企画業務型裁量労働制

 裁量労働制には専門業務型裁量労働制だけでなく、労使委員会の決議による裁量労働制企画業務型裁量労働制)もあります。企画業務型裁量労働制とは、業務運営上の重要な決定が行われる事業場で、労使委員会が設置され、委員全員が決議をし、かつ、使用者がこの決議を所轄労働基準監督署長に届け出た場合、決議で定められた範囲の労働者を、業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に使用者が具体的な指示をしない業務(対象業務)に就かせたときは、決議で定められた時間労働したものとみなすというものです。

 賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会(使用者及び当該事業場の労働者を代表する者を構成員とするものに限る。)が設置された事業場において、当該委員会ががその委員の5分の4以上の多数による議決により次に掲げる事項に関する決議を、かつ、使用者が、厚生労働省令で定めるところにより当該決議を行政官庁に届け出た場合において、第2号に掲げる労働者の範囲に属する労働者を当該事業場における第1号に掲げる業務に就かせたときは、当該労働者は、厚生労働省令で定めるところにより、第3号に掲げる時間労働したものとみなす。

(1) 事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であって、当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務 (対象業務

(2) 対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者であって、当該対象業務に就かせたときは当該決議で定める時間労働したものとみなされることとなるものの範囲 (対象労働者の範囲Fotolia_51127082_XS

 対象労働者は、対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者でなければなりません。  大学の学部を卒業した労働者であって全く職務経験のない者は、客観的にみて対象労働者に該当し得ず、少なくとも3年ないし5年程度の職務経験を経た上で、対象労働者の判断の対象となり得ます。

(3) 対象業務に従事する前号に掲げる労働者の範囲に属する労働者の労働時間として算定される時間 (いわゆるみなし労働時間

(4) 対象業務に従事する第2号に掲げる労働者の範囲に属する労働者の労働時間の状況に応じた当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。

(5) 対象業務に従事する第2号に掲げる労働者の範囲に属する労働者からの苦情の処理に関する措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。

(6) 使用者は、この項の規定により第2号に掲げる労働者の範囲に属する労働者を対象業務に就かせたときは第3号に掲げる時間労働したものとみなすことについて当該労働者の同意を得なければならないこと及び当該同意をしなかった当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと。

 対象労働者の同意をしなかった者に対する不利益な取扱いとは、不同意を理由とする解雇、降格、賞与のカット、転勤などがあります。なお、労働者の同意は、労働者毎に、かつ、決議の有効期間(1年以内の期間)ごとに得られるものであることが必要です。

(7) 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項

 当該委員会の委員の半数については、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者に厚生労働省令で定めるところにより任期を定めて指名されていること。

 労使委員会の委員の半数は、過半数労働組合又は労働者の過半数代表者に任期を定めて指名された者でなければなりません。

 法第41条に規定する監督又は管理の地位にある者以外の者から指名しなければなりません。 

 当該委員会の議事について、厚生労働省令で定めるところにより、議事録が作成され、かつ、保存されるとともに、当該事業場の労働者に対する周知が図られていること。 議事録は開催の日から3年間保存しなければなりません。

 ほかに、労使委員会の運営に必要な事項に関する規定(いわゆる運営規定)が定められていること。

 第1項の規定による届出をした使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、定期的に同項第4号に規定する措置の実施状況を行政官庁に報告しなければならなりません。

対象事業場(平成11年1月29日 基発45号)

 事業運営上の重要な決定が行われる事業場とは、企業の事業運営に関して重要な決定が行われる事業場であること。

 具体的には、本社、本店のほかに、常駐する役員お統括管理の下に事業運営上の重要な決定の一部を行う権限を分掌する地域本社、地域を統括する支社・支店などをいうものであること。

 

企画業務型裁量労働制の該当業務

 平成11年12月27日、労働省告示第149号として公布された「新・裁量労働制(企画業務型) 従事労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針」の中に「対象業務となりうる業務の例」が示されました。

 

1 対象業務となりうる業務の例

(1) 経営企画を担当する部署における業務のうち、経営状態・経営環境等について調査及び分析を行い、経営に関する計画を策定する業務
(2) 経営企画を担当する部署における業務のうち、現行の社内組織の問題点やその在り方等について調査及び分析を行い、新たな社内組織を編成する業務
(3) 人事・労務を担当する部署における業務のうち、現行の人事制度の問題点やその在り方等について調査及び分析を行い、新たな人事制度を策定する業務
(4) 人事・労務を担当する部署における業務のうち、業務の内容やその遂行のために必要とされる能力等について調査及び分析を行い、社員の教育・研修計画を策定する業務
(5) 財務・経理を担当する部署における業務のうち、財務状態等について調査及び分析を行い、財務に関する計画を策定する業務
(6) 広報を担当する部署における業務のうち、効果的な広報手法等について調査及び分析を行い、広報を企画・立案する業務
(7) 営業に関する企画を担当する部署における業務のうち、営業成績や営業活動上の問題点等について調査及び分析を行い、企業全体の営業方針や取り扱う商品ごとの全社的な営業に関する計画を策定する業務
(8) 生産に関する企画を担当する部署における業務のうち、生産効率や原材料等に係る市場の動向等について調査及び分析を行い、原材料等の調達計画も含め全社的な生産計画を策定する業務

 

2 対象業務となり得ない業務の例

(1) 経営に関する会議の庶務等の業務
(2) 人事記録の作成及び保管、給与の計算及び支払、各種保険の加入及び脱退、採用・研修 の実施等の業務  
(3) 金銭の出納、財務諸表・会計帳簿の作成及び保管、租税の申告及び納付、予算・決算に係る計算等の業務  
(4) 広報誌の原稿の校正等の業務  
(5) 個別の営業活動の業務  
(6) 個別の製造等の作業、物品の買い付け等の業務

 

 企画業務型裁量労働制は、労使委員会が設置され、委員全員が決議をしなければなりません。

決議の内容は次の事項です。 (労使委員会の決議内容)

(1) 事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査、分析の業務で、業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に使用者が具体的な指示をしない業務(対象業務)を決める。
(2) 対象業務に就かせたときは、決議で定める時間労働したものとみなされることとなるものの範囲(対象労働者の範囲)を決める。
(3) 労働時間と算定される時間(みなし労働時間)を決める。
(4) 対象業務に従事する労働者の健康及び福祉を確保するための措置を使用者が講ずること。
(5) 対象業務に従事する労働者からの苦情の処理に関する措置を使用者が講ずること。
(6) 使用者は、対象労働者の同意を得ること、及び同意しなかった労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならないこと。
(7) 上記の他厚生労働省令で定める事項

 使用者は、労使委員会の決議を、所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません。

 企画業務型裁量労働制の決議は、届け出ることが効力発生の要件となっていますので、届出をしない限り、実施することはできません。

 制度導入には、当該業務遂行の手段および時間配分の決定等に関し具体的な指示をしない(大幅に裁量権を与える)ことが前提です。

 労働時間は、始業・就業時間の定めに拘束されず、その算定は労使で定めます。

 

 企画業務型裁量労働制導入では、この他、
 (1) 対象業務と対象労働者
 (2) 健康・福祉確保のための措置
 (3) 苦情処理に関する措置
 (4) 労働者の同意と不同意者の不利益扱いの禁止
などを労使委員会で全員の合意決議し届け出ることが必要です。

 

 みなし時間においても、休憩時間深夜業休日に関する労働基準法の規定は適用され、割増賃金支払のためにも時間管理は不可欠です。

 

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