労働時間

 労働基準法上の労働時間とは、「労働者が使用者に労務を提供し使用者の現実かつ直接的な指揮命令に服している時間」をいいます。就業規則に規定されている拘束時間(始業から終業までの時間)から休憩時間除いた実働時間のことです。

 実際に労働に従事する時間だけでなく、使用者の指揮命令に服する時間は、すべて労働時間として取り扱うことになっています。

 

 労働時間は次の3つに分かれます。  

(1) 実作業時間    

 現実の指揮命令下に実際に作業に従事している時間  

(2) 手待ち時間    

 現実の指揮命令下におかれ、就労のために待機している時間
   (材料待ちのための待機の時間など)
 労務の提供をしていませんが、あくまで次の仕事を待機している状態にありますので、広い意味で使用者の指揮命令下におかれ、待機時間を完全に自由利用することはできません。手待ち時間は労働時間に含まれるものと解されています。

(3) 準備・整理期間

 作業に必要不可欠な準備及び整理時間で、かつ使用者の指揮命令下にある時間

労働時間の起算点・終了点

 

法定労働時間と所定労働時間

1.「法定」労働時間

 法律で労働時間の限度として定められている時間をいいます

 休憩時間を除いて1週間について40時間、1日について8時間が原則です。

 1年間のどの週でも40時間の意味です。平均で40時間であっても、ある週に40時間を超えていれば労働基準法に違反します。

 1週間とは、日曜日から土曜日までとか、月曜日から日曜日までなどと、就業規則その他で定めがあれば、その定めによるところになりますが、何らの定めがない場合は、日曜日から土曜日までが1週間となります。

 1日とは、原則として午前零時から午後12時までの暦日を意味しますが、継続する勤務がたとえ2日にわたる場合でも一勤務として扱います。Fotolia_66318669_XS

 1日の労働時間が引き続き午後12時以降に及ぶ場合でも、それらの労働時間は前日の労働として扱われ、通算して8時間を超える場合は割増賃金を支払わなければなりません。

 1日8時間、かつ週40時間というのは、所定の労働時間を定める場合の上限です。これを上回る時間を定めることはできません。

 また、この時間を超えて仕事をさせる場合は、時間外労働として、割増賃金を支払わなければなりません。

 1週間40時間、1日8時間を超えて労働させることはできませんが、労働基準法では週休2日制実施を規定してはいません。例えば、月曜日~金曜日を各日7時間、土曜日を5時間でもよいわけです

 1日の労働時間が8時間である場合、週40時間以内とするためには、1週間の労働日は5日となります。(8時間 × 5日 = 40時間で上限となります)。これは週休2日にすべきことをいっています。しかし、労働基準法上では週休2日制にすることは要求されていません。あくまでも週40時間以下、1日8時間以下を要求しているに過ぎません。従って、月曜日から金曜日までの労働時間を1日7時間、土曜日を5時間としても合計40時間ですので、違反ではありません。

  週休2日制(例えば土日が休日)で日曜日が法定休日であるとき、土曜日の労働は日曜日が休日で法定基準を満たすため、休日労働にはなりません。

 

2.「所定」労働時間

  会社では、就業規則で会社の労働時間を定めています。労働基準法で定められた労働時間を「法定労働時間」というのに対し、指揮命令に基づく実作業の開始から終了までを労働時間として把握する「実労働時間主義」(労働基準法の原則)を採用します。会社と労働者が同意の下に契約した労働時間という意味で「所定労働時間」と言っています。

 会社は、労働基準法に反しない限り自由に労働時間を定めることができるため、大半の就業規則では、労働時間を、労働契約上労務提供を約束した契約労働時間をもって取り扱っています。

 労働時間、休憩及び休日に関しては、各社の業種や繁閑の有無など、会社の実情を考慮して、それぞれの会社の実態に合わせて規定する必要があります。

 マニュアル本やインターネットの見本を見て、労働時間に関する規定を作るべきではありません。

労働基準法第32条(労働時間)
 使用者は、労働者に休憩時間を除き1週間について40時間を超えて労働させてはならない。
2 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。

 週40時間労働制は、毎週の所定労働時間を40時間とする方法以外に、変形労働時間制の導入によっても達成することができます。法定労働時間が週40時間とされている事業所においては、これらの制度も有効に活用し、週40時間労働制を達成しなければなりません。

 営業の労働時間については、みなし労働時間制を採用したり、専門職には裁量労働制を採用するなど、会社独自の労働時間制度を作ることが肝要です。

 

常時10人未満の労働者を使用する事業所

 特例措置として、常時10人未満の労働者を使用する次の事業については、1週間に44時間、1日について8時間まで労働させることができます。
 ① 商業
 ② 映画・演劇業(映画の製作の事業を除く)
 ③ 保健衛生業
 ④ 接客娯楽業

ここでの「常時10人未満の労働者」について
 週1日~2日勤務のパートタイム労働者であっても、継続的に勤務している者は労働者数に入れて計算します。

 派遣労働者は、派遣先事業場の労働者数に算入します。 

これは「労働時間」か?

所定労働日数・所定労働時間

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準

 

(判例)

大林ファシリティーズ事件 最高裁第2小(平成19.10.19)
近若石油道路交通法・労働基準法事件 最高裁第1小(平成21.7.16)
三栄珈琲事件 大阪地方裁判所(平成3年2月26日)

 

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