労働保険の適用労働者

○労災保険の適用労働者

 労災保険の適用労働者は、適用事業に使用される労働者です。労働者とは、「労働基準法の適用事業に使用される者で、賃金を支払われる者」と同一と解されています。従って、労働者であるかどうかは、事業主との使用従属関係があるか否か、労働の対償として賃金が支払われているか否かで判断されます。  

具体的な例として、自営業者(特別加入制度あり)、同居の親族、法人の代表者・役員、日本企業の海外支店に現地採用された日本人職員などは、原則として適用労働者にはなりません。なお、一定規模以下の事業所の代表者、取締役等は、労働保険事務組合に事務処理を委託することにより、特別加入することができます。

 

○雇用保険の適用労働者

 雇用保険は任意加入ではなく、5人未満の農林水産業の個人事業所を除く全ての産業を適用対象としており、労働者を雇用する事業所(適用事業所)に雇用される労働者は、その意思に関わりなく、全員が被保険者となります。

 ただし、例外として次の者は除かれます。

(1) 65歳以上で新規に雇用された者

 但し、短期雇用特例被保険者、日雇労働被保険者となることはできる。

(2) 短時間労働者

ただし、    

① 1週間の所定労働時間が通常の従業員の4分の3未満(30時間未満)であり、かつ、 

20時間以上    

② 反復継続して就労する者  

である場合は、短時間労働被保険者となります。

(3) 日雇労働被保険者に該当しない日雇労働者   

(4) 季節的事業に4カ月以内の期間を定めて雇用される者   

(5) 船員保険の被保険者   

(6) 法人の代表者、取締役、監査役など委任関係にある者、家事使用人、昼間学生 等

 取締役で同時に従業員としての身分を併せ有する場合(兼務役員)、役員報酬より賃金部分が多く就労の実態などから労働者的性格が強い場合は、従業員部分についてのみ被保険者となります。

(7) 国、都道府県、市町村、その他これに準ずるものの事業に雇用される者のうち、離職した場合に、他の法令、条例、規則等に基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が、雇用保険の失業給付の内容を超えると認められる者
 

労働保険対象労働者の範囲

 

労災保険の労働者

雇用保険の被保険者

基本的な考え方

 労働者は、常用、日雇、パート、アルバイト等、名称及び雇用形態にかかわらず、労働の対価として賃金を受けるすべての者が対象となります。  ただし、船員保険の被保険者は対象となりません。  また、海外派遣者で都道府県労働局長より特別加入の承認を得ている労働者は、別個に申告することとなるので、その期間は対象となりません。

雇用される労働者は原則として被保険者となります。日雇労働被保険者も含まれます。  ただし、次に掲げる労働者は除かれます。

・季節的事業(4ヵ月以内の期間を予定して行われるもの)に雇用される者

・船員保険の被保険者

・昼間学生

・臨時内職的に雇用される者

・65歳以上で新たに雇用される者

個々の労働者の届出

労働者ごとの届出は必要ありません。

被保険者については、雇入れ等により被保険者になったこと、又は退職等により被保険者でなくなったことの届出が公共職業安定所へ必要です。

法人の役員(取締役)の取扱い

代表権・業務執行権(注1)を有する役員は、労災保険の対象となりません。

法人の取締役・理事・無限責任社員等の地位にある者であっても、法令・定款等の規定に基づいて業務執行権を有すると認められる者以外の者で、事実上業務執行権を有する取締役・理事・代表社員等の指揮監督を受けて労働に従事し、その対償として賃金を得ている者は、原則として労働者として取り扱います。 

法令又は定款の規定により、業務執行権を有しないと認められる取締役等であっても、取締役会規則その他内部規則によって業務執行権を有する者と認められる者は、労働者として取り扱いません。

監査役、及び監事は、法令上使用人を兼ねる事を得ないものとされていますが、事実上一般の労働者と同様に賃金を得て労働に従事している場合は、労働者として取り扱います。

 

※保険料の対象となる賃金は、「役員報酬」の部分は含まれず、労働者としての「賃金」部分のみです。

株式会社の取締役は原則として被保険者となりません。  ただし、取締役であって、同時に部長、支店長、工場長等の従業員としての身分を有する者は、服務態様、賃金、報酬等の面からみて労働者的性格の強いものであって、雇用関係(注2)があると認められる者に限り「被保険者」となります。この場合、公共職業安定所へ「兼務役員雇用実態証明書」の提出が必要です。

なお次の点にご留意ください。

・代表取締役は被保険者になりません。

・監査役は原則として被保険者になりません。

 

株式会社以外の役員等についての

取扱いは以下のとおりです。

・合名会社、合資会社、合同会社の社員のうち、代表社員は被保険者となりません。

・有限会社の取締役のうち、会社を代表する取締役は被保険者になりません。

・農業協同組合等の役員は、雇用関係が明らかでない限り被保険者とはなりません。

・その他法人、又は法人格のない社団もしくは財団の役員は、雇用関係が明らかでないかぎり被保険者とはなりません。 ※保険料の対象となる賃金は、「役員報酬」の部分は含まれず、労働者としての「賃金」部分のみです。

パートタイム(短時間就労者)

すべて対象労働者となります。

次の要件をすべて満たしていれば被保険者となります。

・労働条件(労働時間、雇用期間、賃金等)が、雇用契約書等により明確に定められていること。

・1週間の所定労働時間が20時間以上であること。

・1年以上引続き雇用されることが見込まれること

 

「短時間就労者」とは、通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短く、かつ40時間未満の者

アルバイト

すべて対象労働者となります。

反復継続して就労せず、その者の受ける賃金が家計の補助的な者は、被保険者となりません。

高年齢労働者

すべて対象労働者となります。

65歳に達した日以降に新たに雇用される者は、原則として被保険者となりません(任意加入により高年齢継続被保険者になった者、短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者を除きます)。

出向労働者

(注3)

出向労働者が出向先事業組織に組入れられ、出向先事業主の指揮監督を受けて労働に従事する場合は、出向元で支払われている賃金も出向先で支払われている賃金に含めて計算し、出向先事業場で対象労働者として適用してください。

出向元と出向先の2つの雇用関係を有する出向労働者は、同時に2つ以上の雇用関係にある労働者に該当するので、その者が生計を維持するに必要な主たる賃金を受けている方の雇用関係についてのみ「被保険者」となります。

派遣労働者

すべて対象労働者となります。

登録派遣労働者については、同一の派遣元において、次のいずれにも該当する者については被保険者となります。

・1週間の所定労働時間が20時間以上であること。

・反復継続して派遣就業する者(1年以上継続して同一派遣元に雇用されることが見込まれること)

事業主と同居している親族

一般労働者(親族以外の労働者)を使用する事業のみ、次の条件を満たしていれば、労働者となります。  ・同居の親族は、事業主と居住、及 

び生計を一にするものであり、原則としては労働基準法上の「労働者」には該当しませんが、同居の親族であっても、常時同居の親族以外の労働者を使用する事業において、一般事務、又は現場作業等に従事し、かつ次の条件を満たすものについては、一般に私生活面での相互協力関係とは別に独立して労働関係が成立していると見て、労働基準法の「労働者」として取り扱います。

・業務を行うにつき、事業主の指揮命令に従っていることが明確であること。

・就労の実態が当該事業場における他の労働者と同様であり、賃金もこれに応じて支払われていること。

特に、始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等、また賃金の決定、計算及び支払方法、賃金の締切り、及び支払の時期等について就業規則その他これに準ずるものに定めるところにより、その管理が他の労働者と同様になされていること。

原則として被保険者となりません。  ただし、次の条件を満たしていれば被保険者となりますが、公共職業安定所へ「同居の親族雇用実態証明書」の提出が必要となります。

・業務を行うにつき、事業主の指揮命令に従っていることが明確であること。

・就労の実態が当該事業場における他の労働者と同様であり、賃金もこれに応じて支払われていること。

特に、始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等、また賃金の決定、計算及び支払方法、賃金の締切り、及び支払の時期等について就業規則その他これに準ずるものに定めるところにより、その管理が他の労働者と同様になされていること。

・事業主と利益を一にする地位(役員等)にないこと。

(注1)株主総会、取締役会の決議を実行し、又日常的な取締役会の委任事項を決定、執行する権限(代表者が行う対外的代表行為を除く会社の諸行為のほとんどすべてを行う権限

(注2)業務執行権を有する取締役・理事・代表社員等の指揮監督を受けて労働に従事し、その対償として賃金を得ている関係。

 

(注3)出向労働者の労働保険の取扱い

 出向者を出しているか、受けているかで異なります。

 

出向元

出向先

労災保険

除く

対象とする

雇用保険

対象とする

除く

 

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