服務規律
服務規律とは、会社を適切に運営し秩序を維持する、従業員の行動規範となるべきもので、従業員が日常守らなければならない一般的な心得や遵守すべき事項を定めたものです。
労働者は、企業活動および労働契約の目的において必要な範囲でのみ企業秩序に服するのであり、企業の一般的な支配に服するものではありません。したがって、守らなければならないとされる服務規律=ルールは、企業の円滑な維持・運営に必要であり、かつ合理的な範囲のものであることが求められます。その解釈、運用に当たっては合目的的であり限定的でなければなりません。
判例においては、服務規律を含めた企業秩序という概念を認め、「企業秩序は、企業の存立と事業の円滑な運営の維持のために必要不可欠なもの」であり、「労働者は、労働契約を締結して企業に雇用されることによって、企業に対し、労務提供義務を負うとともに、これに付随して、企業秩序遵守義務その他の義務を負う」(富士重工業事件 昭和52年最高裁判決)との判断を示しています。
服務規律は、就業規則の中に一括して掲げられ、その内容である遵守事項に違反した場合について、懲戒規定中にこれに対応する規定を置くのが普通です。この服務規律によって維持される会社の秩序は、懲戒処分によってその実効性が担保されます。そのため、服務規律は会社に合わせてより具体的により詳細に規定する必要があります。
服務規律の内容としては、労働者の服務に関する基本的原則と、具体的な遵守事項に分けられます。
就業規則には、まず基本的な心構えを記載します。
労働者の服務に関する基本的原則は、精神的・訓示的な定めであると解されるものが多いです。
例えば次のような事項があります。
(1) 規則を遵守すること
(2) 職責を重んじること
(3) 忠実義務 など
そして、労働者の具体的な遵守事項は、基本的原則に比べてより具体的な事項についての制約を定めたもので、次のようなものが挙げられます。
1.労務提供に関係する規律
労務提供に関係する規律とは、企業の規則・通達や上司の命令・指示を尊守する事項、職場規律を維持すべき事項などに関係する規律です。
・遅刻・欠勤
・離席・外出
・会社への入退社
・職務専念義務
・職場の命令関係
・協力関係
・安全衛生に関する事項
・職務上の金品授受の禁止
などです。
2.企業財産の管理保全のための規律
労務提供に準ずる義務として、施設、物品などの物的保存を図る事項を加えることができます。
・職務上の金品授受の禁止
・備品持ち出し禁止
・会社施設の利用に関すること
・集会や宗教活動の制限
などです。
3.従業員の地位身分による規律
従業員の身分を取得したことによる尊守義務があります。従業員である以上、尊守しなければならない義務です。
・異動の届出 (結婚や離婚・出産など)
・会社の名誉、信用を守る義務
・公職(政治家)立候補や就任の取り扱い
・秘密保持義務
・二重就業の禁止
・退職後の競業避止義務
などがあります。
4.その他
服務規律の条項に追加または別規程を作成して運用した方が良い条項を下記に記します。
・セクハラ、パワハラに関する条項
・個人情報保護法による条項 など
労働者は雇用契約上「企業秩序遵守義務」を負っています。私生活上の行為であっても、企業の名誉や信用を損なうような行為であれば規制の対象となりえます。
就業規則には、職場外での職務に関係のない私的な行為であっても、会社の名誉や信用を害すると思われるような事由も規定しておくべきです。
職場外でなされた行為であっても、企業の社会的評価の低下・毀損につながるおそれがあると客観的に認められる場合は、企業秩序の維持確保のためにこれを規制することが許される場合がある(国鉄中国支社事件 最高裁 昭49.2.28)。
服務心得の具体的事項
○経歴詐称の禁止
採用時の質問事項を検討すべきです。
求職者の人権に配慮し、適性と能力に関係のない項目を排除するべきであるが、配偶者や兄弟が求人先の競合会社に従事している場合等のケースでは、社内情報が外部に漏れる恐れも考えられ、これは場合によっては企業側に不利益を生じさせてしまう懸念もある。よって、服務規律の整備、就業規則上の懲戒解雇事由の列挙等の事前の防止が必要と思われます。
○勤務中の服装、身だしなみ等についての規定
髪型・色、口ひげ、服装を改めように命じることができるかどうかについては、企業経営の必要性から命令に合理性があるかどうか、業種や具体的職務内容から判断されます。
たとえ就業規則において金等髪等の禁止規定がなくても企業の品位保持、取引先との円滑な関係維持等の観点から、企業経営に悪影響を及ぼす具体的なおそれがある場合には業務命令として金髪を改めさせることができると思われます。 しかしながら、無用な労使トラブル防止の観点から、就業規則において髪型・色、口ひげ、服装などに関して合理的な規律を定めておいたほうがよいでしょう。
・イースタン・エアポートモータース事件(東京地裁 昭和55.12.15)
・東谷山家事件(福岡地裁小倉支部 平成9.12.25)
○労働の遂行に関する規律
・富士重工業事件 最高裁第3小(昭和52・12・13)
富士重工業事件においては、同僚の就業規則違反の事実に関する調査への協力命令について、「調査に協力することがその職務の内容となっている場合には、右調査に協力することは労働契約上の基本的義務の履行そのものであるから、右調査に協力すべき義務を負う」が、これ以外の場合には、「調査対象である違反行為の性質、内容(中略)等諸般の事情から総合的に判断して、右調査に協力することが労務提供義務を履行する上で必要かつ合理的であると認められない限り、右調査協力義務を負うことはない」とされました。
○会社の名誉・信用を守る義務
労働者は雇用契約上「企業秩序遵守義務」を負っているので、私生活上の行為であっても、企業の名誉や信用を損なうような行為であれば規制の対象となります。
職場外での職務に関係のない私的な行為であっても、会社の名誉や信用を害すると思われるような事由も規定しておくことができます。
・日本鋼管事件(昭49) 最高裁第2小(昭和49・3・15)
労働者が在日米軍に対する反対行動により起訴され、罰金刑を受けたことをもって「会社の体面を著しく汚した」とまではいえず、懲戒解雇事由にはあたらないとされた。
○企業秩序・風紀秩序の遵守義務(誠実義務、忠実義務)
就業時間中は企業施設の内外において企業の正当な利益を侵害してはならないこと。
使用者に許可なく建物にビラを貼った場合、使用者の所有権、施設管理権を侵害する行為として違法となります。企業秩序維持の見地から、就業規則により職場内における政治活動を禁止することは合理的な定めとして許されます。プレート着用行為は、社会通念上政治的な活動にあたり、実質的に見ても秩序維持に反するから懲戒事由となります。ビラ配布行為は無許可であり、実質的に見ても上司の適法な命令に抗議する目的でなされ、 内容的にも上司の適法な命令に抗議し、職場内の政治活動、プレート着用等違法な行為をあおり、そそのかすことを含むものであり、秩序を乱すおそれのあったものであるから、懲戒事由となります。プレート着用行為・ビラ配付行為などに対し、懲戒処分を認める場合は、当該行為の具体的内容に照らし、懲戒処分の有効性が個別に判断されます。
観念的な秩序侵害の「おそれ」による「企業内政治活動の禁止」の合理性
・職場内における政治活動 → 職員相互間の政治的対立ないし抗争を生じさせる「おそれ」がある。
・使用者管理の企業施設を利用しての政治活動 → その企業施設の管理を妨げる「おそれ」がある。
・就業時間中の政治活動 → 他の職員の業務執行を妨げる「おそれ」がある。
・休憩時間の政治活動 → 他の職員休憩時間の自由利用を妨げる「おそれ」がある。休憩時間後における作業能率を低下させる「おそれ」がある。
企業秩序の維持に支障をきたす「おそれ」が強いとして、就業規則により職場内における政治活動を禁止することの合法性を認めております。
ただし、そのビラやポスターが企業内の秩序を乱すおそれがないと認められた場合は、就業規則に違反して更衣室に貼ったり、休憩時間中に許可を得ず配布したとしても、規定の違反になるとは認められず、処分を却下した例もあります。
・国鉄札幌運転区(国労札幌支部)事件の最高裁判決(昭和54年)
企業は、「職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保するため、その物的施設を許諾された目的以外に利用してはならない旨を、一般的に規則をもって定め、または具体的に指示、命令することができ、これに違反する行為をする者がある場合には、企業秩序を乱すものとして、当該行為者に対し、その行為の中止、原状回復等必要な指示、命令を発し、または規則に定めるところに従い制裁として懲戒処分を行うことができる」とされ、ロッカーへのビラ貼付の中止等を命じたことを不法不当なものとすることはできないとした。
・電電公社目黒電報電話局事件(最高裁第三小法廷 昭和52.12.13)
政治活動として行われた勤務時間中のプレートの着用について、「一般私企業の使用者が、企業秩序維持の見地から、就業規則により職場内における政治活動を禁止することは、合理的な定めとして許されるべき」であり、プレート着用行為は、「公社職員として職務の遂行に直接関係のない行動を勤務時間中に行ったものであって(中略)、職務上の注意力のすべてを職務遂行のために用い職務にのみ従事すべき義務に違反し、職務に専念すべき局所内の企業秩序を乱すものであった」とされた。
・明治乳業事件(最高裁第三小法廷 昭和58.11.1)
形式的にいえば就業規則等に違反するものであっても、「ビラの配布が工場内の秩序を乱すおそれのない特別の事情が認められるときは、右各規定の違反になるとはいえない」として、休憩時間中に許可を得ないで工場内で行われたビラ配付について、特別な事情が認められる場合に当たり、規定に違反するものではないとされた。
○出退勤に関する規律
従業員が守るべき基本的なルールとして、次の事項を規定します。
(1) 始業時刻までに出勤し、所定の方法で出勤の事実を明らかにすること
(2) 退勤時は、整理整頓後、退勤の事実を明らかにし、速やかに退勤すること
(3) 出退勤の事実を明らかにする方法としては、タイムカードの打刻又は出勤簿によること
また、本人以外のものによる不正打刻行為を禁止すること
○入退場に関する規律
服務に関する規定は、組織秩序を維持することを目的としたものです。この考え方に基づいて職場への入退場に関する事項についても規定をしておくべきでしょう。 例えば、社員が組織秩序を阻害するおそれがあるときは、その入場を禁止することになります。また、職場で秩序を乱すような行為をした場合は職場を出て行ってもらうことになるでしょう。入退場に関する規定には、そうした内容を記載することになります。
○所持品検査の規定
会社が従業員に対して、所持品検査をすることには、ある程度の業務上の必要性があると考えられます。しかし、所持品検査は重大なプライバシーの侵害になる恐れがあるために、無制限に許されるものではありません。また、検査を行う理由については、まず、業務に関連した範囲にとどめる必要があると言えます。会社の管理責任を問われない程度の従業員間の個人的な問題については、自己責任とするように区別しなければなりません。
所持品検査が適法とされるためには、次の4つの要件が満たされていなければなりません。(西日本鉄道事件 最高裁第2小(昭和43・8・2))
(1) 所持品検査を必要とする合理的理由に基づくこと
(2) 一般的に妥当な方法と程度で行われること
(3) 制度として職場従業員に対して画一的に実施されること
(4) 就業規則その他明示の根拠に基づき行われること
○遅刻、早退、欠勤等
不意の遅刻、早退、欠勤は業務の遂行に影響を及ぼすので、これを最小限にするため、所定様式による届出により、事前の届出と許可の励行が必要です。
遅刻、早退については、あらかじめ会社に届け出て承認又は許可を得ることとし、やむを得ず遅刻した場合には事後速やかに届け出て承認を得る等、明確に定める必要があります。 また、交通の延滞等、本人の責任が及ばない理由による遅刻、その他の不就労の場合の例外的な取扱いについても明確に定めておくべきです
就業規則規定例 第○条(遅刻、早退、欠勤等) |
遅刻、早退、欠勤については、懲戒規定にも個別に明記しておくこと。定めていない場合は、懲戒処分ができないのです。
○私用面会・私用外出
私用面会や外出等の職場離脱については、その間は不就労となり、また、事故防止という観点からも規定により制限を加えるべきです。
原則として休憩時間中に限るとし、緊急やむを得ない場合のみ、会社の許可を得て面会又は外出できる旨を定めるべきです。
○マイカー通勤
マイカーによる通勤に関しての規定をしている会社はまだまだ少ないようです。多くの会社で「業務と直接関係ないから」と黙認しているところも、多いことでしょう。しかし一度おきてしまうと非常にもめることになります。特に若い社員で十分な任意保険に入っていないケースもありますので、会社としてはリスクを認識する必要があるでしょう。 まず、マイカー通勤については許可制にすることと、その条件として保険に加入することとします。
また免許証や保険証券の写しなどを提出させ毎年の更新型とします。 こうすることにより、運転者の賠償能力を担保することが可能です。 加入保険の条件についても具体的に定めることが肝要です。
○秘密保持義務
就業規則規定例 第○条(秘密保持義務) |
就業規則規定例 第○条(退職後の秘密保持義務) 2 退職した従業員が企業の機密を漏洩した場合は、退職金の全部又は一部の返還を求めることがある。 |
「個人情報保護法の施行」(平成17年4月1日)に伴い、個人情報管理の規定を定めることが必要となりました。服務規律の中への追加、制裁の条文の中への追加が必要です。
就業規則規定例 第○条(秘密保持義務) なお、従業員は、当該情報等を厳重に管理しなければならない。 |
・日経クイック情報(電子メール)事件 東京地裁 平14.2.26
会社が、ある社員に誹謗中傷メールが送られてきた事件等について、調査するため、原告に対して、事情聴取を行ったことなどに対し、当該従業員が(1)名誉毀損、(2)調査の際入手したデータの返却、またそのデータを印刷し多数に閲覧したことに対するプライバシー侵害、などについて慰謝料など550万円の訴えを起こした。いずれも棄却された。東京高裁は、企業秩序の維持確保のため、企業は、違反行為の内容、様態、程度等を明らかにして、乱された企業秩序の回復に必要な業務上の指示、命令を発し、又は違反者に対し制裁として懲戒処分を行うため、事実関係の調査をすることができる、とした。また、私用メールについて、原告にはその疑いをぬぐい去ることができない状況であった とした上で、会社が行った調査は、業務に必要なデータファイルサーバー上のデータ調査で あり、ファイルの内容を含めて調査する必要が存する以上、その調査が社会的に許容しうる限界を超えて原告の精神的自由を侵害した違法な行為であるとはいえない、との判断を示した。
多くの会社の就業規則で、「会社の許可を受けずに他に雇用され、又は事業を行ってはならない。」とし、その違反を懲戒事由として定めています。しかし、勤務時間中はともかく、勤務時間外には、労働者は、本来、使用者の支配を離れ、自由であるとしてその効力が争われることがあります。これについて、裁判所は就業規則で二重就職・兼職を禁止することの合理性を一応認めているようです。
例えば、懲戒事由である「会社の承認を得ないで在籍のまま、他に雇われたとき」の規定は、労働者が就業時間外に適度な休養をとることが誠実な労務提供のための基礎的条件であり、又、兼業の内容によっては会社の経営秩序等を害することもあり得るから、合理性があるとしています(小川建設事件 東京地裁 昭57.11.19)。
就業規則には、兼業禁止規定を設け、許可制にするとよいでしょう。
休日をどう使うかは自由ですが、休日に労働することで、翌日の仕事に影響が出る場合や、同業他社などで企業秘密が漏れる可能性がある場合は許可しないなど、禁止の妥当性がある場合を列挙し、運用のルールを統一すべきでしょう。
就業規則規定例 第○条(二重就職の禁止) |
会社側としては、就業規則に退職後も「競合避止義務」があることを規定します。
さらに「誓約書」をとる必要があります。退職時にこの「誓約書」を取るのは困難なケースが多いので、このような「誓約書」は入社時にとるとよいでしょう。なお、特に必要のある者については、退職後の競業禁止の特約(競業避止特約)を退職時に結ぶのがよいでしょう。そして、誓約に違反したときは、損害賠償請求をすることがある旨を付記しておくことです。
就業規則規定例 第○条(退職後の競合避止義務) 2 前項の適用従業員とは、競業避止特約誓約書を締結する。 3 競合避止義務に反した場合は、退職金の一部を減額又は返還を求めることがある。 |
○セクハラ
会社の服務規定として記載する場合の例として、「従業員は、勤務場所等において、他の社員等(当社社員、当社に派遣され業務を行っている者、出向先・取引先の社員を含む)に対し性的な言動を行い、就業に影響を与えたり、秩序や風紀を乱すような性的言動を行ってはならない」ということを記載します。
さらに、「職務上の地位を利用して他の社員に交際を強要したり、性的関係を強要するなどの行為をしてはならない」ことも記載しましょう。
さらに、服務規定ではセクハラの具体例も記載すると防止効果も期待できます。下記のような記載例となります。
就業規則規定例 第○条(セクハラの防止) |
懲戒規定への記載について
労働基準法第89条により、「制裁」に関する内容については、定めをする場合は就業規則に記載しなければならない事項とされています。
常時10人以上の労働者を使用しない事業主の方も、服務規律等を定めた他の文書において当該懲戒規定を定めてください。
以下の記載例を参考にして、就業規則その他服務規律等を定めた文書を整備してください。就業規則については、管轄の労働基準監督署まで就業規則の変更届を行ってください。
○労働者の企業外での行動に関する規律
職場外でなされた行為であっても、企業の社会的評価の低下・毀損につながるおそれがあると客観的に認められる場合は、企業秩序の維持確保のためにこれを規制することが許される場合があるとされます。
私生活における犯罪行為については、企業の名誉を大いに毀損するものであるという考えから、職場外の職務遂行に関係の無いことであっても規律違反とする判決が多い。
・国鉄中国支社事件(最1小 昭49.2.28)
労働者の私生活上の犯罪行為が、「従業員の職場外でされた職務遂行に関係のない所為であっても、企業秩序に直接の関連を有するものもあり、それが規制の対象となりうることは明らかであるし、また、企業は社会において活動するものであるから、その社会的評価の低下毀損は、企業の円滑な運営に支障を来たすおそれなしとしないのであって、その評価の低下毀損につながるおそれがあると客観的に認められるがごとき所為については、職場外でされた職務遂行に関係ないものであっても、なお広く企業秩序の維持確保のために、これを規制の対象とすることが許される場合もあり得る」とされた。
工員たる労働者が終業後に飲酒・泥酔し他人の居宅に侵入して起訴され、罰金刑を受けたことをもって「会社の体面を著しく汚した」とまではいえず、懲戒解雇事由にはあたらないとされた。
○酒気帯びに関する規律
就業中の飲酒運転を禁止する定めですが、就業中については労働者の就業および職場に関する規律として規定を設けることが考えられます。そこで「その他酒気を帯びて就業するなど、従業員としてふさわしくない行為をしないこと」などのようにある程度包括的に定めてもよいですが、就業中の飲酒運転による社会的ダメージは相当大きいと考えれますから、より明確に「就業においては酒酔い運転及び酒気帯び運転をしないこと」とするとなおよいと考えれます。
しかし、業務中ならともかく、仕事から離れた私生活上で行った飲酒運転に関して、会社が服務規律を定め、これに違反した場合に懲戒をしたりできるのでしょうか。
就業中のことではありませんから、就業及び職場に関する規律として直接規定するわけにはいけません。しかし、従業員としての地位・身分に基づく規律として位置づけることは考えられます。最近の傾向としては、従業員の私生活上の飲酒運転であっても企業の信用を損なう恐れが非常に大きいと考え考えられますので、なるべく明確に具体的に定めておく必要があると思われます。そこで、例えば、「飲酒運転その他の行為によって会社の名誉または信用を傷つけてはならない。」などと規程することが考えられます。
(判例)
共栄タクシー事件 福井地裁決定(昭和40年6月22日)
国鉄静岡鉄道管理事件 静岡地方裁判所(昭和48年6月29日)
在沖縄米軍基地事件 福岡高等裁判所那覇支部(昭和53年4月13日)
日立電子事件 東京地方裁判所(昭和41年3月31日)
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