職能資格制度 等級の決め方

○等級数を決める

 職能資格制度では、まず、職務遂行能力のレベルに対応した「職能等級」を設定します。

 職能資格制度における『等級』とは、企業が社員に対して要求している職務遂行能力を難易度順に並べ、段階区分したものです。したがって、
 ・その企業が社員に対して要求する職務遂行能力の上限・下限の幅
 ・それをどの程度細かく区分するか
によって決定されます。

  職能資格の段階をどの程度にするかは、会社の業務実態、規模に対応して決めます。段階が少なすぎると、同一資格に滞留する年数が長くなります。同じ資格にいる人の数も多くなります。そのため、処遇にメリハリをつけることが難しくなります。一方、段階を多くしすぎると、上位資格と下位資格の違いが曖昧になります。

 実務的には、はじめに段階数を「仮決め」します。(非管理職層「6段階」管理職層「3段階」 のように)。そして、職務調査など職能資格の中身を設計していく中で、必要に応じて修正していくという方法を取るとよいでしょう。

 一般的には、その企業の現状と将来を勘案し、次のようにして暫定的に決定し、職能要件書等を作成する中で妥当性を検討し最終決定します。

(1) 初級・中級・上級の3つクラスに分け、まず初級クラスについて考えます。
 入社数年間の社員に対して要求するレベルはいくつに区分できるかを考えると、高卒・大卒の2つは必要でしょう。なお、高卒も大卒も要求するレベルに差がない場合は、まとめることもできます。

(2) 上級クラスについて、自社の管理職の役職の段階を調べます。
 この場合、組織管理上必要なもので計算し、ポスト不足や営業上便宜的に設けられた役職は計算に入れません。この様にして調べた段階数をそのまま使うか、現状の上級者にさらなる能力開発を促す意味で、もう一つ上に1等級つけ加えます。

(3) 中級クラスは、上記(1)と(2)の中間に対して要求するレベルです。
 自社の管理職手前の役職の段階を調べ、その段階にプラス1をしたものを等級数とします。また、このクラスにおいて、高年齢化や長期勤続化が進んでいる場合はさらに +1 することもできます。

 以上のように設定すると、等級数は「初級クラス 2~4」「中級クラス 2~5」「上級クラス 2~4」となり、合計6~13程度になります。

 

○モデル滞留年数を決める

 1つ上の等級に上がるまでに要する年数を『滞留年数』といい、企業の期待通りの能力レベルの定期採用入社者が、期待通りに能力を高め続けた場合の滞留年数を『モデル滞留年数』といいます。

(1) 初級クラスのモデル滞留年数 
 学歴を理由に賃金の差をつけることは好ましく高卒でありません。入社し2年間実務能力を磨いた者と、短大で2年間学んだ者との能力レベルは同等であり、高卒で入社し4年間、短大卒で入社し2年間実務能力を磨いた者と大学で4年間学んだ者との能力レベルはほぼ同等であると見るべきです。したがって、初任格付けを、高卒1等級、短大卒2等級、大卒3等級とした場合、1等級と2等級のモデル滞留年数は各2年となります。3等級については中級クラスと同様に考えます。

(2) 中級クラスのモデル滞留年数
 期待通りの能力レベルの定期入社者が期待通りに能力を高め続けた場合に、課長に対応する等級に達するまで何年かかるかを推定します。  

 以下の2点を参考に課長対応等級到達のモデル勤続年数を決めます。
・現役課長のうち、課長に昇格するまでに要した年数が最短であったものの年数  
・自社の人材育成ビジョンと照らし合わせ、今後どの程度の勤続年数で課長対応等級に昇格させたいか  

 そして、上記(1)で決めた1・2等級の滞留年数を差し引いた年数を、中級クラス以下の等級に割振りします。この場合、上位等級の滞留年数は、下位等級の滞留年数より少なくならないように考慮します。

(3) 上級クラスのモデル滞留年数
 上記(2)と同じ様に部長対応等級到達のモデル勤続年数を求め、『上位等級の滞留年数は下位等級の滞留年数より少なくしない』というルールに基づいて決定します。最上位の等級のモデル滞留年数は定める必要はありません。

 

モデル年齢の決め方 

 定期入社者がモデル滞留年数の通りに昇格し続けた場合の、それぞれの等級に滞留しているときの年齢をモデル年齢といいます。モデル滞留年数を積み上げていくことで自動的に決まります。

 

職能資格制度 昇格基準 に続く

 

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