呼吸不全
肺の病気が進行すると肺本来の働き、つまり大気中から酸素を体内に取り込み、体内で産生した二酸化炭素を大気中へ放出することができなくなります。その結果、血液中の酸素濃度が低下する低酸素血症や、二酸化炭素濃度が増加する高炭酸ガス血症を生じてしまいます。通常、動脈という体の各臓器に酸素と栄養を運ぶ血管の中にある血液には酸素分圧100mmHg程度の酸素が存在します。酸素のほとんどは赤血球という細胞の中にあるヘモグロビンに結合しています。酸素分圧が60mmHg未満になるとこのヘモグロビンに結合することが難しくなるので、十分に酸素を運ぶことができなくなります。定義上、動脈血中の酸素分圧が60mmHg未満になることを呼吸不全と言います。二酸化炭素の増加を伴わない場合をI型呼吸不全、伴うものをⅡ型呼吸不全と呼びます。このような呼吸不全が1か月以上続く状態を慢性呼吸不全といいます。慢性呼吸不全を引き起こす肺の病気には慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺結核後遺症、間質性肺炎、肺がんなどがあります。
慢性呼吸不全の治療は大きく分けて、
1. 低酸素血症に対する補助療法
2. 原因疾患に対する治療
3. 呼吸リハビリテーション
があります。
慢性呼吸不全の治療に、在宅酸素療法が使われます。 在宅酸素療法とは家庭で酸素吸入を行うことで血中の酸素濃度を高めます。酸素吸入に使用する装置は主に酸素濃縮装置です。
肺疾患に罹患し手術を受け、その後呼吸不全に至ったときは、相当因果関係「あり」として、肺疾患に罹患し手術を受けた日が初診日となります。
呼吸不全の認定は、動脈血ガス分析値及び予測肺活量1秒率の検査数値の重症度と日常生活の状況を5段階評価した「一般状態区分」により総合的に認定します。
慢性肺疾患により非代償性の肺性心を生じているものは3級と認定します。
治療及び病状の経過、検査成績、具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定します。
常時(24時間)の在宅酸素療法を施工中のもので、かつ、軽易な労働以外の労働に常に支障がある程度のものは3級と認定されます。臨床症状、検査成績及び具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定されることがあります。
障害の程度を認定する時期は、在宅酸素療法を開始した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く)とします。
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