考課者の区分

自己評価

 自己評価の目的は、 
 (1) 自分自身が自己の仕事振りを振り返り、「気づき」を与えること  
 (2) 社会的習熟度(客観的に自分を見つめることができるかどうか)をチェックすること
にあると思われます。

 特に(2)に関しては、独りよがりな自己評価では社会的習熟度が低いということになってしまいます。例えば、 
 ・年配に多い例ですが、極端に低い自己評価をして、謙虚さを強調する 
 ・若い人に多いのですが、極端に高い評価をして、自己アピールする 
というのは社会的習熟度が低いということになります。「会社が何を求めているのか」をしっかり認識するためにも自己評価は絶対必要です。評価項目や内容を見ることで、自己反省を促すことができるのです。

 客観的事実に基づいて、自己評価なさるのがよいでしょう。

 事実や根拠のある部分はしっかり自己評価して、不明点な箇所については、標準点をつけた上で備考欄などにその旨を記述しておくのがよいと思います。

 また、自己評価でどのような点数をつけるかで、本人の社会的習熟度を判断することができます。あまりにも高い点数をつけたり、極端に低い点数をつけるのは「ひとりよがり」であり、社会的習熟度が低いと判断せざるを得ません。冷静に、客観的に自分自身を見つめる目を養うように指導することが必要です。

 

一次考課(上司評価)

 上司評価については、指示命令を与える直属上司が行う必要があります。指示命令をし、指導責任がある人が評価して初めて意味があります。指導しない人や直接指示命令をしない人が評価しても意味がありません。

 一次考課の人数に関して、絶対考課で行う場合は、1人の人が考課する人数は10人くらいまでが適当です。最大でも15人くらいでしょう。

  また、考課した後、育成に結びつけるためには、直接育成する人が考課を行うべきです。管理職にこだわらず、係長や主任が人事考課を行うようにする必要があります。製造業などでは、係長や班長が考課をするということはよくあることです。

 人数が多い部署は、係長や主任を考課補助者に任命して、 実質的な一次考課を行うようにすればよいでしょう。

 

二次考課

 直属上司のその上の上司が二次評価を行うニ次考課(直接上司)のその上の上司でよいと思います。

 一次考課者の評価を二次考課者が勝手に書き換えたり、二次評価の点数のみが処遇に反映するというようなことは絶対にしないようにします。一次評価重視を徹底します。

 面接は本人と直属上司だけで十分だと思います。 その結果で処遇上の点数を計算し、5段階(会社により9段階とか色々ありますが)に分けるとよいでしょう。

 5段階分かれた時点で、役職別、または職種別の一覧表を作り役員会等で調整、承認を行うのがよいと思います。

 

人事考課で留意する人事考課エラー

 人事考課は、公正な企業基準(評価基準)を定め、個人の主観が入ることなく客観的に従業員を評価しなければなりません。人が人を評価する以上、個人の主観をゼロにすることは容易ではありません。そうした人事考課の際に起こり得る評価の誤差を「人事考課エラー(評定誤差)」と言い、ここでは代表的な人事考課エラーを紹介していきます。人事考課エラーをあらかじめ知ることで、公正かつ適切な人事考課を心がけることも大切です。

ハロー効果

 被評価者が持つ目立った特徴の印象が残り、他の評価が引きずられること

 部下の評価要素の中に、一部特に優れたものや劣悪なものがあると、他の要素も良く思えたり、悪く思えたりするという傾向。

 部下についての印象ができあがってしまっている場合に生じます。

先入観で生じるエラー

 性別や年齢、学歴や見た目など、本人のスペックによる先入観で評価してしまう

親近感によるエラー

 被評価者と個人的な付き合いがあったり、出身地や趣味などの共通点がある場合に高く評価してしまう

厳格化傾向

 どの被評価者に対しても、不当に厳しい評価をしてしまう

寛大化傾向

 どの被評価者に対しても、不当に甘い評価をしてしまう

 特定の特性について、評価が実際以上に甘くなってしまう傾向。(考課結果が上位に集中)

 考課者の観察不足、部下に対し必要以上に人情が働いている場合に発生します。

中心化傾向

 どの被評価者に対しても、平均的な評価をしてしまう

 評価が平均並みになり、優劣の差が生じない傾向(考課結果が中央に集中)。考課者に自信がない場合、考課基準が不明確な場合などに生じます。

極端化傾向

 中心化中心化傾向とは逆に、評価に差を付けようとして極端な評価を行なってしまう

逆算化傾向

 結果ありきで、その帳尻合わせのための評価をしてしまう

論理誤差

 評価者が持つ独自の論理によって、評価をつけてしまう

対比誤差

 評価者自身と比べ、被評価者の評価を行ってしまう

期末誤差

 評価期間終盤の出来事が印象に残り、その影響が期間全体の評価に及んでしまう

アンカリング

 最初に提示された結果を、無意識に基準としてしまう

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