腎疾患の障害と等級

主な傷病

  慢性腎不全  慢性腎炎  ネフローゼ症候群  慢性糸球体腎炎  糖尿病性腎症

障害の程度

1級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

・慢性腎不全の検査成績が高度以上を示すもので、かつ一般状態区分表のオに該当するもの

2級

身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

慢性腎不全の検査成績が中等度の異常を示すもので、かつ一般状態区分表のエ又はウに該当するもの

人工透析療法施行中のもの

3級

身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

慢性腎不全の検査に示す検査成績が経度異常を示すもので、かつ一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

・ネフローゼ症候群での検査に示す検査成績がアが異常を示し、かつイ又はウのいずれかが異常を示すもので、かつ一般状態区分表のイ又はウに該当するもの

障害手当金

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   慢性腎不全の検査項目および異常値

区分

検査項目

単位

軽度異常

中等度異常

高度異常

内因性クレアチニンクリアランス値

ml/分

20以上 30未満

10以上

20未満

10未満

血清クレアチニン濃度

mg/dl

3以上 5未満

5以上 8未満

8以上

(注) eGFR(推算糸球体濾過量)が記載されていれば、血清クレアチニンの異常に替えて、eGFR(単位はml/分/1.73㎡)が10以上20未満のときは軽度異常、10未満のときは中等度異常と取り扱うことも可能とされます。

   ネフローゼ症候群の検査項目および異常値

区分

検査項目

単位

異常

尿蛋白量(1日尿蛋白量又は 尿蛋白/尿クレアチニン比)

g/日
又は
g/gCr

3.5g以上を持続する

血清アルブミンミン
(BCG法)

g/dl

3.0g以下

血清総蛋白

g/dl

6.0g以下

   一般状態区分表

区分

一 般 状 態

無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの

軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの  
(たとえば軽い家事、事務など)

歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの

身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの

身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

 腎疾患の主要症状としては、悪心、嘔吐、食欲不振、頭痛等の自覚症状、浮腫、貧血、アシドーシス等の他覚所見があります。

 腎疾患で最も多いものは、糖尿病性腎症慢性腎炎ネフローゼ症候群を含む)、腎硬化症です。他にも、多発性嚢胞腎、急速進行性腎炎、腎盂腎炎膠原病、アミロイドーシス等があります。

 これらに罹患し、その後慢性腎不全を生じたものは、相当因果関係「あり」です。

 慢性腎不全の初診日は、糖尿病性腎症慢性腎炎腎硬化症など初めて医師の診断を受けた日となります。(両者の期間が長いものでも)

 血液異常や遺伝子異常により慢性腎不全になったケースでも、血液異常で初めて医師の診断を受けた日や、遺伝子異常初めて医師の診断を受けた日が初診日となります。

 健康診断で異常が認められた場合とは、尿蛋白が出たり、血糖値やクレアチニンの数値が異常を示したりしたときのことを言います。この場合、健康診断を受けた日が初診日となります。尿蛋白が少し出ただけで軽い症状の場合、健康診断を受けた日が初診日となることは原則ありません。例えば、過去に尿蛋白が3年連続で出た方が、クレアチニンなど他の数値が正常値であれば「腎臓障害と因果関係なし」と判断されます。

 すべての腎疾患は、長期に経過すれば腎不全に至る可能性があります。最もよく見受けられるのは、糖尿病性腎症による慢性腎不全です。慢性腎不全とは、慢性腎疾患によって腎機能障害が持続的に徐々に進行し、生体が正常に維持できなくなった状態をいいます。

 障害年金上、「糖尿病」とその後の「慢性腎不全」には因果関係がある傷病とされます。そのため、慢性腎不全の初診日とは糖尿病が判明した時点となります。会社員であれば、会社の健康診断で要再検査や治療の必要性を指摘された時などが該当します。健康診断で尿蛋白の陽性を指摘された時は、健康診断を受けた日が初診日となることもあります。

 糖尿病など腎疾患は長い時間をかけて悪化する事が多いため、数十年前の初診日を特定するために手間取るケースが多く見受けられます。 そうした時には、健康診断の控えなどが初診を示す有力な手掛かりとなります。

 障害年金には「社会的治癒」という考え方があります。 例えば、20歳前の学生時代などに尿検査で異常を指摘されたものの、その後は長期に渡り通常通りの生活をし、厚生年金加入中に再度指摘されて、その後「慢性腎不全」に移行したという場合です。「20歳前に指摘された」ということで、そのまま請求すれば障害基礎年金の請求になりますが、この場合は社会的治癒に該当する可能性があり、障害厚生年金での請求ができる可能性があります。

 多発性嚢胞腎についての初診日は、多発性嚢胞腎として自覚症状で受診した日、または、それを判明のきっかけとなった血尿などの傷病で、初めて医師の診断を受けた日となります。

 障害年金の審査では、この多発性嚢胞腎が発覚した状況に応じて、初診日を「多発性嚢胞腎の自覚症状で受診した日(まだ多発性嚢胞腎は発見されていない)」とするのか、「多発性嚢胞腎が発覚した日」とするのかが個別に判断されます。障害年金の手続きでは、「自覚症状があり病院受診した日」と「多発性嚢胞腎が発覚した日」の両方についての書類を整えていくことが大切となります。

 職場や自治体の健康診断等で尿タンパクで再検査検指示があり、再検査で受診した場合は、健康診断の日が初診日になりえます。

 健康診断等で再検査指示があったが、特に体が疲れやすいこともないため受診をしないで数年後に体調不良で受診した場合は、数年後が初診日になります。

 

 人工透析を施行した場合の障害の程度を認定する時期は、人工透析療法を初めて受けた日から起算して3ヵ月を経過した日(初診日から起算して1年6ヵ月を超える場合を除く)とします。すなわち、人工透析開始後3ヵ月を経過した日が初診日から起算して1年6ヵ月以内である場合は、人工透析開始後3ヵ月を経過した日が障害認定日となり、その日を基準に障害年金の請求が可能となります。  

 人工透析を開始したのが初診日から起算して1年6ヵ月を過ぎている場合は、初診日から起算して1年6ヵ月後を障害認定日とします。人工透析を開始したときから障害年金の請求ができます。

 人工透析療法施行中のものは2級と認定されます。主要症状、人工透析療法施行中の検査成績、具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定となることがあります。

 人工透析療法が施行されていない場合で「2級」と認定され得る要件は、「慢性腎不全の検査成績が中等度または高度の異常を1つ以上示すもので、かつ一般状態区分表のエ又はウに該当するもの」ということになります。

 「2級」という場合、上記検査値のほか、「日中の半分前後を寝たまま過ごさなければならない」ということを重要な判断基準としているのです。

 

 糖尿病性腎症を合併したものの程度は、「腎疾患による障害」の基準により認定します。

 糖尿病性網膜症を合併したものの程度は「眼の障害」の基準により認定します。

 

 高血圧症を患っていて、慢性腎不全になるケースは少なくありませんが、障害年金の制度では、高血圧症と慢性腎不全因果関係「なし」として扱っています。高血圧症の治療を続けている過程の中で、腎臓の機能低下が認められた日が初診日となります。たとえば、クレアチニンが異常値を示した日などがそれにあたります。このような場合は、必ず高血圧症の初診日に加え、「初めて腎臓の機能低下が認められた日」を追記してもらってください。

 ステロイド投与により骨がもろくなったことなどが原因の場合は、ステロイド投与のきっかけとなった傷病があります。例えば、腎疾患や自己免疫性疾患などの場合は、その傷病で初めて医師の診察を受けた日が初診日となります。

 

腎臓移植の取扱い

 腎臓移植を受けたものに係る障害認定に当たっては、術後症状、治療経過、検査成績及び予後等を十分に考慮して総合的に認定します。「その他の障害」の認定要領によります。

 障害年金を支給されている者が腎臓移植を受けた場合は、臓器が生着し、安定的に機能するまでの間を考慮して術後1年間は従前の等級とします。その上で、再認定時に予後観察期間を経過している場合は、3級非該当(3級よりも軽い)とする程度の状態であるか否かを判断します。
 障害基礎年金について、3級該当で支給停止されている者については、従前通りとします。
 免疫抑制剤を使用していることだけで3級相当とはしません。著しい労働制限を受けるような状態でなければ、3級該当とします。

 

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