経営者に求められる能力
理想的な経営者の姿というのは千差万別です。
成功している経営者を評価するときに、「あの人は強力なリーダーシップで社員を引っ張っていったから」、「あの人は社員のなかに自ら入っていって、共に努力する仲間のように接し会社を盛り立てたから」というタイプの人もいます。これは経営のスタイルの違いであり、一概にどのようなタイプが良いのかとはいえません。
しかし、経営のスタイルは異なっていても、成功した経営者には共通して備わっている能力があります。
この能力が備わっていたからこそ、千差万別の経営スタイルのなかから自社に最適なものを選択することができ、それが会社を成功へと導くことになるといえます。
経営者に必要とされる能力とは
1 ビジョン策定
社員を魅了する自社の経営ビジョンを明確にし、それを社員に浸透させ、全員に同じ目的意識をもたせることは経営者の極めて重要な役割です。
単なる個々人の集まりであった集団を、同じ目的をもつ組織に変革することを意味します。
同じ人数でも、「組織」は「たんなる個人の集団」の何倍ものパワーを発揮します。経営ビジョンを明確にすることにより、企業経営実践のための強力な推進力となる組織を構築することが可能です。
2 人間的な魅力
経営者は社内外において人を引きつける魅力が必要です。そのなかで、人間的な魅力とは、経営者が今日まで培ってきた本質的な部分を指します。
過去の経験により築き上げられた資質で、勇気、忍耐力、明るさ、信頼感などがそれにあたります。
3 コミュニケーション力
コミュニケーション力とは、自分が思っていることを客観的に認識し、それを相手の価値観、置かれている状況などに応じて適切に伝える能力と、反対に、相手のメッセージを的確に読みとる能力のことです。
社長の仕事の3大分野
4つの要因(①会社の規模 ②成長段階 ③社長の特徴 ④社長の立場)に応じて役割が変わるので、世の中で目にする「これが社長の仕事だ」という論の種類が多くなってしまうわけですが、全ての社長に当てはまり、社長にしか出来ない仕事として 3つ挙げることができます。
・方向性を決める
・望む方向に向かって会社を最適化して成果を出す
・責任を取る
1 方向性を決める
「社長の仕事」の中で最も重要な分野です。経営活動の全ては「仮説を立てる」ことから始
まっていくからです。仮説を立てて、会社が進む方向を決めることは最も重要な仕事であり、社長にしか出来ません。
仮説が正しくなければ、チーム全体に影響を与えてしまいます。現場の社員たちが優秀で頑張っても、目指した方向が間違っていたら、優秀なチームが間違った方向に力強く進んで間違ったゴールに早く到着するだけです。
そういった不幸な結果を避けるために、「社長が最も大切にしないといけないのは仮説力である」。
2 望む方向に向かって会社を最適化して成果を出す
会社全体を常に俯瞰的に見て、全体が最適化するように調整していくのも社長にしか出来
ない仕事です。
会社の成長段階の初期においては、 現場で一緒に仕事をすることも多いですが、大切な役割
はあくまで「全体を最適化する」ということです。本来、社長は出来るだけ現場(=部分)から離れた方がよいのです。
プロサッカーに「監督が選手として出場している」チームはあるでしょうか?
経営チームにおいても、同様に、「社員と一緒に仕事をする」ことは本来の役割ではないことを理解しておかないといけません。
社長の役割は、全体を最適化することであり、現場で社員と一緒に仕事をすることではないのです。
「全体が最適化されるように調整していく」という仕事は簡単なことではありません。特に規模が大きくなっていくと難しくなっていきます。現場という「部分」から離れて、社長の役割に専念するようにしていった方が良いのです。
3 責任を取る
最終責任を取ることも社長にしか出来ない仕事です。
厳しいことですが、その責任からは逃れられません。
社長は、これを自分の役割だと覚悟し、経営活動を進めていかないといけません。