眼

眼の構造と働き

 

眼球は、眼窩(がんか)という骨で囲まれた空間に収まっています。眼窩の中には、筋肉、神経、血管、そして涙を分泌し排出する器官もあります。眼窩はいくつかの骨が組み合わされて形づくられた空間で、洋ナシのような形をしています。

 

眼の内側の構造

 

 

眼球の表面には、強膜という比較的硬く白い組織(白目といわれる部分)があります。眼の正面付近では、強膜は結膜という薄い粘膜に覆われています。結膜は角膜の端につながり、また、まぶたの内側も覆い湿潤に保っています。

光は、角膜を通過して眼球の中に入ってきます。角膜は、眼球正面の表面にあって透明なドーム状をしています。角膜には眼球の表面を保護する働きと、眼球の裏側にある網膜の上に光が像を結ぶのを助ける働きがあります。光は角膜を通り抜けた後、瞳孔(虹彩の中心にある黒い部分)を通ってさらに奥へと進みます。瞳孔はまさしく虹彩を突き抜ける穴です。虹彩とは、円板形をした、眼の色のついた部分のことで、中心の瞳孔をカメラレンズの絞りのように拡大させたり収縮させたりして、眼球に入る光の量を調節しています。虹彩の働きにより、暗い所ではたくさんの光が眼に入り、明るい所では眼に入る光の量が少なくなります。瞳孔の大きさを調節しているのは瞳孔括約筋と瞳孔散大筋いう筋肉です。

虹彩のすぐ後ろには、レンズの働きをする水晶体があります。この水晶体が形を変えることで、眼に入った光がうまく網膜の上に焦点を合わせます。毛様体筋と呼ばれる小さな筋肉の働きにより、水晶体は近くのものを見るときは厚くなり、遠くのものを見るときは薄くなります。

網膜には、光を感じる細胞(視細胞)と、その細胞に栄養を与えるための血管が分布しています。網膜の中で最も感度が高い部分は黄斑と呼ばれ、視細胞がぎっしりと詰まっています。このように視細胞が高い密度で配置されていることによって、黄斑では緻密な像が作られます。これは解像度の高いフィルムほど粒子密度が高いことと同様の原理です。視細胞はそれぞれ神経線維につながっています。視細胞につながった神経線維は束になって視神経を形成します。この視神経の基部である視神経乳頭は、眼球の裏側にあります。網膜に結ばれた像は視細胞で電気信号に変換され、それが視神経を通って脳へと運ばれます。

 

視細胞には大きく2種類あり、それぞれ錐体細胞、桿体細胞と呼ばれています。錐体細胞は中心視野を鮮明にする機能と色を感じる機能をもち、主に黄斑部に存在しています。桿体細胞は周辺視野と夜間の視力を担っています。桿体細胞は錐体細胞よりもはるかに数が多く、光に対する感度も高いのですが、色を感じる機能はもっていません。また、桿体細胞は主に網膜の周縁部に集まっていて、錐体細胞と異なり、中心視野で像を鮮明に見る働きはありません。

 

視覚伝導路

 

それぞれの眼から入った神経信号は、視神経および他の神経線維に沿って(視覚伝導路と呼ぶ)伝わり、脳の後方で視覚として感知され、解釈されます。2本の視神経は、眼の後方で下垂体の直前、そして前方部の脳(大脳)の直下にある視交叉で出会います。そこで、それぞれの眼からきた視神経は、右側、左側の2つの神経線維にそれぞれ分かれて、それらが互いに交差し、脳の後ろまでつながっていきます。このように、脳の右側では、右眼と左眼の両方の視神経からそれぞれ視野の左側の情報を受け取り、脳の左側では各視神経から視野の右側の情報を受け取ります。視野の中心部分の情報は重なり合って伝えられます。つまり、両方の眼で見ているわけです(両眼視と呼ぶ)。

同じ物をそれぞれの眼から見ると、角度がわずかに異なるため、重なっているとはいえ、脳が受け取る情報は異なります。脳はそれらの情報を統合して完全な画像に仕上げます。

 

 


屈折異常

屈折異常があると、水晶体と角膜は光線の焦点を網膜に正しく結ぶことができず、ものがぼやけて見えます。

 

 

眼に入る光線は通常、角膜と水晶体で曲げられる(屈折する)ことによって網膜の上で像を結びます。屈折異常があると、光線の焦点が網膜上に合わなくなります。屈折異常は、眼鏡やコンタクトレンズで矯正できます。

 

眼や角膜の形や水晶体の加齢性の硬化によって、眼の焦点を合わせる力が低下することがあります。

遠くのもの、近くのもの、あるいは、遠近ともにぼやけて見えることがあります。

眼科医(眼疾患の診断・治療および眼の手術を専門にする医師)またはオプトメトリスト(屈折異常を専門としますが、医師ではありません)が屈折異常を矯正する最良の方法を決定します。

屈折異常は、眼鏡、コンタクトレンズや屈折矯正手術で矯正できます。

視力の正常な人は、くっきりした鮮明な像を見ることができます。これは角膜と水晶体が眼の中に入ってくる光線をうまく曲げて(屈折)、網膜の上に焦点を合わせているからです。角膜は形が変化しませんが、水晶体はその厚さを変化させてさまざまな距離に焦点を合わせています。水晶体は丸くなることで、近くのものに焦点を合わせ、扁平になることで、遠くのものに焦点を合わせます。角膜と水晶体が網膜上にはっきりした像を結べなくなった状態を、屈折異常と呼びます。

 

原因

幾つかの原因によって、水晶体と角膜は光線を屈折させて網膜上に像を正しく結べなくなります。角膜と水晶体の屈折力に対して眼球が大きすぎる場合は、光が網膜上ではなく網膜より前で焦点を結ぶため、遠くのものが見えにくくなります。これが近視と呼ばれる状態です。一方、角膜と水晶体の屈折率に対して眼球が小さいために、光が網膜よりも後ろで焦点を結んでしまう人もいます。これが遠視と呼ばれる状態です。遠視のある人は、年をとるにしたがって、近くのものも、遠くのものもはっきりと見ることが難しくなります。角膜の形にゆがみがあると(完全な円形または球形ではない)、距離にかかわらずものがぼやけて見えます。これが乱視と呼ばれる状態です。左右の眼で屈折異常が著しく異なる人がいます。これが不同視と呼ばれる状態です。

40代前半にさしかかると、水晶体は徐々に硬くなります。水晶体の形は変化しにくくなり、このため、近くのものに焦点が合わせづらくなります。これが老視(老眼)と呼ばれる状態です。白内障の治療のために水晶体を取り除くことがありますが、眼内レンズを移植しなかった場合は、距離にかかわらずものがぼやけて見えるようになります。先天異常、眼の外傷、白内障の手術などが原因で水晶体がない状態を無水晶体症といいます。

 

 

視神経の病気

 

眼球後部の内側を覆っている網膜の小さい視細胞は、光を感じとり、それを電気信号として視神経に送っています。左右の眼からの視神経は脳へと電気信号を送り、そこで映像情報が解釈されます。視神経またはその脳への経路の損傷は、視力障害につながります。視交差と呼ばれる脳内部の部分で、左右の視神経はそれぞれ2つの線維に分かれ、その1つずつが互いに交差します。このような解剖学的構造になっているため、視神経経路に損傷が生じると、その部位に応じて特徴的なパターンの視力障害が起こります。このパターンを理解すると、視神経経路のどこに問題が生じているかをしばしば推定できます。

 

視覚伝導路とその損傷の結果

 

 

神経信号はそれぞれの眼から視神経を通って送られます。2つの視神経は視交差で交わります。ここで、左右の眼からの視神経はそれぞれ2つに分かれ、どちらも神経線維の半分は反対側に交差します。このような構造になっているため、脳の右側は両眼の左視野からの情報を受け、脳の左側は両眼の右視野からの情報を受けとります。眼または視覚伝導路のどこに損傷が生じたかによって、視力障害のタイプが異なります。

 

 

網膜の病気  

網膜は、眼球後部の内側を覆っている光に感受性のある透明の膜で、角膜と水晶体を通った光はこの網膜上に焦点を結びます。網膜中央部を黄斑といい、色に対する感度が高い視細胞(光を感じる細胞)が密集しています。これらの細胞は錐体といい、最も鮮明な像をつくり出し、中心視力と色覚を担っています。黄斑を囲む網膜周辺部には、桿体と呼ばれる視細胞があります。桿体は弱い光を感じることができますが、色を感じる機能はありません。桿体は周辺視と夜間の視力を担っています。

 

網膜の構造

 

 

 

 網膜はカメラに例えるとフィルムにあたるところで、物を見るという仕事の中で最も重要な部分です。そのため、ここでは小さな病変が起こっても視力に対しては大きな影響があります。

 

 

代表的な網膜の病気

(1) 動脈硬化症・高血圧症・糖尿病性網膜症    全身疾患に由来するもの

 

(2) 網膜色素変性  遺伝的疾患で、視野異常と視力障害が徐々に進行  網膜には視細胞という光を感知する細胞が集まっているが、ここが機能しなくなり、光を感じ取れずに視野が狭くなっていき、視力も低下していくようになる。網膜色素変性症とは、網膜に異常が起こり、暗いところでものが見えにくい夜盲(やもう)や、視野が狭くなる視野狭窄視力低下が見られる遺伝性の病気です。

 

 網膜色素変性症の症状としては暗いところで物が見えにくくなったり(とりめ、夜盲)、視野が狭くなったりするような症状を最初に起こしてきます。 そして、病気の進行とともに網膜の能力を表す矯正視力が低下していきます。

 

 早い時期から白内障を合併することが多くみられます。白内障が見つかれば、手術などによって白内障に対する治療をおこないます。

 

 網膜色素変性症は、視力よりも視野の方が先に減じる傾向があります。  両眼の視野が5度以内であれば、障害年金2級が認定される可能性がありますので、視野が落ちた時に障害年金の請求を行うのがポイントです。

 

 網膜色素変性症については遺伝性の病気であり、生まれた時にはすでに因子をもっておりますが、初診日はあくまで初めて医師の診断を受けた日となります。手術などで症状があらわれた場合は、手術などで症状が現れた日を初診日とします。

 

 網膜色素変性症や視神経萎縮(幼少時から視力低下がみられるもの)など、一部の病気については、障害年金の審査で先天性(生まれつきのもの)とされる可能性があります。たとえば、初診日は厚生年金加入中にあったとしても、審査で先天性と判断されれば、初診日は誕生日とされてしまいます。  20歳前に初診日がある可能性を調べるために、幼少期の受診状況や中学卒業時からの視力の経過等についての「障害年金の初診日に関する調査票」の提出を求められることがあります。  小さい頃は近視でも、夜盲、視野低下といったこの病気特有の症状は大人(厚生年金加入中)になってから生じたといった場合は、夜盲・視野低下は幼少時にはみられなかったことをきちんと訴えておくことが大切です。  幼少時から視力が低下していたからといって必ずしも先天性となるわけではありません。障害年金では、「近視」と黄斑部変性視神経萎縮などの病気は、原則として因果関係がないものとして扱われるからです。

 

  視力と視野の両方が著しく低下してしまっている場合には、併合認定で等級が上がる可能性もあります。

 

(3) 中心性網膜症    過労、ストレスが誘因となる。

 

(4) 網膜剥離

網膜剥離とは、何らかの原因で網膜が網膜色素上皮から剥がれてしまう状態のことです。網膜がはがれると、はがれた部分は血液を供給する部分から分離します。はがれた網膜を元に戻さない限り血液の供給がなくなり、永久的なダメージを受ける可能性があります。

 

中心性網膜症・網膜血管腫・増殖型糖尿病性網膜症・外傷などによって起こる続発性のほか

に、若年者で中等度以上の近視眼に主に起こる突発性がある。

網膜剥離で損傷を受けた血管からにじみ出た液体や血液が網膜とその下の組織の間にたまると、視力がさらに悪くなります。

 

網膜剥離の分類

 

裂孔原性網膜剥離  網膜剥離の中で最も多くみられるもので、網膜に孔(網膜裂孔・網膜円孔)が開いてしまい、目の中にある水(液化硝子体)がその孔を通って網膜の下に入り込むことで発生します。一般に、はじめのうちは剥離した網膜の範囲は小さく、時間とともにだんだんこの範囲が拡大するというような経過をたどりますが、孔が大きいと一気に進みます。剥離が進行すればすべての網膜が剥がれてしまいます。網膜に孔が開く原因として、老化・網膜の萎縮・外傷などがあります。

 

非裂孔原性網膜剥離  牽引性網膜剥離と滲出性網膜剥離があります。裂孔原性網膜剥離と同様に網膜剥離が起きた状態ですが、原因、経過はさまざまであり裂孔原性網膜剥離とは大きく異なります。  牽引性網膜剥離は眼内に形成された増殖膜あるいは硝子体などが網膜を牽引することにより網膜が剥離して起きます。重症の糖尿病網膜症などでみられます。  滲出性網膜剥離は、網膜内あるいは網膜色素上皮側から何らかの原因で滲出液が溢れてきたために網膜が剥離してしまった状態です。ブドウ膜炎などでみられます。

 

 

(5) 眼底出血  網膜出血と脈略膜出血の総称で、糖尿病性網膜症・高血圧性網膜症・網膜静脈閉鎖症などの血管病や、貧血・白血病などの血管疾病のほか、外傷や炎症の原因となる。

 突発性網膜剥離、増殖型糖尿病性網膜症、眼底出血などの治療には、一般療法のはかに、レーザー光線による光凝固や手術療法がよく行われています。

 

 

ブドウ膜

 

ブドウ膜は、虹彩、毛様体、脈絡膜の3つの部分から構成されています。

虹彩は、瞳孔の周囲にある色のついた環状の部分で、カメラのレンズのシャッターのように開いたり閉じたりして眼の中に入れる光を調節します。

毛様体はいくつかの筋肉から成り立ち、それらが収縮すると水晶体の厚みが増し近くのものに焦点を合わせることができます。逆に弛緩すると、水晶体は薄くなり遠くのものに焦点を合わせることができます。

脈絡膜は、眼球の内側の膜で、毛様体筋の縁から眼球後部の視神経まで広がっています。脈絡膜はその内側の網膜と外側の強膜の間にあります。脈絡膜には血管の層があり、この血管が眼の内側、特に網膜に栄養を与えています。

 

ぶどう膜

 

 

 

角膜の病気

 

角膜は眼球の正面にあるドーム状の透明な部分で、虹彩と水晶体を保護し、光の焦点が網膜に結ぶのを助ける働きをしています。角膜は細胞、タンパク質、液体からできています。角膜は脆弱にみえますが、爪とほとんど同じくらいの硬さです。しかし、接触にはきわめて敏感です。

角膜の病気や損傷は痛み、流涙を引き起こすことがあり、失明につながることがあります。細隙灯顕微鏡は、角膜を拡大して観察することができ、角膜を診察するために通常使用されます。細胞が損傷されている領域を突き止めやすくするため、角膜の損傷部位に一時的に色をつけるフルオレセインという色素が含まれた点眼薬が使用されます。

 

 

結膜と強膜の病気

 

結膜とはまぶたの裏側を覆っている薄い透明な上皮で、まぶたから折り返すようにして眼につながり、強膜(白眼の部分)をちょうど角膜の縁のところまで覆っています。

結膜は小さい異物や感染症の原因となる微生物が眼の中に入るのを防ぐとともに、涙液の層を維持して眼を守っています。

 

結膜で最も多い病気は炎症(結膜炎)です。結膜炎の原因は細菌(クラミジアを含む)やウイルス、真菌(カビなど)による感染症、アレルギー反応、化学物質や異物、日光の浴びすぎなどさまざまです。結膜炎は短期間で済む傾向にありますが、ときに数カ月から数年間続くことがあります。結膜炎が長期化する原因としては、まぶたが内側に巻きこまれてしまう(内反)や外側にめくれてしまう(外反)などによる慢性的な刺激、特定の点眼薬、慢性的な眼の乾燥などがあります。原因にかかわらず結膜炎患者に典型的な症状は似通っていて、充血、かゆみや刺激、目やに、軽い眼のかすみなどがみられます。

 

強膜は眼の外側を覆っている白い丈夫な膜です。眼に構造的な強さを与える役割を果たしていて、眼球の穿通や破裂を防いでいます。強膜が炎症を起こすことがまれにあります(強膜炎)。

 

 

 

目の障害 

障害の程度

障害の状態

1級

〈視力障害〉

両眼の視力の和が0.04以下のもの

2級

〈視力障害〉

両眼の視力の和が0.05以上、0.08以下のもの

 

〈視野障害〉 ・両眼の視野が5度以内のもの

・両眼の視野がそれぞれ1/4の視標で中心10度以内におさまるもので、かつ、1/2の視標で中心10度以内の8方向の残存視野の角度の合計が56度以下のもの

3級

〈視力障害〉

両眼の矯正視力が0.1以下に減じたもの (障害手当金基準で症状が固定していない場合)

障害手当金

〈視力障害〉

両眼の矯正視力の和が0.6以下に減じたもの ・一眼の視力が0.1以下に減じたもの ・両目のまぶたに著しい欠損を残すもの

 

〈視野障害〉 ・両眼による視野が2分の1以上欠損したもの ・両眼の視野が10度以内のもの

 

〈調節機能・輻輳機能障害〉 ・複視や頭痛などの眼精疲労が有り、通常の読書などが続けられない程度のもの

 

〈両眼のまぶたの欠損障害〉 ・普通にまぶたを閉じた場合に角膜を完全に覆い得ない程度のもの ・両目の機能調整及び輻輳機能(ふくそうきのう)に著しい障害を残すもの

 

・身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

 

視力障害

 視力障害の視力の測定は、原則として万国式試視力表(標準照度200ルクス)により眼鏡又はコンタクトレンズを使用した矯正視力による。

左右の網膜に映る像の大きさや形が異なるなど矯正することによって苦痛を伴う場合や矯正できない場合は、裸眼視力により測定する。視力の矯正が効かない場合には、診断書に「矯正不能」と書いていただくこと。  両眼の視力とは、両左右の視力を別々に測定し測定した数値を合算したものである。

過去3ヵ月間に複数回の測定を行なっている場合は、原則としてその最良値による。

視力障害の原因として主なものは、白内障、眼底疾患、網膜剥離、老眼、視神経症などがある。

 

視野障害

視野とは一点を見ていてそのまま視線を動かさないで見える範囲のことをいう。

視野の障害には、全周にわたって見えにくくなるもの、周辺からある部分だけが見えなくなるもの、両眼の視野の半分が見えなくなるもの、視野の中に見えない部分があるものなどがある。

正常な人の視野は上側が60度、下側が70度、外側が100度、鼻側が60度である。

視野はゴールドマン視野計、自動視野計等で測る。

 ゴールドマン視野計による場合、中心視野についてはI/2の視標を用い、周辺視野についてはI/4の視標を用いる。

 

I/2、I/4の視標とはゴールドマン視野計でドーム型スクリーンに映し出される光点(視標)の大きさと輝度のサイズです。この光点が視野の外から中心部に移動します。正視して眼を動かさずに視野外から移動してくる光点を認識した時点で手に持った反応スイッチを押します。

光点の大きさが大きい順に、Ⅴ(64㎟)→Ⅳ(16㎟)→Ⅲ(4㎟)→Ⅱ(1㎟)→Ⅰ(1/4㎟、これが診断書に記入される)

次に、視標の輝度が明るい順に、4→3→2→1 となります。

I/2、I/4の視標は光点の面積がともにⅠサイズ(大きさ1/4㎟)です。

光の強さ(輝度)はI/2の光点の方がI/4より暗いので視認しずらいです。

視野検査では視標を変えて何度か測定します。

最初に大きくて明るいⅤ/4から初めてⅠ/4→Ⅰ/3→Ⅰ/2→Ⅰ/1という感じでだんだん暗い視標で測定します。

その中からI/2、I/4の視標データーが障害年金の診断書に記入されます。

 

 

視野障害の原因として主なものは、網膜色素変性症、網膜黄斑疾患中心性網膜症、緑内障、脳疾患などがあげられる。

 

調節機能障害

 調節機能とは眼のピント合わせ機能をいう。

 

輻輳(ふくそう)機能障害  近くのものを見ようとする時に、眼が内側により眼前の一点に向かわせる機能。つまり「寄り目機能」をいう。

 

 

障害の程度 1級

「両眼の視力の和が0.04以下のもの」・・・

視力表の1番大きな文字がメガネをかけて1メートルの距離からやっと読める程度以下のものをいう。

 

障害の程度 2級

「両眼の視力の和が0.05以上、0.08以下のもの」・・・

視力表の1番大きな文字がメガネをかけて2メートルの距離からやっと読める程度で、日常生活に非常に不便を感じる程度の状態にあるものをいう。

 

障害の程度 障害手当金

「両目のまぶたに著しい欠損を残すもの」・・・

普通にまぶたを閉じた場合に角膜を完全に覆い得ない状態のものをいう。

 

「両目の機能調整及び輻輳機能(ふくそうきのう)に著しい障害を残すもの」

複視、頭痛等の眼精疲労が生じて、読書等が続けられない程度のものをいう。

 

「身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの」・・・

次のいずれかに該当する程度のものをいう。

 ・「まぶたの運動障害」のうち、眼瞼痙攣(がんけんけいれん)等で常時両眼のまぶたに著し

い運動障害を残すことで作業等が続けられない程度のもの

 ・「眼球の運動障害」のうち、麻痺性斜視で複視が強固のため片眼に眼帯をしないと生活ができないため、労働が制限される程度のもの

 ・「瞳孔の障害」のうち、散瞳している状態で瞳孔の対光反射の著しい障害により羞明(まぶしさ)を訴え、労働に支障をきたす程度のもの

 

障害認定日の特例的取扱い

傷病が治った状態

障害認定日

失明

失明した日

眼球部 

患部疾患・打撲により摘出

患部疾患・打撲により、摘出した日(又は廃用した日)

障害手当金 創面治癒日

 

 

白内障

 白内障は、眼の中の水晶体が濁って徐々に視力が失われていく病気です。痛みはありません。視界はぼやけ、コントラストが失われ、光の周囲にハロ(光輪)が見えることがあります。

白内障は世界の失明原因の第1位です。

 

 

 

正常な水晶体は光を受け取り、それを網膜の上に集束させます。白内障の場合、水晶体に届いた光の一部を遮り、網膜に集束する光を歪めてしまうのです。

 

白内障の多くは加齢によるもので、老人性白内障(加齢白内障)といわれています。老人性白内障は白内障患者の7割以上を占めますが、他にも先天性や外傷性、アトピー、糖尿病など代謝性の病気、薬剤や放射線による白内障もあります。

 

薬剤による治療  白内障と分かったらすぐに手術をしなくてはいけないと思われがちですが、普段の生活に支障がなければ、すぐに手術をする必要はありません。ごく初期であれば点眼薬で進行を遅らせられる場合があります。ただし、点眼薬で水晶体の濁りをなくすことはできません。白内障があることが分かったら、定期的に受診して検査を受けましょう。

 

手術による治療  症状が進んで、日常生活に不便や煩わしさを感じるようになり、本人が視力の回復を望む場合には手術を検討します。白内障の手術は、超音波水晶体乳化吸引術と眼内レンズ挿入術をあわせて行うのが一般的です。

 白内障手術では合併症として角膜浮腫、虹彩炎(こうさいえん)、眼圧の上昇などが見られる場合もあります。

 

 

 白内障は、その原因が様々であり、障害年金の請求において初診日を特定するのが難しい傷病です。原則的には、眼科に初めてかかった日ではなく、初めて医師の診断を受けた日が初診日と扱われます。

 白内障の場合、「視力」に障害がみられるケースが多くなります。  障害年金は「視力」「視野」のいずれかが基準を満たせば認定されるため、請求のタイミングが大切になります。 

 また、視力の矯正が効かない場合には、診断書に「矯正不能」と書いていただくことも重要です。
緑内障

 緑内障とは、視神経が損傷を受けて、目で見た情報がうまく脳に伝わらなくなって画像を認識できなくなり、視野や視力に障害が起こる病気です。

進行性で回復不能の視力障害につながります。

 

緑内障は、眼の中の液体(房水)の産生量と排出量のバランスが崩れ、眼圧が異常なレベルにまで上昇すると起こります。

 

正常な房水の排出

 

 

房水は、虹彩の裏側(後房内)にある毛様体でつくられ、後房から眼球の前方(前房)へと流れこみ、そこから排出管を通って外へと流れ出ていきます。

 

緑内障では、房水を排出する管が詰まったり閉じたり、覆われたりします。後房で新しい房水が産生されても、眼から外に出ていくことができません。言い換えると、水道の蛇口が開いたままなのに、排水口は詰まった状態になるわけです。房水が眼の中で行き場を失い、その結果、眼圧が上昇します。眼圧が高くなって視神経が耐えられる限度を超えてしまうと、視神経の損傷が生じます。この損傷を緑内障と呼びます。ときに、眼圧の上昇が正常範囲内にとどまっていても、視神経には耐えられないほど高い場合があります(低眼圧緑内障)。

 

 日本での失明原因第1位の病気です。

 

治療  緑内障の治療は、病気の進行を遅らせることが目的となります。残念ながら、いったん損なわれた視神経は回復できないので、これ以上悪くならないよう、進行を食い止めたり、進行を遅らせたりするしかありません。ですから、できるだけ視神経の障害が少ないうちに病気を発見して、治療を始めることがとても重要で、失明を回避する近道となります。  緑内障の進行を遅らせるためには、眼圧を下げる治療がおこなわれます。正常眼圧緑内障の場合でも、眼圧を下げることで効果があることが分かっています。

 

眼圧のコントロール  自覚症状がない緑内障では、点眼薬の使用を忘れがちになる人や、通院をやめてしまう人が少なくありません。病気は気づかないうちに徐々に進行していきます。緑内障を進行させないためには、処方された薬を正しく使い、眼圧をコントロールすることが大切です。  また、視野の異常に変化がないかなど、定期的に通院して、病状の変化を把握して、残された視力の維持に努めましょう。

 

 

 緑内障は病因がさまざまであり、障害年金の請求をするに際し、初診日を特定するのが難しい。眼科に初めてかかった日ではなく、原因となった疾患で初めて医師の診断を受けた日が初診日と扱われることが多い。  緑内障の場合、「視力」「視野」の両方に障害がみられるケースが多い。視力障害と視野障害が併存する場合、または、まぶたの欠損障害、調節機能障害、輻輳機能障害、まぶたの運動障害、眼球の運動障害又は瞳孔の障害が併存する場合には、「併合認定」の扱いとなる。

 

視力の矯正が効かない場合には、診断書に「矯正不能」と書いていただくこと。

 


視神経萎縮

 中枢神経のひとつである視神経は障害を受けると回復しませんし、再生し元に戻ることもありません。様々な原因で視神経や視神経を出している細胞、つまり網膜神経節細胞に障害が長期に起こりますと、視神経と神経節細胞は萎縮して視神経乳頭の色調が蒼白化していきます。

 

視神経萎縮は、網膜神経節細胞とその軸索である視神経が変性し脱落した状態の総称です。

 眼底検査では眼球の裏側で視神経障害が起こり、視神経を脳へ向かう流れに逆行して変性を生じるグリア(神経をサポートしている細胞)の増殖を伴わない単性萎縮、乳頭が腫れた後にグリアが増殖して生じる炎性萎縮、視神経がアポトーシス(細胞の自然死で跡形も無くなる)を生じて視神経の入り口乳頭が大きくへこむ緑内障性視神経萎縮に分けられます。

 

 

 近視と視神経萎縮相当因果関係「なし」とされております。

 

 網膜色素変性症や視神経萎縮(幼少時から視力低下がみられるもの)など、一部の病気については、障害年金の審査で先天性(生まれつきのもの)とされる可能性があります。たとえば、初診日は厚生年金加入中にあったとしても、審査で先天性と判断されれば、初診日は誕生日とされてしまいます。小さい頃は近視でも、夜盲、視野低下といったこの病気特有の症状は大人(厚生年金加入中)になってから生じたといった場合は、夜盲・視野低下は幼少時にはみられなかったことをきちんと訴えておくことが大切です。

 幼少時から視力が低下していたからといって必ずしも先天性となるわけではありません。障害年金では、「近視」と「黄斑部変性、視神経萎縮」などの病気は、原則として因果関係がないものとして扱われるからです。

 

 

眼球萎縮

 

 眼球萎縮とは、眼球やその中の組織が縮んでしまう状態をいいます。  眼球が萎縮するとものを見るという働きがほとんど機能しなくなり、著しく視力が低下したり失明することがほとんどです。

 

 眼球萎縮に至るには様々な原因が考えられますが、ブドウ膜炎網膜剥離などの病気を放置したために眼球の内部組織に深刻な障害が起こり、眼球の本体と硝子体が縮んでしまうことがその原因のつとひとつして挙げられます。

 

 強い外傷による網膜や硝子体が直接的に損傷した場合や中の硝子体液が漏れ出してしまうために回復が望めず、眼球萎縮に繋がる場合もあります。

 

 

 眼球萎縮などの視神経萎縮で障害年金を申請する場合には、「視力」と「視野」の両方ともに低下しているケースが多くみられます。「視力」「視野」の両方ともに減じている場合は、障害年金の併合認定の可能性がありますので、過不足のない診断書を医師に作成してもらうことが大切となります。

 眼球萎縮により、両眼の調節機能または運動機能に著しく障害が認められる場合、視力・視野低下と合わせて併合認定により等級が変わる可能性があります。

 

 眼球萎縮などの視神経萎縮は、その病気の原因によって揃える書類が変わってきます。病因が先天的なものである場合は、初診日証明(受診状況等証明書)のほかに「眼の病気用」というアンケートの提出も必要です。

 

 

 眼球そのものだけでなく、網膜や脈絡膜が萎縮してしまう「網脈絡膜萎縮症」という病気もあります。これは遺伝性疾患で、強い視力の障害や視野の欠損、場合によっては失明することもあります。

 


糖尿病性網膜症

 網膜は眼球を形作っている硝子体の3分の2程度を覆っている約0.2ミリの膜状の組織で、光を感じ取って視覚情報に変換する働きを持っています。目の前面にある水晶体をレンズとするなら、網膜はフィルムに当たります。網膜には動・静脈血管や光、色を感じる神経細胞が多数存在します。網膜の血管は細いので、血液中のブドウ糖が過剰な状態(高血糖)が続くと損傷を受け、徐々に血管がつまったり変形したり、出血を起こすようになります。これが糖尿病性網膜症です。

一般的に、1型糖尿病になってから5年後に網膜症が現れます。2型糖尿病では何年間も診断されないことがあるため、2型糖尿病と診断された時点で網膜症が存在していることがあります。

 

 糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの量が不足したり、働きが悪くなったりして起こります。インスリンは、食事から得たブドウ糖を全身の細胞に取り込み、活用させる際に必要なホルモンです。その作用が低下すると、血液中のブドウ糖が細胞に取り込まれなくなり、高血糖の状態が続きます。

 高血糖状態の血液は、全身にさまざまな障害を起こします。網膜の血管で障害が起こったものが糖尿病網膜症で、糖尿病腎症糖尿病神経障害とともに糖尿病三大合併症の一つとなっています。糖尿病網膜症は、糖尿病患者の約40%で見られます。

 現在日本において、年間3,000人の人が糖尿病が原因で失明しており、中途失明の原因の第1位となっています。

 

糖尿病では、眼に2つの種類の変化が起こる可能性があります。

 

非増殖網膜症では、網膜の毛細血管から液体や血液が漏れ、小さい隆起ができることがあります。漏れた部分の網膜は腫れ、その部分の視野が障害されることがあります。最初の段階では視力にほとんど影響が出ないこともありますが、徐々に視力が低下します。盲点が生じることもありますが、本人は気づかず、通常検査をして初めてわかります。黄斑部の近くで漏れると、視野の中心がぼやけて見えることがあります。血管から液体が漏れたために黄斑部が腫れると(黄斑浮腫)、最終的に視力が著しく低下します。

 

増殖網膜症では、網膜の損傷が刺激となって新しい血管が成長します。この新しい血管は異常に成長し、ときに出血を起こしたり瘢痕を形成します。瘢痕の範囲が広いと、網膜剥離が起こることがあります。増殖網膜症は、非増殖網膜症よりも、視力が低下する傾向があります。硝子体(眼球後部の内部にあるゼリー状の物質)への大量の出血や、牽引性網膜剥離と呼ばれる種類の網膜剥離のために、完全な失明やそれに近い状態に至ることもあります。新しい血管の成長は、緑内障につながることもあります。また、増殖糖尿病網膜症では著しい視力の低下を伴う黄斑浮腫が生じることもあります。

 

合併症  合併症として、「血管新生緑内障」が起こることがあります。これは、網膜の虚血により新生血管が作られ、それが虹彩や隅角(眼球を満たしている房水の出口)にまで伸びて、房水の流れが妨げられ、眼圧が高くなるものです。急激に眼圧が上がると目の痛み、霧視、頭痛、吐き気などの症状を起こし、進行すると失明に至ります。

 

 糖尿病網膜症を進行させる要因として、糖尿病だけでなく、脂質異常症や高血圧の関与も指摘されています。これらの生活習慣病全般について、予防に努めることが必要です。

 

治療

治療法としては、レーザー光線を眼内の網膜に照射して網膜内での異常な新生血管の成長を遅らせ、漏出を減らすレーザー光凝固術という方法があります。レーザー光凝固術は必要に応じて繰り返し行います。損傷を受けた血管から大量に出血している場合は、硝子体切除術という手術が必要になることもあります。これは、硝子体で満たされている空間から血液を取り除く手術です。硝子体切除術により、硝子体出血では多くの場合に視力が改善し、牽引性網膜剥離でも視力が良くなることがあります。レーザー光凝固術で視力が改善することは滅多にありませんが、それ以上の悪化を防ぐことができます。現在研究されている新しい治療法には、眼内への薬剤注射があります。重度の視力障害のある人では、これらの治療が視力の改善に役立つことがあります。

 

 

 糖尿病と糖尿病性網膜症は、相当因果関係「あり」とされております。糖尿病がなかったならば、糖尿病性網膜症が起こらなかったであろうと認められるからです。

 糖尿病性網膜症の場合、糖尿病における初めて医師の診断を受けた日が初診日となります。

 

 糖尿病性網膜症を合併したものの程度は、「眼の障害」の基準により認定します。

 

  糖尿病性網膜症は、無自覚のまま視野の欠損が進行している場合があります。視力と視野の両方が著しく低下してしまっている場合には、併合認定で等級が上がる可能性もあります。

 

 

 

 

網膜中心動脈・静脈の閉塞

 

網膜の血管が閉塞してしまうことがあり、痛みはないものの、視力が突然低下します。

典型的には、検眼鏡で眼の診察をして診断を行います。検査を行うこともあります。

治療が成功しないこともしばしばあります。

閉塞は、網膜の主要な動脈や静脈(動脈は血液を供給し、静脈は血液を排出します)、あるいはその分枝に起こります。

網膜中心動脈は網膜に血液を供給している主要血管です。アテローム硬化性プラークや血液のかたまりなどの小片が血流中を浮遊し(塞栓になり)、血管に固着して詰まらせることによって、網膜中心動脈が完全に閉塞してしまうことがあります。血管の炎症である巨細胞動脈炎も網膜動脈閉塞の原因となる可能性があります。

 

緑内障、糖尿病、高血圧のある人は、網膜静脈が閉塞することがあります。このような閉塞は、主に高齢者に起こります。

 

症状

網膜中心動脈が閉塞すると、痛みはないものの、閉塞が生じた側の眼は突然視野全体が見えなくなったり、視野の一部だけしか見えなくなったりします。視力障害の程度は軽症のものから重症までさまざまです。

網膜中心静脈が閉塞しても同じような症状が出ますが、違うのは数日から数週間かけて徐々に視力障害が進む場合があることです。再発もめずらしくありません。

網膜中心動脈や網膜中心静脈の閉塞では、網膜や虹彩に異常血管が成長することもあります。ときにはこれらの異常血管が出血したり、緑内障を引き起こすことがあります。

 

 

網膜中心性静脈血栓症

 

網膜中心性静脈血栓症は、網膜静脈に血栓ができることで、網膜の血液の流れが悪くなる病気です。

血栓ができる部位によって症状が異なってきますが、部位によっては自覚症状が全く無いこともあります。浮腫や出血が網膜の中心におよんできた場合には、視力低下が始まりますが、その進行はとてもゆっくりであるのが特徴です。また、静脈に閉塞ができた直後には、出血や浮腫による症状が主体となりますが、何年かすると硝子体出血を起こすことがあり、その場合は黒い塊が目の前に現れるような症状が発生します。

 

網膜中心性静脈血栓症は、高齢者に多い疾患のため、その原因は加齢によるものと考えられています。生活習慣病である糖尿病や高血圧症、動脈硬化症などの傾向がある人は発症率が高くなります。血管を閉塞させてしまう血栓は、網膜静脈が動脈に圧迫されて血液の流れが悪くなることが一つの要因と言われています。主な合併症としては、硝子体出血や血管新生緑内障などをあげることができます。日頃から食生活でのコレステロールコントロールが予防策として重要です。

 

 

黄斑部変性症  網膜はカメラのフィルムに相当し、外からの光が瞳(瞳孔)、レンズ(水晶体)や目の中央部(硝子体)を通り、網膜に当たり光を感じます。網膜で光が電気信号に変換され脳に伝えられ「見える」のです。黄斑とは網膜の中心にある直径1.5mm~2mm程度の小さな部分の名称で、黄斑の中心は中心窩と呼ばれ、見ているところ(固視点)からの光が当たる部位です。

網膜中心部の最も重要な部分である黄斑に進行性の障害を起こし、その結果中心視力が徐々に失われていきます。

中心視力が徐々に低下し、細かい部分が見えなくなっていきます。直線が波打ってみえることがあります。

 

 

 黄斑部変性症は、「視野」「視力」の両方に障害が現れやすい病気です。「視力」「視野」のいずれかの基準を満たすことで、障害年金が受給できるようです。

黄斑部変性症により、眼の中心部から視野が欠損していくことがあります。視力と視野の両方が著しく低下してしまっている場合には、併合判定で等級が上がる可能性もあります。

 

 近視と黄斑部変性症は相当因果関係「なし」とされております。

 

 

加齢黄斑変性  年齢を重ねるとともに網膜色素上皮の下に老廃物が蓄積してきます。それにより直接あるいは間接的に黄斑部が障害される病気が加齢黄斑変性です。

 

 

黄斑ジストロフィー

黄斑には錐体細胞という視力や色覚にとって重要な役割を担う細胞が集まっている。ここが、本来の年齢に比して早く老化することにより、視野や視力に障害を起こす。黄斑ジストロフィーは、黄斑部の網膜、網膜色素上皮、脈絡膜などが徐々に変性萎縮に陥る病気です。

黄斑部は中心視力を担う場所ですから、多くの場合、視力が低下します。

 

 黄斑ジストロフィとひと口にいっても病気の種類は多数あります。

 スターガルト型黄斑ジストロフィ   卵黄様黄斑ジストロフ  錐体ジストロフィ      など

 

 原因は、遺伝子の異常によって組織や臓器が徐々に変性することによります。網膜色素変性症もジストロフィに含まれる病気です。黄斑ジストロフィのいくつかでは、どの遺伝子に異常があるのかがわかっています。

 

 

障害年金の認定では、「視力」「視野」のどちらか片方だけでも基準を超えれば障害年金が受給できるようです。

 黄斑ジストロフィーが他の眼の病気と違うのは、障害年金の認定において「先天性の病気」ではないかと思われてしまうことです。審査では、黄斑ジストロフィーの申請者に対して「眼の病気用」のアンケートの提出を求め、幼少時の受診の有無、視力低下の推移、通院歴などの申告を求めているようです。

 

 

ブドウ膜炎

 

 ブドウ膜炎は、眼の中の虹彩、毛様体、脈絡膜からなる、非常に血管の多い組織「ブドウ膜」に炎症が起こる病気です。

「内眼炎」とも呼ばれ、その原因には失明に至る重症なものもあり、さまざまです。このようなことから、「内眼炎」とも呼ばれ、その原因には失明に至る重症なものもあります。

 

 ブドウ膜炎が生じると、目の中の透明な前房と硝子体に炎症性細胞が浸潤するため、霧視(かすみがかかったように見えること)や飛蚊症(虫が飛んでいるように見えること)と羞明感(まぶしく感じること)、その他、視力低下、眼痛、充血などの症状がみられます。片眼だけのことも両眼のこともあり、両眼交互に症状が現れることもあります。症状の経過は、だんだん悪くなるものもあれば、一時的に良くなり再びまた悪くなるといった再発・寛解を繰り返すものまでさまざまです。

 

炎症の原因はさまざまです。眼自体に原因がある場合もあれば、全身性の病気が原因となる場合もあります。ほとんどの場合、原因がはっきりしないため、特発性ぶどう膜炎と呼ばれます。ぶどう膜炎患者の約40%には、ほかの臓器にも影響を及ぼすような病気がみられます。具体的には、強直性脊椎炎、若年性特発性関節炎、サルコイドーシス、あるいは結核、梅毒、ライム病などの広範囲にわたる炎症性疾患です。他にも、ヘルペス(単純ヘルペスウイルス)感染、帯状疱疹(水痘帯状疱疹ウイルス)、トキソプラズマ症、サイトメガロウイルス(主にヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した人々に発生)など、眼に影響を及ぼす感染も原因として挙げられます。

 

治療  基本的には薬による内科的治療です。

ほぼすべてのケースでコルチコステロイドの点眼薬が使用されます。スコポラミンやホマトロピンなどの瞳孔を広げる点眼薬も使われます。ぶどう膜炎に特異的な原因を治療するために、その他の薬が使用されることもあります。たとえば、感染が原因なら、感染の原因菌を除去する薬が処方されます。

原因が細菌などの病原微生物による場合は、その病原微生物に有効な薬が使用されますが、多くのぶどう膜炎では、原因疾患が分かっても根治療法は困難であり、治療の目的は炎症を抑えて視力障害につながる合併症を予防することです。

 

 ブドウ膜炎の合併症には、白内障緑内障、硝子体混濁、網膜前膜症、嚢胞様黄斑浮腫などがあり、内科的治療では良くならない合併症に対しては手術が必要になります。

 このような合併症は炎症が落ち着いても視力が回復しない原因であり、難治なブドウ膜炎では黄斑変性視神経萎縮を来し、高度な視力障害に至ることがあります。

 

 

 

白内障や緑内障はその原因が様々であり、初診日を特定するのが難しい。眼科に初めてかかった日ではなく、原因となった疾患で初めて医師の診断を受けた日が初診日と扱われることが多い。

 

視神経萎縮(幼少時から視力低下がみられるもの)や網膜色素変性症など、一部の病気については、先天性(生まれつきのもの)とされる可能性があり、初診日は誕生日と見られがちである。しかし、障害年金では「近視」「視神経萎縮」などは、原則として相当因果関係がないものとして扱われるため、初診日は原因となった疾患で初めて医師の診断を受けた日としている。例えば20歳以降になって初めて診療を受けた場合は、その日が初診日となる。手術などで症状があらわれた場合は、手術などで症状が現れた日が初診日となる。なお、審査で先天性と判断されれば、初診日は誕生日とされることがある。

 糖尿病性網膜症は糖尿病の合併症である。糖尿病と糖尿病性網膜症は相当因果関係「あり」とされる。糖尿病がなかったならば、糖尿病性網膜症が起こらなかったであろうと認められるからである。糖尿病における初めて医師の診断を受けた日が初診日となる。

 糖尿病性網膜症を合併したものの程度は、「眼の障害」の基準により認定する。

 

眼の障害を有する人の障害認定は、一般的には「差引認定」の取扱いが行われる。

 眼球委縮、緑内障、糖尿病性網膜症のように「視力」「視野」の両方に障害がみられるケースがある。視力障害と視野障害が併存する場合には、「併合認定」の可能性が高い。過不足のない診断書を医師に作成してもらうことが大切である。

 

また、まぶたの欠損障害、調節機能障害、輻輳機能障害、まぶたの運動障害、眼球の運動障害又は瞳孔の障害が併存する場合には、「併合認定」の可能性がある。

 

 脳腫瘍で目に疾患がある場合は、「肢体の障害用」の診断書と「目の障害用」の診断書を必要とする。

 

 

虚血性視神経症

 

虚血性視神経症は、視神経への血液供給が妨げられて起こる視神経の損傷です。

閉塞は、動脈の炎症(普通は側頭動脈炎と呼ばれる障害と関連しています)を伴うことも、伴わないこともあります。

 

原因

眼内の視神経の部分への血液供給が妨げられると、視神経細胞の機能不全につながることがあります。非動脈炎性と動脈炎性の2つの種類があります。

非動脈炎性虚血性視神経症は多くの場合50歳以上の人に起きます。危険因子には高血圧、糖尿病、アテローム動脈硬化があります。まれにひどい片頭痛をもつ若い人にもみられます。動脈炎性虚血性視神経症は多くの場合70歳以上の人に起きます。動脈が炎症(動脈炎)を起こしたために、視神経への血液供給が妨げられて視神経症が起こるもので、特に多いのは側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)です。

 

症状

視力は急激に低下します(数分間、数時間または数日かけて)。視力障害が片眼に生じるか両眼に生じるかは原因によって異なります。視力への影響はさまざまで、ほぼ正常のこともあれば完全に失明する場合もあります。視野の中心部に小さい視野欠損が生じてゆっくりと大きくなり、ときには視力が完全に失われることがあります。側頭動脈炎の患者は高齢者であることが多く、視力障害の程度がより重くなる傾向があります。噛む時に痛みを感じたり、筋肉痛や痛みがあったり、髪をくしでとかすときに痛むことがあります。

非動脈炎性虚血性視神経症の約40%は、時間の経過とともに自然に回復します。の場合は、同じ側の眼に視神経症が再発することは極めてまれです。患者の約20%は5年以内にもう片方の眼に視神経症を発症すると推定されています。

側頭動脈炎が原因の動脈炎性虚血性視神経症では、治療を開始しなかった場合に、数日から数週間の間に患者の25~50%で反対側の眼に視力障害が生じます。

 

診断

検眼鏡で眼の後部を観察して診断します。原因の決定にあたり、危険因子として知られている障害があるかどうかを判断します。

原因として側頭動脈炎が疑われる場合は、診断を確定するために、血液検査と顕微鏡による側頭動脈組織サンプルの検査(生検)を行うことがあります。側頭動脈炎の症状がまったくない場合には、脳のMRI検査またはCT検査を行って、視神経が腫瘍により圧迫されていないことを確認することがあります。

 

治療

非動脈炎性虚血性視神経症の治療では、視神経への血液供給に影響を与える血圧、糖尿病、およびその他の要因のコントロールが含まれます。側頭動脈炎が原因の動脈炎性虚血性視神経症では、反対側の眼の視力障害を防ぐために、コルチコステロイドの大量投与を行います。

 

 

先天性弱視

 

先天性弱視は、生まれつき網膜に鮮明な画像が結ばれないことにより、物がぼやけて見える症状です。

 

先天性弱視の原因としては、先天性白内障や網膜疾患などの眼病によることがあります。しかし多くの場合は、遠視・斜視・強度の乱視・不同視によるものと言われています。

 

先天性弱視の治療方法としては、まず治療の時期が重要です。10歳くらいから治療を初めてもさほど効果が高くないと言われています。そのため、6歳から8歳の時期までに治療を行うのが通例です。その方法としては、弱視でない方の眼を隠して、弱視の眼に眼鏡などの視力矯正器具を使用しながら生活することで、弱視の眼を強制的に使用するようにあります。いわば、弱視の眼の徹底的なトレーニングを行うわけです。両目とも弱視の場合は、両目に対して視力補正を行い、両目同時にトレーニングを行います。

 

 

 

小眼球症

 

 小眼球症は、生まれたときから視力障害などの重度な視覚障害を引き起こします。だいたいの視力としては0.02未満や、視力検査不能なほどの視力障害となります。

 

 さまざまな合併症も発症しやすく、白内障や緑内障、網膜剥離などを発症する確率が高くなっています。角膜や水晶体、網膜硝子体、視神経に関する先天性の眼の異常を合併することが多いのも特徴です。

 

 小眼球症は、まだ明らかになっていないことが多い病気ですが、研究の結果、遺伝子異常で発症することがわかり、その原因遺伝子も特定され始めています。他にも、薬物やアルコールなどの環境要因により発症することがあります。

 

 小眼球症の治療方針は、明確には打ち立てられていないのが現状です。

 主には対症療法となり、視力低下については、眼鏡を常用することにより弱視治療を行うことで、保有している視力の発達を促します。

 白内障や緑内障などを併発している場合は、その手術が行われます。

 早期に診断して適切な処置を行えば、訓練次第で保有視力の向上が期待できます。その一方で、義眼を使用することによる、整形外科的な治療が必要になる重症例もあります。

 

 

 

 

眼球振盪症

 

眼球振盪症とは意思に無関係に眼球が振動する病気です。普段両眼は連動してバランスをとって動きますが、このバランスがくずれた状態です。ダンシングアイ、往復眼球運動、制御不可能な目の動き、制御不能な眼球運動、急速な眼球運動とも表現されます。  眼球振盪症の根本的な原因はまだ判明していません。固視不能や眼球運動を制御している部分の障害が影響していると考えられています。固視不能とは一点を集中してみることができないことを言います。眼球運動を制御する部分は脳または内耳にあり、眼の動きや位置を調整します。この部分に障害が起きることによって眼球振盪症が起こると考えられています。また、先天性・後天性両方があります。先天性の眼球振盪症は親からの遺伝によるもので、一般的に生後6週間から3カ月以内に出現します。通常は軽度ですが、稀に乳児眼振症候群というものを引き起こすことがあります。ただこれは合併症を引き起こすことはなく、視力障害が起こります。後天性の眼球振盪症はいつでもだれでも発症する可能性があります。多くの場合疾病や怪我の結果としてもたらされます。具体的には脳卒中、鎮静剤・抗けいれん薬などのある種の薬剤、アルコールの過剰摂取、頭部の傷害または外傷、内耳の疾患、B12またはチアミンなどビタミンの欠乏、脳の疾患等が挙げられます。  先天性の眼球振盪症の場合、突発的な事象がない限り経過観察が主になります。また補正レンズや眼科手術により視力を改善することができます。後天性の眼球振盪症の場合はその病気のもとになる病気を改善することが先決です。

以上は病的なものですが、眼球振盪の中には生理的なものがあります。よくいわれる「目が泳いでいる」状態で、極度の緊張状態のときに発生します。例として例えば電車に乗っている際に窓の外を見ている状態において生じるこの鉄道眼振といわれるものがあります。時間が経てば症状はおさまります。

 

 

 

眼瞼痙攣

 

眼瞼痙攣は瞼を動かす筋肉が収縮して痙攣する病気です。軽度の場合は瞼に違和感があるだけですが、視界がぼやけたり、目が乾燥しやすくなったりするケースもあります。症状が進行して、痙攣が酷くなると、瞼の開閉が上手くできなくなることもあります。さらに症状が進行すると、全く目が開けられなくなり、日常生活に支障をきたしてしまいます。両目の瞼に同時に症状が現れるケースがほとんどですが、片方だけに発症することもあります。

 

眼瞼痙攣の原因は大きく二つに分けられます。一つは脳と目を結ぶ視神経に障害が起こっているケースです。視神経の障害は外的な衝撃で生じることもありますが、精神性のストレスによって引き起こされることも多いです。もう一つの原因は、結膜炎などの病気によって瞼の筋肉が炎症を起こしているケースです。瞼の病気にかかった時に、手で強く擦り過ぎた場合などに起こりやすいです。また、それほど強く擦っていなくても、手に付着していたウイルスが瞼の組織に入り込んで発症する場合もあります。

 

眼瞼痙攣はよくドライアイと勘違いされます。初期症状が非常に似ているので、判断が難しいのです。そのため、眼瞼痙攣の検査を行う場合は、同時にドライアイの検査も行うことが多いです。眼瞼痙攣の診断では、瞼を動かす検査を行うのが一般的です。医師の指示するタイミングで瞼を開閉させることにより、瞼の筋肉の反応を確認するのです。また、瞼だけでなく、視力検査も行います。眼瞼痙攣が進行していると、視力にも影響がでることが多いからです。

眼瞼痙攣の治療では、患部に痙攣を緩和するための薬剤を注射することが多いです。注射された薬剤は瞼の筋肉に作用し、収縮する動きを抑制します。一度注射すれば数ヶ月は筋肉に作用し続けるので、頻繁に病院に通う必要はありません。しかし、薬剤の効果が切れると再発するケースが非常に多いので、完治するまでは数ヶ月ごとに注射をしてもらうことになります。注射した直後は瞼の動きが鈍くなることもありますが、多くの場合はすぐに解消します。

 

 

 

 

網脈絡膜萎縮

 

 網脈絡膜萎縮とは、眼軸の伸展によって脈絡膜が薄くなって、脈絡膜、網膜が障害されて萎縮する疾患です。視界がまだらに見えたり、物がゆがんで見えたりする症状が現れます。

場合によっては、視野の中心部が黒く見える、色覚異常が起こるなどし、比較的早く進行します。眼底を見ると黄斑変性や、黄斑部の出血、白斑、浮腫、網膜分離などが起こっています。

 

 網脈絡膜萎縮の治療に関しては、残念ながら一度萎縮した網脈絡膜を元に戻すことはできません。

 加齢黄斑変性が根本疾患となっている場合は、光線力学的療法や抗血管内皮増殖因子薬を硝子体内に注射する方法なども開発されていて、効果を上げ始めています。

 また、ステロイド局所投与などを併用すると、網膜保護の効能があることも分かり始めています。

 

 

網脈血管硬化症

 

網脈血管硬化症は、動脈硬化症や高血圧症などの影響を受け、網膜の血管に異常が起きてしまう疾患です。多くの場合は自覚症状が無いのが特徴です。高血圧症から引き起こされている場合は進行すると動脈が細くなり、網膜にて出血や濁りが発生することもあります。動脈が細くなると、網膜の栄養や酸素が不足して新たな血管が伸びますが、その血管は脆くて壊れやすいため、出血しやすくなります。動脈硬化症から引き起こされている場合は、静脈が太くなったり蛇行したりします。高血圧症起因でも動脈硬化症起因でも放置すると著しい視力障害が発生する危険性があります。

 

網脈血管硬化症は、高血圧症や動脈硬化症が根本的な原因となります。高血圧症が原因となる場合は、網膜血管の壁が硬く変性する動脈硬化状態になります。血圧が著しく高くなった場合、白斑や出血、網膜の浮腫、視神経の浮腫などを引き起こすのです。動脈硬化症が原因となる場合は、コレステロールの沈着が起こるため、動脈の壁が厚くなり、動脈の下で交差している静脈の血管が途中で遮られるように見える、交差現象が発生します。動脈の壁の硬化が進むと、眼球が白く濁って見えるようになります。

 

網脈血管硬化症の診断は、眼底検査を行ったり眼底写真を撮影したりすることにより行います。動脈が細くなっていることを確認し、白斑や網膜の浮腫の有無、視神経の浮腫の有無などが確認されます。動脈硬化性の変化も合わせて確認され、動脈の反射が高まっていないか、静脈が太くなったり蛇行したりしていないかなどが確認されます。血管の硬化が進行していると、動脈が銅線や銀線のような色合いに変化します。診断内容は、いくつかの段階分けが行われ、後の治療の目安とされます。

 

網脈血管硬化症の治療方法としては、根本原因となっている高血圧症や動脈硬化症の治療が行われます。高血圧症の治療としては、適度な運動の推進や食生活の改善など生活習慣に関する改善が行われると同時に、高圧治療薬などにて血圧を下げる薬物療法も併用されます。動脈硬化症の治療も、運動や食生活など生活習慣に関しての改善が行われると同時に、コレステロールを下げる薬剤を使用した薬物療法も合わせて行われます。他の視力低下につながる疾患に発展させないように、全身的な治療に注力されるのが特徴です。

 

 


癒着性角膜白斑

 

癒着性角膜白斑になると、角膜が白く混濁し、光が網膜まで届かなくなり、その結果、視力が失われます。発症すると徐々に角膜から透明感が失われていきます。混濁する範囲は限定的なことが多いですが、網膜全体を覆うような広い範囲に及ぶケースもあります。また、混濁の具合も症状によって様々です。軽度の場合は角膜片雲と呼ばれ、一見しただけでは分からないこともありますが、重度の場合は非常に濃い白斑が生じます。

 

癒着性角膜白斑の主な原因は、角膜の内皮の細胞が死んでしまうことです。内皮の細胞は酸素が不足すると死んでしまいます。他の眼の病気によって酸素が供給されなくなり、細胞が死んでしまうケースが少なくありません。また、眼の傷や炎症が原因となることもあります。細菌やウィルスが角膜に侵入することによって細胞が死んでしまうのです。その他にも、遺伝やホルモンが原因で発症するケースもあるといわれており、研究が行われている状況です。

 

癒着性角膜白斑の診断は、眼底検査によって行います。まず、視力の低下や視界の歪みの有無を調べます。しかし、症状が軽い場合は通常の眼底検査では確認できないことも多いです。そのため、違和感がある程度の場合は、数回検査を受けることも珍しくありません。眼底検査にて癒着性角膜白斑が疑われる場合は、角膜の精密検査を行います。角膜は目視では認識できないため、特殊なカメラで撮影をします。そして、角膜の画像を分析し、混濁具合や形を精査して診断を行います。

 

癒着性角膜白斑の治療は、混濁した角膜を除去することで行います。点眼治療を行うこともありますが、それだけで根本的に回復することは稀です。網膜の炎症を抑えたり、網膜を保護したりする目的で行われます。角膜の手術では、除去した角膜の代わりに正常な角膜を移植します。そのため、角膜の提供を受ける必要があります。角膜の移植を行えば、ほとんどの場合は発症前の視力を取り戻せますが、角膜の提供者が少ないという問題があります。

 

 


角膜潰瘍

 

角膜潰瘍とは、角膜にできた、感染したびらんのことです。

コンタクトレンズ、損傷、薬剤、障害、栄養欠乏がびらんの原因となることがあります。

痛み、異物感、眼の充血、流涙、光に対する過敏が一般的に見られます。

通常、抗生物質、抗ウイルス薬、抗真菌薬をできるだけ早く使用します。

角膜潰瘍は、角膜が傷つくことから始まり、そこに細菌や真菌(カビなど)、(汚染された水の中にみられる)原生動物であるアカントアメーバが感染して起こることがあります。ウイルス性潰瘍(ヘルペスウイルスによる場合が多い)は、身体的なストレスが引き金になって再発することもあれば、特に原因なく再発することもあります。また、眼の中に異物が入ったままになっていた場合や、さらに多いのは、コンタクトレンズで眼が刺激された場合(特に、コンタクトレンズをつけたまま眠った場合や、レンズの消毒が不十分な場合)にも角膜潰瘍が生じることがあります。ビタミンAやタンパク質の不足が原因で角膜潰瘍ができることもあります。しかし、このような角膜潰瘍は米国ではまれにしかみられません。

まぶたが適切に閉じられない場合には、角膜が乾燥し、刺激を受けることがあります。このような刺激は損傷につながり、角膜潰瘍に発展することがあります。まつ毛が内向きに生えていたり(さかさまつ毛)、まぶたが内向きに反転している場合(眼瞼内反)や、まぶたの炎症(眼瞼炎)も角膜潰瘍の原因になります。

 

症状

角膜潰瘍は痛みを引き起こし、通常は、眼の中に何か異物が入っている感じがします。また、眼がうずき、光に過敏になって涙の量が増えます。しばしば、潰瘍は角膜上の白い点として現れます。ときには、潰瘍が角膜全体に及び、深くなることもあります。角膜の裏側に膿がたまることがあり、ときに角膜の最も下に白い層が形成されます。潰瘍が深くなるほど、潰瘍の症状も合併症もひどくなります。多くの場合、結膜は充血し、粘液状の白い分泌物が認められます。

 

角膜潰瘍は治療で治ることもありますが、角膜に濁った瘢痕が残って視力を低下させる場合もあります。その他の合併症としては、深部への感染症、角膜穿孔、虹彩脱出、眼窩内の組織の大半または全部の破壊などがあります。

 

診断

潰瘍の状態を観察しやすくするため、潰瘍に一時的に色をつけて、より明瞭な検査を可能とするフルオレセインという色素が含まれた点眼薬が使用されることがあります。

 

治療

角膜潰瘍は、すみやかな治療を要する緊急の病気です。

治療は基礎にある状態に応じて行います。たとえば、多くの場合抗生物質や抗ウイルス薬、抗真菌薬が直ちに必要です。角膜移植が必要となることもあります。

 

 

感染性結膜炎

 

感染性結膜炎とは、通常、ウイルスや細菌が原因で起こる結膜の炎症です。

細菌やウイルスは結膜に感染を引き起こします。

充血、刺激感、流涙、目やに、光に対する過敏症が一般的な症状です。

清潔にすることで、感染の広がりを防ぐことができます。

抗生物質の点眼薬がしばしば投与されます。

 

結膜に感染する微生物はたくさんあります。原因として最も多いのはウイルスで、特にアデノウイルスというグループが多くみられます。細菌感染は比較的少なめです。ウイルス性結膜炎も細菌性結膜炎も感染力が強く、人から人へ、あるいは感染した眼からもう一方の眼へとたやすくうつります。真菌(カビなど)による結膜炎はまれで、主に、コルチコステロイド点眼薬を長期間使用していた人や、植物性の異物などでケガをした人にみられます。新生児はとりわけ眼の感染症にかかりやすく、出生時の母親の産道が感染経路になります。

 

封入体結膜炎は特に長期化する結膜炎で、細菌の1種であるクラミジア・トラコマチスが原因で起こります。封入体結膜炎は、通常、クラミジア感染症にかかっている人の性器からの分泌物に接触することで感染します。トラコーマは、クラミジア・トラコマチスによって引き起こされる別のタイプの結膜炎です。性感染症を引き起こす淋菌が眼に広がり、結膜炎が起こることもあります。

重度の感染では結膜が瘢痕化し、涙液の層に異常が生じることがあります。時に、結膜の感染がひどくなると角膜(眼の透明な部分)にも広がることがあります。

 

症状

感染すると刺激を感じ、明るい光をまぶしく感じます。結膜は内部の血管が広がるためピンク色になり、目やにが出ます。特に朝起きた時など、目やにで眼が開けにくいことが多くあります。目やににより視界がぼやけることもあります。まばたきを行うことで、目やにが無くなると、視力は回復します。角膜にまで感染が広がると視界のぼやけは、まばたきをしても解消しません。非常にまれですが、重度の感染により結膜が瘢痕化すると、長期間にわたって視力が障害されます。

 

ウイルス性結膜炎は以下の点で、細菌性結膜炎と異なります。

目やには、ウイルス性結膜炎の場合は水っぽく、細菌性結膜炎の場合は白や黄色のドロッとしたものになる傾向があります。

上気道感染があると、ウイルス性である可能性が高くなります。

ウイルス性結膜炎では耳の前のリンパ節が腫れて痛みもありますが、細菌性結膜炎では通常そのようなことは起こりません。

しかし、これらの要素で常にウイルス性結膜炎と細菌性結膜炎を見分けることができるわけではありません。

封入体結膜炎や淋菌性結膜炎の場合、女性男性を問わず性器から分泌物が出たり排尿時に焼けつくような痛みがあるなど、性感染症の症状がしばしばみられます。

 

診断

感染性結膜炎は症状と眼の外観により診断します。細隙灯(眼の表面を拡大して見る道具)を用いて眼を丹念に調べます。感染性分泌物のサンプルを採取して検査室に送り、培養して、感染の原因菌を特定します。しかし、通常このような検査は、症状がひどいとき、再発したとき、クラミジアや淋菌が原因と考えられるときにのみ行われます。

 

予後(経過の見通し)と治療

感染性結膜炎は、最終的にはほとんどの場合自然に治ります。しかし、ある種の細菌による細菌性結膜炎では特に治療を受けないと長びく場合もあります。封入体結膜炎は、治療を受けなければ、治るまでに数カ月かかることがあります。

まぶたの上に目やにがたまっているときは、きれいな手ぬぐいに水道水を含ませ、眼を閉じてまぶたの上からやさしくふいてください。温湿布または冷湿布をすると眼の刺激が和らぐことがあります。感染性の結膜炎(細菌性、ウイルス性とも)は感染力が強いので、結膜炎にかかっている人は、眼を洗ったり薬を塗った後には手をよく洗う必要があります。また、感染している眼に触れた後で感染していない眼に触れないように気をつけます。感染している眼をふいたタオルや手ぬぐいは、他のタオル類と別にしておくべきです。感染性結膜炎にかかった場合は、かぜをひいたときと同じように学校や仕事を数日間休むようにします。ウイルス性結膜炎では、最もひどい場合、週単位で自宅に留まることになります。

 

抗生物質は細菌性結膜炎の場合には効き目があります。しかし、細菌性結膜炎とウイルス性結膜炎を区別するのは難しいため、結膜炎では患者全員に抗生物質が処方されることもあります。さまざまな種類の細菌に効果があるシプロフロキサシンやトリメトプリム・ポリミキシンなどの抗生物質の点眼薬や眼軟膏を7~10日間使用します。目薬は1日4回点眼します。眼軟膏は効果が長いため6時間ごとに使用しますが、塗った後、視界がぼやけるという難点があります。

封入体結膜炎には、アジスロマイシン、ドキシサイクリン、エリスロマイシンなどの抗生物質を服用する必要があります。淋菌性結膜炎にはセフトリアキソンの注射を行うことがあります。アデノウイルスによる結膜炎で症状が重い場合、特に、炎症がひどくて日常生活に支障が出ている場合には、ステロイド点眼薬を使用することがあります。抗ウイルス薬の点眼は、総じてウイルス性の結膜炎には効果がありませんが、例外はあります。たとえば、ヘルペスウイルスが原因の結膜炎では、抗ウイルス薬の点眼薬(トリフルリジン点眼薬)か、内服薬(アシクロビル)を使用します。