統合失調症

 統合失調症は、思春期から成人期にかけて発病し、特徴的な思考障害・自我障害・およびそれに伴う行動異常を示し、多くは慢性的に経過し、自発性や対人接触が低下し、社会生活に困難をきたす疾患です。

 私たちは、常にかなりのエネルギーをさいて、思考や行動を必要なひとつの方向に「統合」しているのです。「失調」という言葉には、統合がうまくいかなくなった状態が一時的なものであり、回復可能なものであるという意味があります。

統合失調症の歴史的経緯

 統合失調症は、「幻覚」や「妄想」という症状が特徴的な精神病です。この幻覚や妄想は、統合失調症の基本的な症状として初期にはよく現れますが、それだけではなく、この病気の本質的特徴は他にあります。特に顕著なのは、日常生活や社会生活における障害です。他人と交流しながら家庭生活や社会生活を営むという機能が障害されます。と同時に、「自分の感覚・思考・行動が病気のために歪んでいる」という病識の障害も併せもっているため、物事を反省的に考えることが難しくなります。これらの障害によって、日常生活そのものが不安定で生きづらくなるのが、この病気の特徴です。

 たとえば、数人と話し合っているとき、話の内容が何をさしているのか、その場の流れがどうなっているのか、自分はどう振る舞えばよいのか、といったことがわからなくなってきます。そのため、きちんとした対応ができなくなり、的外れな言動をしたりします。また、服の着替えや料理などをする場合、一連の作業を順序立てて行ったりすることが苦手で、手順や順番を忘れたり、思い出せなくなったりします。このように、日常生活が常識的で、当たり前のことができなくなった苦しみこそ、統合失調症の苦しみそのものなのです。 

 

疫学的統計頻度

 統合失調症は、現在ではおよそ100人に1人がかかる頻度の高い病気です。2008年に行われた厚生労働省の患者調査によると、ある1日に統合失調症、または、それに近い診断名で医療機関を受診している患者の数は25.3万人で、そのうち入院している人は18.7万人となっています。ここから推計した受診中の患者の総数は、約79.5万人と報告しています。世界各国からの調査研究や報告をまとめると、生涯のうちに統合失調症にかかる人は人口の0.7%といわれ、生涯罹患率でみると0.3~2.0%と言われます。一般的に言われている生涯有病率は、約0.85%(120人に1人)、または、1%前後とも言われています。ある一時点で統合失調症にかかっている人は、人口の0.46%にあたり、時点有病率でみると0.19~1.0%といわれます。そして、1年間の新たな発症数は、人口10万人あたり15人(8~40人)くらいとされています。

 男女差についてですが、男性1.4に対して女性1.0と、やや男性の方が多いとされています。

 発症年齢については、思春期から青年期で、10歳代後半から30~40歳代までに多く発症しています。ピークは、男性が18~25歳、女性が26~45歳くらいで、まれに中学生から高校生くらいの若年や、40歳後半以降の年代にも発症がみられることがあります。発症年齢では男性よりも女性の方が遅めです。

 発症において遺伝的要素も多少あります。両親のいずれかが統合失調症の場合は、その子どもの発病率は10~12%、両親とも統合失調症にかかっていた場合は、さらに高くて48%程度の割合で子どもが発病するとされています。

 双子や多胎児の場合はどうかというと、一卵性双生児では1人が統合失調症を発病した場合、もう1人も必ず発病するとは限りません。一致率は、約36%程度です。二卵性双生児では約14%といわれています。

 統合失調症の遺伝に対する考え方は、病気が遺伝するというよりも、生物学的な脆弱性が遺伝すると考えた方が妥当かもしれません。    

統合失調症 スピリチュアルな観点

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「統合失調型障害」