内縁関係の遺族年金

 法律上、婚姻届が受理されない内縁関係については、原則として遺族年金は支給されないものですが、国民年金法、厚生年金保険法では、配偶者について事実上の婚姻関係にある人も受けられる可能性があります

 事実婚関係にある者とは、いわゆる内縁関係にある者をいいますが、内縁関係は、婚姻の届出を欠くが、当事者間に社会通念上、夫婦としての共同生活と認められる事実関係が存在し、それを成立させようとする合意があることを要件とします。

 

生計維持・生計同一関係に係る認定基準及びその取り扱いについて より(昭和61.4.30 庁保険発29  改正 平成6.11.9 庁文発3235)

 遺族年金の受給にて内縁関係を認定するには、「生計同一関係に関する申立書」(事実婚)という書類と以下の書類が求められます。

・住民票上同一世帯に属しているとき

 世帯全員の住民票で同一世帯であることを確認できれば、「生計同一関係に関する申立書」に第三者の証明までは必要ありません。

・住民票上世帯を異にしている(世帯分離)が、住所が住民票上同一であるとき

 それぞれの世帯全員の住民票で同一住所であることの確認と、「生計同一関係に関する申立書」に第三者(3親等以外)の証明を求められております。

 (または、内縁関係の事実を証する書類が必要ですが、「生計同一関係に関する申立書」に第三者の証明をいただくのが無難です。)

・住所が住民票上異なっているとき

ア)現に起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしている場合

  ・母屋離れのように、住所表示が1番程度違うような場合

  ・事情があって住民票を異動していなかった場合

イ)仕事や病気療養、親の介護など やむを得ない事情がある場合

 その事情が消滅したときは、起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにすると認められるとき

 ここで、次のような事実が認められることが条件です。

 a 生活費、療養費等の経済的な援助が行われていること

 b 定期的に音信、訪問が行われていること

 これらでは、それぞれの世帯全員の住民票と「生計同一関係に関する申立書」に第三者の証明が必要ですが、さらに以下の書類が求められます。

認定対象者の状況

必要書類

(1) 健康保険の被扶養者になっている場合

健康保険被保険者証のコピー

(2) 給与計算上、扶養手当の対象になっている場合

給与簿または賃金台帳等のコピー

(3) 同一の死亡について、他制度から遺族給付が行われている場合

他制度(共済等)の遺族年金証書等のコピー

(4) 挙式、披露宴等が最近に行われている場合

1年以内に行われた結婚式等の証明書または挙式、披露宴等の実施を証する書類

(5) 葬儀の喪主になっている場合

葬儀を主催したことを証する書類
会葬御礼のコピー      など

(6) その他(1)~(5)のいずれにも該当しない場合

その他内縁関係の事実を証する書類
連名の郵便物  公共料金の領収書 
生命保険の保険証  未納分の税の領収書 賃貸借契約書のコピー    など

 (1)~(5)に掲げる書類については、いずれか1点の提出で足ります。

 (6) その他(1)~(5)のいずれにも該当しない場合について

 当事者間の婚姻の意思に基づく夫婦としての共同生活の実態を確認するために、書類は複数(少なくとも2~3点程度)の提出が必要とされています。

(書類の例)
・連名の郵便物  暑中見舞い  など
  当事者双方が宛名になっていること。  年賀状は消印がないので認められない
・公共料金の領収書
  内縁の相手が公共料金を負担していること。
・生命保険の保険証
 内縁の夫(妻)が保険料を負担しており、死亡保険金の受取人が内縁の妻(夫)であること。
 相続欄に「未婚の妻(夫)」等と記載されていること。
・未納分の税の領収書
  内縁の相手が税を負担していること。
・賃貸借契約書のコピー 
  当事者双方が同居人として名を連ねていること。
  相続欄に「未婚の妻(夫)」等と記載されていること。

 

 ちなみに、居住が異なるが、定期的な送金など経済的な援助が行われている場合に、その事実を証するものとして、預金通帳のコピー、振込明細書または現金書留封筒等のコピーなどを求められることがあります。

 

 これらの要件を満たす場合でも、近親婚等の反倫理的な内縁関係の場合は、事実婚の認定はしないとしております。a0003_000894

 例外として、三親等内の傍系血族間の内縁関係にあって、長期間(おおむね40年程度以上)にわたって安定的に継続されてきたものであるなどの4つの要件をクリアしたものだけが、年金機構と厚生労働省の年金局との協議案件で決定されるようです。『40年程度以上にわたって』という要件があると、若くして亡くなったときなど極めて厳しいものがあります。

 

夫が愛人と同棲している場合、愛人は遺族厚生年金受給できるか?

 「重婚的内縁関係」とは、届出をした配偶者がいるにもかかわらず、他方で内縁関係を築くことであるが、この場合の受給資格の有無については、原則として、届け出による婚姻関係にあった者が受給資格者となるものとされています。

 しかし、届け出による婚姻関係がその実態を失って形骸化し、かつ、その状態が固定化しており近い将来には解消される見込みがなかった場合に限って、「事実上の婚姻関係にあった者」が受給資格者となることがあるのです。

  ・遺族年金却下取消請求事件 最高裁 58.4.14
  ・遺族共済年金不支給処分取消請求事件 最高裁 平17.4.21

 愛人が遺族厚生年金の受給資格を満たすかについて、「事実婚関係の認定について」(昭和55年5月16日 庁保発第15号 各都道府県知事あて社会保険庁年金保険部長通知)という通達で、次のように規定しています。

 「・・・なお、夫婦としての共同生活の状態にないといい得るためには、次に掲げるすべての要件に該当することを要するものとすること。
(1) 当事者が住居を異にすること
(2) 当事者間に経済的な依存関係が反復して存在していないこと
(3) 当事者間の意思の疎通をあらわす音信又は訪問等の事実が反復して存在していないこと。」

 別居の期間についてはいろいろ見解があるようです。法律婚を保護する見地から、法律婚関係が実体を失って形がい化した状態が固定している場合(継続して約10年以上)に初めて内縁関係にあった者を年金等の関係において「配偶者」として扱うこととしています。

 請求者と死亡者が重婚的関係であった場合は、日本年金機構では、法律婚の実態、内縁関係の診査を当事者等から聴取、実態調査をするようです。

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