労使協定締結の当事者

1.労使協定締結の使用者側の当事者

使用者について、労働基準法10条において、
 (1) 事業主(株式会社などの法人又は個人事業主)、
 (2) 事業の経営担当者
 (3) 事業の労働者に関する事項について事業主のために行為するすべての者
と定められています。

 労務管理を行なう者や業務の指揮監督を行なう者は使用者とします。従って、上記の掲げる者であって、事業主から労使協定締結に関する権限(当該事業場の労働時間管理全般についての権限)が与えられる者、例えば、人事部長、支店長または工場長は労使協定の当事者となることができますし、各事業場を統括する者、例えば、株式会社の社長であれば、その社長は本社・支店などの事業場ごとの協定当事者になることが可能です。

2.労使協定締結の労働者側の当事者

 労働者側の締結当事者は、その事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合ではその労働組合になりますが、労働組合そのものがない、労働者の過半数で組織する労働組合がない、あるいは2つ以上の労働組合があって、いずれの労働組合にも労働者の過半数が加入していない事業場では、労働者の過半数を代表する者です。 この場合の「労働者」とは、労使協定を締結する時点でその事業場で労働するすべての労働者をいい、いわゆる管理監督者や臨時に雇用されている労働者を含む全労働者です。従って、労働組合のうち、その全労働者の過半数が労働組合員である組合のみが、締結当事者となることができます。 「労働者の過半数を代表する者」は、事業場全体の労働時間等の労働条件の計画、管理に関する権限を有する、いわゆる管理監督者でない者とされ、その事業場の労働者によって適法に選出されることが必要です。  なお、労働組合の支部にある場合にも、その支部の長ではなく本部の長が協定を締結することができます。

 

 労使 過半数代表者

1.労働者過半数代表者

 就業規則を作成したり、変更する場合には、労働者の代表の意見を聴かなければなりません。

 就業規則は、事業主が作成するものですが、労働者の知らない間に、一方的に苛酷な労働条件や服務規律などがその中で定められることのないように、労働基準法では、就業規則を作成したり、変更する場合には、労働者の代表の意見を聴かなければならないこととしています。  この場合の意見を聴く労働者の代表とは、会社や商店の本店、支店等のそれぞれの事業場ごとにみて、
(1) 労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合
(2) 労働組合がない場合や労働組合があってもその組合員の数が労働者の過半数を占めていない場合には、労働者の過半数を代表する者
をいいます。

 

2.過半数代表者の要件

 「労働者の過半数を代表する者」とは、その事業場の労働者全員の意思に基づいて選出された代表をいいます。

 過半数代表者になることのできる要件が、明確にされております。(平成11年1月29日 基発45号)

 次のいずれの要件も満たすものであること。
(1) 法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと。
(2) 法に基づく労使協定の締結当事者、就業規則の作成・変更の際に候補者から意見を聴 取される者等を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続きにより選出された者であり、使用者の意向によって選出された者ではないこと。

 なお、過半数代表者について、当該事業場に上記(1)に該当する労働者がいない場合(法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者のみの事業場である場合)には、一定の事項につき民主的な手続きをとればよい(規則6条の2第2項)。すなわち、人員構成の関係で、(1)に該当する者がいない事業場の場合、過半数代表者は、前記(2)の要件を満たすものであればよいこととされています。

 ここでいう労働者には、正社員のみではなく、アルバイト、パートタイマー、嘱託社員、契約社員等全従業員が対象となります。

 また、管理監督者は「労働者の過半数を代表する者」には選出できませんが、全従業員の中に含みます。

 

3.従業員代表 選出方法の例

・労働者を集め、投票により過半数の労働者の支持を得た者を選出する方法
・労働者を集め、挙手を行い、過半数の労働者の支持を得た者を選出する方法
・候補者を決めておいて投票とか挙手とか回覧によって信任を求め、過半数の支持を得た者を選出する方法
・各職場ごとに職場の代表者を選出し、これらの者の過半数の支持を得た者を選出する方法

(平成11年3月31日 基発169号)

問 則第6条の2に規定する「投票、挙手等」の「等」には、どのような手続が含まれているか。

答 労働者の話合い、持ち回り決議等労働者の過半数が当該者の選任を支持している ことが明確になる民主的な手続が該当する。

 なお、次のような方法は適正な選出方法とは認められません。  
 ・使用者が一方的に指名する方法  
 ・親睦会の代表者を自動的に労働者代表とする方法
 ・一定の役職者を自動的に労働者代表とする方法   
 ・一定の範囲の役職者が互選により労働者代表を選出する方法

 

4.過半数代表者の選出 注意点

(1) 事業場全体の労働条件などについて管理する立場にある者(人事部長、人事課長など)は、3.(1)(労働基準法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者)に該当しますので労働者代表としての適格性を有しません。

(2) 労働者の過半数を代表する者になろうとしたこと、労働者の過半数を代表する者であること、労働者の過半数を代表する者として正当な行為をしたことを理由として、不利益な取扱いすることはできません(規則6条の2第3項)。

(平成11年1月29日 基発45号)

 過半数代表者であること若しくは過半数代表者になろうとしたこと又は過半数代表 者として正当な行為をしたことを理由として、解雇、賃金の減額、降格等労働条件について不利益取扱いをしないようにしなければならないこととしたものであること。  「過半数代表者として正当な行為」には、法に基づく労使協定の締結の拒否、一年単 位の変形労働時間制の労働日ごとの労働時間についての不同意等も含まれるものであること。

 正当な行為とは、労使協定の締結の拒否、1年単位の変形労働時間制における労働日ごとに労働時間についての不同意等をいいます。  不利益な取扱いとは、解雇、降格、昇給延伸、賃金の切り下げ、賞与のカット等をいいます。

(3) 「当該事業所の労働者の過半数」の「労働者」には、病気、出張、休職期間中の者も含まれる(昭和46年1月18日 基収6206号)。

 

5.任期等

 過半数代表者の任期については、法令では特に定められていませんが、過半数代表者は、本来、労使協定を締結する事由が発生するごとに選出されるべきものと考えられますので、会社が一方的に過半数代表者の任期を定め、過半数代表者を固定することは望ましくないでしょう。

 しかし、「協定等」が複数ある場合には、その都度選出することは繁雑になりますので、便宜上、労働者側の同意を前提に、過半数代表者の任期を定めることは差し支えないものと解されます。ただし、その場合にもあまり長期間の任期を定めることは避けるべきでしょう。

 

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