カテーテル治療)や外科的に厚くなった筋肉を切除することもあります。

 一般に病気の経過は良好で、全く無症状のまま天寿を全うする方も少なくありません。一方で、症状の有無にかかわらず危険な不整脈や、心機能の進行性の低下が認められることがあり、定期的に専門医のもとで経過観察を受けることが重要です。死因として、若年者では突然死、特に運動中の突然死が多く、壮年~高齢者では心不全死やとくに心房細動などの不整脈を合併した場合など、心臓内に生じた血栓による塞栓症死が主となります。拡張相肥大型心筋症に移行した患者さんのうち、重症の一部では心臓移植が必要となることがあります。

 心臓移植は心臓移植以外の従来の治療法では救命ないし、延命することを期待できない重症の心機能障害をもつ心臓の病気に対して行なわれています。具体的には、広範な心筋梗塞、重症の心筋症(主に拡張型心筋症)高度の心筋障害を伴う心臓弁膜症などです。

 

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