睡眠障害

 睡眠障害は、寝つきや睡眠中に何らかの異常のある状態をいいます。

 睡眠障害には、寝つけない、眠りが続かない、起きていられないなどの状態や、夜驚症や夢遊症など睡眠中の異常行動が含まれます。

 睡眠を妨げる要因は、不規則な就寝時間、寝る前の活動、ストレス、食事、病気、薬剤など、数多くあります。

 睡眠不足になると、日中に眠気、疲れ、いらだちが生じ、日常生活に支障が出ます。

 睡眠は生存と健康に欠かせませんが、睡眠がなぜ必要で正確にはどのような利点があるのか、まだ完全には解明されていません。必要な睡眠時間は人によって大きく異なりますが、通常は1日6~10時間です。ほとんどの人は夜に眠ります。しかし、勤務形態に合わせるため昼間に睡眠を取らなければならない人も多く、そのような状況が睡眠障害の原因となることもあります。

 どれだけ長く寝るか、そして目覚めた後にどれだけ休息できたと感じられるかは、その人の興奮度や苦悩、年齢、食事、薬剤の使用など、数多くの要因に影響されます。たとえば、使用すると眠気を催す薬剤もあれば、逆に眠りにくくなる薬もあります。カフェイン、強いスパイス、グルタミン酸ナトリウムなど、食品成分や添加物が睡眠を妨げることもあります。高齢者は就寝時刻も起床時刻も早く、睡眠習慣の乱れに弱い(時差ぼけを起こしやすい、交代勤務による障害が起きやすい など)という傾向があります。若い成人や小児と比べると、高齢者は睡眠から目覚めやすく、夜間に目覚める回数も増えます。高齢になると必要な睡眠時間が短くなるかどうかはよくわかっていません。おそらく、高齢者も若齢者と同じぐらい睡眠が必要ですが、若い頃のようにはよく眠れないため、日中に眠気を感じたり昼寝をしたりするものと考えられます。昼寝は夜間の睡眠不足を補うのに役立ちますが、一方で睡眠障害の一因になることもあります。

加齢による影響

 高齢者のおよそ半数は、自分で寝たいと思っているほど寝られないと言います。原因は若齢者と同じ場合もありますが、加齢に伴う変化が関与している場合もあります。

 高齢になって、参加する活動が少なくなり、身体的な活動量も減少すると、入眠しづらくなります。親戚の家や介護施設に移った人は、室温や周囲の音などを自分で調節できなくなる場合もあります。その結果生じる不快感は睡眠をさらに難しくする可能性があります。

 外出が減って屋外で過ごす時間が短くなると、日光に当たる時間が減少します。眼に光が当たることは、睡眠を促すホルモンであるメラトニンが体内で作られるために必要です。また、高齢になると、体で作られるメラトニンと成長ホルモン(深い睡眠を促す働きがあります)の量が減少します。

 通常、高齢者は就寝時刻も起床時刻も早い傾向があります。寝つくまでに要する時間が長くなり、深い眠り(日中の活動から体を回復させます)についている時間が短くなります。いったん眠りについても、簡単に目が覚めてしまいます。その結果、床に就いている時間が長くても、目覚めたときにあまりすっきり感じられないようになります。

 高齢者になると、睡眠の妨げとなる心身の病気も増える傾向があります。

 病気はさまざまな形で睡眠を妨げます。
・痛みを発生させる(関節炎など)
・呼吸を困難にする(心臓や肺の病気など)
・排尿の回数が増えて、夜に頻繁に起きなければならなくなる(前立腺肥大症、糖尿病、心不全など)

 高齢者に多くみられるうつ病も睡眠を妨げます。

 高齢者では薬剤を服用している人も多く、それが睡眠に影響を及ぼすことがあります。一部の薬剤(心不全に対する利尿薬など)は排尿の必要性を高め、その結果、睡眠を中断させます。日中に眠気をもたらす薬剤や刺激を与える薬剤もあり、そのいずれも夜間の睡眠を妨げる可能性があります。

 高齢者は夜に十分眠れないために、昼寝をする傾向があります。体が必要に応じて血圧を調節する能力は加齢とともに低下し、これも昼寝する傾向の一因となります。たとえば、たくさん食べた後は血圧が低下するため、より多くの血液を頭に送る必要があります。この調節能力は加齢に伴って低下するため、高齢者は眠気を感じます。

 一般的に、高齢者は若いときと同じぐらい睡眠が必要であり、よく眠れないことを老化の一部として受け入れてしまうのは良くありません。さまざまな方法で睡眠を改善できます。活動性を保つ、屋外で過ごす時間を確保する、眠りを妨げる食事や飲み物(カフェインを含むのもなど)を避ける、就寝時刻を一定にする、寝室を眠りやすい状態にする、などが役立ちます。

 睡眠は常に同じというわけではありません。睡眠には大きく分けて、急速眼球運動(レム)睡眠と、四つの段階からなる非急速眼球運動(ノンレム)睡眠という2種類があります。

 正常であれば、ノンレム睡眠の4つの段階の後に短時間のレム睡眠が続くというサイクルが90~120分ごとに(一晩に数回)繰り返されます。

ノンレム睡眠:

 成人では睡眠時間の約75~80%をノンレム睡眠が占めています。睡眠は、第1段階(最も眠りが浅く、簡単に目覚める段階)から、第4段階(最も眠りが深く、起こそうとしてもなかなか目覚めない段階)へと進んでいきます。第4段階では、血圧が最も低くなり、心拍と呼吸も最も遅くなります。

レム睡眠:

 脳の電気的活動が非常に活発になり、覚醒時といくぶん似た様相を呈します。眼球が高速で動きますが、筋肉は麻痺して意識的な運動ができなくなります。ただし、一部の筋肉な無意識にピクピクと動くこともあります。呼吸は速く深くなります。

 鮮明な夢を見るのは、ほとんどがこのレム睡眠の最中です。寝言、夜驚症、夢遊症の大半は第3段階と第4段階で起こります。

睡眠サイクルの段階

 正常な睡眠では、各段階を明確に区分できる睡眠サイクルが90~120分ごとに繰り返されます。

 第1段階の浅い眠りは比較的短時間で終わり、時間が最も長いのは次の第2段階です。深い睡眠(第3段階と第4段階)は主に夜の前半にみられ、時間が進むにつれてレム睡眠の時間が長くなります。夜間にはごく短時間の覚醒が何度かありますが、通常、そのほとんどは本人が気付かないうちに生じています。

 

症状

 睡眠障害で最もよくみられる症状は、不眠症と日中の過度の眠気です。不眠症の人は、寝つきが悪く、眠りが続かず、目覚めたときにすっきりした感じがありません。日中に過度な眠気を感じる人は、通常なら起きている時間帯に眠りに落ちてしまうことが多くなります。

 

科学的に解明されてきた睡眠障害

 どのタイプの睡眠障害であっても、検査、診断、治療は専門医のいる施設で行われます。睡眠検査室での検査が必要となる場合もあります。

 以下のような症状がみられる場合に、専門医への紹介が考慮されます。
 ・日中に過度の眠気がある
 ・長期間の(慢性の)不眠症
 ・睡眠補助薬を服用しないと眠れない
 ・睡眠中に呼吸が止まる
 ・睡眠中に重度のいびきや息苦しさがある
 ・悪夢を見る
 ・夢遊症、寝言、または睡眠中に暴力的な動作がある
 ・睡眠中に脚や腕がピクピク動く
 ・入眠直前や睡眠中に脚や腕を動かしたい強い衝動に駆られる

 睡眠障害の専門医が初診時に検討する項目には、以下のようなものがあります。
 ・睡眠日誌などの睡眠歴
 ・全般的な病歴

 

身体診察

 初診の後に、血液検査や睡眠検査室での検査などをさらに行うこともあります。睡眠検査室で行われる睡眠検査には、終夜のポリソムノグラフィ検査と反復睡眠潜時検査があります。

 終夜のポリソムノグラフィ検査では、頭皮、顔面、顎に電極を貼り付けて睡眠検査室で一晩眠ります。この情報から、その人の睡眠段階の特徴が明らかになります。心拍数や筋肉の活動を記録するため、体のほかの部分にも電極がつけられます。呼吸パターンなどの身体機能についてもモニタリングされ記録されます。ポリソムノグラフィ検査では、睡眠中の呼吸障害、てんかん、異常な運動や行動(周期性四肢運動障害や睡眠時随伴症)を検出できます。

 反復睡眠潜時検査では、患者は日中を睡眠検査室で過ごし、2時間おきに4~5回の昼寝をします。この検査は、日中の眠気を検出してナルコレプシーを診断するために行われます。

 睡眠障害には、睡眠中に四肢の不随意運動やその他の異常な行動(悪夢など)が起こるものもあります。

 このほかの症状として、記憶、協調運動、感情に問題が生じる場合もあります。こうした症状があると、学校での成績や職場での業務遂行能力が低下することがあります。また、交通事故を起こすリスクや心臓疾患にかかるリスクが高くなります。

 睡眠障害は、大きく4つに分けられます。

 まず、睡眠異常です。これは睡眠自体が病気であるものです。代表的なものに「不眠症」「睡眠時無呼吸症候群」などがあげられます。

 次が睡眠時随伴症です。これは睡眠中にみられる異常な行動で、代表例は夜尿症や周期性四肢運動などです。

 第3が内科、精神科的睡眠障害です。これは精神病や不安障害、うつ病などによる不眠や仮眠などといった、睡眠障害となってあらわれるものです。

 そのほかとして、分類が性格になされない短時間睡眠者や長時間睡眠者などです。

 睡眠について スピリチュアルな観点から

診断

 睡眠障害の診断は通常、現在の症状を含む病歴と身体診察の結果に基づいて行われます。医師は、患者に症状を詳しく尋ね、場合によっては睡眠日誌をつけるように指示します。

 睡眠日誌には以下のような情報を記録します。
 ・就寝時刻
 ・起床時刻
 ・夜間に目が覚めた回数
 ・目が覚めたとき、どのくらい長く起きていたか
 ・寝る前に何をしていたか
 ・翌日の状態(眠かったどうかなど)
 ・昼寝の有無、昼寝をした時刻と長さ

 診断が確定しない場合やある種の睡眠障害が疑われる場合には、睡眠検査室での検査が勧められることがあります。睡眠検査室では、ポリソムノグラフィ検査を行うとともに、睡眠中に異常な動きがないかを一晩かけて観察します。ビデオ録画が行われる場合もあります。

 ポリソムノグラフィ検査には以下のような項目が含まれます。
 ・脳波検査(EEG:脳の電気的活動を記録する)
 ・心電図検査(ECG:心拍リズムと心拍数を記録する)
 ・呼吸機能の記録とモニタリング
 ・眼電図検査(REM睡眠時の眼球運動を記録する)
 ・筋電図検査(顔面と脚の筋肉の活動を記録する)
 ・酸素飽和度測定
  (痛みを起こさないクリップを耳や指に装着して血液中の酸素濃度を記録する)

 睡眠障害には様々な病気が含まれております。以下のように大まかに分けられます。

1)眠り始めると呼吸の異常が生じる睡眠関連呼吸障害

2)睡眠中や睡眠の前後に不随意運動(身体の一部が勝手に動くこと)や異常な感覚が出現する睡眠関連運動障害

3)夜に十分な睡眠をとっているのに日中に居眠りを繰り返す中枢性過眠症

4)睡眠そのものには異常がないのに望ましい時間帯に眠れず、目覚めていなくてはいけない時間帯に眠ってしまう概日リズム睡眠・覚醒障害

5)眠りながら異常な行動をしてしまう睡眠時随伴症

6)不眠(眠ろうとしても眠れない、あるいは、夜の睡眠で疲れがとれない)のうち1〜5の睡眠障害によるものではない不眠症

 睡眠関連呼吸障害の一つである閉塞性睡眠時無呼吸症候群は比較的ありふれた病気ですが、生活習慣病を悪化させ心筋梗塞や脳梗塞を引き起こしやすく、注意すべき睡眠障害です。また、不眠を引き起こす身体の病気、こころの病気、睡眠障害はたくさんあります。

 これらの多くは睡眠薬では効果がなく、なかには睡眠薬でかえって悪化したり、思わぬ副作用が出現する病気があります。

 原因は様々ですので、診断に必要な検査、治療法もそれぞれの病気によって異なります。睡眠障害の知識がある医師による問診と診察だけで十分診断可能な病気もありますし、短期間の検査入院をして専門的な検査を受けないと診断できない病気もあります。治療は、病気により、人工呼吸器、手術、マウスピース、薬物療法、生活改善など異なります。呼吸器科、耳鼻咽喉科、神経内科などの専門的治療が必要な場合があります。睡眠障害を専門とする医師は少ないので、まずはかかりつけの医師に相談し、専門医療機関の紹介など、どのような方法が適切か判断してもらってください。

 

閉塞性睡眠時無呼吸症候群

 閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、眠り始めると呼吸運動(胸や腹の動き)は続いているのに、喉が詰まり呼吸が止まってしまう病気です。空気の通り道(気道といいます)は喉のあたりでは筋肉だけで支えられており、眠り始めるとこの筋肉の「張り」が弱くなります。太っている、元々した顎が小さいなど、気道が狭い人では、眠り始めると気道の筋肉の部分がつぶれてしまいます。気道がつぶれて呼吸が止まったままだと死んでしまうので、目が覚め、気道が開いて呼吸できるようになりますが、また、眠り出すと呼吸が止まってしまいます。

 閉塞性睡眠時無呼吸症候群では、「眠り出す → 呼吸が止まる → 目が覚める → 呼吸が再開 → 眠り出す」というサイクルを一晩中繰り返します。日本人成人男性の4人に1人に無呼吸が見られ、治療が必要な中等症〜重症の方は2~3%もいます。女性ホルモンは気道がつぶれることを防止する作用があるので、女性の方ではもっと少ないですが、閉経後には男性と同様の頻度となります。軽症のうちは夜何度も目が覚めるため不眠を自覚しますが、睡眠薬は無呼吸を悪化させてしまいます。重症になってくると1時間当たり40回以上呼吸がとまる、あるいは換気不十分となりますが、自分では気がつきません。深い睡眠が全くとれず重度の睡眠不足となり、日中の居眠りや倦怠、眠気による交通事故や転落事故が増えます。毎晩、長時間にわたって血液中の酸素濃度が低下するため、脳に酸素を供給するために心臓などの循環器系に負担がかかり、高血圧、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞を起こしやすくなります。重度の睡眠不足や心臓への負担によって、ストレスホルモンが増え、糖尿病、脂質異常症、メタボリックシンドロームが悪化します。重症の閉塞性睡眠時無呼吸症候群を放置すると、12年間で17~18%の方が心筋梗塞で死亡し、18年間で40%以上の方が様々な原因で死亡することが報告されており、非常に危険な病気といえます。  閉塞性睡眠時無呼吸症候群による日中の倦怠、眠気などをこころの病気の症状と考えて、精神科に通院している場合があります。家族から、激しいいびきや、睡眠中の呼吸停止を指摘された場合には、すぐに呼吸器科を受診してください。 残念ながら閉塞性睡眠時無呼吸症候群に有効な薬はなく、経鼻持続陽圧呼吸という人工呼吸器や、気道を広げるためのマウスピースの装着を、毎晩、長年にわたって続ける必要があります。扁桃腺や舌が大きい場合には手術による治療もあります。

レストレスレッグス症候群

 レストレスレッグス症候群(別名:むずむず脚症候群、下肢静止不能症候群)は、夜の時間帯に、脚や腕に異常感覚と不随意運動が出現します。じっとしていると、脚や腕を動かしたいという強い衝動と、何ともいえない不快な異常感覚が脚や腕に出現してきます。この異常感覚は人によって異なり、「むずむず」「びりびり」「火照る」「だるい」などと表現されます。強い衝動と異常感覚は、脚や腕を動かすと軽くなりますが、眠るためにじっとしているとまた強まってきます。このため、眠くてたまらないのに、布団の中でじっとしていることができず眠れなくなります。寝付けたとしても、途中で目覚めた際に同様の状態になります。この衝動と異常感覚は、夕方頃からじっとしていると自覚されるようになり、明け方3時頃まで続きます。さらに、脚や腕がぴくんぴくんと勝手に繰り返し動く不随意運動(周期性四肢運動)も出現し、睡眠を妨害します。この結果、非常に強い不眠、睡眠不足による日中の眠気、倦怠、意欲低下などの影響が見られます。日本人では1~3%の方で週1晩以上この症状が出現するといわれています。じっとしていられず眠れない病気ですので、睡眠薬は効きません。かえって転倒やもうろう状態などを引き起こします。パーキンソン病の治療に用いるドパミンアゴニストという薬剤をごく少量使用します。ただし、量を増やしていくと却って症状が悪化することがありますので、極力少ない量にとどめることが必要です。  鉄の欠乏、人工透析など他の病気や状態によって起こることもあります。体内の鉄の貯蔵量を反映するフェリチンの値を血液検査で確認して、これが低い場合は鉄補充療法を行うことがあります。

居眠り

 昼間に居眠りが多いとナルコレプシーなどの過眠症が疑われて睡眠障害専門医療機関を紹介される場合があります。

 居眠りは様々な原因で起こります。一番多いのが睡眠不足による居眠りです。日本人成人での調査では、眠るために布団の中で過ごす長さ(習慣的床上時間)が6時間を切ると、半分以上の人が居眠りをするようになります。「睡眠は短い方が格好いい」「睡眠が短い方が有能」というイメージがあるようですが、実際には睡眠が足りなくなると、学業成績や仕事の能率が落ち、ミスが増えます。新しいことを覚えたり、技能を身につけるためにも十分な睡眠が必要です。必要な睡眠時間には個人差がありますが、7~7.5時間確保しましょう。休日に目覚まし時計をセットしなければ午前10時過ぎまで眠ってしまうようであれば、慢性の睡眠不足があることは確実です。  睡眠を妨害する病気(咳、腰痛、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、レストレスレッグス症候群など)も睡眠不足による居眠りを引き起こします。また、様々な病気の治療に用いられる薬の中には強い眠気を引き起こすものがあります。 ナルコレプシーなどの中枢性過眠症では、覚醒を維持するために精神刺激薬という薬の服用が必要です。

嗜好品や生活習慣による不眠

 よく見られる不眠の原因で、ご本人が自覚しにくいのが嗜好品や生活習慣による不眠です。

 エタノール(酒類)、ニコチン(タバコ)、カフェインの3大嗜好品はいずれも不眠の原因です。酒類は一旦強い眠気が出現するので、睡眠薬代わりに用いる人がいますが、眠気は2~4時間程度しか持続せず、その後は逆に覚醒作用が出現します。夜中や明け方に目が覚めやすくなり、一晩全体の睡眠の量、質ともに悪化します。寝酒を続けると、だんだん効かなくなり、同じ量では寝付けなくなり量が増えます。この段階で寝酒をやめると、寝酒を始める前よりもひどい不眠が生じます。睡眠薬代わりの寝酒はやめるべきです。ニコチンとカフェインには覚醒作用があり、摂取後4~5時間持続します。カフェインはコーヒー・紅茶だけでなく、緑茶、ほうじ茶、ウーロン茶、コーラ、エナジードリンク、チョコレートなどにも含まれていますので、注意が必要です。毎晩、大体同じ時間帯に眠くなるのは体内時計の働きですが、夜遅くなってからの激しい運動、パソコン作業・ネットでのチャットなどによる精神的興奮は、眠気を吹き飛ばしてしまいます。このような原因による不眠は若い人から中年で多くみられます。夜遅くなったら激しい運動、パソコン作業、ネットでのチャットなどは避けましょう。健康な人でも、必要な睡眠時間を大幅に上回って眠ろうとすると、寝床内で目覚めて過ごす時間が増え、強い「不眠」を自覚します。既に十分眠っていますので、睡眠薬は効きません。高齢者でこのタイプの不眠がよく見られます。「自分は不眠だから」と長時間寝床内で過ごすことはやめましょう。昼寝や仮眠なども夜の睡眠の必要性を減らし、不眠を引き起こします。必要な正味の睡眠時間は年齢とともに変わります。小学生以下は9時間以上、中学生から20歳頃までに徐々に減少して、20歳~50歳代で7~7.5時間です。60歳以降正味の睡眠時間は少しずつ減っていきますが、トイレ覚醒など中途覚醒が増えるので、睡眠に当てる長さは7~7.5時間程度と考えてよいでしょう。

不眠症 に続く