摂食障害

 摂食障害は、大別して「神経性無食欲症」(Anorexia Nervosa)と「神経性大食症」(Bulimia Nervosa)の2つがあります。

 神経性無食欲症というのは、一般的に「拒食症」と呼ばれている疾患のことです。このほか、「神経性食思不振症」「神経性食欲不振症」「思春期やせ症」とも言われます。神経性大食症は「過食症」と呼ばれている疾患のことで、ほかに「神経性過食症」「神経性多食症」「大食症」とも言われます。

 神経性無食欲症というのは、食べることを拒否する食行動を言います。神経性大食症は驚くほど大量に食べる食行動です。この一見正反対の食行動はそれぞれ別の病気のように思われますが、どちらの食行動も肥満に対する「不安や恐怖」「痩せ願望」という点では共通しており、根源は同じです。

 痩せたい、だから食べないという神経性無食欲症の多くは若い女性に発症し、極端に食べなくなるため、病的に痩せていきます。そして、病的に痩せているにもかかわらず、自分は痩せているとは思わない身体像(ボディ・イメージ)の障害を示します。すると、ますます体重増加への不安や恐怖が起こります。この状態が病気であるということへの認識はまったく無く、治療に対しても無関心で、周りから治療を促しても本人は強く抵抗します。進行すると、さまざまな精神合併症を伴って、最悪の場合は極端な低栄養状態となって死にいたることもあります。

 この神経性無食欲症が進行する過程で、食べないことへの反動として大食したいという欲求が生じてきます。これが神経性大食症です。自制困難となって一定の時間にむちゃ食いをしたり、大量の食物を食べますが、それでも痩せたい願望が強く、食べたものを故意に嘔吐したり下剤を乱用するようになります。そうかと思えば、翌日になって食べるのを極端に減らしたり、絶食したりして体重増加を防ごうとします。このように、「食べないこと」(神経性無食欲症)と「食べ過ぎること」(神経性大食症)を繰り返すケースも多く見られます。この神経性無食欲症と神経性大食症はまったく別の病気のように見えますが、別の形で症状が現れたに過ぎず、根源は同じ摂食行動異常であることに変わりはありません。

 現在、日本では「摂食障害」(Eating Disorder)という言葉が一般的に用いられるようになりました。

 この摂食障害は思春期の女性に圧倒的に多い病気です。発症の平均年齢も18歳前後ですので、これほど性差や年齢差がはっきりしている病気は少ないでしょう。しかし、患者が増えるに伴って、最近は小学生から主婦、男性、高齢者にも発症しており、年齢や性別の分布も以前よりは広がっております。若い女性だけにある特有の病気ではなくなってきました。

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