社会保険の適用

 健康保険および厚生年金保険は、原則として事業所を単位として加入することになっています。加入を強制的に義務づけられている事業所(強制適用事業所)と、加入するかどうかは任意の扱いですが、加入する場合は従業員の2分の1以上の同意を得て加入できる事業所(任意適用事業所)に分かれています。

(1) 健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所

① 個人経営の事業所で、常時5人以上の従業員を使用する法定業種に該当するもの
 会社が株式会社や有限会社など法人の場合は、従業員の人数に関係なく、全て社会保険の適用事業所(加入しなければならない会社)です。
 個人経営(個人事業所)は、原則として、従業員が5人以上いる場合は、適用事業所(加入しなければならない)になります。ただし、5人以上でも加入義務のない業種(任意適用事業所)があります。*

② 国、地方公共団体、法人の事業所であって、常時従業員を使用するもの ③ 船員法1条に規定する船員として船舶所有者に使用される者が乗り組む船舶(厚生年金保険のみ)

*農林水産業・飲食業・サービス業・法務業・宗教業は、法定業種に該当しないので、個人経営で常時5人以上の従業員を使用していても、強制適用事業所とはなりません。

(2) 任意包括適用事業所

① 個人事業所のうち、飲食業・サービス業・農林漁業等の事業所

② 個人事業所のうち、飲食業・サービス業・農林漁業等を除く一般の事業所で従業員が5人未満の事業所

 この区別は、事業所の設立形態(法人か、個人か)や業態、従業員の数によって下表のようになっています。

 

適用になる業態

非適用とされる業態

業 態

工場(製造・加工など)、鉱業、エネルギー業、運送業、貨物荷役業、商店、金融保険業、保管賃貸業、媒介周旋業、集金・案内広告業、焼却・清掃・屠殺業、土木建築業、教育・研究・調査業、医療、通信報道事業、社会福祉・更生保護事業

農業、牧畜業、水産養殖業、漁業 サービス業(ホテル、旅館、理容、娯楽、 スポーツ、保養施設などのレジャー産業)、 法務(弁護士、会計士など)、 宗教(神社、寺院、教会など)

 

法 人

個 人

法 人

個 人

5人以上

1~4人

  ○ 強制適用事業所     △ 任意適用事業所

 健康保険、厚生年金保険に加入する場合は、事業所の所在地を管轄する年金事務センターに所定の書類を提出します。

 政府管掌健康保険の場合は、事業所単位で適用されているが(内部の人事異動で転勤になった場合には管轄の年金事務所が変わるので、保険証を交換する)、組合健康保険の場合は法人(企業)一括の単位で適用されています。

 加入の手続きは、会社が設立されたらすぐに行うということではありません。実際には数ヵ月位は会社を運営し、売り上げの額などを確認してからとなります。

 

社会保険の適用となる人

 健康保険・厚生年金保険に加入している人を被保険者といいます。

 健康保険では年齢の制限はありませんが、厚生年金保険では70歳未満の人が対象となります。
  適用事業所で常用的使用関係があれば、国籍に関係なく被保険者となります。
 社会保険への加入は、原則として採用日です。試用期間中でも、報酬が支払われるならば、使用関係が認められます。

パートタイマー等についての被保険者資格の判断の目安

 パートタイマー等についての被保険者資格を判断する場合については、労働日数、労働時間、就労形態、職務内容等をもとに総合的に判断します。
 その判断の目安の1つとして、次の(1)と(2)の両方に該当するときは被保険者とします。

(1) 勤務時間
 1日の所定労働時間が、一般社員のおおむね4分の3以上であれば該当します。
 たとえば、一般社員の所定労働時間が1日8時間とすると、6時間以上が該当します。
 日によって勤務時間が変わる場合は、1週間を平均して、所定労働時間のおおむね4分の3以上の勤務時間があれば該当します。

(2) 勤務日数
 1ヵ月の勤務日数が、一般社員の所定労働日数のおおむね4分の3以上であれば該当します。
 一般社員の1ヵ月の所定労働日数は、必ずしも実出勤日数を指していませんが、その事業所で同じような業務をしている社員の所定労働日数を確認して、おおむねその4分の3以上勤務していれば該当します。
 1日または1週間の勤務時間や1ヵ月の勤務日数が、その事業所の正規の従業員のおおむね4分の3未満の場合は、被保険者となりません。

社会保険の適用除外となる人

 事業所として社会保険に加入しても、事業主や従業員の中には、その立場や就労の実態からして被保険者にならない人がでてきます。
 社会保険(健康保険・厚生年金保険)において被保険者とならない人は、次のとおりです。

(1) 日々雇い入れられる人
 1ヵ月を超えて引き続き使用されるようになった場合は、その日から被保険者となります。

(2) 2ヵ月以内の期間を定めて使用される人
 所定の期間を超えて引き続き使用されるようになった場合は、その日から被保険者となります。

(3) 4ヵ月以内の季節的業務に雇用される人
 継続して4ヵ月を超える予定で使用される場合は、当初から被保険者となります。

(4) 6ヵ月以内の臨時的事業に雇用される人
 継続して6ヵ月を超える予定で使用される場合は、当初から被保険者となります。

(5) 所在地が一定しない事業に雇用される人

 

被扶養者となる条件

(1) 被保険者の直系尊属、配偶者(届出をしていないが事実上婚姻関係にある人も含みます)、子、孫および弟妹であって主として被保険者の収入によって生活している人

(2) 被保険者の三親等内の親族で、被保険者と同一世帯にいて、主として被保険者の収入によって生活している人

(3) 届出はしていないが事実上婚姻関係にある人の父母および子で、被保険者と同一世帯にいて、主としてその被保険者の収入によって生活している人

(4) 届出はしていないが、事実上婚姻関係にあった人が死亡した後、その人の父母および子で、引き続き被保険者と同一世帯にいて、主としてその被保険者の収入によって生活している人

 婚姻・出生・就職等による被扶養者の異動は、協会けんぽ または健康保険組合に届け出てください。
 被扶養者の保険証が作成、発行されます。

 被扶養者になれるのは、主として被保険者の収入で生計を維持している75歳未満の人です。

(1) 同居・別居について
被保険者と同居・別居いずれでもよい人
 配偶者(内縁も可ですが、双方の戸籍謄本と住民票を添付します)
 子、孫及び弟妹
 父母、祖父母などの直系尊属
 被保険者と同居していることが条件の人  住民票を添付
 兄姉、伯叔父母、甥姪などとその配偶者、孫・弟妹の配偶者、配偶者の父母や子など
 内縁関係の配偶者の父母及び子

(2) 収入について
60歳未満・・・130万円未満  

60歳以上又は障害者・・・180万円未満かつ被保険者の年収の半分未満

上記収入で、所得税法の規定による控除対象配偶者又は扶養親族となっている人については、事業主の証明で省略できるので、添付書類は不要です。

 所得税法の規定による控除対象配偶者又は扶養親族となっていない人は、所得証明書などの添付が必要です。

退職者・・・退職証明書又は離職票のコピー又は雇用保険受給資格者証のコピー(待期中や受給中の場合)を添付

年金受給者・・・年金証書・年金改定通知書のコピーを添付

 

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