組織とは

 私たちの大半は、病院で生まれ、学校という組織で学び、生活の糧を得るために組織で働いています。また、組織で働いていなくても、様々な企業組織や公共組織の活動を受けて生活の糧を手に入れることができるように、組織の活動によって私たちは豊かな生活を送ることができるのです。

 このように、私たちの生活において組織の活動は欠かせないものになっており、特に企業組織の活動は生活を豊かなものにする上で大きな貢献を果たしています。

 組織のもつ特徴について、社会的特性と経済的特性の2つの観点から考えてみましょう。

 

組織の社会的特性

 まず、社会的特性から見た特徴です。

 「社会」は、大きく分類して「共同体」と「人工的社会」の2つに分けられます。

 企業組織は、その両方の特徴をあわせ持っているということができます。

共同体としての組織

 共同体(コミュニティ)とは、個人がそのメンバーになることを自由に決めることができない組織です。 

 典型的なものとして、家族を基本とする血縁社会があげられます。

 共同体は、その構成するメンバーの相互扶助によって成り立っており、共有財産をメンバーがともに守ることによって生活が成り立っています。

 そのため、共同体のメンバーは個人的な事情よりも共同体の事情を優先することになります。

人工的社会

 人工的社会とは、個人の意思によってメンバーになるかどうかを自由に決めることができる組織です。

 具体的な例としては、学校や会社があります。

 原則的に、どの学校で学び、どの会社で働くかは、個人の自由で決定することができます。

 これらの組織は、共同体とは違って何らかの目的を達成するために人工的に構成された社会です。

 個人の意思によってメンバーになるかを決められるということは、そのメンバーを辞めることを決めるのも自由だということです。

 企業の組織は人工的社会に分類されます。そのため、その企業組織の目的達成に貢献しない要素や目的達成の障害となるような要素については、排除されることになります。

 しかし、人工的社会である企業組織においても、共同体的な性格は強く残っており、企業組織の目的達成に貢献しないようなものであっても無視することはできません。

 企業組織における共同体的な性格とはどのようなものでしょうか。

 企業は、営利追求を目的とする組織であるため、企業の意思決定や行動は経済的合理性に基づいて行われているように思われますが、現実的には合理的な行動ばかりではありません。

 組織内での政治的な駆け引きが行われたり、強い連帯感や仲間意識によって不祥事を起こしてしまったりもします。

 つまり、企業組織においても人は経済的合理性だけに基づいて行動しているわけではないのです。人と人が協力し、ともに行動することによって共同体としての特徴が生まれてくるのです。

 では、なぜ人は経済的合理性だけに基づいて行動しないのでしょうか。人の行動や思考は感情によって左右されるという点にあります。感情が人の知的活動に大きな影響を与えていることは、最近の脳科学領域の研究からも明らかになっています。

 例えば、ピアノの先生になった人に、ピアノの先生になった理由を尋ねてみると、「初めてピアノを習った先生に憧れた」ということがあります。ピアノではなくピアノの先生に対して好感情を抱き、そのことをきっかけとしてピアノの勉強に励むようになったのです。そして、その学習意欲が継続し、最終的にピアノの先生になるという結果をもたらしたのです。

 組織のマネージャーは、人の感情を理解したうえで、組織を動かしていかなければならないのです。

 

組織の経済的特性

 経済的特性を踏まえて組織を見てみると、組織を構成する人には長期的な「資本」としての特性と短期的な「資源」としての特性があります。

資本としての特性

 資本は、付加価値を生み出す元となるものです。

 「人的資本」という言葉があります。これは人が持つ生産に関する能力を表しています。

 人的資本の価値は教育・訓練によって高めることができます。

 企業の採用活動において、学歴重視による採用が行われることがありますが、これは、高学歴の人間は人的資本としての価値が既に高いとみなされていると考えることもできます。

 人を資本としてとらえた時、その価値を高めるためのマネジメント活動が重要となります。

 個人が、自ら人的資本としての価値を高めるために努力することもできますが、組織として教育やトレーニング・プログラムを提供することによって、その価値を高めることができます。

 育成は、マネジメント側から見れば投資ということができ、この場合の行動原則は「いかに効率よく投資するか」になります。

資源としての特性

 資源は他の資源と組み合わせることによって、価値を生み出すものです。

 その組み合わせを行っていくのはマネージャーの役割になります。

 メンバーをどの部署に配置してどのような仕事を任せるかについては、本人の能力だけではなく、他の人間の能力との関係や業務内容、働く場所等に配慮する必要があります。

 人を資源としてとらえた時、マネジメントの行動原則は、「人という資源をいかに活用するか」となります。

 つまり、多様な資源をそれぞれの能力に応じてどのように組み合わせるかということです。

 企業組織を取り巻く関係者のことを「ステークホルダー」(利害関係者)といいます。

 具体的には、経営者や従業員、株主・債権者、顧客、取引先、地域住民など、企業組織の活動の影響を直接的・間接的に受ける人々や団体のことを言います。

 最近では、このステークホルダーの利害のバランスをとりながら付加価値を生み出していくような経営を企業は求められており、その一環として「CSR活動」(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)に取り組む企業が増えています。

 企業組織は、ある目的を持って作られます。

 企業組織は「意志」を持っているということができ、このことは組織のマネジメントを検討していく上で重要なポイントとなります。

 通常、企業は創業者の熱い意志によって生み出されます。しかし、その意志が他のメンバーに共有され、協働につながらなければ意味がありません。いかに創業時の意志をメンバー間で共有するかが重要なポイントとなります。

 HONDAは、「人間尊重」と「3つの喜び」を基本理念として定めています。人間尊重には、「自立」「平等」「信頼」の3つがあります。自立とは、自分で自由に発想し主体性をもって行動し、自分の行動には責任を持つということを、平等は、学歴や職種に関わらず社員に対して平等に接するということを、信頼とは、社員同士お互いに尊重し合って信頼して仕事をしようということを表しています。3つの喜びとは、「買う喜び」「売る喜び」「創る喜び」のことです。HONDAでは、この基本理念を社員の間に浸透させるために、階層別研修を行うだけでなく、「Honda Philosophy」というポケットサイズの小冊子を作成して、全社員に配布しています。こうして、創業者である本田宗一郎氏や創業時の社員の志が脈々と受け継がれてきているのです。

 しかし、創業時の志を維持することは簡単なことではありません。志がいかに優れたものであっても、その企業組織が提供する財・サービスが市場に受け入れられるとは限りませんし、市場では激しい競争が待っています。市場や企業を取り巻く環境も刻々と変化を続けています。そのような変化や競争の激しい環境を生き抜いていくためには、志を持つだけでは不十分であり、それを維持し具体的な経済活動に落とし込むこと、つまり、戦略を作り出し、いかに実行していくかが重要なのです。

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