カーボンニュートラル

2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略

 日本では、温暖化対策として代表的なのは発電方法の「脱炭素」化です。石炭火力発電所の活用や輸出を制限し、石油エネルギーの比率を下げ、再生可能エネルギーへの移行を推進するという。

 2020年10月、政府は、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」として、2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにするという目標を掲げた。2030年度には、再エネ比率を現在の17%から、36~38%に上げ、太陽光は15%にすることを目指しています。

参考

 「カーボンニュートラル」とは、一連の活動において排出される二酸化炭素と、吸収される二酸化炭素の量を同等にすることを言います。

 「グリーン成長戦略」は、政府が脱炭素社会に向けた高い目標を掲げることで、民間の技術革新や投資を引き出し、2030年に90兆円の経済効果を見込んだものです。

 エネルギー基本政策は、電力政策の骨格であり、およそ3年に一度見直されています。2021年の第6次計画では、日本が「温室効果ガス46%減」を目指す2030年度に、「火力41%、再生可能エネルギー36~38%、原子力20~22%」とする計画を策定していました。

 第7次計画では、「2050年のカーボンニュートラル」というパリ協定の目標を達成するため、2040年度に、再エネの比率を火力よりも増やし、主力電源とするシナリオを示す方向のことです。各電源のコストや技術革新の進展も見通しにくいため、「複数のシナリオで異なる電源構成を示す」という異例の対応を検討しているとも報じられています。

 2050年に「CO2排出量ゼロ」を目指す菅政権は、火力発電を限りなく少なくし、日本の発電の最大6割を再生可能エネルギーで賄い、そのうち3000万~4500万キロワット(原発30~45基分)を洋上風力で発電するという。「脱炭素社会」の本格化は、経済効果190兆円にも上り、経済成長を実現できるとしました。

 2030年代半ばまでに乗用車の新車販売の全てを電動車にし、次世代エネルギーとして水素を、現在の10倍にあたる2000万トンの利用を目指した普及策を講じるとしました。

 政府は、環境関連技術開発や普及を支援するため、2兆円の基金を創設。これを呼び水として、民間企業の研究開発や設備投資、さらには世界のESG(環境・社会・企業統治)資金を呼び込もうとしています。

 脱炭素に向けて民間が投資しやすくするルールの整備など、関係省庁で議論を深めた上で、グリーン成長戦略を改定して反映させることとしました。

 

 2050年に温室効果ガスの実質ゼロを目指す「カーボンニュートラル」を実現するには、2030年時点で、少なくとも年間約17兆円の投資が必要になるとの試算を発表しました。主な内訳としては、「再生可能エネルギーの導入促進のために約2兆円」「水素・アンモニアのインフラ投資と蓄電池の製造に約1兆円」「工場などでの製造工程の脱炭素化等に2兆円」「住宅・ビルの省エネ化や電動車購入に約4兆円」「半導体工場や送電網、水素ステーションなどのインフラ整備に約4兆円」など、さまざまな項目における推定必要額を積み上げたものです。現行の投資額が合わせて年5~6兆円であり、その約3倍にあたります。

 しかし、こうした目標を推進すればするほど、各自治体での問題が増えることが予想されます。

 

太陽光発電はリスクが高い

 2050年に「排出量を実質ゼロ」にするという目標を達成するため、都道府県・政令都市・中核市などの自治体に、太陽光など再生可能エネルギーの導入目標の設定を義務付けるものと報じられています。

 政府は、2030年の発電量に占める再エネの割合を36~38%、太陽光発電の割合を15%、50年の再エネ割合を50~60%にする案を示している。これを実現するには どれほどの規模の太陽光発電所をつくる必要があるのだろうか。太陽光発電の割合を30年の15%とした場合、幅120メートル、長さ2000キロメートル分の太陽光パネルが必要になります。これは北海道から関東を経由して、鹿児島まで続く太陽光パネルのベルトを敷き詰めるイメージです。太陽光発電の割合を50年の再エネ目標の半分にあたる30%にしたら、太平洋側に太陽光パネルベルト1本、日本海側に1本が必要です。60%だと太平洋側と日本海側に2本ずつ。どう考えても「気違い沙汰」です。

参考

 廃炉が進む原発は全部再稼働したとしても2割程度。残りの4割以上につき太陽光を中心とした再生可能エネルギーで賄わざるを得ないです。これは、日本中の山の斜面を太陽光パネルだらけにしても なお達成できないでしょう。

 太陽光パネルを個人の自発的意思で設置することは構いませんが、国の方針として義務化することは、リスク面でもコスト面でも問題だらけの暴論と言わざるを得ません。その根拠は大きく3つあります。

1 電力供給が不安定・・・

 太陽光発電への依存度が増せば、停電リスクが高まります。発電量が天候などに左右されるため、電力供給が不安定となるのです。

2 コストの問題・・・

 不安定な供給をカバーし、上記のような事態を避けるため、太陽光発電の構成比率を上げるには、他の電源によるバックアップ(火力発電や蓄電池)を取らなければなりません。それに伴いコストが高くなってしまうのです。

3 安全性の問題・・・

 太陽光パネルは災害時に破損することが多く、台風により飛散したパネルが近隣の建物を損傷したり、破損したパネルから発火したりすることもあります。

 ガラス板である太陽光パネルは、台風にも地震にも弱い。太陽光発電施設が大災害で一度に壊れた場合、その一帯の発電力は、壊れたパネルを全て取り替えるまで戻らないことになる。停電が長引くなどすれば、日々の生活は破壊されます。太陽光パネルだらけの都市に地震が起こればどうなるか。「家々の屋根からパネルが落下する」「壊れたパネルに雨が降り、火災が発生する」「停電が長引き、復旧しない」といった形で、機能マヒになる恐れがある。日本中にメガソーラーが敷き詰められれば、深刻な土砂災害を増やすことになりかねません。

参考

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 太陽光発電は、天候によって発電できる量が大きく変化するため、バックアップとしての火力発電や原子力発電なしでは電力供給が不安定す。再エネを増やして火力・原子力を減らすという計画は、事業者など大量で安価な電力が必要なところへの電力供給を危機にさらしかねません。

 太陽光発電に多くを依存したエネルギー政策は現実性が乏しい。「机上の空論」で国を振り回すのはやめるべきです。ましてや、太陽光パネル設置を義務付けるというのは「自由の侵害」でもあり、こうした全体主義的発想にも注意する必要があります。

 

洋上風力は机上の空論

 政府は「脱炭素」の切り札として風力発電の大量導入を目指しています。しかし、日本国内でその適地は限られる。条件として、一つは安定して強い風が吹くこと、二つ目は電力大消費地の首都圏から遠くないことが望ましい。東北地方の北部は両者を満たす。そのため開発事業が集中する。事実上 日本の風力政策を一手に受け止める形になっている。数千基の風車が、数年内に、青森・岩手・秋田が愛し、誇りとしてきたさまざまなものをことごとく脅かします。風力発電所は市街地や平地には設置場所がないため、現時点では山の森林を大規模に伐採して建設されます。200メートル近い設備を十数~数十基設置するための土地は広大で、建設のための道路も造成しなければなりません。周囲の生態系に大きな影響を与えると同時に、土砂崩れなどの要因にもなります。

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 洋上風力の設置は、魚や海鳥など海洋生態系に大きな影響を与えることが懸念されています。さらに、風力発電施設は、大気中に熱や水蒸気を再分配し、CO2を吸収する森林を減らすことになり、温暖化防止とは逆の効果を持ちます。これの犠牲を払って4000基の風車を建てても、その総発電量は原子力発電所1ヵ所分だけなのです。

 日本とヨーロッパでは まったく事情が違います。ヨーロッパでは、安定的に偏西風が一定方向から吹き、発電効率が段違いに良い。風力発電の発電量の指標である設備利用率は、日本の陸上風力が20%台であるのに対し、欧州の一部地域では平均50%前後で、2倍以上の差がある。残念ながら、日本列島周辺では そんな都合の良い風は吹かない。

 また、ヨーロッパでは、洋上風力に適した遠浅の海が多いなど、海岸付近から急に深くなる日本とは条件が違う。日本には計画にあるような大量の洋上風力を設置できる海岸線は存在しないのです。

 太陽光発電は日が出ている時間しか発電できず、風力発電は風が吹いている時間しか発電できません。日光や風が弱い時に停電などが起こらないようにするため、バックアップ電源として、一定の火力発電所などは確保をしたり、蓄電池を増設したり、他の地域から電力を融通してもらうための送電網をつくらなければいけません。

 

 風力発電や太陽光発電といった再エネは、発電効率が非常に悪く、その裏表として、一定量の電気を発電するための敷地確保に大規模な森林伐採が必要です。それによって土砂崩れなど災害につながるリスクもあります。再生可能エネルギーへの依存が高くなるほどエネルギーは不安定化します。再生エネルギー中心の電力構成では、電力供給量が10%ほど減り、日本の産業に壊滅的な打撃を与えます。風力をはじめとする再エネ推進は無理があることが日に日に明らかになっています。政府もエネルギー政策の方向性を見直すべきでしょう。

 再エネは、国民経済にも自然環境にも大変な負荷です。火力依存もエネルギー安保の観点から危険です。日本は将来的に、核エネルギー比率を50%以上に高め、主力電源化していくべきだと思います。

 

脱ガソリンは空虚な政策

 菅義偉首相は、2021年1月の施政方針演説で、「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する」と打ち出しました。東京都は、2030年までに都内で販売される新車を全て電動車に切り替えることを目指すという。

 ハイブリッド車や電動自動車、水素を燃料とした燃料電池車を普及させる予定だという。「電動車」とは、大容量のバッテリーを搭載してモーターで駆動するクルマを指しています。トヨタのプリウスなど ガソリンエンジンとモーターを併用するハイブリッド車(HV)、充電も可能なプラグインハイブリッド車(PHV)、水素などで動く燃料電池車(FCV)、ガソリンを一切使わず バッテリーで動く電気自動車(EV)です。2035年にガソリン車の新車販売はない という方向です。

参考

 ところが、電気自動車が増えても、火力発電が主要であれば石油を燃やすことになります。電気自動車の製造過程では、ガソリン車よりも多くのCO2が排出されます。ガソリンを燃やす量が減っても、輸入した原油から石油製品用のナフサや飛行機の燃料などを抽出する過程で、今までと同じ量のガソリンは生産され続けます。そのガソリンは捨てるわけにもいかないので、どこかで使うことになります。そこで使用されれば、CO2の排出量は変わらないわけです。

 急激なEV転換は自動車産業に大打撃を与えます。トヨタ自動車の先進国での新車販売が100%EVになった場合、全体の収益が40%近く減益し、約8700億円の損失が出るとの指摘もある(週刊ダイヤモンド「脱炭素 3000兆円の衝撃 #3」)。HVを許容すれば、自動車産業の国内での存続は可能だろう。しかし、完全EV化(脱ガソリン車化)を強行した場合には、ガソリン車工場の中国などの海外への脱出が起きることは必定だと思われる。自動車産業の5割が海外に移転したら、日本のGDPは5%収縮する。30%のGDPが損失する。金額にすると約160兆円です。

 「脱炭素」の名の下に自動車産業を破壊し、国力を落とすだけにならないよう、急激なEV化の強制については今一度立ち止まるべきでしょう。

 発電などのエネルギー供給、材料供給、部品供給を考えれば、急激な脱炭素は進められるものではありません。ガソリン車やディーゼル車の禁止政策は、技術の選択肢を自ら狭め、日本の強みを失いかねない。ガソリン車禁止は「計画経済」であり、日本経済を壊す手段に他なりません。脱炭素に囚われることなく、日本の産業を守る政策へと修正すべきでしょう。

 自動車産業は、製鉄業と同様、日本の産業の中核を担うものです。そもそも、CO2が温暖化に関係しているという科学的な根拠はなく、不確かな脱炭素の波に呑まれて実現不可能な目標のために国力を落とすことがあってはならないでしょう。

 日本のCO2の半分は、製鉄所や化学工場、自動車などによって排出されている。これを「技術革新や設備投資などで あと数年で ほぼ半減させろ」ともし言うなら、どう考えても現実的ではない。CO2と一緒に、産業規模が削減されると覚悟した方がよい。自動車産業も、「脱ガソリン車」が進めば、ガソリン車に精通する技術者が軒並みお役御免になる。550万人の大半の雇用を失う可能性がある。

 脱炭素社会は、自動車産業などの日本の基幹産業をもろに直撃し、さらなる産業の空洞化を招き、経済の根幹をも破壊する可能性があります。

 「脱ガソリン」は何重もの意味で空虚な政策です。

 世界中で大気汚染が問題になっていますが、その救世主として期待されているEV車に対し、逆に大気汚染を助長させているという説が浮上してきています。

 自動車のエンジンで直接生み出されるエネルギーに比べて、発電・送電さらに蓄電とステップを踏むたびにロスが生じ、さらに発電源が石炭では自動車による汚染よりも大気を汚して当然 。

 清華大学の研究によると、中国で充電される電気自動車はガソリン車の2.5倍の粒子状物質(PM)や化学物質を排出しているという。

 

CCS実験後の商用化

 CCSによるCO2削減計画は世界規模で行われており、2100年までに世界の気温上昇を2度抑えるために、2060年までの累積CO2削減量の14%をCCSが担うことが期待されている。(2060年時におけるCO2削減量 49億トン/年)

 日本のCO2削減目標は、2016年現在CO2排出量14億トンのうち、発電・産業による排出約9億トンの14%を2050年にCCSで回収する計画のようです。

 CCS商用化で、巨大地震が至るところで発生する危険性が出てくる。

 

CO2削減、再エネ推進は百害あって一利なし

 夏や冬にエアコンなどの使用頻度が高くなり、電力需要が高まれば、停電になりかねないのが現在の日本の状況です。その主な原因は、二酸化炭素(CO2)排出量をゼロにする「脱炭素」を目指して、火力・原子力発電を減らした無理な電力構成にシフトしようとしていることにあります。

 日本の電力の4割は、CO2排出量が比較的少ない液化天然ガス(LNG)の火力発電が占めています。しかし、LNGは超低温で管理する必要があり、長期保存に向かないことから、発電事業者のLNGの備蓄は2週間程度。LNG任せの現状の電力供給でも、エネルギー安全保障のリスクを高めていると指摘されています。

環境保全のお題目のもと、電力の安定供給が可能な石炭火力や原子力なしに、日本の電力需要を支えるには かなりの無理があると言わざるを得ません。

 「2030年度までにCO2を46%削減」を本気でやると、毎年20兆円ものお金が追加でかかる。政府は、従来の26%削減目標から 20%分深掘りした。日本は、現在、CO2を1%減らすのに1兆円費やしている。これは、税金、電気代、企業負担など、さまざまな形で国民にのしかかるが、「消費税率10%分の引き上げ」に相当する負担なのです。

参考

 46%削減するにも、今後、何十兆、何百兆円もの財源が必要となり、増税は必至です。経済を犠牲にして、万が一達成できたとしても、日本のCO2排出量は世界の4%程度にすぎず、わずか2%しか減りません。莫大な税金を投じるのに、あまりにも費用対効果が悪いと言わざるを得ません。

  「カーボンニュートラル」に向けて取り組みを実施すれば、自動車や鉄鋼業などの産業が縮小、もしくは破壊されてしまいます。日本経済においては、GDPマイナス30%の大恐慌が訪れることでしょう。

 季節や時間帯によらず、年間を通じて安価に維持・供給できる電源には、火力や原子力、水力などが適している。電力が足りなかったり電気代が高騰すれば、産業界の生産コストが上がり、新産業を開発する余力はなくなる。国力低下に直結するのです。

 「世界に乗り遅れるな」と焦り、分かりやすいスローガンを打ち上げる政府ですが、冷静な目が必要です。

CO2削減、再エネ推進は 百害あって一利なし

 有害物質を大気中に無尽蔵に排出することは規制すべきですが、「CO2の増大そのものが地球を破滅させる」というのは、一種の終末論です。過度のCO2削減は、産業を停滞させ、著しく景気を衰退させます。「地球温暖化対策基本法案」は、国民生活に多大なしわ寄せが回ってきます。「経済発展や技術の進歩を捨て、原始時代に帰ろう」という主張は、形を変えた左翼運動、マルキシズムと言えるかもしれません。長期的には代替エネルギー、新エネルギーの開発を強力に進めるべきですが、性急なCO2排出削減は、経済成長を犠牲にしてまで進めるべき政策ではありません。

 脱炭素などの無理な気候変動対策を推し進めていけば、企業倒産の引き金を引き、大量の失業者を生み、国の経済を弱らせ、財政赤字を増大させ、さらには食糧不足や地球の砂漠化をも招くということを、もっと真剣に考えるべきでしょう。

 世界各国が脱炭素の取り組みを進める中、中国は石炭火力発電所の建設を進め、CO2の排出量を増やし続けてきました。「脱炭素は、先進国を弱体化させるために仕掛けた罠」である可能性が極めて高く、相当の注意が必要です。日本政府は早急に「脱炭素」の方針を見直すべきです。

参考

 

 「そもそも論」として、日本が人為的なCO2排出量を仮に実質ゼロにしたところで、地球の温度はほとんど冷えません。

 「二酸化炭素による地球温暖化」はあくまで仮説に過ぎません。日本の出すCO2は、世界のCO2排出量のうち、わずか3.5%。東京大学名誉教授の渡辺正氏の試算によれば、日本が人為的な排出量をゼロにしても、たった0.001度しか地球の温度を冷やさないとます。

参考

 CO2が理論的にもたらす温暖化の影響は、無視できるほど小さい。脱炭素などにいくら励んでも、ほとんど意味はありません。壮大な虚構を前提とした国策としてのCO2削減、再エネ推進は、百害あって一利なしです。政府は温暖化絡みで2030年までに100兆円超を使う予定ですが、そんなお金があるなら、防災や医療、福祉に回すべきです

 

中国独り勝ちで国際秩序がひっくり返る

 怖いのが この沈下現象が日本だけではないということです。2030年度までの温室効果ガス削減目標は、日本で46%減だが、アメリカは50%強、イギリスは68%、ドイツは65%、カナダは40~45%。どこも50年には実質ゼロである。G7をはじめとする西側諸国は軒並み、滝つぼに落ちていく。

 中国も「CO2排出目標」を掲げるが、得意の統計操作や、国際交渉における時間稼ぎなどによって、事実上踏み倒すだろう。太陽光パネル製造などで大儲けする傍ら、各国から逃げてきた企業や技術者を受け入れ、各国が手放した石油・石炭市場も独占。中国は世界経済で独り勝ち状態になる。そして、西側諸国が経済力、影響力、軍事力を失ったところに中国が覇権拡大の大攻勢をかけ、国際秩序そのものがひっくり返る。

 2020年9月、国連総会の一般討論のビデオ演説で、中国の習近平国家主席は、CO2排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を2060年までに実現すると表明した。中国の目標達成時期は「パリ協定」が定める「2050年CO2排出量ゼロ」からは10年遅い。しかも、中国国内の石炭消費量は依然増加している。

 2014年、中国政府は新規発電所の許認可権を地方に移管。各地で石炭火力発電所の建設が相次いだ。その結果、2020年上半期には、中国が計画する石炭火力発電新設量は、全世界の9割となり、CO2はさらに37%増えるとの予想もある。

 「温暖化問題」に積極的になったように見える中国の大言壮語は、明らかな国際世論の誘導。「中国は公約を絶対守らないし、CO2排出量の統計値はいくらでも調整して出し放題」と指摘されるように(『ヤイドロンの本心』)、中国の発表や公約は大ボラと見た方がよく、何か裏があると考えた方がよい。

 中国は、2060年までに CO2の排出量を実質ゼロにすると宣言していますが、そんな目標を端から達成しようとは思っていません。一方、先進国もかなり無理な目標を掲げていますから、中国をまともに批判できないのでしょう。

 中国は目標が達成されなくても、戦略的には十分に目的は果たされると考えています。何を考え、「温暖化対策」に臨むのか。「超限戦」の主力兵器として「温暖化」を最大限利用しているとすれば、その狙いが見えてきます。

 第一の狙いは、温暖化で譲歩する態度を見せることで、人権や領土問題などで交渉を有利に進めるということです。これは、相手がどうしても解決したい問題(イシュー)に協力してあげることで、同時に交渉を進める他の問題に対して相手側が強い態度に出られないようにする、「イシュー・リンケージ」という外交上の常套手段です。

 オバマ米大統領は、任期終盤時、自らの政治的遺産として「パリ協定」の実現に固執していました。そして、「京都議定書に調印しなかった世界の二大CO2排出国であるアメリカと中国の参加が必要だ」とされていたのが当時の国際世論でした。そのために、オバマ政権は中国の言うことを何でも聞きました。その代表的な事例が中国による南沙諸島の実効支配です。「パリ協定」成立直前の2014年から15年にかけて、中国はミスチーフ礁やジョンソン礁などの7ヵ所において、大規模かつ急速な埋め立てを強行。軍事施設のほか、滑走路やレーダー施設などのインフラを建設しました。

 中国は、「軍事行動ではありません」と言っていましたが、それは明らかなウソです。それにもかかわらず、オバマ政権は、あいまいな態度を繰り返し、中国の横暴を許していました。まさに、「パリ協定」のために南沙諸島が売られたと言っても過言ではありません。これと同じことを、今、中国は狙っているのです。

 第二の狙いとして挙げられるのが、ヨーロッパやアメリカ、日本などの先進国の弱体化です。中国を含めて、世界各国が「カーボンニュートラル」に向けて掲げる目標は、「経済的には自爆、技術的には不可能、科学的にはナンセンス」なものばかりです。

 先進国の多くはCO2ゼロの期限を2050年に設定していますが、中国は2060年。この10年の差はかなり大きいです。先進国が先んじて破たんしていく中で、中国はそれを非難しながら、自らの目標を下げていく。こうした構図になります。

 さらに、目標を取り下げれば、先進国への環境保護団体からの抗議の声が高まるのは目に見えています。

 第三の狙いとして、中国はアメリカの分断を図ろうとしています。環境問題を声高に主張するリベラル陣営にとって、温暖化はイデオロギーのようになっている。客観的なデータに基づく冷静な議論ができないのです。

 その一方で、保守陣営は「温暖化」の問題を冷ややかに見ています。中国が環境問題を煽ってこの亀裂を深くすることによって、アメリカの国力を下げようとしているのです。

 中国の狡猾な外交戦略が着々と進められていることを、日本はしっかりと認識しなければなりません。中国に惑わされて、外交のかじ取りをゆめゆめ間違えてはいけません。

 これまで、中国は嘘の統計を発表し、世界を欺き続けた。その代表例がGDPである。そもそも、中国のGDPは公表の半分という厳しい見立てもあります。そんな中国が「2060年にCO2排出量ゼロ」など守るはずがない。むしろ、統計を誤魔化し、石油・石炭を輸入し続け、ガソリン車を走らせ続ける、そんな未来を考えておいた方がよい。

 中国は温暖化ガスを60%減らすという目標を掲げているが、真に受けて良いのだろうか。中国は2005年に比べて2030年までに、CO2を国内総生産(GDP)当たり60%削減するという目標を2015年に発表しました。

 ここで だまされてはならないことは、「総排出量」ではなく「GDP当たり」60%削減になっている点です。実際には60%削減しなくてよいことになる。例えば、2005年に比べて2030年にGDPが2倍になっていたとしたら、CO2排出量が1.2倍になっても60%削減したことになります。実際の中国GDPは2005年に2.27兆ドルで2015年に10.87兆ドル、2030年に15兆ドルとすると6.6倍になっている計算になる。これをGDP当たり60%削減すると、2005年と比べてCO2総排出量を2.65倍増やして良い事になります。何のことはない。中国が言っている60%削減とは、実際には2.65倍増やすと言う話だったのです。

 中国の環境対策とは、一事が万事こんな調子で、表面の数字だけそれらしく発表するが、その実なにもしないのです。

 中国には、「CO2削減」を進めるふりをしながら化石燃料を独り占めしようとしている、という狙いがあるというのです。サウジアラビアの最大の石油輸出先は中国であり、ロシアの23年の石油輸出先も50%近くが中国でした。さらに、ブラジルやイランなどの石油も輸入しています。石炭についても、輸出1位のインドネシアや2位のオーストラリアなどから大量の輸入を続けている状況です。

 世界的な「脱炭素」が進み、化石燃料を使わなくなれば、中国がエネルギーを独り占めすることになってしまいます。

 脱炭素で日本の製造業は崩壊の危機に瀕する。他の先進国も同様に行き詰まるだろう。幸福の科学のリーディング(『ヤイドロンの本心』)で予見される未来では、先進国がCO2の排出制限を受けると、石油・石炭・鉄鉱石などの資源をまともに買ってくれるのは中国だけになり、輸入の力で資源国を支配するようになる。さらに、ガソリン車は中国しか輸入してくれなくなる。世界のガソリン車工場の中国移転が始まる。そして、中国は再び「世界の工場」を狙うのです。

 「脱炭素社会」の実現で、世界秩序は大きく変化し、中国が軍事的にも経済的にも、覇権を握ることになる。

 脱炭素を錦の御旗とした「統制経済」は、結局、各国の基幹産業を破壊し、国力を落とすだけになってしまいます。

 このまま脱炭素を進めていけば、世界を手中に収めるための計画を進める、中国の思うつぼとなってしまいます。EVに限らず、カーボン・ニュートラルが招く産業の破壊、文明の破壊を警戒し、政策としても見直すべきでしょう。

 

(参考)合成燃料(e-fuel)

 カーボンニュートラル実現に向けた取り組みが進む中、環境に優しくエネルギー密度の高い「合成燃料(e-fuel)」が注目されています。すでに官民一体となって研究開発が進む合成燃料(e-fuel)ですが、実はその裏には、JOGMECが民間企業と共同で開発した、「JAPAN-GTLプロセス」という技術が生かされています。

 合成燃料(e-fuel)とは、二酸化炭素(CO2)と水素(H2)を原材料として製造する石油代替燃料のことです。石油と同じ炭化水素化合物の集合体で、ガソリンや灯油など、用途に合わせて自由に利用できます。

 合成燃料(e-fuel)は、再生可能エネルギー由来の水素(このような水素を「グリーン水素」といいます)と、発電所や工場から排出される二酸化炭素や大気中の二酸化炭素を使って製造することから、従来の化石燃料と違い、ライフサイクル上で大気中の二酸化炭素を増やすことがない、カーボンニュートラルな燃料と言えます。

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