労災保険からの保険給付

 労災とは、業務中や通勤中などに発生した労働災害のことを指します。傷病が労災であると認定された場合には、労災保険によって治療費や生活費などの補償が行われます。

 なお、労災であるか否かの決定は、請求書を受け付けた管轄の労働基準監督署長が所定の調査を行なって下します。病院で診察を担当した医療者が判断するわけではありません。

参考

療養(補償)給付

 療養(補償)給付は、労働者が業務上又は通勤により負傷し又は疾病にかかり治療が必要の場合に給付される給付です。

 給付である療養の給付は、被災労働者が労災病院や労災指定病院等において、必要な治療などを受けることができる給付です。現物給付の「療養の給付」です。

 治療費・入院の費用・看護料・移送費など通常の療養に必要なものが含まれます。

 ただし、特殊な治療や必要のないと認められるものの費用は支給対象とはなりません。

 負担について、業務上災害の場合は無料ですが、通勤災害の場合は200円の一部負担金を支払わなければなりません。

 業務災害の場合は、「療養補償給付たる療養の給付請求書」(様式5号)を、通勤災害の場合は、「療養給付たる療養の給付請求書」(様式16号の3)を、病院を経由して所轄労働基準監督署へ提出します。請求書類には事業主の証明を受けます。この証明は災害発生の原因や状況などに間違いがないかの証明です。請求書を実際の療養を受ける労災病院や労災指定病院に提出します。最終的には、病院を経由して所轄の労働基準監督署へ提出されることになります。

 なお、管轄の労働基準監督署は、労働者が雇用されている事業場を管轄する監督署です。

 病院等を変更する必要がある場合には、様式第6号の「療養補償給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届」を事業主の証明を受けて、変更先の労災指定病院等を経由して労働基準監督署に提出することになります。

 

療養の費用の支給

 近くに指定医療機関等がないなどの理由で、指定医療機関以外で療養を受けた場合や、装具(コルセット等)を使用した場合、健康保険証を使用してしまった場合に、その療養にかかった費用を支給する給付です。

 「療養の費用」として、それに要した費用を労働者本人が病院に支払い、その後所轄労働基準監督署に請求し現金で受給することになります。

 「療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号)」を記入、事業主の証明を受けること。これには、看護や移送の費用を請求する場合には、領収書などの費用を証明できる書類を添付しなければなりません。

 

休業補償給付

 労災保険の休業(補償)給付とは、労働者が業務上又は通勤途上において、負傷又は病気になり、その療養のために働くことができず、その期間について賃金の支払を受けていない場合に労災保険から支給されるものです。

 業務上のケガや病気により休業する場合、最初の3日間は休業補償給付を支給しません。この3日間は、労働基準法の規定により事業主が補償しなければならないことになっています。

 通勤途上の場合には、事業主の補償義務はありませんので、その3日間について事業主において補償する義務はありません。

休業補償給付の請求

(1) 業務災害の場合
 「休業補償給付支給請求書・休業特別支給金支給申請書」(様式第8号を)作成し、事業主および医師の証明を受け、被災労働者が所轄の労働基準監督署へ提出します。(通常、同一医療機関ごとにまとめて請求することが多い。)

 休業補償を請求するには、休業請求書に医師の証明が必要になります。医師証明料2,000円は労災保険の適用となります。労災指定病院以外の医療機関を受診した場合には、証明料の立て替えを行う場合もあります。これも労災保険の適用になりますので、後日、療養の費用請求書で費用の請求を行うことが可能です。

(2) 通勤災害の場合  

 「休業給付支給請求書」(様式16号の6)を所轄労働基準監督署に提出します。

支給額  

 休業補償給付の支給額は、休業の第4日目から1日について、給付基礎日額の60%が支給されます。

  給付基礎日額 × (60/100) × 休業日数(休業初日から3日間を除く)

   (最低限度額・スライド制あり)

 ただし、所定労働時間のうち一部労働し、その労働に対して賃金の支払があった場合には、給付基礎日額からその賃金額を差引いた額の60%になります。

(給付基礎日額とは)  

 原則として災害が発生した日以前3ヵ月間に被災労働者に支払われた賃金の総額をその期間の総日数(暦の日数)で割った額です。(平均賃金相当額)  基本的に残業手当も含みますが、ボーナスや結婚手当のように、臨時的に発生した賃金は考慮されません。

 算定した給付基礎日額がその額に満たないときは、最低保障額が決められており、その額が給付基礎日額になります。

 療養開始後1年6ヵ月を経過した場合に支給される休業補償給付の給付基礎日額には、年齢階層別の最低・最高限度額があります。

 支給が決定したら、1~2ヵ月後に指定の口座に振り込まれます。

 休業補償給付の支給を受ける労働者のうち、療養開始後1年6ヵ月を経過している長期療養者は、その1年6ヵ月を経過した日から1ヵ月以内に「傷病の状態等に関する届書」に医師の診断書等を添えて、労働基準監督署長に提出しなければなりません。

 療養開始後1年6ヵ月を経過した時点では傷病等級に該当せず、その後も引き続き休業補償給付が支給されることとなった労働者は、毎年、1月1日から同月末日までのいずれかの日の分を含む休業補償給付の請求書を提出する際に、請求書に添えて「傷病の状態等に関する届書」の提出が義務づけられています。

 

特別支給金の加算
 休業の第4日目からは、休業補償給付に給付基礎日額の20%の「休業特別支給金」が加算されます。

 したがって、労働者が業務上又は通勤途上のケガなどによって休業し、賃金の支給を受けないときには、休業基礎日額の80%の補償を受けられることになります。

 休業期間であっても、今までの賃金の80%が支給されます。労働者にとって、休暇中の生活費用は大きな不安の種になるため、賃金の80%が給付金で賄われれば、安心して治療に専念できるわけです。

労災 交通事故などの第三者行為

自賠責保険

逸失利益

傷病補償年金

 傷病補償年金は、労働者が仕事上のケガや病気で療養(治療等)を開始してから1年6ヵ月を経過しても治らず、かつ、その傷病による障害の程度が傷病等級(1~3級)に該当する場合に、その障害の状態が続いている間支給されます。

 傷病補償年金の支給されることとなった場合には、直接被災者にその旨の通知がされ、その通知を受けた人に対し、障害の程度に応じ支給されることになります。

傷病等級

傷病補償年金

傷病特別支給金
(1回支給)

第1級

年金給付基礎日額の313日分

114万円

第2級

年金給付基礎日額の277日分

107万円

第3級

年金給付基礎日額の245日分

100万円

 傷病補償年金を受ける権利がある人に対して、特別給与を基礎とした特別支給金が支給されます。

  年金給付基礎日額 = 給付基礎日額 

 給付基礎日額は原則として平均賃金相当額をいいます。
 平均賃金とは、原則として、業務上又は通勤による負傷や死亡の原因となった事故が発生した日又は医師の診断によって疾病の発生が確定した日(賃金締切日が定められているときは、その日の直前の賃金締切日)の直前3ヵ月間にその労働者に対して支払われた賃金の総額を、その期間の暦日数で割った1日あたりの賃金額のことです。
 給付基礎日額が年齢階層別の最高限度額を上回る場合または最低限度額を下回る場合には、その最高限度額又は最低限度額が年金給付基礎日額となります。

 傷病補償年金が支給される場合、必要な療養補償給付が引き続いて行われます。

 療養を始めてから1年6ヵ月を経過しても傷病は治ゆしていないが、その傷病による障害の程度が傷病等級(1~3級)に該当しない場合には傷病補償年金は支給されず、引き続き休業補償給付が支給されます。なお、その後において労働者の傷病の程度が重くなり傷病等級(1~3級)に該当するに至った場合には、そのときから傷病補償年金が支給されることとなります。

傷病補償年金の請求と支払時期
 傷病補償年金については、特別な請求手続はありません。
 他の保険給付と異なり労働者の請求に基づくものではなく、労働基準監督署長の職権で決定するものです。休業補償給付における提出書類の内容から労働者が傷病補償年金に該当するに至っていると認められるときに、傷病補償年金の支給の決定が行われるのです。

 毎年偶数月の各支払期月に振込通知書又は支払通知書が送付され、金融機関への振込み又は窓口払いの方法で受けることが出来ます。

障害等級の変更
 傷病補償年金が支給されている間に、障害の程度が変更され新たに他の傷病等級に該当した場合には、その新たな傷病等級に応ずる傷病補償年金が支給されることになります。

 

 傷病補償年金を受給している人の傷病が治癒した後に障害が残れば、その程度に応じた障害補償給付が支給されます。

 

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