就業規則(4)

○試用期間

 試用期間の設定と運用には多くの留意点がありますが、この前提として試用期間に関する事項を就業規則に規定しておく必要があります。

 その事項は、以下のようなものになります。

 ① 試用期間の目的   

 ② 試用期間の長さ   

 ③ 試用期間中の賃金やその他の労働条件   

 ④ 本採用しない場合の基準   

 ⑤ 試用期間の延長に関する事項   

 ⑥ 勤続年数の算定にかかる試用期間の取扱い

 採用時には試用期間がある旨を従業員に説明しておくことが必要になるでしょう。より自社に適した人材を採用し、よりよい組織風土を築いていくためには、採用時に人材を見極めるようにする一方で、試用期間を利用し採用時には判断ができなかった点についても確認しておくべきです。そして、就業規則を整備するとともに、運用についてもチェックしておくことが求められます。

 試用期間は、勤続年数に通算する旨を定めます。

 試用期間中に適格と認められない者を本採用拒否するためには、就業規則において、試用期間の本採用拒否の旨を記載しておく必要があります。試用期間中に解雇(本採用の取り消し)の具体的な事由を定める事で『解雇紛争』を防止することができます。

注意すべき就業規則規定例

第○条 (試用期間)

新たに採用した者については、採用の日から3か月間を試用期間とする。但し、会社が適当と認めるときは試用期間を短縮し、又は試用期間を設けないことがある。

2 試用期間中を経て引き続き雇用される場合は、 試用期間の当初から採用されたものとし勤続年数に通算する。

3 試用期間中、又は試用期間満了の者が従業員とする事が不適格と認められる者については解雇する事がある。

就業規則規定例

第○条 (試用期間)  

 新たに採用した者については、採用の日から3ヵ月間を試用期間とする。ただし、会社が適当と認めるときは、試用期間を短縮し、又は試用期間を設けないことがある。

2 試用期間は、会社が必要と認めた場合は、3ヵ月間の範囲で期間を定め更に延長することが出来る。この場合は2週間前に本人に通知する。

3 試用期間中を経て引き続き雇用される場合は、試用期間の当初から採用されたものとし、勤続年数に通算する。

4 試用期間中又は試用期間満了の従業員が次のいずれかに該当し、従業員として不適当であると認めるときは、会社は採用を取り消し、本採用を行わない。 ① 遅刻および早退ならびに欠勤が多い、又は休みがちであるなど、出勤状況が悪いとき ② 上司の指示に従わない、同僚との協調性がない、やる気がないなど、勤務態度が悪いとき ③ 必要な教育は施したが会社が求める能力に足りず、また、改善の見込みも薄いなど、能力が不足すると認められるとき ④ 重要な経歴を偽っていたとき ⑤ 必要書類を提出しないとき ⑥ 健康状態が悪いとき(精神の状態を含む) ⑦ 会社の従業員としてふさわしくないと認められるとき ⑧ その他、前各号に準ずる程度の事由があるとき

 

○試用期間の延長

 試用期間の延長は、労働者を不安定な地位に置くこととなるため、就業規則上の根拠がなければこれを延長することは原則としてできません。 必ず期限を限ること。

 試用期間は、一般的には3ケ月とされていますが、見極めが出来なかった場合は1回に限り延長することもあるとして記載することで、試用期間延長も運用上必要になるかと考えます。 

 具体的には、

「新たに採用した者については、採用の日から3カ月間を試用期間とする。ただし、特殊な事情がある場合は2ヵ月を超えない範囲で試用期間を延長することがある。」などのように、通常は2、3ヵ月としたうえで、試用期間の延長の規定を設けて、特殊な事情がある者に限って、その期間を延長するようにし、延長する場合の最長期間についても定めておくとよいでしょう。

 

 試用期間中の解雇や本採用にしないときの規定を細かく規定するのも効果的です。

 試用期間中であれば、14日以内は即解雇できるが、就業規則に試用期間の定めがある場合か、雇用契約の内容となっている場合に限られます。

 試用期間の解雇は、通常社員の解雇より広い範囲の解雇事由が認められています。

 

注意すべき就業規則規定例

第○条 (試用期間)

 ・・・

 採用後3ヵ月間は試用期間とし、試用期間中に従業員として不適当と認めた者は、その期間中にいつでも解雇する。

 試用期間中の解雇については、最初の14日以内であれば、労働基準法20条で定められている解雇予告手続をとることなく即時に解雇することができます。しかし、試用期間中の解雇であっても、雇い入れから14日を超えて使用した場合には、通常の従業員を解雇するときと同様に、扱わなければなりません。少なくとも30日前に予告するか、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払う必要があります。

就業規則規定例

第○条 (試用期間)

 ・・・

試用期間中に従業員として不適格と認められた者は、雇い入れから14日以内の場合は即日解雇とし、14日を超える場合は、労働基準法の定める所定の手続きを経て解雇とする。

 

 トライアル雇用とは、公共職業安定所(ハローワーク)の紹介によって、特定の求職者を短期間の試用期間を設けて雇用し、企業側と求職者側が相互に適性を判断した後、両者が合意すれば本採用が決まるという制度です。

 未経験者を試験的に雇用し、仕事への適性や業務知識の習得度合いを見極めたい場合は、2ヵ月以内の短期間雇用契約を設けることも1つの方法です。

 試用期間とは別にアルバイト雇用する旨を記載しておきます。期間は、社会保険への加入の関係から2ヵ月以内の期間限定とするのがよいでしょう。

就業規則規定例 第○条 (採 用)   

・・・  

 新たに採用した者については、原則として採用の日から2ヵ月間の期間を定めた雇用として、期間満了をもって雇用契約は消滅するものとする。ただし、契約期間内にまたは期間満了をもって期間の定めのない雇用として雇用契約を変更し、または当該更新することがある。

 

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