糖尿病性腎症

 腎臓は、身体の中でいらなくなった老廃物を含む血液を濾過して、老廃物を尿として体外に排出するとともに、きれいになった血液を体内に戻すという極めて重要な働きをしています。この血液を濾過する役割をしていのが、腎臓の糸球体と呼ばれる場所です。この糸球体は毛細血管の塊でできており、高血糖が長期間続きますと、網膜と同じく血管障害や膜に変化が起きてきて濾過機構が破綻してしまいます。この状態が糖尿病性腎症といわれるものです。

 糸球体が担っている濾過機能は、正常の状態においては身体に必要なタンパク質などが外に漏れでないように調節されています。しかし腎症に陥った状況下では、大事なタンパク質などが尿として身体の外に漏れ出てしまうのです。これが蛋白尿で、蛋白尿が多量になりますと血液中の蛋白濃度が下がり、むくみ(浮腫)や血圧上昇などを招き、老廃物の排出低下も相俟って腎不全や尿毒症に移行してしまうのです。

糖尿病腎症の病期とその対策
 腎臓は、眼底検査で把握することができる網膜症とは異なり、身体の外から直接異常がないかどうかを判断をすることが困難です。従って、よほど重症にならないと症状は出現してきません。高血糖が続くと、腎臓にはごく初期段階で、微量のアルブミンという蛋白(尿中微量アルブミン)が出現します。この時期が腎症の早期の段階ですので、この時点で血糖コントロールを厳格にすることが、悪化をくい止めるための最良の手段となります。それでもなお、血糖コントロールの不良状態が続きますと悪化の一途を辿るわけです。

  糖尿病性腎症病期分類

病期

尿蛋白 (アルブミン)

対策

第1期 (腎症前期)

正常

血糖コントロール

第2期 (早期腎症)

微量アルブミン尿

厳格な血糖コントロール 降圧療法

第3期A (顕性腎症前期)

持続性蛋白尿

厳格な血糖コントロール 降圧療法・蛋白制限食

第3期B (顕性腎症後期)

持続性蛋白尿

降圧療法・低蛋白食

第4期 (腎不全期)

持続性蛋白尿

降圧療法・低蛋白食 透析療法導入

第5期 (透析療法期)

透析療法中

透析療法・腎移植

  糖尿病糖尿病性腎症相当因果関係「あり」とされております。

 腎疾患の主要症状としては、悪心、嘔吐、食欲不振、頭痛等の自覚症状、浮腫、貧血、アシドーシス等の他覚所見があります。

 すべての腎疾患は、長期に経過すれば腎不全に至る可能性があります。最もよく見受けられるのは、糖尿病性腎症による慢性腎不全です。

 障害年金上、「糖尿病」とその後の「慢性腎不全」には因果関係がある傷病とされます。そのため慢性腎不全の初診日とは糖尿病が判明した時点となります。

  会社の健康診断で尿蛋白の陽性を指摘された時は、再検査で医師の診断を受けた日が初診日となります。

 糖尿病など腎疾患は長い時間をかけて悪化する事が多いため、数十年前の初診日を特定するために手間取るケースが多く見受けられます。 そうした時には、健康診断の控えなどが初診を示す有力な手掛かりとなります。

 障害年金には社会的治癒という考え方があります。 例えば、20歳前の学生時代などに尿検査で異常を指摘されたものの、その後は長期に渡り通常通りの生活をし、厚生年金加入中に再度指摘されて、その後「慢性腎不全」に移行したという場合です。

  20歳前に指摘された、ということでそのまま請求すれば障害基礎年金の請求になりますが、この場合は社会的治癒に該当する可能性があり、障害厚生年金での請求ができる可能性があります。

 尿検査で異常所見が出たことだけで、初診日とするのは不適当です。

 

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