服務規律

服務規律

 服務規律とは、会社を適切に運営し秩序を維持する、従業員の行動規範となるべきもので、従業員が日常守らなければならない一般的な心得や遵守すべき事項を定めたものです。

 就業規則に労働者が従うべき服務規律を定めることが多いです。 これは、企業が、統一的な事業主体として、多数の労働者を組織し、施設や設備を用いて活動を行うものであることから、労働者に対してルールを定めることが必要なためです。

 判例においては、服務規律を含めた企業秩序という概念を認め、「企業秩序は、企業の存立と事業の円滑な運営の維持のために必要不可欠なもの」であり、「労働者は、労働契約を締結して企業に雇用されることによって、企業に対し、労務提供義務を負うとともに、これに付随して、企業秩序遵守義務その他の義務を負う」富士重工業事件 最高裁第3小(昭和52・12・13))との判断を示しております。

 服務規律及び遵守事項については、就業規則に必ず定めなければならない事項ではありません。相対的必要記載事項ですが、職場の秩序維持に大きな役割を果たすことから、会社にとって労働者に遵守させたい事項を定めていただきたいものです。

 服務規律違反は、就業規則違反でもありますから、懲戒処分につながります。言い換えれば、服務規律に記載していないことを懲戒処分とすることは難しいことになります。

 なお、会社の「経営理念」は就業規則に絶対記載しなければならないかというと、そのようなことはありません。経営理念とは、自社にとって会社経営はこうあるべきだという根本的な考え方です。従って、経営理念は労働者の労働条件ではないので、法律上記載するものではなく、記載は任意ということになります。

 

○服務規律の内容

 使用者が定める服務規律の内容は、労働の遂行に関する規律や、企業施設の管理に関する規律、企業外での行動に関する規律など、多岐にわたります。

 ここで、労使間において、このような服務規律に労働者が従わなければならないかどうかをめぐって、多様な紛争が見られ、裁判例においても、服務規律の内容によって、個別に判断を示しています。

 服務規律とは、会社を適切に運営し秩序を維持する、従業員の行動規範となるべきもので、従業員が日常守らなければならない一般的な心得や遵守すべき事項を定めたものです。Business women working in the stylish office

 この服務規律によって維持される会社の秩序は、懲戒処分によってその実効性が担保されます。そのため、服務規律は会社に合わせてより具体的により詳細に規定する必要があります。

 服務規律の内容としては、労働者の服務に関する基本的原則と、具体的な遵守事項に分けられます。  

  就業規則には、まず基本的な心構えを記載します。

 ここでは、主に法令遵守(コンプライアンス)、機密保持、セクハラの禁止などに対する会社の決意とこれらの事項に対する姿勢を示し、従業員が仕事をするにあたっての行動指針や判断基準とするために定めます。

 服務規律を遵守することが従業員の義務である旨を規律しておくこと。
  労働者の服務に関する基本的原則は、精神的・訓示的な定めであると解されるものが多いです。 例えば次のような事項があります。  
 (1) 規則を遵守すること  
 (2) 職責を重んじること
 (3) 忠実義務     など

就業規則規定例
第○条(服務の基本)   
 
従業員は、本規則や各規程及び業務上の指示命令を遵守するとともに、お互いに協力して職場の秩序の維持に努め、業務に専念しなければならない。

 従業員は、雇用契約を結ぶことによって会社への労務提供義務を負いますが、それだけではなく併せて「職務専念義務(就業時間中は職務に集中し他の活動は行わないこと)」「企業秩序遵守義務(就業時間中は施設の内外を問わず会社の正当な利益を侵害してはならないこと)」「使用者の施設管理権に服する義務(企業の施設内では使用者の定める施設管理に関する規則に従うこと)」を負うとされています。

 服務規律では、これらの義務を従業員に理解しやすいよう具体的な形で記載します。

 従業員の具体的な遵守事項は、基本的原則に比べてより具体的な事項についての制約を定めたもので、服務規律はボリュームがあり、記載方法も会社によって異なりますが、次のようなものが挙げられます。

1.労務提供に関係する規律

 労務提供に関係する規律とは、企業の規則・通達や上司の命令・指示を尊守する事項、職場規律を維持すべき事項などに関係する規律です。  
 ・職務専念義務  
 ・職場の命令関係
 ・協力関係
 ・出退勤
 ・遅刻・欠勤  
 ・離席・外出
 ・会社への入場禁止・退場 
などです。

2.企業財産の管理保全のための規律

 労務提供に準ずる義務として、施設、物品などの物的保存を図る事項を加えることができます。  
 ・職務上の金品授受の禁止  
 ・備品持ち出し禁止  
 ・会社施設の利用に関すること
 ・集会や宗教活動の制限  
 ・安全衛生に関する事項
などです。

3.従業員の地位身分による規律

 従業員の身分を取得したことによる尊守義務があります。従業員である以上、尊守しなければならない義務です。  
 ・異動の届出 (結婚や離婚・出産など) 
 ・会社の名誉、信用を守る義務  
 ・公職(政治家)立候補や就任の取り扱い    
 ・秘密保持義務  
 ・二重就業の禁止  
 ・退職後の競業避止義務  
などがあります。 

4.その他    

 服務規律の条項に追加または別規程を作成して運用した方が良い条項を下記に記します。
 ・個人情報に関する条項  
 ・セクハラパワハラに関する条項  など

 

服務心得の具体的事項

○経歴詐称の禁止

 職歴詐称により企業の信頼損なったとして解雇を認めた判例が数多くあります。詐称した部分が採用判断に重要な経歴かどうかがポイントになります。採用にあたり特別影響のないような詐称であれば、懲戒解雇は重すぎです。

 

○職務専念義務

 労働者は、就業時間中はその職務のみに従事し、他のことを行ってはならないとされています。(国鉄青函局事件 札幌高 昭48.5.29 目黒電電局事件 最3小 昭52.12.13)

 

○勤務中の服装、身だしなみ等についての規定

 髪型・色、口ひげ、服装を改めように命じることができるかどうかについては、企業経営の必要性から命令に合理性があるかどうか、業種や具体的職務内容から判断されます。たとえ就業規則において金髪等の禁止規定がなくても、企業の品位保持、取引先との円滑な関係維持等の観点から、企業経営に悪影響を及ぼす具体的なおそれがある場合には業務命令として金髪を改めさせることができると思われます。 しかしながら、無用な労使トラブル防止の観点から、就業規則において髪型・色、口ひげ、服装などに関して合理的な規律を定めておいたほうがよいでしょう。

・イースタン・エアポートモータース事件(東京地裁 昭和55年12月15日判決)

・東谷山家事件(福岡地裁小倉支部 平成9年12月25日)
 頭髪を黄色く染めたトラック運転手に、これを黒く染め直すよう指示したことについて、「労働者の髪の色・型、容姿、服装などといった人の人格や自由に関する事柄について、企業が企業秩序の維持を名目に労働者の自由を制限しようとする場合、その制限行為は無制限に許されるものではなく、企業の円滑な運営上必要かつ合理的な範囲内にとどまるものというべく、具体的な制限行為の内容は、制限の必要性、合理性、手段方法としての相当性を欠くことのないよう特段の配慮が要請される」とされ、使用者がなした諭旨解雇は懲戒権の濫用として無効とされました。

 

○会社の名誉・信用を守る義務

 労働者は雇用契約上「企業秩序遵守義務」を負っているので、私生活上の行為であっても、企業の名誉や信用を損なうような行為であれば規制の対象となります。

 職場外での職務に関係のない私的な行為であっても、会社の名誉や信用を害すると思われるような事由も規定しておくことができます。

日本鋼管事件(昭49) 最高裁第2小(昭和49・3・15)  

 労働者が在日米軍に対する反対行動により起訴され、罰金刑を受けたことをもって「会社の体面を著しく汚した」とまではいえず、懲戒解雇事由にはあたらないとされた。

 

○企業秩序・風紀秩序の遵守義務(誠実義務、忠実義務)

 企業内では使用者の定める施設管理に関する規則に従うこと。(国鉄札幌駅事件 最3小 昭54.10.30)

 就業時間中は企業施設の内外において企業の正当な利益を侵害してはならないこと。

 使用者に許可なく建物にビラを貼った場合、使用者の所有権、施設管理権を侵害する行為として違法となります。企業秩序維持の見地から、就業規則により職場内における政治活動を禁止することは合理的な定めとして許されます。プレート着用行為は、社会通念上政治的な活動にあたり、実質的に見ても秩序維持に反するから懲戒事由となります。ビラ配布行為は無許可であり、実質的に見ても上司の適法な命令に抗議する目的でなされ、 内容的にも上司の適法な命令に抗議し、職場内の政治活動、プレート着用等違法な行為をあおり、そそのかすことを含むものであり、秩序を乱すおそれのあったものであるから、懲戒事由となります。プレート着用行為・ビラ配付行為などに対し、懲戒処分を認める場合は、当該行為の具体的内容に照らし、懲戒処分の有効性が個別に判断されます。

  国鉄管理局事件 静岡地 昭48.6.29 茨城急行自動車事件 東京地 昭58.7.19 日本コンベンションサービス事件 大阪高 平10.5.29)

 

○政治・宗教活動の規制  

 就業規則において事業所内での政治活動を制限しても、法律に違反しません。

観念的な秩序侵害の「おそれ」による「企業内政治活動の禁止」の合理性

・職場内における政治活動 → 職員相互間の政治的対立ないし抗争を生じさせる「おそれ」がある。

・使用者管理の企業施設を利用しての政治活動 → その企業施設の管理を妨げる「おそれ」がある。

・就業時間中の政治活動 → 他の職員の業務執行を妨げる「おそれ」がある。

・休憩時間の政治活動 → 他の職員休憩時間の自由利用を妨げる「おそれ」がある。休憩時間後における作業能率を低下させる「おそれ」がある。

 企業秩序の維持に支障をきたす「おそれ」が強いとして、就業規則により職場内における政治活動を禁止することの合法性を認めております。

中国電力事件 最高裁第3小(平成4・3・3)

 

○労働者の企業外での行動に関する規律

 職場外でなされた行為であっても、企業の社会的評価の低下・毀損につながるおそれがあると客観的に認められる場合は、企業秩序の維持確保のためにこれを規制することが許される場合があります。

 私生活における犯罪行為については、企業の名誉を大いに毀損するものであるという考えから、職場外の職務遂行に関係の無いことであっても規律違反とする判決が多い。

国鉄中国支社事件(最1小 昭49.2.28)

 労働者の私生活上の犯罪行為が、「従業員の職場外でされた職務遂行に関係のない所為であっても、企業秩序に直接の関連を有するものもあり、それが規制の対象となりうることは明らかであるし、また、企業は社会において活動するものであるから、その社会的評価の低下毀損は、企業の円滑な運営に支障を来たすおそれなしとしないのであって、その評価の低下毀損につながるおそれがあると客観的に認められるがごとき所為については、職場外でされた職務遂行に関係ないものであっても、なお広く企業秩序の維持確保のために、これを規制の対象とすることが許される場合もあり得る」とされた。

横浜ゴム事件 最高裁第3小(昭和45・7・28)  

 工員たる労働者が終業後に飲酒・泥酔し他人の居宅に侵入して起訴され、罰金刑を受けたことをもって「会社の体面を著しく汚した」とまではいえず、懲戒解雇事由にはあたらないとされた。

 

○酒気帯びに関する規律

 就業中の飲酒運転を禁止する定めですが、就業中については労働者の就業および職場に関する規律として規定を設けることが考えられます。そこで「その他酒気を帯びて就業するなど、従業員としてふさわしくない行為をしないこと」などのようにある程度包括的に定めてもよいですが、就業中の飲酒運転による社会的ダメージは相当大きいと考えれますから、より明確に「就業においては酒酔い運転及び酒気帯び運転をしないこと」とするとなおよいと考えます。  

 しかし、業務中ならともかく、仕事から離れた私生活上で行った飲酒運転に関して、会社が服務規律を定め、これに違反した場合に懲戒をしたりできるのでしょうか。

 就業中のことではありませんから、就業及び職場に関する規律として直接規定するわけにはいけません。しかし、従業員としての地位・身分に基づく規律として位置づけることは考えられます。従業員の私生活上の飲酒運転であっても企業の信用を損なう恐れが非常に大きいと考え考えられますので、なるべく明確に具体的に定めておく必要があると思われます。そこで、例えば、「飲酒運転その他の行為によって会社の名誉または信用を傷つけてはならない。」などと規定することが考えられます。

○出退勤に関する規律

 出退勤の管理は重要なものですから、従業員に事業場で確認する方式を説明し、履行させるよう指導することが必要です。タイムカードや日報による管理が一般的ですが、残業の取り扱いなどについてトラブルとなる場合があります。各人の出勤時刻、退勤時刻を誰が、いつ、どのようにして確認するのかを明確にすることが重要です。

 従業員が守るべき基本的なルールとして、次の事項を規定します。
 (1) 始業時刻までに出勤し、所定の方法で出勤の事実を明らかにすること  
 (2) 退勤時は、整理整頓後、退勤の事実を明らかにし、速やかに退勤すること  
 (3) 出退勤の事実を明らかにする方法としては、タイムカードの打刻又は出勤簿によること   
  また、本人以外のものによる不正打刻行為を禁止すること

就業規則規定例

第○条(出退勤)   
 従業員は、出退勤に当たっては、出退勤の時刻をタイムカードに自ら記録しなければならない。 

 

○遅刻、早退、欠勤等

 不意の遅刻、早退、欠勤は業務の遂行に影響を及ぼすので、これを最小限にするため、所定様式による届出により、事前の届出と許可の励行が必要です。

 遅刻、早退については、あらかじめ会社に届け出て承認又は許可を得ることとし、やむを得ず遅刻した場合には事後速やかに届け出て承認を得る等、明確に定める必要があります。また、交通の延滞等、本人の責任が及ばない理由による遅刻、その他の不就労の場合の例外的な取扱いについても明確に定めておくべきです。

 欠勤何日以上で医師の診断書を提出させるかということも、各事業場で決めるとよいでしょう。健康保険の傷病手当金支給の待機期間が3日であることから、「4日以上」とするのが一般的なようです。(健康保険法第99条)

就業規則規定例
第○条(遅刻、早退、欠勤等)  
 ・・・  
 やむをえない事情により、あらかじめ届け出ることができない場合には、欠勤中あるいは出社後、速やかに届け出て承認を受けなければならない。

  出退勤の記録方法は、会社によって、日報を書く、タイムカード、出勤簿への記入などいろいろありますので、その会社に即したものを定めます。

・タイムカードの記録方法を定めておく。  労働時間の計算に問題が生じないようにすること。

・始業、終業がどのような状態で認められるかということを明示しておく。

規定例

 始業時刻前に出勤し、始業時刻に勤務ができるように準備すること。

(注)「始業時刻の前に着替え等を済ませておいて、始業時刻に勤務ができるように準備をしておくこと」とまで指示すると、着替えの時間も労働時間とみなされる。

始業及び終業時刻の記録  
 労働時間の管理については、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(平成13年4月6日付け基発第339号)で、使用者が講ずべき措置が具体的に示されています。使用者は、この基準を遵守し、労働時間を適正に把握する等適切な時間管理を行ってください。

(参考) 「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(抜粋)

1 始業・終業時刻の確認及び記録

 使用者は、労働時間を適正に管理するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録すること。 。

2 始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法  使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として次のいずれかの方法によること。  
 ・使用者が、自ら現認することによりこれを確認し、記録すること。
 ・タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し、記録すること。

 自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置

3 2の方法によることなく、自己申告制により行わざるを得ない場合、使用者は次の措置を講ずること。

4 自己申告制を導入する前に、その対象となる労働者に対して、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。

5 自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施すること。

6 労働者の労働時間の適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間数の上限を設定するなどの措置を講じないこと。また、時間外労働時間の削減のための、社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。

7 労働時間の記録に関する書類の保存  労働時間の記録に関する書類について、労働基準法第109条に基づき3年間保存すること。

 遅刻、早退、欠勤等において、電子メールでの連絡や本人以外の家族からの連絡、同僚や部下への連絡は、避けるべきです。

 また、遅刻、早退、欠勤等の賃金控除のルールは、賃金規定に明記しておきます。この場合の賃金控除は、分単位で管理することが望ましい。

 欠勤が長引く場合には、診断書を提出させる。健保の傷病手当金の待機期間が3日であることから、「4日以上の欠勤の場合」とする

規定例  同一傷病による欠勤が3日を超えたときは、医師の診断書を提出しなければならない。

 

無断欠勤・無届欠勤  

 欠勤の扱いには、
(1) 無断欠勤 : 届出もせず、かつ、正当な理由もない欠勤
(2) 無届欠勤 : 届出を怠った欠勤
があり、これらを明確に区分し、定義づけしておく必要があります。

 例えば、「届出を怠った場合を無断欠勤とする」という規定では、正当な理由のない欠勤でも届出をすれば無断欠勤に該当しないものとして取り扱われることになります。

 労働者が遅刻、早退若しくは欠勤等をする場合、どのような手続を規定するかは各事業場で決めることです。しかし、こうした手続を取ることは会社の秩序を維持する上でも重要なこととなりますので、明確に定めてください。

 欠勤何日以上で医師の診断書を提出させるかは、各事業場で決めることです。例えば、「傷病のため継続して  日以上欠勤するときは、医師の診断書を提出しなければならない。」のように。

  遅刻、早退、欠勤については、懲戒規定にも個別に明記しておくこと。定めていない場合は、懲戒処分ができないのです。

 

○私用面会・私用外出

 私用面会や外出等の職場離脱については、その間は不就労となり、また、事故防止という観点からも規定により制限を加えるべきです。 

 原則として休憩時間中に限るとし、緊急やむを得ない場合のみ、会社の許可を得て面会又は外出できる旨を定めるべきです。

就業規則規定例
第〇条(私用面会)
 従業員は、私用のための面会は原則として休憩時間中にしなければならない。ただしやむを得ない事由があり、所属長が許可したときはこの限りではない。

 

就業規則規定例
第〇条(離席、私用外出)
 勤務時間中は常に所在を明確にし、職場を離れるときは、所属長又は同僚に、行き先、用件及び所用時間を連絡しなければならない。
2 勤務時間中の私用外出は原則として認めない。やむを得ず私用外出するときは、行き先、用件及び所用時間等の必要事項を申し出て、所属長又は上長の許可を得なければならない。
3 使用外出においては、当該時間分の賃金を支給しない。

 

○所持品検査の規定

 会社が従業員に対して、所持品検査をすることには、ある程度の業務上の必要性があると考えられます。しかし、所持品検査は重大なプライバシーの侵害になる恐れがあるために、無制限に許されるものではありません。また、検査を行う理由については、まず、業務に関連した範囲にとどめる必要があると言えます。会社の管理責任を問われない程度の従業員間の個人的な問題については、自己責任とするように区別しなければなりません。

 所持品検査が適法とされるためには、次の4つの要件が満たされていなければなりません。  
(1) 所持品検査を必要とする合理的理由に基づくこと  
(2) 一般的に妥当な方法と程度で行われること  
(3) 制度として職場従業員に対して画一的に実施されること
(4) 就業規則その他明示の根拠に基づき行われること

 ・西日本鉄道事件 最高裁第2小(昭和43・8・2)  
 ・日立物流事件(浦和地裁判決 平成3年)

就業規則規定例
第〇条(所持品検査)
 会社は、必要に応じて、その理由を明示のうえ所持品の検査を行うことがある。 従業員はこれに応じなければならない。

  金銭の不正隠匿等の調査のために、所持品検査を行う場合であっても、就業規則に所持品検査を行う旨の規定がなければ、所持品検査は行うことができない。

 業務との関係が認められないのに、通勤に利用するマイカー内の検査を求めたり(芸陽バス事件 広島地裁 昭和47年4月18日判決)、特段の理由がないのに、着衣上から手で触り、全てのポケットの中袋を裏返すことを求める(サンデン交通事件 山口地裁下関支部 昭和54年3月3日判決)ことは、方法や程度に行き過ぎがあり違法であるとしました。

 所持品検査を行う場合、就業規則への記載については、所持品検査を行う合理的理由を含めて規定し、検査の結果、所持が不正と認められた場合や、検査自体を不当に拒否する者に対しての懲戒規定の適用も定めておくと良いと思います。

 所持品検査については、プライバシーの問題もあるため、運用には注意が必要です。

 会社で使用する机は仕事に必要なものですので、取引先から問い合わせが入ったときなど業務上の必要性がある場合には、不在社員の机を開けることに本人の承諾は必要としません。

 会社で使用する机や什器等は業務上の必要性から社員に貸与しているものであり、会社に施設管理義務がありますので、業務上の必要性がある場合に社員の机の中を探すなどしてもなんらは問題ありません。

 トラブルを避けるためには、就業規則に、  ・社員は、机の中等に私物を入れてはならない。  ・会社は、業務上の必要がある場合には、会社が社員に貸与した机、ロッカー、キャビネット等を開けることがある。 旨を定めておくとよいでしょう。

 

○入退場に関する規律

 服務に関する規定は、組織秩序を維持することを目的としたものです。この考え方に基づいて職場への入退場に関する事項についても規定をしておくべきでしょう。 例えば、社員が組織秩序を阻害するおそれがあるときは、その入場を禁止することになります。また、職場で秩序を乱すような行為をした場合は職場を出て行ってもらうことになるでしょう。入退場に関する規定には、そうした内容を記載することになります。

就業規則規定例
第〇条(入場禁止及び退場)
 次の各号のいずれかに該当する者に対しては、事業場内への入場を禁止し、又は退場を命ずることがある。   
 (1) 会社内の秩序、風紀を乱し又はそのおそれがあると思われる者  
 (2) 火気、凶器、毒物、薬物その他業務遂行に不要なものを携帯する者  
 (3) 酒気を帯び又は酒類を携帯する者  
 (4) その他会社が入場禁止を必要と認めた者

 

○秘密保持義務

 「個人情報保護法の施行」(平成17年4月1日)及びマイナンバー制度の施行に伴い、個人情報管理の規定を定めることが必要です。服務規律の中への追加、制裁の条文の中への追加が必要です。

就業規則規定例  
第○条(個人情報及び特定個人情報の保護)
 従業員は、会社及び取引先等に関する情報、個人情報及び特定個人情報等の管理に十分注意を払い、会社の業務の目的の範囲外で利用してはならない。また、自らの業務に関係のない情報を不当に取得してはならない。
2 従業員は、会社の許可なく、私的な目的で会社所有のパソコン等を使用し、又は電子メールの送受信や業務に無関係なホームページの閲覧をしてはならない。なお、必要と認めた場合は、会社は不正使用がないかチェックすることができる。
3 従業員は、会社及び取引先の業務上の機密情報、個人情報及び特定個人情報等並びに会社及び顧客等の不利益となる事項を外部に漏らしてはならない。また、会社及び取引先当関する情報を複写等の方法によって社外に持ち出してはならない。(これらは退社後においても同様とする)
4 従業員は、会社が保有する個人情報及び特定個人情報等については、権限を有しない他の従業員に取り扱わさせてはならない。
5 職場又は職種の異動或いは退職時には、自ら管理していた会社及び取引先等の情報、個人情報及び特定個人情報等に関するデータ・情報書類等を速やかに返却しなければならない。
6 会社における特定個人情報等の取り扱いの詳細については、「特定個人情報等取扱規程」に定める。

 労働者の個人情報の保護に配慮

 在職中、社員は当然に企業秩序遵守義務を負っているため守秘義務がありますが、退職後についてまで規制するのは困難です。ただ、秘密保持についてはむしろ退職後に問題になるケースが多いため、それに対応するためにも秘密保持契約を取り、その契約書の中では損害賠償等についても定めておきます。会社の顧客情報等の営業秘密は、会社にとっては一つの財産であるため、その重要性は言うまでもありませんが、会社の機密について、在職中はもちろん、退職後も不正取得、不正な目的での利用、開示を防止することが必要です。不正競争防止法にも「営業の秘密」に関する定めがありますが、定めの無い部分はやはり就業規則で対応するしかなく、就業規則に定めが無ければ、社員の責任を問うことはできません。

  在職中に身につけた技術やノウハウのすべてに守秘義務を強制しますと、労働者は職業生活で身に付けた知識、経験、技能、人脈等を生かして転職をすることが不可能となり、職業選択の自由、営業の自由を不当に侵されることになります。しかし、一方では、企業にはさまざまなノウハウや顧客情報、開発中の製品情報等の営業秘密が存在していますので、企業独自のノウハウや技術等については一定の範囲で退職後も守秘義務を課すことが認められるものと考えられます。

 会社側としては、退職後も守秘義務があることを就業規則に定めます。

  退職時に秘密保持誓約書を取るのは困難なケースが多いので、「誓約書」は入社時にとるとよいでしょう。その誓約書の中では損害賠償等についても定めておきます。

 また、特に必要のある者については、退職後の守秘義務契約や競業避止契約を退職時に結ぶのがよいでしょう。そして、これらの誓約に違反したときは、損害賠償請求をすることがある旨を付記しておくとよいでしょう。

就業規則規定例 1

第○条(秘密保持義務)  
 従業員は、在職中はもちろんのこと退職後においても、自己の職務に関すると否とを問わず、会社の内部事項または業務上知り得た機密にかかる事項及び会社の不利益となる事項を許可なく他に漏らしてはならない。会社及び顧客に関する情報を複写等の方法によって社外に持ち出してはならない。

 

就業規則規定例 2

第○条(退職後の秘密保持義務)
 従業員が退職する場合には、退職後会社の機密事項を保全するため、別に定める「機密事項等の保全に関する誓約書」を提出し、退職後も会社の機密を守らなければならない。
2 退職した従業員が企業の機密を漏洩した場合は、退職金の全部又は一部の返還を求めることがある。

 

誓約書の記載事例

 このたび、私は貴社の業務を行うにあたり、次の事項を誠実に守り、決して貴社にご迷惑をおかけないように誓約いたします。
(1)就業規則を遵守し、職務上に関すると否と問わず、知り得た貴社の『営業秘密』を貴社の許可なく第三者等に開示、漏洩してはならない。
(2)営業秘密においては、貴社を退社した後も貴社の許可なく第三者等に開示、漏洩してはならない。
(3)前各号に違反して、貴社の営業秘密を貴社の許可なく第三者等に開示、漏洩もしくは使用した時は、法的な責任を負い、貴社の被った一切の損害を賠償すること。

 

○二重就業の禁止

 企業の半数以上は兼業禁止、二重就業禁止の規定を就業規則で定めています。  

 二重就業禁止規定を置く理由として、  
(1) 他の労働をすることにより、疲労が重なり本来の仕事で誠実な労務提供を行う妨げになる  
(2) 経営秩序を乱し、あるいは対外的信用を損なうなど労使の信義則上の問題となる
ということがあげられます。

 一方、雇用の多様化が進むなかで本業以外にアルバイトなどを行う二重就業者が増えています。そうしたなかで二重就業を認める動きが増えています。ただし、二重就業を野放しにしておいたときに、過重な労働とか、対外的信用を損なうような就労先などの問題発生を防ぐために、一般的には就業規則に二重就業禁止の規定を設けます。  

 二重就業が禁止されるのは、時間外や休日に他で労働することにより精神的・肉体的疲労の回復が妨げられ、本来の労働に支障を生ずるようになることだけでなく、他の業務を兼業することは業務の誠実な遂行を阻害し、信義に反するおそれがあるからです。

 多くの会社の就業規則で、「会社の許可を受けずに他に雇用され、又は事業を行ってはならない。」とし、その違反を懲戒事由として定めています。しかし、勤務時間中はともかく、勤務時間外には、労働者は、本来、使用者の支配を離れ、自由であるとしてその効力が争われることがあります。これについて、裁判所は就業規則で二重就職・兼職を禁止することの合理性を一応認めているようです。

 例えば、懲戒事由である「会社の承認を得ないで在籍のまま、他に雇われたとき」の規定は、労働者が就業時間外に適度な休養をとることが誠実な労務提供のための基礎的条件であり、又、兼業の内容によっては会社の経営秩序等を害することもあり得るから、合理性があるとしています(小川建設事件 東京地裁 昭57.11.19)。

 競合関係のある兼職については合理性が認められ易いようです(橋元事件 名古屋地裁 昭47.4.28  東京メディカルサービス事件 東京地裁 平3.4.8)。

 しかし、裁判所の大勢は、勤務時間外の時間については、本来、使用者の支配が及ばないことを考慮して、二重就職の禁止の制約の範囲を限定的に解釈しています。

 例えば、会社の職場秩序に影響せず、かつ会社に対する労務の提供に格別の支障を生ぜしめない程度、態様の二重就職は禁止規定への違反とは言えないとしています。

 会社が二重就業を禁止できる理由としては、
(1) 疲労度が累積し、会社の仕事に支障をきたす恐れがある場合  (2) 会社の大事な情報が漏れ、損害をうける恐れのある場合    (3) 企業の対外的信用、対面が傷つけられる恐れのある場合
などがあげられます。

 就業規則には、兼業禁止規定を設け、許可制にするとよいでしょう。

 休日をどう使うかは自由ですが、休日に労働することで、翌日の仕事に影響が出る場合や、同業他社などで企業秘密が漏れる可能性がある場合は許可しないなど、禁止の妥当性がある場合を列挙し、運用のルールを統一すべきでしょう。

就業規則規定例
第○条(二重就職の禁止)
 従業員は、会社の承認を受けないで、在籍しているままでほかの会社に入社したり、ほかの仕事をしてはならない。

 

○競業避止義務

 社員が同業他社へ転職したり、自ら同業を営むことを禁止(競業避止義務)する規定も盛り込むことは重要です。憲法により「職業選択の自由」は保障されているため、一定の制限はありますが、一定の社員に対しては就業規則等で定めることにより、競業避止義務を課すことは可能となります。損害を受けた場合は損害賠償を請求できる場合があります。 

 多くの会社の就業規則で、「会社の許可を受けずに他に雇用され、又は事業を行ってはならない。」とし、その違反を懲戒事由として定めています。しかし、勤務時間中はともかく、勤務時間外には、労働者は、本来、使用者の支配を離れ、自由であるとしてその効力が争われることがあります。これについて、裁判所は就業規則で二重就職・兼職を禁止することの合理性を一応認めているようです。

 例えば、懲戒事由である「会社の承認を得ないで在籍のまま、他に雇われたとき」の規定は、労働者が就業時間外に適度な休養をとることが誠実な労務提供のための基礎的条件であり、又、兼業の内容によっては会社の経営秩序等を害することもあり得るから、合理性があるとしています(小川建設事件 東京地裁 昭57.11.19)。

 就業規則には、兼業禁止規定を設け、許可制にするとよいでしょう。

 休日をどう使うかは自由ですが、休日に労働することで、翌日の仕事に影響が出る場合や、同業他社などで企業秘密が漏れる可能性がある場合は許可しないなど、禁止の妥当性がある場合を列挙し、運用のルールを統一すべきでしょう。

就業規則規定例
第○条(二重就職の禁止)
 従業員は、会社の承認を受けないで、在籍しているままでほかの会社に入社したり、ほかの仕事をしてはならない。

 

退職後の競業禁止

 就業規則若しくは労働契約書で退職後の競業禁止の特約(競業避止特約)を定めておくこと。

 社員が同業他社へ転職したり、自ら同業を営むことを禁止(競業避止義務)する規定も盛り込むことは重要です。憲法により「職業選択の自由」は保障されているため、一定の制限はありますが、一定の社員に対しては 就業規則等で定めることにより、競業避止義務を課すことは可能となりますし、損害を受けた場合は損害賠償を請求できる場合もあります 。

 「職業選択の自由」の立場から制限するのは難しいとされているが、重要なポジションにあると、従業員との間においては有効とされる場合もある。特約もなしに就業の自由を拘束することはできない。退職後の競業は、期間・場所・職種について合理的な範囲に限定して、禁止できる。

 退職後にも、競業避止義務を課すことができるかどうかですが、一般的には、憲法で保障された「職業選択の自由」があるため、無制限に競業避止義務を課すことはできません。退職後の競業避止義務が有効となるためには、契約上特別の具体的な根拠があり、合理的な範囲である必要があります。

 フォセコ・ジャパン・リミテッド事件(奈良地裁 昭45.10.23)においては、退職後の競業制限が合理的な範囲内にあるかどうかの判断基準としして、(1) 禁止期間、(2) 場所的範囲、(3) 対象職種、(4) 代償の有無 を総合的に検討して判断が下されており、他の裁判においてもこれらの点が検討の対象とされています。

(1) 禁止期間

 あまりに長期間の競業の禁止は退職者の職業選択の自由への不当な拘束として、無効とされてしまう可能性が高まります。通常、合理的とされる範囲は、長くとも2年くらいでしょう。

(2) 場所的範囲

 競業を禁止する趣旨が顧客を奪われないことにある場合には、競業禁止の場所的範囲を限定することは可能です。

(3) 対象職種

 当該従業員が関わっていた具体的な職務を中心として、これに密接関連する範囲の職種に限定することが望ましいといえます。

(4) 代償の有無

 代償が支払われている場合には、競業禁止が合理的なものと判断される傾向にあります。

 また、他の従業員と比べて給与等において、相当厚遇されていたのであれば、特別の代償措置がなくとも、競業禁止契約が有効とされる場合があります。

 会社側としては、就業規則に退職後も「競合避止義務」があることを規定します。

 さらに「誓約書」をとる必要があります。退職時にこの「誓約書」を取るのは困難なケースが多いので、このような「誓約書」入社時にとるとよいでしょう。なお、特に必要のある者については、退職後の競業禁止の特約(競業避止特約)を退職時に結ぶのがよいでしょう。そして、誓約に違反したときは、損害賠償請求をすることがある旨を付記しておくことです。

就業規則規定例
第○条(退職後の競合避止義務)
 退職し又は解雇された従業員は、会社の承認を得ずに離職後1年間は会社と競業する他社への就職あるいは役員への就任ならびに同業の自営を行ってはならない。また、会社在職中に知り得た顧客と離職後1年間は取引をしてはならない。
2 前項の適用従業員とは、競業避止特約誓約書を締結する。
3 競合避止義務に反した場合は、退職金の一部を減額又は返還を求めることがある。

 採用時に競業避止の特約を個々の社員と結ぶ事  

 同業他社への就職を禁止する事を『競業避止』と言います。競業避止を結ぶ時には、注意が必要です。まず、労働者は憲法22条で、『職業選択の自由』が保障されています。しかし、労働者は同時に、会社に対し、『守秘義務』もあります。つまり、手順を間違えずに、特約を結ぶ必要があります。例えば、会社の秘密をほとんど知らない社員まで、『競業避止』で拘束する事は出来ません。

 競合避止を結ぶには、前提として以下の内容を考慮します。   ・会社の機密事項の中枢にたずさわる者が対象であること
 ・その秘密が、保護に値する適当なものであること

 そして、特約を結ぶには、その内容が以下の要素を持つ必要があります。
 ・制限期間を設定する(例えば、退社から2年間)
 ・対象地域を設定する(内容によっては海外もありえる)
 ・対象の業種・業務を設定する(全営業種目という包括的なものは避ける)  
 ・この特約を結ぶ代償を与える(例えば、在職中の研究手当、役職手当でも可)  

 労働者は雇用契約上「企業秩序遵守義務」を負っています。私生活上の行為であっても、企業の名誉や信用を損なうような行為であれば規制の対象となりえます。

 就業規則には、職場外での職務に関係のない私的な行為であっても、会社の名誉や信用を害すると思われるような事由を規定しておくべきです。

 会社側としては、退職後も守秘義務があることを就業規則に定めます

  退職時に秘密保持誓約書を取るのは困難なケースが多いので、「誓約書」は入社時にとるとよいでしょう。その誓約書の中では損害賠償等についても定めておきます。

 また、特に必要のある者については、退職後守秘義務契約競業避止契約を退職時に結ぶのがよいでしょう。そして、これらの誓約に違反したときは、損害賠償請求をすることがある旨を付記しておくとよいでしょう。

誓約書の記載事例

 このたび、私は貴社を退職するにあたり、次の事項を誠実に守り決して貴社にご迷惑をおかけしないように誓約いたします

(1)退職後は在職中および退職後を通じて、会社の許可なしに業務上知り得た会社の機密事項を利用して、2年間は在職時に担当したことのある営業地域(都道府県)に在する同業他社への就職・役員への就任をして、貴社の顧客に対し、営業活動、ならびに同業の自営を行わないこと

 

○セクハラの禁止

 法律では、職場におけるセクハラを雇用管理上の問題と位置づけ、これを防止するよう事業主に配慮義務を課しています。男女雇用機会均等法第21条によって、職場における「セクシュアルハラスメント」を防止するための事業主の配慮が義務付けられ、事業主が配慮すべき事項についての指針(平成10年労働省告示第20号)が定められております。この指針に基づき、その防止についての企業の方針を明確にし、従業員に周知・啓発するため、服務規律として定めます。  

 具体的には、次の項目について明確に記載しておきましょう。    ・事業主の方針の明確化及びその周知・啓発  ・相談窓口の設置等の相談  ・苦情への対応    ・職場におけるセクシュアルハラスメントが生じた場合における事後の迅速かつ適切な対応  ・出退社にあたって、社員に対して守ってほしいこと をわかりやすく明記しましょう。

 会社の服務規定として記載する場合の例として、「従業員は、勤務場所等において、他の社員等(当社社員、当社に派遣され業務を行っている者、出向先・取引先の社員を含む)に対し性的な言動を行い、就業に影響を与えたり、秩序や風紀を乱すような性的言動を行ってはならない」ということを記載します。

 さらに、「職務上の地位を利用して他の社員に交際を強要したり、性的関係を強要するなどの行為をしてはならない」ことも記載しましょう。

 さらに、服務規定ではセクハラの具体例も記載すると防止効果も期待できます。下記のような記載例となります。

就業規則規定例
第○条(セクハラの防止)
 従業員はセクハラに該当するおそれのある次の各号の行為を行ってはならない。
 ① 相手の意に反する性的な冗談等を言うこと
 ② 性的なうわさ、経験談を相手の意に反して話したり、尋ねたりすること
 ③ ひわいな写真・絵画等を見ることの強要や配布・掲示を行うこと
 ④ 業務遂行に関連して相手の意に反する性的な言動を行うこと
 ⑤ その他、相手の望まない性的言動により、円滑な業務の遂行を妨げると判断されること

 

懲戒規定への記載について
 労働基準法第89条により、「制裁」に関する内容については、定めをする場合は就業規則に記載しなければならない事項とされています。

 常時10人以上の労働者を使用しない事業主の方も、服務規律等を定めた他の文書において当該懲戒規定を定めてください。

 以下の記載例を参考にして、就業規則その他服務規律等を定めた文書を整備してください。就業規則については、管轄の労働基準監督署まで就業規則の変更届を行ってください。

就業規則懲戒規定の記載例

第○条(譴 責)
 次の各号の一に該当するときは譴責とする。但し情状により訓戒とすることがある。
 ・・・
 ⑥ 会社内において、性的な言動によって他人に不快な思いをさせたり、職場の環境を悪くしたとき

第○条(出勤停止)
 次の各号の一に該当するときは、出勤停止とする。但し情状により譴責とすることがある。
 ・・・
 ⑥ 会社内において、性的な関心を示したり、性的な行為をしかけたりして、他の従 業員の業務に支障を与えたとき

第○条(懲戒解雇)  
 次の各号の一に該当するときは懲戒解雇とする。但し情状により諭旨退職とすることがある。  
 ・・・
 ⑨ 職責を利用して交際を強要したり、性的な関係を強要したとき

 服務規律の一環としての規定ではなく、1項目として条文を設けて職場におけるセクシャルハラスメントに関する事項を規定しましょう。別規程にした理由は、セクハラについては、改正男女雇用機会均等法で会社の義務が強化され、配慮義務から措置義務になりました。

 具体的には、以下の対応を図る必要があります。  
 ・事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
 ・相談・苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
 ・職場におけるセクシャル・ハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応  

 このため、就業規則の別規程とし、「セクシャル・ハラスメント」についての社内ルールを詳細に記載することがよいと思います。

 

○職場のパワーハラスメントの禁止

 職場のパワーハラスメントについても、その防止・解決に向けて取り組むことが求められています。組織のトップが職場のパワーハラスメントをなくしていく態度を明確にすることが重要です(「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」)。

就業規則規定例
○条(職場のパワーハラスメントの禁止)
 職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景にした、業務の適正な範囲を超える言動により、他の労働者に精神的・身体的な苦痛を与えたり、就業環境を害するようなことをしてはならない。

 平成24年3月に厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」が取りまとめた上記提言では、職場のパワーハラスメントの概念を以下のように整理しています。

 職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。

 パワーハラスメントという言葉は、上司から部下へのいじめ・嫌がらせを指して使われる場合が多いですが、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して行われるものもあり、こうした行為も職場のパワーハラスメントに含める必要があることから、上記では「職場内の優位性」を「職務上の地位」に限らず、人間関係や専門知識などの様々な優位性が含まれるものと整理しています。

 また、個人の受け取り方によっては、業務上必要な指示や注意・指導を不満に感じたりする場合でも、これらが業務上の適正な範囲で行われている場合には、パワーハラスメントには当たらないと考えるべきでしょう。

 さらに、提言ではパワーハラスメントの行為類型として、以下のとおり示しています(典型的なものであり、すべてを網羅するものではないことに留意して下さい)。  
 ①暴行・傷害(身体的な攻撃)  
 ②脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)  
 ③隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
 ④業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)  
 ⑤業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)
 ⑥私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害) 

 ①については、業務の遂行に関係するものであっても、「業務の適正な範囲」に含まれるとすることはできません。

 ②と③については、業務の遂行に必要な行為であるとは通常想定できないことから、原則として「業務の適正な範囲」を超えるものと考えられます。

 ④から⑥までについては、業務上の適正な指導との線引きが必ずしも容易でない場合があると考えられます。こうした行為について何が「業務の適正な範囲を超える」かについては、業種や企業文化の影響を受け、また、具体的な判断については、行為が行われた状況や行為が継続的であるかどうかによっても左右される部分もあると考えられるので、各企業・職場で認識をそろえ、その範囲を明確にする取組を行うことが望まれます。

 

○マイカー通勤

 マイカーによる通勤に関しての規定をしている会社は少ないようです。多くの会社で「業務と直接関係ないから」と黙認しているところも多いことでしょう。まず、マカー通勤については許可制にすることと、その条件として保険に加入することとします。

 また、運転免許証や保険証券の写しなどを提出させ毎年の更新型とします。 こうすることにより、運転者の賠償能力を担保することが可能です。 加入保険の条件についても具体的に定めることが肝要です。

 

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