肢体の機能の障害と等級

主な傷病

  上肢または下肢の離断または切断障害  上肢または下肢の外傷性運動障害
  脳梗塞  もやもや病  脳内出血  くも膜下出血  脳血栓症  脳血管障害  
  被幹出血  脳性麻痺  パーキンソン病  脳腫瘍  脳挫傷  脊髄損傷  
  頚髄損傷  慢性関節リウマチ  変形性股間節症  変形性膝関節症  
  大髄骨頭壊死  手挫減創  大髄骨腫瘍  筋ジストロフィー  
  脊髄小脳変性症  ギランバレー症候群   膠原病    など

 

1 上肢の障害

  機能障害、欠損障害、変形障害

障害の程度

1級

・両上肢の用を全く廃したもの
・両上肢のすべての指を基部から欠き、有効長が0のもの
・両上肢のすべての指の用を全く廃したもの

2級

・両上肢の親指および人指し指又は中指を基部から欠き、有効長が 0 のもの
・両上肢の親指および人指し指又は中指の用を全く廃したもの
・一上肢の用を全く廃したもの
・一上肢のすべての指を基部から欠き、有効長が 0 のもの
・一上肢のすべての指の用を全く廃したもの
・両上肢の3大関節中それぞれ1関節の他動可動域が、可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの

3級

・一上肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの(関節の他動可動域が健側の他動可動域の2分の1以下に制限されたもの、又はこれと同程度の障害を残すもの(例えば、起床より就寝まで固定装具を必要とする程度の動揺関節))
・長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの
・一上肢の親指および人指し指を近位指節間関節(親指にあっては指節間関節)以上で欠くもの又は親指もしくは人指し指を併せ、一上肢の3指を近位指節間関節(親指にあっては指節間関節(親指にあっては指節間関節)以上で欠くもの
・親指及び人指し指を併せ一上肢の4指の用を廃したもの
・一上肢の機能に相当程度の障害を残すもの(例えば、一上肢の3大関節中1関節が不良姿位で強直しているもの)又は両上肢に機能障害を残すもの(例えば、両上肢の3大関節中にそれぞれ1関節の筋力が半減しているもの)
・一上肢の3大関節中1関節以上に人工骨頭または人工関節を挿入置換したもの
  両上肢の3大関節中1関節以上にそれぞれ人工骨頭または人工関節を挿入置換したもの

障害手当金

・一上肢の3大関節のうち、1関節に著しい機能障害を残すもの(関節の他動可動域が健側の他動可動域の3分の2以下に制限されたもの又はこれと同程度の障害を残すもの(例えば、常時ではないが、固定装具を必要とする程度の動揺関節、習慣性脱臼))
・長管状骨に著しい転位変形を残すもの 
・一上肢の2指以上を近位指節間関節(親指にあっては指節間関節)以上で欠くもの
・一上肢の人指し指を近位指節間関節以上で欠くもの
・一上肢の3指以上の用を廃したもの
・人指し指を併せ一上肢の2指の用を廃したもの
・一上肢の親指の用を廃したもの
・一上肢の3大関節中1関節の筋力が半減しているもの

障害の程度 1級
「両上肢の用を全く廃したもの」・・・
 両上肢の3大関節中それぞれ2関節以上の関節が全く用を廃したもの級
 次のいずれかに該当する程度のものをいう。
 ・不良肢位で強直しているもの
 ・関節の他動可動域が「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの
 ・筋力が著減又は消失しているもの

「上肢の指の用を全く廃したもの」・・・
 指の著しい変形、麻痺による高度の脱力、関節の不良肢位強直、瘢痕による指の埋没又は不良肢位拘縮等により、指があってもそれがないのとほとんど同程度の機能障害があるものをいう。

障害の程度 2級
「一上肢の用を全く廃したもの」・・・
 一上肢の3大関節中いずれか2関節以上の関節が全く用を廃したもの級
 次のいずれかに該当する程度のものをいう
 ・不良肢位で強直しているもの
 ・関節の最大他動可動域が、健側の他動可動域の2分の1以下に制限され、かつ、半減しているもの
 ・筋力が著減又は消失しているもの

「両上肢のおや指及び人指し指又は中指の用を全く廃したもの」・・・
 両上肢のおや指の用を全く廃した程度の障害があり、それに加えて、両上肢のひとさし指又は中指の用を全く廃した程度の障害があり、そのため両手とも指間に物をはさむことはできても、一指を他指に対立させて物をつまむことができない程度の障害をいう。

障害の程度 3級
「関節の用を廃したもの」・・・
 関節の他動可動域が健側の他動可動域の2分の1以下に制限されたもの、又はこれと同程度の障害を残すもの(例えば、起床より就寝まで固定装具を必要とする程度の動揺関節)をいう。

「指の用を廃したもの」・・・
 次のいずれかに該当するものをいう。
 ・指の末節骨の長さの2分の1以上を欠くもの
 ・中手指節関節(MP)又は近位指節間関節(PIP)(おや指にあっては、指節間関節(IP))に著しい運動障害(他動可動域が健側の他動可動域の2分の1以下に制限されたもの)を残すもの

「長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの」・・・
 次のいずれかに該当するものをいう。(偽関節は、骨幹部又は骨幹端部に限る。)
 ・上腕骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの
 ・橈骨及び尺骨の両方に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの

障害の程度 障害手当金
「関節に著しい機能障害を残すもの」・・・
 関節の他動可動域が健側の他動可動域の3分の2以下に制限されたもの 又はこれと同程度の障害を残すもの(例えば、常時ではないが、固定装具を必要とする程度の動揺関節、習慣性脱臼))

「長管状骨に著しい転位変形を残すもの」・・・
 次のいずれかに該当するものをいう。
 ・上腕骨に変形を残すもの
 ・橈骨又は尺骨に変形を残すもの

 日常生活における動作は、おおむね次のとおりである。
 ・さじで食事をする  
 ・顔を洗う (顔に手のひらをつける)  
 ・用便の処置をする (ズボンの前のところに手をやる 尻のところに手をやる)  
 ・上衣の着脱 (かぶりシャツを着て脱ぐ ワイシャツを着てボタンをとめる)

 指の関節名は、手のひらの方から、親指が中手指節関節-指節関節の順、その他の指が中手指節関節-近位指節間関節-遠位指節間関節の順です。手指の機能と上肢の機能とは切り離して評価することなく、手指の機能は上肢の機能の一部として取り扱います。

 検査者の手で可動域を測定(多動可動域)し、障害のない一方の可動域との対比やそれが困難な場合は、平均値と比較した結果や、筋力の減損の程度等を考慮し等級の判定を行います。

 診断書裏面 ⑲欄「日常生活動作」については、補装具を使用しない状態で判定します。

 肩関節の運動障害を伴う場合には、「上肢の障害」として、その程度に応じて併合認定の取扱いを行います。

 加療による胸郭変形は、それ自体は認定の対象となりません

 人工骨頭又は人工関節を挿入置換したものについては、次により取り扱います。

(1) 一上肢の3大関節中1関節以上に人工骨頭または人工関節を挿入置換したものや、両上肢の3大関節中1関節以上にそれぞれ人工骨頭または人工関節を挿入置換したものは3級と認定します。

 挿入置換してもなお、一上肢については「一上肢の用を全く廃したもの」程度以上に該当するとき、両上肢については「両上肢の機能に相当程度の障害を残すもの」程度以上に該当するときは、さらに上位等級に認定します。

(2) 障害の程度を認定する時期は、人工骨頭または人工関節を挿入した日(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く)とします。

 

2 下肢の障害

  機能障害、欠損障害、変形障害および短縮障害

障害の程度

1級

・両下肢の用を全く廃したもの
・両下肢を足関節以上で欠くもの

2級

・両下肢の10趾を中足趾節関節以上で欠くもの
・一下肢の用を全く廃したもの
・一下肢を足関節以上で欠くもの
・両上肢の3大関節中それぞれ1関節の他動可動域が可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの
・両上肢の3大関節中それぞれ1関節の他動可動域が、可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの
・人工頭骨または人工関節の機能を不可逆的に著しく損なったとき

3級

・一下肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの(関節の他動可動域が健側の他動可動域の2分の1以下に制限されたもの、又はこれと同程度の障害を残すもの(例えば、起床より就寝まで固定装具を必要とする程度の動揺関節))
・長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの
・一下肢をリスフラン関節以上で失ったもの
・両下肢の10趾の用を廃したもの
・一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの(例えば、一下肢の3大関節中1関節が不良肢位で強直しているもの)又は両下肢に機能障害を残すもの(例えば、両下肢の3大関節中それぞれ1関節の筋力が半減しているもの)
・一下肢の3大関節中1関節以上に人工骨頭または人工関節を挿入置換したものや、両下肢の3大関節中1関節以上にそれぞれ人工骨頭または人工関節を挿入置換したもの

障害手当金

・一下肢の三大関節のうち、一関節に著しい機能障害を残すもの(関節の他動可動域が健側の他動可動域の3分の2以下に制限されたもの又はこれと同程度の障害を残すもの(例えば、常時ではないが、固定装具を必要とする程度の動揺関節、習慣性脱臼))
・一下肢を3cm以上短縮したもの
・長管状骨に著しい転位変形を残すもの
・一下肢の第1趾または他の4趾 を中足趾節関節以上で欠くもの
・一下肢の5趾の用を廃したもの
・一下肢の3大関節中1関節の筋力が半減しているもの

障害の程度 1級
「両下肢の用を全く廃したもの」・・・
 両下肢の3大関節中それぞれ2関節以上の関節が全く用を廃したもの級
 次のいずれかに該当するものをいう。
 ・不良肢位で強直しているもの
 ・関節の他動可動域が、別紙「肢体の障害関係の測定方法」による参考可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの
 ・筋力が著減又は消失しているもの

障害の程度 2級
「一下肢の用を全く廃したもの」・・・
 一下肢の3大関節中いずれか2関節以上の関節が全く用を廃したもの
 次のいずれかに該当するものをいう。
 ・不良肢位で強直しているもの
 ・関節の他動可動域が、健側の他動可動域の2分の1以下に制限され、かつ、筋力が半減しているもの
 ・筋力が著減又は消失しているもの

 ―下肢が健側の長さの4分の1以上短縮した場合 も

障害の程度 3級
「関節の用を廃したもの」・・・
 関節の他動可動域が健側の他動可動域の2分の1以下に制限されたもの、又はこれと同程度の障害を残すもの(例えば、起床より就寝まで固定装具を必要とする程度の動揺関節))をいう。

「長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの」・・・
 次のいずれかに該当するものをいう。(偽関節は、骨幹部又は骨幹端部に限る)
 ・大腿骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの
 ・脛骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの

「足趾の用を廃したもの」・・・
 次のいずれかに該当するものをいう。
 ・第1趾は、末節骨の2分の1以上、その他の4趾は遠位趾節間関節(DIP)以上で欠くもの
 ・中足趾節関節(MP)又は近位趾節間関節(PIP)(第1趾にあっては、趾節間関節(IP))に著しい運動障害 (他動可動域が健側の他動可動域の2分の1以下に制限されたもの)を残すもの

障害の程度 障害手当金
「関節に著しい機能障害を残すもの」・・・
 関節の他動可動域が健側の他動可動域の3分の2以下に制限されたもの又はこれと同程度の障害を残すもの(例えば、常時ではないが、固定装具を必要とする程度の動揺関節、習慣性脱臼)をいう。

「長管状骨に著しい転位変形を残すもの」・・・
 次のいずれかに該当するものをいう。
 ・大腿骨に変形を残すもの
 ・脛骨に変形を残すもの(腓骨のみに変形を残すものについても、その程度が著しい場合はこれに該当する)

一下肢の3大関節中1関節以上に人工骨頭又は人工関節を挿入置換したものや両下肢の3大関節中1関節以上にそれぞれ人工骨頭又は人工関節を挿入置換したものについては3級と認定します。挿入置換してもなお、一下肢については「一下肢の用を全く廃したもの」程度以上に該当するとき、両下肢については「両下肢の機能に相当程度の障害を残すもの」程度以上に該当するときは、さらに上位等級に認定されます。

 一下肢の3大関節のうち、1関節以上に人工骨頭または人工関節の挿入置換手術を両下肢それぞれに行った場合には、次の3つの条件を全て満たした場合、2級以上に認定されます(平成22年4月26日・年管発0426第1号)。
・立ち上がる、歩く、片足で立つ、階段を登る、階段を降りるなどの日常生活動作が、実用性に乏しいほど制限されていること。例えば、日常生活動作の多くが一人で全くできないか、または必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、非常に困難であること
・下肢障害の主な原因及び程度評価の根拠が自覚症状としての疼痛のみによるものではなく、医学的、客観的にその障害を生ずるに妥当なものであること ・下肢の障害の状態が、行動量、気候、季節などの外的要因により一時的に変動するものではなく、永続性を有すること

 検査者の手で可動域を測定し、障害のない一方の可動域との対比やそれが困難な場合は、平均値と比較した結果や、筋力の減損の程度他等から認定されます。

 日常生活における動作は、おおむね次のとおりである。
 ・片足で立つ  
 ・歩く(屋外 屋内)
 ・立ち上がる  
 ・階段を上がる
 ・階段を下りる

 診断書裏面 ⑲欄「日常生活動作」については、補装具(車椅子 など)を使用しない状態で判定する。

 「平衡機能障害」と併合されるのは、下肢に器質的障害がない場合に限ります。

 

3 体幹・脊柱の機能の障害

体幹の機能障害・・・高度体幹麻痺を後遺した脊髄性小児麻痺、脳性麻痺等によって生じるものとされています。

脊柱の機能障害・・・脊柱の脱臼骨折または脊椎炎等によって生じるもので、荷重機能障害運動機能障害があります。

障害の程度

1級

・体幹の機能に座っていることができない程度、または立ち上がることができない程度の障害を有するもの

2級

・体幹の機能に歩くことができない程度の障害を有するもの
  (屋外では杖等の補助器具を使用しなければ移動が困難な状態)

3級

・脊柱の機能に著しい障害を残すもの

障害手当金

・脊柱の機能に障害を残すもの

障害の程度 1級
「体幹の機能に座っていることができない程度の障害を有するもの」・・・
 腰掛、正座、あぐら、横すわりのいずれもができないものをいう。

「体幹の機能に立ち上ることができない程度の障害を有するもの」・・・
 臥位又は坐位から自力のみで立ち上れず、他人、柱、杖、その他の器物の介護又は補助によりはじめて立ち上ることができる程度の障害をいう。

障害の程度 2級
「体幹の機能に歩くことができない程度の障害を有するもの」・・・
 室内においては、杖、松葉杖、その他の補助用具を必要とせず、起立移動が可能。
 野外ではこれらの補助用具の助けをかりる必要がある程度の障害をいう。
 日常生活における動作が一人でできるが非常に不自由な場合又はこれに近い状態。

障害の程度 3級
「脊柱の機能に著しい障害を残すもの」・・・
 脊柱又は背部・軟部組織の明らかな器質的変化のため、脊柱の他動可動域が参考可動域の2分の1以下に制限されたものをいう。

障害の程度 障害手当金
「脊柱の機能に障害を残すもの」・・・
 脊柱又は背部・軟部組織の明らかな器質的変化のため、脊柱の他動可動域が参考可動域の4分の3以下に制限されている程度のもの
 頭蓋・上位頸椎間の著しい異常可動性が生じたものをいう。

 日常生活における動作は、おおむね次のとおりである。
 ・ズボンの着脱 (どのような姿勢でもよい)
 ・靴下を履く (どのような姿勢でもよい)
 ・座る (正座 横すわり あぐら 脚なげ出し)
 ・深くおじぎ(最敬礼)をする
 ・立ち上がる

 認定には、荷重機能障害と運動機能障害の状態を考慮しますが、身体指示に関連する荷重機能障害が重視されます。

 荷重機能障害は、ズボンの着脱や靴下を履いたり、座る、お辞儀する、立ち上がるなどの日常生活動作ができるかが重要な判断材料となります。

 運動機能障害は、前屈・後屈の可動域測定を基本とし、脊柱の他動可動域が参考可動域の2分の1以下に制限されたものを3級に、脊柱の他動可動域が参考可動域の4分の3以下に制限されている状態であれば障害手当金に該当します。(但し、代償作用については考慮するとされます。)

 神経機能障害との関係で、障害の認定に当たっては、単に脊柱の運動障害のみでなく、随伴する神経系統の障害を含め総合的に認定します。

 

 4 肢体の機能の障害

障害の程度

1級

・日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

例) 一上肢及び一下肢の用を全く廃したもの
  四肢の機能に相当程度の障害を残すもの
  日常生活における動作の全てが一人で全くできない

2級

・日常生活が著しい制限を受けるか、または日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

例) 一上肢及び一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの  
  四肢の機能に障害を残すもの

3級

 ・身体の機能に、労働が制限を受けるか、または労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するものであって、厚生労働大臣が定めるもの

・精神または神経系統に、労働が著しい制限を受けるか、または労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

障害手当金

 -

障害の程度 1級
 ・一上肢及び一下肢の用を全く廃したもの
「用を全く廃したもの」・・・
 日常生活における動作のすべてが「一人で全くできない場合」又はこれに近い状態をいう。

・四肢の機能に相当程度の障害を残すもの
「機能に相当程度の障害を残すもの」・・・
 日常生活における動作の多くが「一人で全くできない場合」又は日常生活における動作のほとんどが「一人でできるが非常に不自由な場合」をいう。

障害の程度 2級
・一上肢及び一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの
・四肢の機能に障害を残すもの
「機能障害を残すもの」・・・
 日常生活における動作の一部が「一人で全くできない場合」又はほとんどが「一人でできてもやや不自由な場合」をいう。

障害の程度 3級
・一上肢及び一下肢に機能障害を残すもの

 日常生活における動作は、おおむね次のとおりである。
(手指の機能)  
 ・つまむ (新聞紙が引き抜けない程度)  
 ・握る (丸めた週刊誌が引き抜けない程度)
 ・タオルを絞る (水をきれる程度)  
 ・ひもを結ぶ
(上肢の機能)  
 ・さじで食事をする
 ・顔を洗う (顔に手のひらをつける)
 ・用便の処置をする (ズボンの前のところに手をやる 尻のところに手をやる)
 ・上衣の着脱 (かぶりシャツを着て脱ぐ ワイシャツを着てボタンをとめる)
(下肢の機能)  
 ・片足で立つ  
 ・歩く(屋外 屋内)
 ・立ち上がる  
 ・階段を上がる
 ・階段を下りる

 このような動作が、補助具(車椅子、杖 など)を使用せずにどの程度できるのか、どの程度の支障があるのかが判断の材料となる。

 肢体の機能の障害が両上肢、一上肢、両下肢、一下肢、体幹及び脊柱の範囲内に限られている場合には、それぞれの認定基準と認定要領によって認定しますが、肢体の機能の障害が上肢及び下肢の広範囲にわたる場合であって、上肢と下肢の障害の状態が相違する場合には、障害の重い肢で障害の程度を判断し認定します。上肢と下肢をそれぞれ認定して併合するのではありません

 肢体の障害は、基本的に「関節可動域」「筋力の低下」により判断されますが、これだけでは正確な状態が把握できないため、「日常生活の動作の状態」も重要視して総合的に認定されます。

 身体障害(肢体の障害)は、日常生活上の動作、関節の可動域、運動筋力によって身体障害の程度が評価されますので、それらの評価項目に対する「実際の計測値」が障害認定のポイントとなります。

 代表的な後遺症は、身体の片方だけが麻痺する片麻痺です。重い場合には、上肢はほとんど機能せず、下肢も杖や補装具や車椅子がなければ歩行ができないほどの障害を負います。

 障害年金の審査では、身体のどの部位に障害があるのかで重要視されるポイントが変わります通常の片麻痺の場合には、日常生活の動作制限が重要視され、診断書の「日常生活における動作の障害の程度」が適正に記載されているかが大切となります。同じ片麻痺でも1肢のみに重い障害が残っている場合(右上肢は全廃しているが、右下肢については軽度の障害にとどまっているなど)には、関節可動域制限や筋力低下が重要視され、診断書の「関節可動域及び筋力」の項目を確認します。

 脳血管等による運動機能障害、片麻痺等の運動機能障害での症状固定日(運動機能障害が発生してから6ヵ月経過後)を障害認定日とします。

 神経系の障害により次のいずれかの呈している場合は、原則として、初診日から起算して1年6月を経過していなくても、障害認定日として取り扱うこととしています。
 ① 脳血管障害により機能障害を残しているときは、初診日から6月経過した日以後に、医学的観点から、それ以上の機能回復がほとんど望めないと認められるとき
 ② 現在の医学では根本的治療方法がない疾病であり、今後の回復は期待できず、初診日から6月経過した日以後において気管切開下での人工呼吸器(レスピレーター)使用、胃ろう等の恒久的な措置が行われており、日常の用を弁ずることができない状態であると認められるとき

 交通事故等による頭部外傷により、四肢の麻療に加えて「高次脳機能障害」など器質性精神障害が併存する場合は、それらの障害も認定の対象となり、併合認定により障害等級が繰り上がる可能性があります。

 ジストニア症状により就労が困難なため、患者自身が障害者という認識で身体障害者手帳・障害年金の申請をしても、ジストニア症状に該当する障害規定がなく、歩行困難な一部の患者を除き、障害者と容易に認定されにくいようです。

 重症筋無力症の障害年金では、次のような状態が、診断書や申立書などにしっかりと記載されていることが重要となりますので、記載された内容が実際の状況と整合性がとれているかをしっかり確認します。
・良くなる見込みがないこと(今後、よくなる見込みがない)
嚥下障害などがあること(重症筋無力症により、喉の筋力低下が起こり、嚥下障害やしゃべりにくいなどの症状がある)
・日常生活において、家族の援助が必要なこと(手足の筋力の低下による歩行や立つことが困難な状態であり、車いすでの生活のため、家族の援助が必要である)

 診断書では、頚髄損傷、胸髄損傷、腰髄損傷といった病名がつけられることもありますが、脊髄損傷のことを言いまして、障害の程度に応じて障害年金の認定がされます。脊髄損傷による障害の程度や部位は人により異なります。上肢がほとんど動かなくなる場合もあれば、下肢が全廃する場合や、四肢機能の障害が軽度な場合もあります。 障害年金の手続きの際には、特に診断書の「麻痺」の項目や、診断書裏面の「筋力低下および日常生活動作」の項目は、認定に関わる大切なポイントです。

 線維筋痛症と診断された日や診断された病院にかかった日が初診日とは限りません。身体に痛みがあり、初めて病院に行ったのが近所の内科や整形外科であれば、その日が初診日となる可能性が大です

 先天性股関節脱臼のような先天性疾患にて手術などで症状があらわれた場合は、手術などで症状が現れた日初診日とします。

 幼少時に脱臼等があり、「変形性股関節症」と診断されていた場合でも、その後自覚症状などがなく、30代や40代になり突如関節が痛くなるような症状が出た場合には、先天性として審査されないことがあります。つまり、30代・40代になって初めて医師の診断を受けた日初診日としてみなされることになるのです

 大腿骨頭壊死において、アルコールの大量摂取や外傷性、その他原因不明の場合は、股関節あたりに痛みを感じてめて医師の診察を受けた日初診日となることが多いです。

 (エリテマトーデスの治療過程において)ステロイド投与の副作用により大腿骨骨頭部無腐蝕性壊死に至ったときは、ステロイド投与に至った基礎疾患(膠原病関節リウマチ等)を初診日とします。

 大腿骨頭壊死などにより人工骨頭を挿入置換した場合3級とします。それに限らず、立つ、歩くなどの動作が著しく制限されるものについては、各々の状態に応じた障害等級の基準が設けています。

 多発性硬化症では、初期段階では多発性硬化症と病名がついていないため、初診日の特定が困難なケースが少なくありません。病名が確定していなくても、自覚症状があり、医療機関を訪れた場合はそこが初診日と扱われます。(あくまでも、多発性硬化症特有の症状で医師の診断を受けた日が初診日となります。)

 重い症状の場合、上肢がほとんど機能せず、下肢も杖や補装具、または車椅子がなければ歩行が困難なほどです。言語障害、記憶障害、視野障害などが重なると、さらに障害年金の上位等級が認定される可能性もあります。

 脳梗塞の場合、麻痺により肢体の機能が制限されている場合が高い。診断書の内容から、あきらかな麻痺の状態が認められれば、筋力低下や関節可動域制限が著しくなくても、障害年金が認定される可能性があります。

 脳梗塞の後遺症として多いのが、身体の片側だけの麻痺、言語障害、記憶の障害などあります。後遺症が複数の障害に渡っている場合は、それぞれの診断書の取得が必要になってきます。記憶や認知機能などの高次機能障害が残る場合は、精神の障害の診断書が必要になります。

 脳性麻痺は障害年金の制度では、先天性(生まれながら)の病気であると判断されます。10年以上前のことなどの場合、カルテが破棄されているなどの理由から初診日の証明が困難な場合があります。このような場合には、診察券や第三者の証明書など客観的資料で初診日が認められる場合があります。1級または2級でないと障害年金が受給できないため、慎重に行うことが大切です。

 脳卒中(脳血管障害)の場合、倒れて救急車で運ばれ救命処置を受けたという方も多いかと思います。その場合、おおよそ数週間の入院の後、リハビリテーション専門の病院へ転院されることが多くなっています。この場合、初診は救命処置を受けた病院診断書作成医療機関はリハビリテーション専門の病院ということになります。

 交通事故などの事故により、脳が傷つけられたり、圧迫されたりして脳挫傷脳内出血を起こしたようなケースでは、事故により病院に救急搬送された日が初診日となります。

 人工股関節を装着した場合は原則として障害等級3級となりますが実際には大人になって働きはじめた以降に初診日があるにもかかわらず先天的なものと判断された場合、障害厚生年金の対象ではなくなるために障害年金を受給できなくなってしまいます。請求書類には、幼少期からは股関節には問題がなかった旨を示す必要があります。

 心房細動など心疾患が原因または誘因で発生した脳血管障害では、相当因果関係「あり」とし、一般的に、心疾患(心房細動など)が脳血管障害の初診よりも前の可能性が高いとされています。

 脳梗塞脳出血となったのは、高血圧が原因の一つだと思われることがあります。しかし、障害年金の認定においては、原則として高血圧と脳梗塞、脳出血には相当因果関係はないものとされています。脳梗塞や脳出血を発症して病院に緊急搬送された場合は、その日が障害年金の請求上での初診の日とされます。初診日は、高血圧と診断された日ではありません。

 糖尿病脳梗塞相当因果関係「なし」です。

 糖尿病と脳出血相当因果関係「なし」です。

 糖尿病糖尿病性壊疽(糖尿病性神経障害糖尿病性動脈閉塞症)は相当因果関係「あり」とされております。

 前発障害と後発障害との間に相当因果関係があれば、一連の疾病として扱われますが、内部障害と外傷との間には相当因果関係を認めません。

 ポストポリオを発症したときは、初診日については幼児期にポリオを発症したときでなく、ポストポリオについて初めて医師の診療を受けた日とします。大人になってからのポストポリオを初診日となるための条件は、以下の4つとなります。
(1) 新たに加わった筋力低下、異常な筋の易疲労性の原因が他の疾患でないことが確認できる診断書であること
(2) ポリオの既往歴があり、弛緩性運動麻痺の残存が確認できる診断書「病歴・就労状況等申立書」であること
(3) ポリオ回復後、ポストポリオを発症するまでに概ね10年の症状安定期が確認できる「病歴・就労状況等申立書」であること
(4) 上の(1)の主たる原因が、他の疾患でないこと

 幼児期に罹患したポリオによる障害の程度が、既に障害等級2級以上に該当している場合は、その小児ポリオによる障害の程度を差し引いて、成年到達後のポストポリオによる障害の程度が認定(差引認定)されます。

 

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