均等待遇の原則

 使用者は、合理的理由がある場合を除いて、パートタイム労働者及び有期契約労働者の処遇(労働基準法にいう労働条件)について、所定労働時間が短いこと又は労働契約に期間の定めがあることを理由に、類似の通常の労働者と差別的取り扱いをしてはなりません

 事業主は、労働者の募集及び採用について、女性に対して男性と均等な機会を与えなければなりません(男女雇用機会均等法第5条)。

 労働者が女性であることのみを理由として、或いは、社会通念として又は当該事業場において、女性労働者が一般的又は平均的に能率が悪いこと、勤続年数が短いこと、主たる生計の維持者でないこと等を理由として、賃金について男性と差別的取扱をすることは「男女同一賃金の原則」違反となります(労働基準法第4条)。

 あくまでも、同一の能力・同一の業務等で男性と女性で賃金に差をつけることを禁じています。職務、能率、技能、年齢、勤続年数等によって、賃金に個人差に違いがあるのは当然のことで、ここでの差別的取扱いには当たりません。

 しかし、これらが同一である場合、男性は月給制、女性は日給制とし、労働日数の同じ女性の賃金を男性より少なくすることは男女「同一賃金の原則」違反となります。

 差別的取扱は女性を不利に取り扱う場合だけでなく、有利に取り扱う場合も含みます。

 実質的に正社員と同様の時間と業務を担当している準社員的なパ-トなどの従業員については、正社員との賃金の差額の付け方に注意が必要です。

 丸子警報器事件(長野地裁上田支部判決 平成8.3.15)では、パートの賃金が同じ勤続年数の正社員の8割以下となるときは違法となるとして、その限度での賃金と退職金の差額の賠償を認めました。

 従来、「通常の労働者と同様の就業の実態にある」労働者については、「通常の労働者としてふさわしい処遇をするよう努める」とされていた(平5.12.1労告118号)、いわゆる疑似パ―トに関しての判決であって、パ―トなど一般に直ちに適用されるものではありません。しかし、努力義務の対象に過ぎなかったものが、2割の格差を超えれば、月例賃金のみならず退職金についても違法とされるとの判断をされました。積極的に、正社員への登用等の処遇の改善を伴ないつつ、正社員との均衡を考慮した雇用管理を行っていくことが必要です。asian businesswoman standing on white background

 労働基準法では賃金について男女差別を禁止していますが、男女雇用機会均等法では賃金以外の男女差別を禁止しています。

 事業主は、募集又は採用、配置(業務の配分・権限の付与を含む。)、昇進、降格、教育訓練、一定の福利厚生(住宅資金の貸付け、住宅の貸与など)、職種・雇用形態の変更、退職の勧奨・定年・解雇・労働契約の更新について、労働者が女性であることを理由として、男性と差別的取扱をしてはなりません(男女雇用機会均等法第6条)。

 以下の3つの措置間接差別として禁止される措置として、厚生労働省令で定めております。
(1) 労働者の募集又は採用にあたって、労働者の身長、体重又は体力を要件とすること
(2) すべての労働者の募集・採用、昇進、職種の変更にあたって、合理的な理由がないにもかかわらず転勤要件を設けること
(3) 労働者の昇進に当り、転勤の経験があることを要件とすること

 

 ポジティブ・アクションの取組みが認められています(男女雇用機会均等法第7条)。

 ポジティブ・アクションとは、企業において性別による男女の役割分担意識や過去の経緯から、「営業職は男性ばかり」「課長以上の管理職、ほとんど男性」などの状態が生じている場合に、このような差別を解消するための自主的かつ積極的な取り組みのことをいいます。 例えば、状況を分析した結果、勤続年数の長い女性労働者が多数勤務しているにもかかわらず、管理職になっている女性がきわめて少数にとどまっているような場合に、例えば「3年間で女性管理職20%増加」などの目標を掲げ、その目標を達成するために、女性の管理職候補者を対象とする研修の実施や、昇進・昇格試験受験の奨励昇進・昇格基準の明確化等の取組みを実施することなどです。

 

 事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはなりません(男女雇用機会均等法第9条)。

 女性労働者が婚姻し、妊娠し、出産し、又は産前産後休業をしたことを理由として、解雇不利益な取扱いをしてはなりません。

 妊娠中・出産後の女性社員が保健指導・健康診査を受けるための時間の確保、当該指導または審査に基づく指導事項を守ることができるようにするため必要な措置の実施を、会社に義務付けております(男女雇用機会均等法第12条)。

 使用者は、妊産婦が請求した場合は、変形労働時間制(フレックスタイム制を除く)を実施している場合でも、妊産婦を1週間及び1箇月について法定労働時間を超えて労働させてはなりません。フレックスタイム制を除き変形労働時間制(1箇月単位、1年単位及び1週間単位)を適用できません。

 

深夜業に従事する女性労働者に対する措置

 事業主は、女性労働者の職業生活の充実を図るため、当分の間、女性労働者を深夜業に従事させる場合には、通勤及び業務の遂行の際における女性労働者の安全の確保に必要な措置を講ずるように努めるものとします。

 職場におけるセクシャルハラスメント防止のために雇用管理上必要な措置を会社に義務付けされています(男女雇用機会均等法第11条)。

 事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する女性労働者の対応により、女性労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は性的な言動により女性労働者の就業環境が害されることのないように雇用管理上必要な配慮をしなければなりません

 

 募集及び採用から定年、退職及び解雇までの規定は、「してはならない」と義務規定になっていますが、違反に対する罰則はありません。しかし、厚生労働大臣が勧告をしても事業主が従わない場合は、企業名が公表されることがあります。

 

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