契約期間途中の退職の申し出

 民法では、期間の定めがない労働契約については、当事者はいつでも解約の申し入れができることとしています(ただし、労働基準法では、使用者側からの解約、すなわち、解雇については合理的な理由が必要であると制限していますが)。

 しかし、期間の定めがある労働契については、原則として契約期間の途中には解約することはできません。そこで、労働基準法は長期的な労働契約を締結することによって労働者を身分拘束することの弊害を排除するため、通常の労働契約は3年以内、高度専門職と60歳以上の者の労働契約は5年以内、というように契約期間に上限を定めています。

 以上のように、期間の定めのある労働契約については、原則として契約期間途中の解除を排除していますが、民法第628条は、例外として「やむを得ない事由」がある場合には、契約期間の途中での労働契約の解約をすることができることとしています。

 労働者が契約期間の途中に契約解除ができるのは、
(1) 使用者が採用時(労働契約締結時)に約束した条件を履行しなかったとき
(2) 労働者の死亡、怪我、疾病、または家族の看病等のために労務を提供することができなくなったような場合
に限られます。

 したがって、当該社員からの退職の申し出の理由を客観的に判断して、上記のようなやむを得ない事由に該当しない限り、その退職の申し入れを認めなくても構いません。それでも退職(労働契約を解除)するというのであれば、債務不履行(労働契約違反)として、債務者である当該契約社員に対して民法628条により損害賠償請求をすることができます。

民法628条(やむを得ない事由による雇用の解除)
 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

 民法の特別法である労働基準法では、労働者側からの労働契約解除については制限をしていませんが、使用者側からの労働契約の解約、すなわち解雇については、業務上の災害のため休業中の者及び産前産後の休業中の者については、その休業期間とその後の30日間については原則として解雇してはならないものとしています。

解雇事由には、
(1) 労働者の責めに帰すべき事由による場合
(2) 使用者の責めに帰すべき事由による場合
(3) 天災事変その他やむを得ない事由によって事業の継続が不可能となった場合(労使のどちらにも責めのない事由による場合)
の3つの場合があります。

 

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