事業場外みなし労働時間制

  労働の一部が事業場外で行われ、残りが事業場内で行われる場合は、事業場外での労働についてのみ、みなし計算がなされます(昭63.3.14基発150号)。

 例えば、所定労働時間が8時間(午前4時間、午後4時間)の場合、午前中4時間は事業場で労働し、午後は事業場外で労働したが、事業場外での労働時間を算定することが難しいときは、午前中の4時間と合わせて所定労働時間8時間労働したものとみなします

 通常必要とされる時間とは、通常の状態でその業務を遂行するために客観的に必要とされる時間をいい、具体的な判断は、各事業場の実態に応じて行われます。

 従って、労使協定で、10時間と定めた場合は、業務を遂行するために実際に労働した時間が10時間より少なくても、多くても、その日は10時間労働したものとみなされます

 所定労働時間を超える場合は、労使協定書を労働基準監督署に届け出る必要があります。Fotolia_74419915_XS

 事業場外労働に関するみなし労働時間制の対象となるのは、事業場外で業務に従事し、かつ、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難な業務です。

 事業場外での労働であっても、使用者の具体的な指揮監督が及んでいる場合(例えば、労働者が携帯電話を持ち、随時使用者と連絡をとり、指示を受けつつ労働をするような場合など)には、労働時間の算定が可能であるため、みなし労働時間制の適用はありません。

 

事業場外労働の範囲(昭和63年1月1日基発1号)

 事業場外労働に関するみなし労働時間制の対象となるのは、事業場外で業務に従事し、かつ、使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間を算定することが困難な業務であること。したがって、次の場合のように、事業場外で業務に従事する場合にあっても、使用者の具体的な指揮監督が及んでいる場合については、労働時間の算定が可能であるので、みなし労働時間制の適用はないものであること。  
(1) 何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合
(2) 事業場外で業務に従事するが、無線やポケットベル(現代では携帯です)等によって随時使用者の指示を受けながら労働している場合
(3) 事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けたのち、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その後事業場にもどる場合
  

 事業場内では労働時間を把握する必要があります。事業場外みなし時間と合わせた労働時間が法定労働時間を超えた場合、当該の割増賃金を支払わなければなりません。

 事業場外で業務に従事した部分がみなし労働時間制による労働時間の算定対象になった場合でも、事業場内で労働した時間については別途把握しなければなりません。

 労働時間の一部を事業場内で労働した日の労働時間は、みなし労働時間制によって算定される事業場外で業務に従事した時間と、別途把握した事業場内における時間とを加えた時間となります。

みなし労働時間制は、労働基準法第4章「労働時間」の計算に関してのみ用いられるもので、年少者の労働時間規制等には適用されません。もちろん、みなしにより計算された時間が法定労働時間を超えたり深夜業がなされたりする場合には、割増賃金が必要となります。また、休憩や休日に関する規定も適用されます(昭63.1.1基発1号)。

  小学校就学前の子を養育する女性または家族の介護を行う女性(法令では、これらの者を「特定労働者」という)には、労働省告示により時間外労働をさせることができる限度が1週6時間、年150時間と定められています。みなし労働時間の長さについて制約があることに留意する必要があります。この規制の範囲内で、特定労働者に事業場外みなし労働時間制を適用するためには、1日あたり8時間30分~40分が限度となります。特定労働者に事業場外みなし労働時間制を適用する場合には、「所定労働時間(8時間)労働したものとみなす」こととし、実際にも、1日の事業場外労働と事業場内労働を合わせた時間が8時間を超えないように配慮すべきものです。

みなし労働時間制と在宅勤務

 次のすべての要件を満たす場合には、在宅勤務者に対して、みなし労働時間制を採用することができます。
(1) 当該業務が、起居寝食等私生活を営む自宅で行われること
(2) 当該情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと
(3) 当該業務が、常時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと

 在宅勤務の場合であっても、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労災保険法等の労働関係法令が適用されることになります。

(判例)

ほるぷ事件 東京地方裁判所(平成9年8月1日)

 

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