店舗型サービス業の事業計画書

 店舗型サービス業の場合は、飲食店や小売業と同様、店舗を構えることになります。違いは、その場所で「サービスを提供すること」が基本となる点です。よって、飲食業や小売業と似ている部分がありますが、物を販売したり、料理を提供したりするのとは異なる注意点があることに気を付けてください。

 また、店舗型サービス業といっても たくさんの種類のものがあります。トレーニングジムや予備校のような大きな施設から、美容室や接骨院、税理士事務所などの個人で運営している施設まで様々です。

 規模や職種によって違いはありますが、店舗型サービス業の特徴と注意点をまとめていきます。

 作成時は以下の点に注意にしてください。

 ・店舗のコンセプト

 ・自社が選ばれる理由

 ・店舗立地

 ・集客方法

 ・リピート対策

1 店舗コンセプトはどのようなものなのか

 小売業、飲食業と同様、店舗型サービス業でもお店のコンセプトは重要です。

 例えば、美容室の場合、理容室も含めて競合他社は多く、コンセプトが明確でないと価格でしか差を付けることができません。そのため、価格競争に巻き込まれてしまうことになります。価格で対抗できればよいのですが、小さなお店では、チェーン展開やフランチャイズ展開している企業の資金力に対抗するだけの体力はありません。よって、価格競争では勝つことができないのです。

 そこで、お店のコンセプトをはっきりと決めて、それを全面に打ち出していくことが重要になります。これは、「立地」や「集客」、「リピート対策」でも必要となります。

 特に、サービス業は、手に取ることができる商品が無いですし、食べられる食事があるわけでもないので、コンセプト作成の難易度が高いのです。目に見えないサービスというものを「顧客に分かりやすいようにコンセプト」にしていくからです。

 美容室の例でいうと、「技術力が高い」というだけでは顧客に伝わりません。よって、「〇〇賞を受賞した店長が経営する美容室」「有名人の〇〇も通う美容室」などという分かりやすいものにしていきます。また、技術力だけがコンセプトではありません。「髪の手入れだけでなく美容に関するトータルアドバイスができる美容室」「男性限定の美容室」など、さまざまなコンセプトを考えることができます。

 コンセプトは、他社との差別化を図るだけでなく、「経営者がどのような店舗にしたいのか」「これまでの経験をどのように活かせるのか」「顧客は何を望んでいるのか」などから考えていくこともできます。

 コンセプトの重要性は大変高い。コンセプトが「お客様から選ばれる理由」につながり、立地や広告、リポート対策にも大きな影響を与えるからです。

2 なぜ自社が選ばれるのか

 次に、「なぜ自社(自店)が選ばれるのか?」という点について考えていきます。この点は、「コンセプトをどのようにお客様に伝えていくか?」と言い換えることもできます。

 サービス業の場合、目に見えないものを提供しているため、「〇〇がよいから他店ではなく自店を選んでください」とお客様に明確に伝えていくべきです。

 美容室の例で考えてみます。例えば、20代のオシャレ好きな男性の中に、「女性客の多い美容室には行きにくい」というニーズがあるため、「男性専用美容室」というコンセプトで他社と差別化していこうと決めたとします。しかし、コンセプトを決めただけでは、「男性専用美容室」だということが見込み客に認知されません。そこで、店頭看板やホームページ、広告などでしっかりとこのコンセプトを伝えていきます。これにより、これまで「美容室には行きにくいな」と考えていた顧客層が、この店を選ぶ理由になるのです。

 コンセプトがしっかりしていないと、選ばれる理由が明確になりません。

 また、コンセプトがあっても、顧客に選ばれるだけのベネフィットがなければ選ばれません。

 よって、「コンセプト」と「選ばれる理由」はセットで考える必要があるのです。

3 店舗(立地)はどのような場所か

 店舗型ビジネスの場合は、業種に関係なく、立地がとても大切な要素となります。

 サービス業の場合は、「そのサービスを受ける人が多いかどうか」が立地の良し悪しを決める重要な条件となります。

 例えば、トレーニングジムを例に考えた場合、コンセプトとして「積極的に家族会員を増やしていこう」ということであれば、立地は郊外の駐車場が多い場所がよいでしょう。「仕事帰りや仕事の合間に身体を動かしてもらおう」というコンセプトであれば、オフィス街が良い立地となります。

 先祖代々の土地に店舗を構える場合など、先に店舗の場所が決まっているケースもあります。その場合は、その立地に合ったコンセプトを考えたり、周辺環境の変化に合わせてコンセプトを修正したりする必要があります。親子2代にわたって接骨院を経営しているとします。従来は「年配の方の健康維持」がコンセプトでした。しかし、近所に新興住宅地ができて若い世代が増えてきたので、「仕事を頑張るお父さんの疲労回復」というコンセプトに変更した方が良い場合もあります。

 立地はとても大切ですが、コンセプトによって最適な立地は変わってきます。コンセプトに合わせて立地を考えなければならない場合もありますし、立地に合わせてコンセプトを考えた方が良い場合もあるのです。

4集客はどうするのか

 店舗型サービス業の場合、集客は大変重要です。顧客に来店してもらえなければ、サービスを提供することができないからです。

 もちろん、サービスが提供できなければ、売上を上げることはできません。つまり、集客がうまくいかなければ、事業を継続していくことができないのです。そこで、まずはお客様に自社を知ってもらう必要があります。そして、知ってもらった時に「このお店に行こう」と選択してもらわなければいけません。そのためには告知が必要です。

 告知には、「店頭」「チラシ」「インターネット」などが考えられます。

 「店頭」というのは店舗前の看板などの事です。店舗型サービス業の場合でも、遠くから来店する場合がありますが、通常はその地域の方々が対象顧客になることが多いのです。そのため、店舗の前を通った時に「このお店が気になる」「このお店、入りたい」と思ってもらえるほど、認知度が上がり集客も増える可能性があります。よって、店頭で看板などを使い、近辺を通る人に「伝えること」が大切なのです。

 「チラシ」というのは紙のチラシです。これも地域の方々が対象になりやすいので、店頭や近くの駅などでチラシを手配りしたり、家にポスティングしたりすることも「伝える手段」となるのです。

 「インターネット」というのはホームページやネット広告です。今はスマホなどでネット検索した後に来店する方も多くなっています。よって、ホームページを作成しておくことが大切です。また、その業界や地域のポータルサイト、比較サイトなどに広告を出すことも検討すべきです。自社のホームページが検索で上位に出なくても、業界や地域のポータルサイト、比較サイトでは上位に出ることが多いからです。

 このように集客にも力を入れる必要があります。

5 リピート対策をどうするのか

 店舗型サービス業の場合も、「集客」は重要ですが、「サービスを提供すること」が本来の目的です。しかし、「集客」が出来ないと売上が上がらないので、いつの間にか「集客」が目的になり、「サービスを提供すること」がおろそかになってしまうこともあります。そうならないためにも「リピート対策」は重要です。

 看板にお金を掛けたり、広告費を掛けて集客しても、リピート客が増えないといつまでたっても集客に追われることになります。一度来店してもらったお客様に「また来よう」と思ってもらうようにする必要があるのです。この一番の対策は「サービスに力を入れること」です。本来の目的のサービスの質が落ちていればリピートにはつながりません。

 次に、「リピートしてくれる仕組み」も必要になります。例えば、ポイントカードを渡し、何回か来店すれば割引があるというような仕組みです。これもポイントカードを作るだけでよいのではなく、「サービスがよいからポイントカードがあればリピートしやすい」状況が大切です。

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