発達障害

 発達障害とは、生まれつきの脳機能の発達のアンバランスさ・凸凹(でこぼこ)と、その人が過ごす環境や周囲の人とのかかわりのミスマッチから、社会生活に困難が発生する障害のことです。  

 人間、誰しも得意なことや不得意なことがありますが、その中でも、発達障害のある人は、得意なこと不得意なことの差が非常に大きかったり、他の多くの人と比べて違った物事の感じ方や考え方をしたりすることがあります。そのため、勉強や仕事の理解や進め方、注意の集中や持続の偏り、対人関係でのすれ違いなど、生活に支障をきたしやすいのです。

 発達障害を理解する上での難しさは、その障害が見た目からは分かりにくいことにあります。本人は悪気がなく行動しているつもりでも、「衝動的でわがままだ」「人の話を聞けない変わった人だ」などと誤解を受けたり、「本人の努力不足」や「親のしつけの問題」などと誤った解釈や批判を受けたりすることも少なくありません。本人と周囲の人がお互いの違いを理解しながら、凸凹ゆえの困難さが起こりにくくなるような環境を調整し、本人の得意な行動や特性を生かした過ごし方ができるような支援が大切です。

 

発達障害の定義

 日本における発達障害の定義は、平成16年に制定された「発達障害者支援法」によって定められており、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)の基準に準拠しています。  

 同法の定義では、「『発達障害』とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。」とされています。さらに、同法の施行について文部科学省から発せられた文書では「てんかんなどの中枢神経系の疾患、脳外傷や脳血管障害の後遺症が、上記の障害を伴うものである場合においても、法の対象とするものである」とされています。また、子どもだけではなく、大人になってから検査を受け、発達障害の診断を受けることもあります。

 文部科学省の2012年の調査では、通常学級に在籍する児童・生徒の中で発達障害の特徴を示す子どもは全体の約6.5%でした。これは、その特徴を示す子どもが約15人に1人の割合でいるということになります。

 

発達障害の分類と主な種類

 「発達障害」と一言でいっても、その種類はいくつもあります。また、法律上の分類と医学的な診断名や診断基準は異なるため注意が必要です。  

 以下では、他の診断基準も参考にしつつ、主に世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)の分類に準拠して紹介します。

広汎性発達障害(PDD:pervasive developmental disorders)  

 コミュニケーションと社会性の困難さを特徴とする障害  

 広汎性発達障害は、自閉症・アスペルガー症候群・レット障害・小児期崩壊性障害・特定不能の広汎性発達障害を含んだ総称です。

注意欠陥・多動性障害(AD/HD:Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)

 年齢的に相応した言動などに不注意・多動・衝動性の症状が複数見られる障害

学習障害(LD:Learning DisordersまたはLearning Disabilities)

 知的発達には問題はないが「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」などの特定の能力を要する学習が極端に困難な障害

知的障害

 知的な発達の遅れがある障害

 (知的障害は「発達障害者支援法」では発達障害には含まれていません。)