管理監督者の範囲の適正化について
平成20年4月1日付け基監発第0401001号(厚生労働省労働基準局監督課長から都道府県労働局長あて)
労働基準法(昭和22年法律第49号)第41条第2号に規定する「監督若しくは管理の地位にある者」(以下「管理監督者」という。)は、同法が定める労働条件の最低基準である労働時間、休憩及び休日に関する規定の適用が除外されるものである。 したがって、その範囲については、一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者であって、労働時間、休憩及び休日に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない、重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にある者に限定されなければならないものである。具体的には、管理監督者の範囲については、資格及び職位の名称にとらわれることなく、職務内容、責任と権限、勤務態様に着目する必要があり、賃金等の待遇面についても留意しつつ、総合的に判断することとしているところである(昭和22年9月13日付け発基第17号、昭和63年3月14日付け基発第150号。以下「解釈例規」という。)。 しかしながら、近年、以上のような点を十分理解しないまま、企業内におけるいわゆる「管理職」について、十分な権限、相応の待遇等を与えていないにもかかわらず、労働基準法上の管理監督者として取り扱っている例もみられ、中には労働時間等が適切に管理されず、割増賃金の支払や過重労働による健康障害防止等に関し労働基準法等に照らして著しく不適切な事案もみられ、社会的関心も高くなっているところである。 また、このような状況を背景として、管理監督者の取扱いに関して、労使双方からの相談が増加している。 このため、労働基準監督機関としては、労働基準法上の管理監督者の趣旨及び解釈例規の内容について正しい理解が得られるよう十分な周知に努めるとともに、管理監督者の取扱いに関する相談が寄せられた場合には、企業内におけるいわゆる「管理職」が直ちに労働基準法上の管理監督者に該当するものではないごとを明らかにした上で、上記の趣旨及び解釈例規の内容を十分に説明するほか、管理監督者の取扱いについて問題が認められるおそれのある事案については、適切な監督指導を実施するなど、管理監督者の範囲の適正化について遺憾なきを期されたい。
○一般の従業員と役職者のライン
従って、事業主が任意に「管理監督者」の範囲を決めることができるのではなく、当該労働者が「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場」にあるかどうか、「自己の勤務について自由裁量の権限」を有しているかどうか、「出退勤について厳格な制限を受けない地位にあるかどうか」などの実態に則して客観的基準に基づいて判断されるものです。管理職の全てを自動的に労働時間等の規定の適用除外とすることはできないわけです。 このように、労働基準法に定める労働時間・休憩・休日等に関する規定は、企業が人事管理上あるいは営業政策上の必要等から任命する職制上の役付者全てに対して、管理監督者として例外的取扱いとすることが認められるものではありません。 この点について、行政解釈では、管理監督者であるかどうかの判断にあたっては、「資格(経験・能力等に基づく格付け)および職位(職務の内容と権限等に応じた地位)の名称にとらわれることなく、職務内容、責任と権限、勤務態様等が労働時間等の適用が除外されるにふさわしい」だけでなく、「賃金等の待遇面」についても無視できないとしており、社内での格付けや名称を問わず、実態を見て判断すべきものとしています。
すなわち、労働時間等の規定の適用除外者として認めている管理者とは、「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」とされています。
「労務管理等において経営者の立場に立ち、経営者の分身的な義務と権限を有する者」ということになります。要するに肩書きだけは課長や部長でも、それにふさわしい経営者の分身としての義務もなければ権限も無い者は労働基準法に言う管理者としては認められないということになります。
「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」について、法律を厳格に適用すると、本社の取締役・総務部長などごく限られた人になります。ただ、この判断に関しては地域ごとの労働基準監督官の裁量により緩められることもあります。現場の店長・副店長までは認めるという事例もあります。
それ以下の役職の人に関しては、この法律の解釈からは残業をつけないということは法律違反となると言えます。残業代を払いたくないから、何でも良いからすぐ役職をつけるというのは通用しないということになります。
なお、労働時間等に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も労働時間等の規制になじまないような立場にある者であれば、本社の企画、調査等の部門に配置されたスタッフ職など一定の範囲の者、また専門職の者などは、部下のいるいないにかかわらず管理監督者に含めてさしつかえないでしょう。
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