休暇等

休暇

 会社が従業員に与える休暇としては、年次有給休暇の他にも生理休暇、産前産後の休暇、育児・介護休業法における休暇、慶弔休暇、その他会社が与える特別の休暇があります。

 会社が与える特別の休暇とは、例えばボランティア休暇やリフレッシュ休暇のようなものです。この他にも中高年向けのキャリアアップのために休暇を与えて必要な能力や知識を与える目的のものもあります。 この場合の有給・無給の取扱ですが、生理休暇や産前産後休暇等は、無給であるのに対して、慶弔休暇は有給であるケースが多い。会社の方針で決定されます。

 

○特別休暇

 特別休暇は、就業規則の相対的必要記載事項であり、必ずしも設けなくても良い制度です。従業員の福利厚生等を目的として特別休暇を設ける場合には、「よかれと思って作った制度がトラブルの元になる」といったことがないよう、起こりそうな事態を想定してきちんと規定しておくべきです。  労働基準法を越える休暇ですから、事前の申請に日数の制限を設けたり(忌引き等ではなかなか事前の申請が難しい場合もありますが)、取得事由を明らかにする書類を提出させるといったことも規定しておくことができます。これらは例えばなにも「特別休暇の度に証明を提出させる」ことが目的ではなく、このように規定しておくことによって、虚偽の理由で特別休暇を申請しようとするのを「未然に防ぐ」ことが目的であるのは当然です。  その他、「特別休暇が本来の休日と重なった場合にどう取り扱うか」といったこともトラブルの元になりやすく、きちんと規定しておく必要があります。 また会社によっては「社員といえば正社員のことなんだからこれでいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、労働基準法は「正社員」「パート」「アルバイト」といった区別をしておらず、これらはあくまでも会社の定義によるものですから、これもきちんと定義を規定しておくことは重要です。

 特別休暇は暦日か労働日か、連続か断続か明確にしておきます。

・特別休暇の起算日について定めます。  
  「本人が結婚する時」は、挙式前後連続○日(当日からか前日からか定める)
  「兄弟姉妹が結婚する時」は、挙式当日から   
  「父母が死亡した時」は、死亡日より連続○日  
  「結婚休暇は1回に限る。」

就業規則規定例

第○条 (特別休暇)
 従業員が次に該当する場合は本人の請求により特別休暇を与える。ただし、特別休暇は暦日で計算するが、日数には会社の休日を含めることとする。  
① 本人の結婚休暇  連続5日  
② 妻の出産休暇  2日
③ 子・兄弟姉妹が結婚する時  1日
④ 配偶者・子・父母が死亡した時  連続5日    
⑤ 実兄弟姉妹・配偶者の父母の死亡  2日
⑥ 配偶者の祖父母または兄弟姉妹が死亡したとき  2日  
⑦ 災事変のためのやむをえないとき    会社が必要と認めた日数    
⑧その他、前各号に準じ会社が必要と認めた場合    会社が必要と認めた日数  

2 特別休暇を請求する場合は原則として事前に請求しなければならない。ただし、やむ得ない場合は、事後速やかに届けなければならない。届け出なく欠勤した場合又は事後の手続きを怠った場合は、無断欠勤とみなす。

3 特別休暇は有給とし、通常の賃金を支給する。

  特に10年、20年の区切りに会社が特別休暇を与えるといいと思います。いわゆるリフレッシュ休暇です。

 リフレッシュ休暇の日数に対して賃金の支給については、有給とする企業が多いようです。

就業規則規定例

第○条(リフレッシュ休暇)
 
従業員が次の各号の一つに該当するときは特別休暇を与える。この間は有給とし、通常の賃金を支給する。
 ① 勤続10年の者(毎年4月1日現在) 5日 

 ② 勤続20年の者(毎年4月1日現在)  10日  
 ③ 勤続30年の者(毎年4月1日現在)  15日

 ・・・

 こうした特別休暇と一緒に永年勤続表彰を組み合わせると、さらに有効です。これも社員の帰属意識が高まります。
 特別休暇については、相対的必要記載事項であり、労務管理上のリスクとメリットを充分に検討した上で、その日数や取得理由、申請の方法などについて分かりやすい形で規定することが重要です。

 

○産前産後の休暇

 6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産予定の女性労働者が休業を請求した場合には、その者を就業させてはなりません(労基法第65条第1項)。

  産後8週間を経過しない女性労働者を就業させてはいけません。ただし、産後6週間を経過した女性労働者から請求があったときは、医師が支障がないと認めた業務には就かせることができます(労基法第65条第2項)。

 産前産後の休業を請求し、又は取得したことを理由として解雇その他不利益な取扱いをしてはなりません(均等法第9条第3項)。

就業規則規定例

第○条(産前産後の休業)    
 6週間以内(多胎妊娠の場合は14週間以内)に出産予定の女性従業員が申し出た場合には、産前6週間以内(多胎妊娠の場合は14週間以内)の休暇を与える。

2 産後は申出の有無にかかわらず、出産日から8週間の休暇を与える。ただし、産後6週間を経過し、本人から請求があった場合には、医師により支障がないと認められた業務へ就業させることがある。

3 産前産後の休暇は無給とする。

 産前・産後休暇は法律で定められていますので、産前の休暇は本人の請求があった場合、必ず与えなければなりません(労働基準法第65条)。

 産前休業は出産予定日を含んで6週間(多胎妊娠は14週間)以内に出産予定の者が請求したときは休業させること。母性保護の観点から就業させることができません。

 出産の範囲は、妊娠4ヵ月以上(1ヵ月は28日として計算しますので、4ヵ月以上というのは、28日 × 3ヵ月 + 1日 = 85日以上のことになります)の分娩とし、死産も含まれます。また、出産当日は産前に含まれます。

 なお、6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に予定されていた出産が予定よりも遅れた場合は、予定日から出産当日までの期間は産前の休業に含まれます。

 産後休業は出産後8週間は休業させること。

 産前の休業については、女性からの請求が条件となっていますが、産後の休業は8週間を経過しない女性を請求の有無にかかわらず就業させてはなりません

 ただし、産婦の健康状態は個人によって異なるので、産後6週間を経過しており、かつ、労働者の請求を条件として医師が差し支えないと認めた業務に限り就業させることが認められます。使用者は、産後6週間を経過しない女性について、当該女性が就労を請求した場合であってもその者を就労させてはなりません。

 産前産後の休業関連について押さえておきたいのは、請求すれば就業可能なのか、請求があっても就業させてはいけないのかという点です。
 キーワードは「請求」です。
 まとめますと、
(1) 産前6週間(双子などの多胎妊娠の場合14週間) 原則は就業
 「請求」があれば、就業させてはならない。
 「請求」があれば、他の軽易な業務に転換させなければならない。

(2) 産後8週間(産後6週間を経過していない)
 「請求」の有無にかかわらず、絶対に就業させてはならない。

(3) 産後8週間(産後6週間を経過後)  原則は休業
 「請求」があり、かつ、その者の医師が支障ないと認めた場合は就業させてもよい。

 使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければなりませんこのような場合には、当然に賃金が低下することが考えられます。賃金が低下するならば、その旨を規定する必要があります。軽易な業務とは、原則として女性が請求した業務に転換させる趣旨であり、新たに軽易な業務を創設して与える義務はありません

 産前産後の女性が休業する期間については、本規定のほか、次のような保護が与えられます。

(1) 産前産後の休業期間中の賃金については、規定で定められていませんので、労働協約、就業規則等で定めるところにより、有給、無給のいずれでも差し支えありません。(通常無給扱いとなります。)

 どちらにしても、はっきり就業規則に規定しておく必要があります。

 無給であれば、健康保険法により標準報酬日額の3分の2に相当する金額が出産手当金として支給されます。

(2) 平均賃金の計算にあたっては、この期間は計算の基礎から除外されるので、平均賃金が不当に低くなることはありません。

(3) 年次有給休暇における出勤率8割の算定において、休業期間は出勤したものとみなされます

(4) 本規定による休業期間中とその後30日間は、原則として解雇が制限されます。

 

産前産後の休業期間中の年次有給休暇の利用

 産前産後休業と年次有給休暇との関係について、産前休業と産後休業とで取扱いが異なります。

 産前休業については、これをとらず年次有給休暇を利用することが可能です。

 これに対し、産後休業の期間については、年次有給休暇の利用はできないと解されています。というのは、産前休業は、これを利用するか否かの判断が労働者本人に委ねられており、請求した場合のみ休暇が与えられるのに対し、産後の休業は本人の希望の如何や請求の有無に無関係で、産後8週間を経過していない限りその間は就業させることはできないという違いによるものです。

 出産に関しては、健康保険から「出産育児一時金」と「出産手当金」という手当が受けられます。

 

○母子健康管理の措置

 女性の社会進出が進み、妊娠・出産後も働き続ける女性労働者が増加している中で、母性を保護し、女性が働きながら安心して出産できる条件を整備するため、「妊娠中及び出産後の女性労働者の健康管理に関する規定」が法律で義務化されています。

必要な時間を確保

 事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、その雇用する女性労働者が母子保健法の規定による保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間を確保することができるようにしなければならない。(男女雇用機会均等法第12条)

 具体的には、厚生労働省令により、女性労働者が次のような妊娠週数の区分に応じた回数、 保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間を確保できるようにしなければならないとされています。

産前の場合
 妊娠23週まで・・・・・・・・・・・4週に1回
 妊娠24週から35週まで・・・・・・2週に1回
 妊娠36週から出産まで・・・・・・・ 1週に1回
 ただし、医師又は助産師(以下「医師等」)がこれと異なる指示をしたとは、その指示により、必要な時間を確保することができるようにすることが必要です。

産後(1年以内)の場合
 医師等の指示により、必要な時間を確保することができるようにしなくてはなりません。

必要な措置
 事業主は、その雇用する女性労働者が前条の保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするため、勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置を講じなければなりません。 (男女雇用機会均等法第13条第1項)

 「必要な措置」の具体的な内容については、「妊娠中及び出産後の女性労働者が保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針」 において定められています。

事業主が講ずべき母性健康管理上の措置
 ①妊娠中の通勤緩和
   (時差通勤、勤務時間の短縮等)

 ②妊娠中の休憩に関する措置
  (休憩時間の延長、休憩の回数の増加等)

 ③妊娠中又は出産後の症状等に対応する措置
 (作業の制限、勤務時間の短縮、休業等)

いずれの場合も、
・医師等により指導を受けた旨の申出があった場合
  →指導に基づき、必要な措置を講じなければなりません。

・医師等による指導はないが本人から申出があった場合や、指導に基づく必要な措置が不明確である場合
 →担当の医師等と連絡をとり、その判断を求める等により必要な措置を講じなければなりません。

 医師から「2週間程度の休業が必要」という指導があったと申出があれば必ずその指導通りに対応しなければなりません。

 業務が忙しいから等の理由で休業自体を与えなかったり、指導された期間を勝手に短縮したりすることはできません。

 これらの措置のスタートは本人(妊産婦)からの「申出」です。妊産婦全員に一律自動的にスタートするわけではありません。

就業規則規定例

第○条(母性健康管理の措置)   
 妊娠中又は産後1年を経過しない女性従業員から、所定労働時間内に母子保健法に基づく保健指導又は健康診査を受けるために通院休暇の請求があったときは、次の範囲で休暇を与える。ただし、この休暇は無給扱いとする。

(1) 産前の場合
 妊娠23週まで     :  4週に1回
 妊娠24週から35週まで :     2週に1回
 妊娠36週から出産まで :  1週に1回
 ただし、医師等がこれと異なる指示をしたときは、その指示により必要な回数及び時間

(2) 産後(1年以内)の場合
 医師等の指示により必要な時間

2 妊娠中又は出産後1年を経過しない女性労働者から、保健指導又は健康診査に基づき勤務時間等について医師等の指導を受けた旨申出があった場合、次の措置を講ずる。
(1) 妊娠中の通勤緩和措置として、通勤時の混雑を避けるよう指導された場合は、原則として時間の勤務時間の短縮又は時間以内の時差出勤を認める。
(2) 妊娠中の休憩時間について指導された場合は、適宜休憩時間の延長や休憩の回数を増やす。
(3) 妊娠中又は出産後の女性労働者が、その症状等に関して指導された場合は、医師等の指導事項を遵守するための作業の軽減や勤務時間の短縮、休業等の措置をとる。

 

就業規則規定例

第〇条(妊産婦の時間外、休日労働及び深夜労働の制限)
 妊娠中又は産後1年を経過しない女性従業員(以下「妊産婦」という)が請求した場合は、第 条による時間外労働、休日労働及び深夜(午後10時から午前5時)労働を命じることはない。

2 妊娠中の女性従業員が請求した場合は、他の軽易な業務に転換させる。

 会社は、妊産婦が保健指導、健康診査を受ける為に必要な時間を確保できるようにしなければなりません。その必要な時間とは、保健指導、健康診査の時間と、通院にかかる時間も含みます。使いやすいように、時間単位若しくは半日単位で与えるなど、配慮してあげて下さい。

 事業主は、雇用する女性労働者が母子保健法(昭和40年法律第141号)の規定による保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間を確保することができるようにしなければなりません(均等法第12条)。また、事業主は、雇用する女性労働者が保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするため、勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置を講じなければなりません(均等法第13条)。

 母性健康管理措置を求め、又は措置を受けたことを理由として解雇その他不利益な取扱いをしてはいけません(均等法第9条第3項)。

妊婦の軽作業への転換
 妊婦が請求した場合には軽作業へ転換させる必要があります。このような場合には、当然に賃金が低下することが考えられます。賃金が低下するならば、その旨を規定する必要があります。

 

 ○生理日の措置

 以前は「生理休暇」と呼ばれていましたが、半日や時間単位の付与もあることから、現在は「措置」と称し、「休暇」とは区別されています。

 対象者の「請求」があった場合に発生すること
 あくまでも「請求」があった場合の権利です。
 自動的に発生するものではありません。

 使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはなりません(労働基準法第68条)。

 生理日の休暇は必ずしも暦日単位で行わなければならないものではなく、半日又は時間単位で請求した場合には、使用者はその範囲で就業させなければよいことになっています。

 生理日の就業が著しく困難な女性とは、月経時の苦痛がひどく、病的状態になり、就業が困難となる女性をいいますが、その証明は同僚の証言程度の簡単なもので与える方がよいとされています。
 生理休暇か否かの判断をするために、会社は診断書等の証明書を求めてはなりません。
 通常は本人から請求があった場合には生理休暇をあたえると考えておいた方がよいでしょう。

 生理日の休暇や慶弔休暇の場合、法律上は出勤扱いとする必要はありません。就業規則等によって、労使間で自由に定めることができます。もちろん、出勤率の算定の際には不利になってしまいますので、生理休暇や慶弔休暇を取得した日を出勤したものとみなすことは差し支えありません。生理日の休暇や慶弔休暇は、法令または就業規則等の定めによって、使用者が労働義務を免除しものですから、出勤率の算定に当たっては出勤したものとして取扱うか、出勤率の査定に不利にならないように、これらの休暇を「全労働日」から除外するなどの配慮が必要だと思われます

 年次有給休暇の発生条件である出勤率に含むかどうかは、労働基準法で決まりがなく、会社の自由です。生理日の措置によって就業しなかった期間は労働基準法上出勤したものとみなされませんが、当事者の合意によって出勤したものとみなすことも差し支えないこととされています(昭 23.7.31 基収2675号)。

 労働基準法は、これらの休暇を取得した日について賃金を支払うことまでは求めていません。

 したがって、基本給等の所定内賃金を控除することは差し支えありませんが、欠勤扱いとして賞与や昇給、昇格時の勤怠査定の対象としたり、精皆勤手当を不支給または減額することは取得を抑制することになりますので、望ましくありません。

 労働基準法上の措置であるため(労働基準法68条)、就業規則に記載すべきです。就業規則に明確に定めないと、大きなトラブルを呼びます。同様の件は、『精皆勤手当』の算定の際にも、同様の注意が必要です。

 賃金については無給でよいでしょう。

 生理日の就業が著しく困難な女性労働者が休暇を請求した場合、請求のあった期間は当該女性労働者を就業させてはなりません(労基法第68条)。

 なお、休暇は暦日単位のほか半日単位、時間単位でもあっても差し支えありません。

就業規則規定例

第〇条(生理日の措置)
 生理日の就業が著しく困難な女性従業員が請求したときは、1日又は半日若しくは請求があった時間における就労を免除する。

2 この措置による当該日又は時間は無給とする。

 

○育児時間

 育児時間については、生後満1年に達しない子を育てている女性労働者から請求があった場合は、授乳その他育児のための時間を、一般の休憩時間とは別に、1日2回各々少なくとも30分の時間を与えなければなりません(労基法第67条)。育児時間を請求し、又は取得したことを理由として解雇その他不利益な取扱いをしてはなりません(均等法第9条第3項)。

 使用者は、育児時間中はその女性を使用してはなりません。これは、生後1年に達しない生児を育てる女性労働者に、育児時間を与えるべきことを規定したものです。生児とは、当該女性が出産した子であるか否かは問いません。生後1年未満の生児を育てる女性は、通常の休憩時間とは別に1回あたり30分、1日につき2回労働時間が4時間以内の場合は1回)授乳その他育児のための時間を請求することにより与えられます(労働基準法第67条)。

 この時間は就業規則等に定めるところにより有給・無給どちらでも構いません

 使用者が、「育児・介護休業法」第23条に基づく「勤務時間の短縮等の措置」を講じている場合であっても、この規定とは趣旨、目的が異なるため、それぞれ別々に措置すべきです。

 育児時間は、始業時若しくは終業時に付与することが利便性を高めるものと考えられます。

 

就業規則規定例

第〇条(育児時間)
 生後1年未満の子を育てる女性従業員は、あらかじめ申し出て、休憩時間の他に1日2回、各々30分の育児時間を受けることができる。また、従業員の希望により、1日2回、各々30分の育児時間を、1回60分にまとめることができる。

2 前項の時間は無給とする。

 

 都市部の通勤や保育施設の状況を考えれば、始業時若しくは終業時に付与することが人の利便性を高めるものと考えられます。育児時間はパートタイマーから請求された場合も付与しなければなりませんが、1日の所定労働時間が4時間未満のパートタイマーに対しては、1日1回で足りるとされています。

 

○育児・介護休業、子の看護休暇等

 育児・介護休業、子の看護休暇等に関する事項について、本規程例では就業規則本体とは別に定める形式を取るとよいでしょう。

 育児・介護休業、子の看護休暇等に関する事項について、就業規則本体と別に定めた場合、当該規程も就業規則の一部になりますので、所轄労働基準監督署長への届出が必要となります。

就業規則規定例

第〇条(育児・介護休業、子の看護休暇等)
 従業員のうち必要のある者は、会社に申し出て、育児・介護休業法に基づく育児休業、介護休業、子の看護休暇、介護休暇、育児のための所定外労働の免除、育児・介護のための時間外労働及び深夜業の制限並びに所定労働時間の短縮措置等(以下「育児・介護休業等」という。)の適用を受けることができる。

2 前項の適用を受けることができる従業員の範囲、賃金その他必要な事項については、「育児・介護休業規程」の定めるところによる。

3 第1項による休暇日は、無給とする。

 育児・介護休業も労働基準法上の休暇に該当するので、絶対に記載しなければならない事項です。法律に反しないように規定することが大切です。育児休業・介護休業の規程のない就業規則は労働基準監督署で受け取ってもらえないこととなります。

これらは、就業規則本体に育児・介護休業の大綱として規定し、具体的事項は「育児・介護規程」として一連を別規程に委任するのが一般的です。

 育児・介護休業法において具体的事由が定められているため、「育児・介護休業法に基づき育児休業及び介護休業を与える」旨の規定であっても有効とされていますが、やはり、会社の実情に合わせた規程を整備するのが望ましいでしょう。

 

育児休業

 従業員は、申し出ることにより、子が1歳に達するまでの間育児休業をすることができます(一定の範囲の期間雇用者も対象となります)。

 育児休業ができる労働者は、原則として1歳に満たない子を養育する男女労働者です。

 ただし、日々雇用される者、期間を定めて雇用される者は、育児休業をさせる者から除くことができます。

 労使協定により適用除外とすることができる者については、締結の上、明示しておくこと。適応除外者の労使協定を結んでおくことによって、短期間のパートタイマー等の適用を除外できる。  
 ・育児休業・介護休業・・・1年未満  
 ・介護休業・・・3ヵ月未満  
 ・看護休暇・・・6ヵ月未満  

 従業員から育児休業の申出があった場合は、会社は育児休業の取得を拒否することはできません。ただし、育児休業をすることができないと労使協定で定めた(細かく定められている)従業員からの申出については、この限りではありません。

 子であれば、実子・養子を問わず育児休業を取得することができます。

 一定の場合、子が1歳6ヵ月に達するまでの間、育児休業をすることができます。

 1歳6ヵ月まで育児休業ができるのは、次の(1)、(2)のいずれかの事情がある場合です。
(1) 保育所に入所を希望しているが、入所できない場合
(2) 子の養育を行っている配偶者であって、1歳以降子を養育する予定であったものが、死亡、負傷、疾病等の事情により子を養育することが困難になった場合

 育児休業中の労働者が継続して休業するほか、子が1歳まで育児休業をしていた配偶者に替わって子の1歳の誕生日から休業することもできます。

 従業員から育児休業の申出があった場合は、会社は育児休業の取得を拒否することはできません。ただし、育児休業をすることができないと労使協定で定めた場合は、この限りではありません。

平成291月の法改正

平成29年1月法改正による就業規則の見直し

 

子の看護休暇

 小学校就学前の子を養育する労働者は、申し出ることにより、1年に5日まで、病気・けがをした子の看護のために、休暇を取得することができます(育児・介護休業法第16条の2)。

 子の看護休暇は育児介護休業法で定められた休暇であり、会社側の判断で「子の看護休暇を与えない」という類いではありません。

 「一の年度において5労働日まで」という解釈で勘違いされやすいのが、「子が2人以上の労働者は、年10労働日を限度」ということです。対象の子が2人以上何人いても限度は10労働日ということ。

 事業主は、業務の繁忙等を理由に、子の看護休暇の申出を拒むことはできません。

 当日朝の申出であっても基本的に拒否できません。

 ただし、勤続6ヵ月未満の労働者及び週の所定労働日数が2日以下の労働者については、労使協定の締結により対象外とすることができます。この他の労働者(例えば配偶者が専業主婦である労働者等)を対象外とすることはできません。

 子の看護休暇の取得申出については、口頭でも認められます

 しかし、申出は書面によることとし、事後の提出を認める一方で、医療機関等の領収書や保育所を欠席したことが明らかとなる連絡帳の写し等を添付させるようにしたほうがよいでしょう。

 子の看護休暇の取得申出については、会社はこれを拒否できないというのが原則です。時季変更権が定められていません。当日朝の申出であっても基本的に拒否できません。申出は書面によることとし、事後の提出を認める一方で、医療機関等の領収書や保育所を欠席したことが明らかとなる連絡帳の写し等を添付させるようにしたほうがよいでしょう。もちろん、これらの書類の添付が申出者にとって過度の負担とならないように配慮する必要があります。

 半日単位、時間単位の付与は、法定を上回る措置なので差し支えありません。年次有給休暇の場合は、時間単位の付与はできませんが、子の看護休暇については認められます。

「子の看護休暇」と「年次有給休暇」の違いについて

「会社に時季変更権があるか、ないか」という点です。年次有給休暇を取得しようとした場合、会社でその日はどうしても出勤してもらわなければ困るという場合には時季変更権を行使することができます。そもそも、年次有給休暇は本来「労働者本人のため」の休暇だからです。

 一方、育児・介護休業法で定められた「子の看護休暇」は、あくまでも「子のため」の休暇です。ですから、「子の看護のために休暇を取得する」という権利を行使するのに、会社の判断というものを差し込むことはできないということです。

 

介護休業

 労働者は、要介護状態にある対象家族を介護するための休業を申し出ることができます。

 労働者は、申し出ることにより、要介護状態にある対象家族1人につき、常時介護を必要とする状態ごとに1回の介護休業をすることができます(一定の範囲の期間雇用者も対象となります)。

 介護休業の取得申し出時点において、次の要件をすべて満たす労働者は介護休業を取得することが出来ます。
・入社1年以上であること
介護休業開始予定日から93日を経過する日(93日経過日)を越えて雇用関係が継続することが見込まれること 
・93日経過日から1年を経過する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと

 介護休業ができる労働者は、男女を問いません。

 日々雇用される者、期間を定めて雇用される者は、育児休業と同様に介護休業をさせる者から除くことができます。

 2回目の介護休業ができるのは、要介護状態から回復した対象家族が、再び要介護状態に至った場合です。3回目以降も同様です。

 介護休業の取得回数は、対象家族1人について要介護状態ごとに1回、通算して93日までです。

  要介護状態とは、負傷、疾病、又は身体上若しくは精神上の傷害により、2週間以上にわたり、常時介護を必要とする状態のことをいいます。

 「常時介護を必要とする状態」とは、次のいずれかに該当する場合です。
(1) 日常生活動作事項(表1)のうち、全部介助が1項目以上及び一部介助が2項目以上あり、かつその状態が継続すると認められること
(2) 問題行動(表2)のうち、いずれか1項目以上が重度又は中度に該当し、かつ、その状態が継続するすると認められること

     表1(日常生活動作)

 

1 自分で可

2 一部介助

3 全部介助

イ 歩行

杖等を使用し、かつ、時間がかかっても自分で歩ける

付添いが手や肩を貸せば歩ける

歩行不可能

ロ 排泄

・自分で昼夜とも便所でできる ・自分で昼は便所、夜は簡易便器を使ってできる

・介助があれば簡易便器でできる ・夜間はおむつを使用している

・常時おむつを使用している

ハ 食事

スプーン等を使用すれば自分で食事ができる

スプーン等を使用し、一部介助すれば食事ができる

臥床のままで食べさせなければ食事ができない

ニ 入浴

自分で入浴でき、洗える

・自分で入浴できるが、洗うときだけ介助を要する ・浴槽の出入りに介助を要する

・自分でできないので全て介助しなければならない ・特殊浴槽を使っている ・清拭を行っている

ホ 着脱衣

自分で着脱できる

手を貸せば、着脱できる

自分でできないので全て介助しなければならない

     表2(問題行動)

 

重度

中度

軽度

イ 攻撃的行為

 人に暴力をふるう

乱暴なふるまいを行う

攻撃的な言動を吐く

ロ 自傷行為

自殺を図る

自分の体を傷つける

自分の衣服を裂く、破く

ハ 火の扱い

火を常にもてあそぶ

火の不始末が時々ある

火の不始末をすることがある

ニ 徘徊

屋外をあてもなく歩きまわる

家中をあてもなく歩きまわる

ときどき部屋内でうろうろする

ホ 不穏興奮

いつも興奮している

しばしば興奮し騒ぎたてる

ときには興奮し騒ぎたてる

ヘ 不潔行為

糞尿をもてあそぶ

場所をかまわず放尿、排便をする

衣服等を汚す

ト 失禁

常に失禁する

時々失禁する

誘導すれば自分でトイレに行く

対象家族の範囲
 介護休業の対象家族の範囲は以下のとおりです。
  (1) 配偶者(事実婚を含む。)
  (2) 父母及び子
  (3) 配偶者の父母  
  (4) 労働者が同居し、かつ扶養している祖父母、兄弟姉妹及び孫

 有給とするのか無給とするのかは必ず明記します。

 休業期間中に賞与が支給される場合に、休業中であるからという理由で賞与を支払わないといった取扱いはできません。支給日に休業中で出勤していないことを理由に賞与を支給しないことは、不利益取扱いの禁止(育児・介護休業法10条、16条)に反することになります。算定期間中の休業日数を日割計算するなどして、現実に就労していない部分を支払わないことは差し支えありませんが、休業期間の日数分を超えて支払わない場合は、不利益取扱いに該当します。

 育児・介護休業を取得していた労働者が、休職前の職場に復帰することを求める権利はありません。ただし、指針においては「現職又は現職相当職に復帰させることが多く行われていることに配慮すること」とあり、統計上もそのような扱いにしている会社も多く、必要な配慮は望まれますが、請求権を認めるような規定まで設ける必要はありません。

 

 育児・介護休業 勤務時間の短縮

 1歳(1歳6ヵ月までの休業ができる場合にあっては、1歳6ヵ月)に満たない子を養育する労働者で育児休業をしないものに関しては次の措置のいずれかを、1歳(1歳6ヵ月までの休業ができる場合にあっては、1歳6ヵ月)以上3歳に満たない子を養育する労働者に関しては育児休業に準ずる措置または以下の措置のいずれかを講ずる必要があります(育児介護休業法第23条)。
 ・短時間勤務の制度
 ・フレックスタイム制  
 ・始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ  
 ・所定外労働をさせない制度  
 ・託児施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与

 育児・介護短時間勤務制度の適用を受ける者であっても、所定の要件を満たす限り、年次有給休暇を与えなければなりません。

 就業規則に、「育児・介護短時間勤務制度の期間中の社員は、年次有給休暇を取得することはできない」との規定は、労働基準法に違反し、無効です。

 なお、育児・介護短時間勤務の期間中に年次有給休暇を取得した日の賃金の取扱いについては、就業規則等で「所定労働時間労働した場合の通常の賃金」で支払う旨定めている場合には、短時間勤務者に対して通常の出勤をした場合の賃金を支払えばよく、あらためて賃金計算を行う必要はありません。

 

○育児・介護休業 時間外労働・深夜業の制限

 事業主は、育児や家族の介護を行う労働者が請求した場合には、1ヵ月24時間、1年150時間を超える時間外労働をさせてはなりません(育児・介護休業法第17条・18条)。

 事業主は、小学校就学始期に達するまでの子を養育する労働者又は要介護状態にある対象家族を介護する労働者が、育児や家族の介護を行う労働者が請求した場合には、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、原則として深夜(午後10時から午前5時まで)において労働させてはなりません(育児・介護休業法第19条)。

 請求できる労働者は、小学校就学前の子を養育し、又は要介護状態にある対象家族を介護する労働者(日々雇用される者を除く)です。ただし、勤続1年未満の場合など、法令に定める一定の要件に該当する者は請求できません。

 育児休業や介護休業は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(「育児・介護休業法」)」で労働者の権利として取得できることが定められています。

 育児休業・介護休業はいずれも、取得する権利のある 労働者が会社に「申出」することがスタート地点です。条件に該当したからと言って自動的に発生する休業ではありません。

 しかし、たいていの従業員はそういうことを知りません。ですから、その対象者の範囲や申出の仕方、その後の対応方法などがわかるように、就業規則や育児・介護休業の規程 を作っておく必要があるわけです。

就業規則規定例

第 条(育児、家族介護を行う労働者の時間外労働)
 会社は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者がその子を養育するために申し出た場合、及び要介護状態にある家族を介護する労働者がその対象家族を介護するために申し出た場合においては、業務の正常な運営を妨げる場合を除き、1ヵ月について24時間、1年について150時間を超える時間外労働をさせないこととする。

2 小学校就学の始期に達するまでの子の養育、又は家族の介護を行う一定範囲の従業員で会社に申し出した者については、会社は、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、午後10時から午前5時までの深夜に労働させないこととする。

3 第1項及び第2項の申し出ができる労働者の範囲、申し出方法、申し出の時期、効力期間及びその他の取扱いについては、「育児・介護休業規程」の定めるところによる。

 

○公民権行使の保障

 労働基準法において、労働者の公民としての権利の行使や、公の職務の執行など、個人の公的活動と、労働者としての立場との調和を図っています。

労働基準法第7条  

 使用者は、労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。ただし、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することができる。

<公民としての権利>

該当するもの
 ① 法令根拠を有する公職の選挙権および被選挙権  
 ② 憲法の定める最高裁判所裁判官の国民審判  
 ③ 特別法の住民投票
 ④ 憲法改正の国民投票  
 ⑤ 住民の直接請求  
 ⑥ 選挙人名簿の届出等  
⑦ 行政事件訴訟法による民衆訴訟、公職選挙法の選挙人名簿に関する訴訟及び選挙または当選に関する訴訟  

該当しないもの    
 ① 他の立候補者のための選挙運動  
 ② 個人としての訴権の行使(民法による損害賠償に関する訴え、隣人との間の争いを解決するためのもの等)

<公の職務>

該当するもの  
 ① 衆議院その他の議員、労働委員会の委員、陪審員、検察審査員、法令に基づいて設置される審議会の職務  
 ② 民事訴訟法による証人・労働委員会に証人
 ③ 公職選挙法の選挙立会人等の職務  

該当しないもの  
 ① 予備自衛官が防衛招集または訓練招集に応ずること  
 ② 非常勤の消防団員

※単に労務の提供を主たる目的とする職務は「公の職務」に該当しません。

 使用者は必要な時間を与える義務はありますが、その時間を有給にするか無給にするかはどちらでも構いません。また、時刻変更権はありますが、就業時間内の行使ができないような定めは違法になります。

 

裁判員等のための休暇

 裁判員制度に関し、労働者が裁判員若しくは補充裁判員となった場合又は裁判員候補者となった場合で、労働者からその職務に必要な時間を請求された場合、使用者はこれを拒んではなりません。このため、各事業場においては、裁判員等のための休暇を制度として導入することが求められます。

 労働者が裁判員の職務を行うために休暇を取得したこと、その他裁判員、補充裁判員、選任予定裁判員若しくは裁判員候補者であること又はこれらの者であったことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはなりません(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(平成16年法律第63号)第100条)。

就業規則規定例

第○条(公民権の行使の時間)
 従業員が勤務時間中に選挙権の行使その他公民としての権利を行使する為、あらかじめ申し出た場合は、それに必要な時間を与える。従業員が裁判員若しくは補充裁判員となった場合又は裁判員候補者となった場合も同様である。

2 前項の申し出があった場合、会社は、権利の行使を妨げない限度においてその時刻を変更することがある。

3 第1項の労働を免除した時間は無給とする。

 

〇非常災害時の特例

就業規則規定例

第〇条(非常災害時の特例)
 事故の発生、火災、風水害その他避けることのできない事由により、臨時の必要がある場合は、行政官庁の許可を受けて、全ての従業員に対し、所定の労働時間を超えて、又は所定の休日に労働を命じ、若しくは午後10時から午前5時までの間の深夜に労働を命じることがある。

2 前項の規定にかかわらず、妊産婦からの請求があった場合は、本条の規定を適用しないものとする。

 

〇宿直・日直

就業規則規定例

第〇条(宿直及び日直)
 会社は、満18歳以上の職員に対して、宿直または日直を命ずることができる。

2 宿直及び日直の勤務時間は次に掲げるとおりとし、業務内容等、勤務に必要な事項は別に定める。
 (1) 宿直  午後○時○分から午前○時○分まで
 (2) 日直  午前○時○分から午後○時○分まで

 

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