能力考課
人材育成やスキル形成を考慮した際、人事考課の観点として特に重要になるのが「能力考課」です。能力考課では、従業員が習得している知識や能力そのものを評価していきます。業績(成績)評価が成果のみを評価する人事効果に対し、能力効果は成果に至るまでのプロセスを評価していきます。同じ成果の業務があった際、より高度なスキルを必要とする案件で成果をあげた従業員を高く評価することができる仕組みです。具体的な評価項目には、知識力、判断力、交渉力、企画力、技術力、指導力などがあげられます。
数字には表れづらいチーム全体のサポートやメンバーの指導、トラブル回避施策など、業務遂行に不可欠な能力を正しく評価することで、公平な人事考課を行うことができます。
能力を評価するためには、期待される能力像を明らかにする必要があります。通常、職能要件書によって、職種別等級別に作成します。
能力考課の基準
能力考課の考課基準は、資格等級レベルの全社的な共通標準である職能要件書の内容になります。等級と職種が同じであれば、能力考課の基準も同じです。能力は成績によって把握されますが、中間項によってはストレートに結びつかないことがありますので修正すると同時に、能力以上の成績がでるような環境を作ることが大切です。
中間項の存在
a. 外部条件 景気の動向、気候、戦争、得意先、同業他社 など
b. 内部条件 指示命令の明確さ、管理体制、仕事のレベル、支援体制 など
c. 本人条件 事故、病気、意欲 など
能力考課ができない場合
成績考課 |
中間項 |
能力考課 |
B以上 |
等級と比較して仕事自体のレベルが低い |
出来ない |
C以下 |
等級と比較して仕事自体のレベルが高い |
出来ない |
D |
やろうとしなかった(責任性D) |
出来ない |
能力考課判定
職能資格制度において、能力考課は非常に大事なのですが、逆に判断しにくく、結局は年功的になってしまうということがあります。以下のような能力考課判定表を使うと、考課しやすく、育成ポイントを絞りやすくなります。
育成ポイント確認シート(能力考課判定表) 例 |
|
判断系 |
情報を比較・評価したり、統合・整理したりして、状況や条件に適合した仕事の手段・方法を決める能力 |
下記の着眼点について、それぞれ次の基準で判定し点数を記入してください。
等級 |
判定基準 |
4 |
十分行っている。8割以上できている |
3 |
行っている方である。5割以上はできている |
2 |
十分ではないが行っている |
1 |
ほとんど行っていない |
0 |
まったく行っていない |
着眼点
着眼点の内容 |
自己 |
上司 |
|
1 |
任された仕事は他の関連や重要性まで理解し、上司の意図も汲み取って対応している。 |
||
2 |
文章の読取りや、話の聞き取りが早く、ポイントを正確に把握し仕事を進めている。 |
||
3 |
抽象的な方針や指示であっても、主旨を理解し具体的に仕事を進めている。 |
||
4 |
多少不確実な状況や情報不足であっても、よく計算された判断をし、仕事を進めている。 |
||
5 |
常に的確な状況把握がされており、仕事の優先順位や手段の選択はいつも適切である。 |
||
6 |
問題に直面しても、その現状や実態を冷静に分析し、真の原因を的確に把握し対処している。 |
||
7 |
緊急かつ難度の高い重要決裁事項についても、関連部署の調整も素早くし、明確に意思決定している。 |
||
8 |
決定に対する理由は論理的に説明でき、いつも部下から支持されている。 |
||
9 |
多少不確実な状況や情報不足であっても、将来を予測し、的確な決定ができる。 |
||
10 |
課題に対して、最適な対応策を取捨選択している。 |
||
合計 |
個別の点数により、育成ポイントを抽出し、合計点により人事考課を判定します。
評価判定表 例
点数 |
9等級 |
8等級 |
7等級 |
6等級 |
5等級 |
4等級 |
3等級 |
1・2 等級 |
40 |
S |
|||||||
36以上 |
A |
S |
||||||
32以上 |
B |
A |
S |
|||||
28以上 |
C |
B |
A |
S |
||||
24以上 |
D |
C |
B |
A |
S |
|||
20以上 |
D |
C |
B |
A |
S |
|||
16以上 |
D |
C |
B |
A |
S |
|||
12以上 |
D |
C |
B |
A |
S |
|||
8以上 |
D |
C |
B |
A |
||||
4以上 |
D |
C |
B |
|||||
1以上 |
D |
C |
||||||
0 |
D |
知識・技術の評価 に続く
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