雇止め

 雇止めとは、期間の定めのある雇用契約において、雇用期間が満了したときに使用者が契約を更新せずに、労働者を辞めさせることをいいます。

 パートタイマー、契約社員、嘱託社員など有期の労働契約の更新を繰り返し、通算の労働契約期間が長期に及ぶような場合は、事実上、期間の定めのない労働契約、つまり正社員と同様に雇用が常用化していますと、労働者は労働契約が当然に反復更新されるものとの期待を抱くこととなります。また、会社が突然期間満了を理由に契約を打ち切るというのは、妥当性に疑問を生じることとなります。

 このような状態の下での有期労働契約は、「期間の定めのない労働契約と実質的に異ならない状態で存在していた」として、その雇止めについては「解雇に関する法理を類推すべき」という最高裁判決が下されています(東芝柳町工場事件 最高裁 昭49.7.22 ほか)。

雇止めに関するハローワークの見方

  短期の有期雇用契約を繰り返し、トータルでその期間が3年を超えると「期間の定めのない契約」とみなされます。従って、3年を超えて雇止めを行うと解雇とみなされます。

 契約更新の回数が少なく、また通算の契約期間が長期に及ばない場合でも、次回の契約更新について、労働者が期待を持つような事実がある場合(期待利益の合理性の存在)には、雇止めに際しては、解雇に関する法理が類推されることになります日立メディコ事件 最高裁 昭61.12.4)。

 具体的判断基準については、雇用の実態、すなわち雇用の臨時性・常用性、更新の回数、雇用の通算期間、契約期間管理の状況、雇用継続の期待をもたせる言動・制度の有無などが総合的に検討され、労働者が継続雇用を期待することが首肯できるような状況においては、解雇権法理を類推適用されることとなっています。

 しかし、臨時工は本工と比較すると企業との結び付きが薄く、会社からは経済変動による雇用調整の役割を果たすことが期待され、雇われる側も長期間の本工としての雇用を嫌うなど、ある程度企業の意向を前提として雇用されている現実を踏まえ、例えば、本工に先立っての整理解雇の効力を広く認めるなど、その合理性の程度を本工の場合に比べて緩やかに解釈しています。

(参考判例)
 ・日立メディコ事件 最1小判昭61.12.4
 ・安田火災海上保険事件 福岡地小倉支判平4.1.14
 ・大阪郵便輸送事件 大阪地決平4.3.31
 ・国鉄大阪工事局事件 最3小判平4.10.20
 ・JALナビア大阪事件 大阪地判平17.12.9
 ・RFN事件 東京地判平18.3.24

 有期雇用者の「解雇」について、労働契約法では、「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がないときは、その契約期間が満了するまでの期間において、労働者を解雇することができない。」(労働契約法17条)と定められました。

 有期労働契約については、契約更新の繰り返しにより、一定期間雇用を継続したにもかかわらず、突然、契約更新をせずに期間満了をもって退職させる等の、いわゆる「雇止め」をめぐるトラブルが発生しています。このようなトラブルの防止や解決を図り、有期労働契約が労使双方から良好な雇用形態の一つとして活用していただくため、厚生労働省では、労働基準法に基づき有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(平成15年厚生労働省告示357号 改正・平成20年3月適用 平成20年厚生労働省告示第12号)を策定しました。パートタイム労働指針の一部も改正しました。

1 契約締結時の明示事項など

a.有期労働契約の締結に際し、その契約の更新の有無を明示しなければなりません。
b.「a.」の場合において、使用者がその契約を更新する場合がある旨明示したときは、契約を更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示しなければなりません。
c.有期労働契約の締結後に「a.」又は「b.」に規定する事項に関して変更する場合には、速やかにその内容を明示しなければなりません。a0027_000951

 

2 雇い止めの予告

 有期労働契約(雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している場合に限り、あらかじめ更新しない旨明示されているものを除く)を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも契約の期間の満了する日の30日前までに、その予告をしなければなりません。

 

3 雇い止めの理由の明示

a.使用者は、雇止めの予告後に労働者が雇止めの理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければなりません。
b.使用者は、雇止めの後に労働者が雇止めの理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければなりません。

 

4 契約期間についての配慮

 使用者は、有期労働契約(契約を1回以上更新し、かつ、雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している場合に限る)を更新しようとする場合には、契約の実態及びその労働者の希望に応じて契約期間をできる限り長くするよう努めなければなりません

 雇止めに関する基準第2条の雇止め予告の対象の範囲として、有期労働契約が3回以上更新された場合としました。

 これにより、使用者は、有期労働契約が3回以上更新されている場合において、当該有期労働契約を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも当該契約の期間の満了する日の30日前までにその予告をしなければならないこととなりました。

(1) 30日未満の契約期間の労働契約を3回以上更新した場合
(2) 2.の(1)の場合であって、適用日以後の契約の期間が30日未満である場合の雇止めに関しては、30日前までにその予告をするのが不可能な場合であっても、雇止めに関する基準第2条の趣旨に照らし、使用者は、できる限り速やかにその予告をしなければならないものであること。

労働契約法第17条(期間の定めのある労働契約)
 使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない
2 使用者は、有期労働契約について、その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない

 

「有期労働契約の締結及び更新・雇止めに関する基準」
(平成20年厚生労働省告示第12号)

第1条(契約締結時の明示事項等)    
 使用者は、期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)の締結に際し、労働者に対して、当該契約の期間の満了後における当該契約に係る更新の有無を係る更新の有無を明示しなければならない
2 前項の場合において、使用者が当該契約を更新する場合がある旨明示したときは、使用者は、労働者に対して当該契約を更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示しなければならない。
3 使用者は、有期労働契約の締結後に前2項に規定する事項に関して変更する場合には、当該契約を締結した労働者に対して、速やかにその内容を明示しなければならない。

第2条(雇止めの予告)
 使用者は、有期労働契約(当該契約を3回以上更新し、又は雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係るものに限り、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く。次条第2項において同じ。)を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも当該契約の期間の満了する日の30日前までに、その予告をしなければならない

第3条(雇止めの理由の明示)
 前条の場合において、使用者は、労働者が更新しないこととする理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。
2 有期労働契約が更新されなかった場合において、使用者は、労働者が更新しなかった理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。

第4条(契約期間についての配慮)    
 使用者は、有期労働契約(当該契約を1回以上更新し、かつ、雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係るものに限る。)を更新しようとする場合においては、当該契約の実態及び当該労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければならない

(判例)

旭硝子事件 東京高裁判決 (昭和58年9月20日)
伊予銀行・いよぎんスタッフサービス事件 最高裁第1小(平成21.3.27)
大阪工業大学事件 大阪地裁判決(昭和59年2月1日)
大阪郵便輸送事件 大阪地方裁判所(平成4年3月31日)
クリスタル観光バス(雇用延長)事件 大阪高裁判決(平19・1・19)
国際自動車事件 東京地方裁判所(昭和49年12月23日)
国鉄大阪工事局事件 最高裁判所第三小法廷(平成4年10月20日)
三葉興業事件 東京地裁決定(昭和59年3月5日)
三洋電機事件 大阪地方裁判所(平成3年10月22日)
ニッセイテック事件 大阪地裁決定(昭和59年2月2日)
福岡大和倉庫事件 福岡地裁判決(平成2年12月12日)
平安閣事件 最高裁判所第二小法廷(昭和62年10月16日)
丸子警報器(雇止め・本訴)事件 東京高裁(平成11・3・31)
三井海上火災保険事件 大阪地方裁判所(平成10年1月23日)

 

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