糖尿病

 糖尿病とは、膵臓で作られるインスリンとホルモンの働きが何らかの原因で悪くなると、食物から摂取された栄養が分解されてブドウ糖となったものがうまく細胞に取り込まれず、ブドウ糖が血液の中に残ったままになり、結果として血糖値が高くなった状態をいう。

 糖尿病は英語で、Diabetes Mellitusと言いますが、これはギリシャ語が語源になっていて、Diabetesは「尿が常に出る」、Melllitusは「蜜のように甘い」という意味で、「蜜のように甘い尿が常に出る」という意味になります。

 糖尿病には2種類があり、体質によって糖尿病になる「1型糖尿病」と生活習慣病と言われる「2型糖尿病」に分かれる。ほとんどの糖尿病患者は「2型糖尿病」に分類される。

 

1型糖尿病

 インスリンがほとんど分泌されません。

 自己免疫疾患の1つであり、遺伝的要因が深く関係しています。すい臓のランゲルハンス島が炎症をおこす原因は、多くの場合、自己免疫のメカニズムです。体内に侵入した病原体を攻撃して排除する働きを免疫と言いますが、この免疫の作用が誤動作をおこして自らの体の組織を攻撃してしまう現象が自己免疫です。つまり、ランゲルハンス島が体外から侵入してきた病原体と誤認されて攻撃をうけるわけです。最終的にはランゲルハンス島の機能が廃絶してしまい、インスリンを補充しなくては生存できないインスリン依存型糖尿病になります。ランゲルハンス島の炎症は若年者や子供でも起こり得るため、若年で発症する糖尿病の中で1型糖尿病は大きなウエイトを占めています。

 

2型糖尿病

 インスリンの分泌や作用が低下して起こる糖尿病です。遺伝的要因に加えて生活習慣が大きく関わっているといわれています。

 日本人の糖尿病のほとんどがこの2型糖尿病です。

 2型糖尿病は、1型糖尿病に比べ、食べすぎや飲みすぎ、運動不足、喫煙、ストレスなど、悪しき生活習慣が最大の危険因子となります。中年以降の比較的高齢の肥満者に発症しやすいタイプです。2型糖尿病では、一般的にはインスリン非依存型の病像を呈し、食事療法と運動療法が治療の基本となります。食事療法、運動療法でうまくコントロールできない場合には、第2段階としてスルフォニル尿素(SU)剤などによる薬物療法が行われ、それでもコントロールが難しい場合にはインスリン療法が行われることもあります。2型糖尿病は糖尿病になりやすい遺伝性の性質と、食べ過ぎや運動不足といった生活習慣の乱れから、インスリンの働きが低下し、インスリンの働きが悪くなると血糖値が高くなって2型糖尿病を発症してしまいます。

 

糖尿病の危険因子

 過食
 多量の飲酒
 運動不足
 喫煙
 ストレス
 高血圧
 脂質異常症
 肥満
 遺伝的要因

 気づかずに炭水化物の非常に多い食事を取ったために、食後に血糖値が急に上昇することもあります。運動すると血糖値が下がり、食事による糖分補給が必要になります。感情的ストレス、感染症、薬物などは血糖値を上げる傾向があります。多くの人は血糖値が早朝に上がりますが、それはホルモンが正常に放出され(成長ホルモンとコルチコステロイド)、暁現象と呼ばれる反応が起こるためです。低血糖に対する反応でブドウ糖が放出されると、血糖値が急に跳ね上がります(ソモギー効果)。

 糖尿病の危険因子の多くは、生活習慣を改善することで減らすことができます。血糖値が基準値よりも高かった人は、食べる量や食べ方などの食生活を見直し、適度な運動や禁煙、ストレス解消などを心がけ、血糖値の上昇を防ぐ生活習慣を実践しましょう。 健診で高血圧や脂質異常症などを指摘されている人は、これらの病気の危険因子を減らすとともに、病気を正しく治療することも大切です。

 

診断

 血糖値が異常に高ければ糖尿病と診断されます。血糖値は定期健診でチェックされます。高齢になると糖尿病になりやすいので、毎年定期的に血糖値を調べることは中高年にとって特に重要です。特に2型糖尿病では本人が糖尿病に気づきません。のどの渇き、排尿の増加、強い空腹感といった糖尿病の症状がある場合や、頻繁な感染症、足の潰瘍、真菌感染といった糖尿病の合併症がみられる場合は血糖値を測定します。

 血糖値の測定は、通常、前夜から絶食して採血しますが、食後に採血することもあります。食後の血糖値がある程度上昇するのは正常ですが、高すぎるのはよくありません。空腹時血糖値は126mg/dlより高くなってはいけません。食後でも200mg/dlより高くなるのは好ましくありません。

 血中タンパク質のヘモグロビンA1C(糖化ヘモグロビン)を測定する場合もあります。糖化ヘモグロビンは、長期間にわたって高血糖状態が続いたときに形成されます。通常の糖尿病診断で行われる検査ではありませんが、血糖値が極端に高くない場合、診断の確定に役立ちます。この検査は血糖値の長期的な傾向を示します。

 その他に、血液検査としては、経口ブドウ糖負荷試験があります。この検査は妊婦の定期検診で妊娠性糖尿病を調べるときや、糖尿病の症状がある高齢者で空腹時の血糖値が正常な場合など、特定のケースを対象に行われます。糖尿病の検査として常に行われるものではなく、妊婦であってもリスクが非常に低ければ対象にはなりません。この検査では、まず絶食状態で採血し、空腹時血糖値を測定します。次に、多量のブドウ糖を含む特殊な溶液を飲みます。2~3時間後に再度採血し、血糖値が異常に高くなっていないかを判断します。

 糖尿病の人が自分の病気について学び、食事と運動が血糖値にどのように影響するかを理解し、合併症の予防法を知ることはとても有益です。糖尿病の研修を受けた看護師は、食事の管理、運動法、血糖値のチェック、薬の服用についての情報を提供してくれます。

 糖尿病の人は、医療関係者に糖尿病であることがわかるように、医療情報を記したブレスレットやタグなどを常に携帯するか、身につけておくべきです。特に大けがや危険な精神状態の際などには、医療専門家はこの情報を基に素早く救命処置を始められます。

 食事管理はいずれのタイプの糖尿病の人にも非常に重要です。医師は健康的な栄養バランスのとれた食事と健康的な体重を維持することを推奨します。栄養士に最適な食事プランを作成してもらうことも有益です。

 

治療経過のモニタリング

 血糖値の測定は糖尿病治療には不可欠です。糖尿病の人は、食事、運動、薬で血糖値を調節する必要があります。これらの調節に必要な情報は血糖値をチェックすることによって得られます。症状が現れるまで低血糖あるいは高血糖を放っておくと深刻な事態になります。

糖尿病の治療 に続く