個人情報の保護に配慮

 使用者は、職場における労働者の個人情報を保護するように配慮することを求められており、行政により詳細な行動指針が発表されています。

 

個人情報の保護のための行動指針

 使用者は、職場における労働者のプライバシーを配慮することを求められています。

 プライバシーとは、個人の私的領域につき他人から干渉を受けない権利を言いますが、労働者の個人情報は、プライバシーの中でも代表的なものであり、使用者が労働者の個人情報をみだりに開示した場合などは、損害賠償責任が発生することがあります。

 こうした私法上の規律に加え、行政においても、労働者の個人情報を保護するための取り組みがなされています。最も包括的なものとしては、厚生労働省により発表された「労働者の個人情報に関する行動指針」(平成12年12月20日)があります。この行動指針は、「労働者の個人情報に関する研究会」における検討をもとに、民間企業が労働者の個人情報の保護に関する規程を整備することを支援・促進することにより、円滑な処理に配慮しつつ個人情報の保護の一層の推進を図ることを目的として策定されたものです。

 この指針は、個人情報の処理は労働者の雇用に直接関連する範囲内において適法かつ公正に行われるべきこと、業務上知り得た個人情報をみだりに第三者に知らせ、または不当な目的に使用してはならないことなどの基本原則を宣明した上、まず情報の収集に関しては、本人からの直接収集を原則とすること、人種・民族・社会的身分・門地・本籍・出生地その他社会的差別の原因となる事項や思想・信条及び信仰についての個人情報を収集してはならないこと、うそ発見器等を用いた検査やHIV検査、および遺伝子検査を行ってはならないことなどを定めています。

 また、個人情報の保管については、収集の目的の範囲内で保管すること、不要となったものは破棄または削除することなどが定められ、情報の利用・提供については、やはり収集の目的の範囲内で行うことの他に、目的外に利用する場合には労働者の事前の同意を得ることなどが定められています。さらに、情報処理を委託する場合には適切な委託先を選定すること、委託契約において適正な処理のための制約を付することなども掲げられています。以上の他に、労働者は原則として自己の個人情報につき開示を求めることができ、誤りがあった場合には訂正を求めることができることなども定められています。

 さらに、厚生労働省は、個人情報保護法の施行を受けて、2004年に、雇用管理分野における個人情報保護に関するガイドライン」を定めています(平16厚労告259号)。この指針では、収集する従業員の個人情報の利用目的を具体的に特定すべきことや、個人データ管理者を事業所ごとに設置すべきこと、及び個人データの処理を外部に委託する場合の注意事項(利用目的達成後の破棄・削除の確保)などについて定められています。

 

パソコンの利用について

 インターネットを利用している会社であれば、利用に当って社員が遵守すべき事項等についても定めておきます。

 私的利用禁止の文言を加えるなり、就業規則とは別にパソコン利用規定を定めましょう。

 職場外での職務に関係のない私的な行為であっても、会社の名誉や信用を害すると思われるような事由も規定しておくことができる。

 従業員は、会社との労働契約に基づいて誠実に労働すべき義務があり、勤務時間中は会社の指示に従い誠実に業務を遂行することに専念しなければなりません。

 したがって、就業時間中に私用メールや業務と無関係なサイトを閲覧することは、その義務を果たしていないことになり、就業規則に基づく懲戒処分の対象となり得ます。

 これは、休憩時間中であっても同じことです。確かに労働基準法では、休憩時間の自由利用の原則についての定めがあります。

 しかし、休憩時間中においては、労働義務からは完全に解放されるとは言え、会社の秩序を維持する義務や、施設管理権からの制約を免れるという主旨のものではありません。

 よって、職場のパソコンには会社の施設管理権が及びますので、たとえ休憩時間であっても、会社がパソコンの私的利用を認めない場合には、従業員はパソコンを業務以外の用途にみだりに利用できないことになります。

 では、会社のパソコンの私的利用を制約するためにはどのような方法があるのでしょうか。

 制約の手法としては、パソコンの閲覧、あるいはアクセスログを取得することが考えられますが、これらがプライバシーに反するのではとの疑問が生じるかもしれません。

 しかし、会社の設備である以上、その使用に関する記録を会社が取得することは当然です。アクセスログの不用意な開示に関してプライバシーが問題となることはあり得ますが、取得及びその適切な使用が直ちに違法となることはないと言えます。

 実際に、裁判例でも「監視の目的、手段及びその態様等を考慮し、監視される側に生じた不利益とを比較考量の上、社会通念上相当な範囲を逸脱した監視がなされた場合に限り、プライバシーの侵害となる。」(X社事件 東京地裁 平13.12.3として、閲覧を広く認める方向にあるようです。

 

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