器質性精神障害

 脳そのものの器質的病変により、または脳以外の身体疾患のために、脳が二次的に障害を受けて何らかの精神障害を起こすことがあります。これを器質性精神障害といいます。身体疾患に基づく精神障害を症状性精神障害として分けることもあります。

 器質性精神障害の主な原因として、基本的には脳に障害をもたらす疾患すべてが原因となりえます。

症状
 主な症状は、認知症意識障害です。
 認知症とは、正常に発達した知的能力が、脳の器質変化によって低下した状態で、記憶や知能の障害に加え、生まれもった性格が変わってくる人格変化がみられます。認知症に伴って、情動の不安定さやうつ状態など感情の変化、気力や意欲がなくなってくる発動性の低下、幻覚や妄想などの精神症状もしばしばみられるようになります。

 意識障害とは、昏睡と呼ばれる、どんな強い刺激を与えても深く眠ったままで目を覚まさない重度のものから、一見意識清明なように見えるものの、注意力が散漫で、放っておくとぼんやりとして、うとうとするような軽度のレベルまでいろいろな段階があります。
 このとき、幻覚(比較的幻視が多い)や妄想が生じたり、言動や行動がまとまらず興奮することもしばしばみられ、意識障害ではなく、その他の何らかの精神障害と誤って判断されることもあるので、注意が必要です。

治療の方法
 治療の基本は、原因となる脳器質疾患、身体疾患を治療することです。頭部外傷や脳腫瘍など外科的処置が必要になるものや、脳炎膠原病など内科的治療を行うもの、アルツハイマー型認知症のように、薬を使いながら生活環境を整えリハビリを行うものなど、原因疾患が何であるかによって、治療は変わってきます。
 精神症状が激しい場合には、向精神薬を用いながら治療を行います。

 

 症状性を含む器質性精神障害の程度については、検査数値等が用いることができるわけではない為、診断書の日常生活能力の判定が大きな意味を持ちます。

 器質性精神障害とは、先天性のものでなく、高次脳機能障害アルツハイマー型認知症などの後発性のものとします。別傷病とされる可能性があるのは、例えば、うつ病で治療中の方が、脳出血脳梗塞などの脳卒中を発症し、高次脳機能障害の記憶障害が生じたようなケースです。

 器質性精神障害の後に、統合失調症気分(感情)障害てんかんまたは発達障害と診断された場合には、これら後発傷病の原因が器質性精神障害によるとされたとき、または、器質性精神障害の病態として後発傷病の病態を示しているとされたときには、同一傷病となります。ただし、器質性精神障害の後に他の精神障害が発症したケースであっても、診断書作成医が別傷病と判断し病名が併記された場合には、認定上も別傷病と認定される可能性があります。つまり、その病態または前発傷病の初診から後発傷病の診断までの期間などにより、同一傷病か、別傷病かが認定されるものと考えられます。

 器質性精神障害は、アルコール依存によるもの、頭部外傷によるものなど、原因が明確なものをいいます

 アルコール、薬物等の精神作用物質の使用により生じる精神障害について認定するものであって、精神病性障害を示さない急性中毒及び明らかな身体依存の見られないものは、認定の対象とはなりません。法で濫用が禁止された薬物を故意に使用した結果生じた精神障害は、認定の対象とはならないのです。

 脳の器質障害については、神経障害と精神障害を区別して考えることは、その多岐にわたる臨床症状から不能であり、原則としてそれらの諸症状を総合し、全体像から総合的に判断して認定します。

 症状性を含む器質性精神障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定します。

 癲癇発作については、好転寒剤の服用によって抑制される場合にあっては、原則認定の対象にはなりません。

 高次脳機能障害による精神の障害は、代償機能やリハビリテーションにより改善する可能性があります。障害認定日は1年6ヵ月を経過した日です。

 精神神経症状及び認知障害については「症状性を含む器質性精神障害」に準じて認定します。

 高次脳機能障害とは、脳損傷に起因する認知障害全般を指し、日常生活又は社会 生活に制約があるものが認定の対象となります。その障害の主な症状としては、失語、失行、失認のほか記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などがあります。

 高次脳機能障害により失語障害が生じる場合は、失語障害を「音声又は言語機能の障害」の認定要領により認定し、精神の障害と併合認定が考えられます。精神の障害用」の診断書のほかに「言語機能の障害用」の診断書の用意が必要になります。

 脳血管障害により高次脳機能障害と手足の麻痺が後遺症として残った場合は、それらの障害の全てを評価して障害認定をします。

 交通事故等による頭部外傷により、四肢の麻療に加えて、「高次脳機能障害」など器質性精神障害が併存する場合は、それらの障害も認定の対象となり、併合認定により障害等級が繰り上がる可能性があります。

 

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