就業規則(7)

服務心得の具体的事項

○経歴詐称の禁止

採用時の質問事項を検討すべきです。

求職者の人権に配慮し、適性と能力に関係のない項目を排除するべきであるが、配偶者や兄

弟が求人先の競合会社に従事している場合等のケースでは、社内情報が外部に漏れる恐れも考えられ、これは場合によっては企業側に不利益を生じさせてしまう懸念もある。よって、服務規律の整備、就業規則上の懲戒解雇事由の列挙等の事前の防止が必要と思われます。

○勤務中の服装、身だしなみ等についての規定

髪型・色、口ひげ、服装を改めように命じることができるかどうかについては、企業経営の必要性から命令に合理性があるかどうか、業種や具体的職務内容から判断されます。

たとえ就業規則において金等髪等の禁止規定がなくても企業の品位保持、取引先との円滑な関係維持等の観点から、企業経営に悪影響を及ぼす具体的なおそれがある場合には業務命令として金髪を改めさせることができると思われます。 しかしながら、無用な労使トラブル防止の観点から、就業規則において髪型・色、口ひげ、服装などに関して合理的な規律を定めておいたほうがよいでしょう。

・東谷山家事件(福岡地裁小倉支部平成9年12月25日決定)

・イースタン・エアポートモータース事件(東京地裁昭和55年12月15日判決)

○労働の遂行に関する規律

富士重工業事件 最高裁第3小(昭和52・12・13)

富士重工業事件においては、同僚の就業規則違反の事実に関する調査への協力命令について、「調査に協力することがその職務の内容となっている場合には、右調査に協力することは労働契約上の基本的義務の履行そのものであるから、右調査に協力すべき義務を負う」が、これ以外の場合には、「調査対象である違反行為の性質、内容(中略)等諸般の事情から総合的に判断して、右調査に協力することが労務提供義務を履行する上で必要かつ合理的であると認められない限り、右調査協力義務を負うことはない」とされました。

 

○会社の名誉・信用を守る義務

労働者は雇用契約上「企業秩序遵守義務」を負っているので、私生活上の行為であっても、企業の名誉や信用を損なうような行為であれば規制の対象となります。

職場外での職務に関係のない私的な行為であっても、会社の名誉や信用を害すると思われるような事由も規定しておくことができる。

日本鋼管事件(昭49) 最高裁第2小(昭和49・3・15)  

 労働者が在日米軍に対する反対行動により起訴され、罰金刑を受けたことをもって「会社の体面を著しく汚した」とまではいえず、懲戒解雇事由にはあたらないとされた。

 

○企業秩序・風紀秩序の遵守義務(誠実義務、忠実義務)

就業時間中は企業施設の内外において企業の正当な利益を侵害してはならないこと。

使用者に許可なく建物にビラを貼った場合、使用者の所有権、施設管理権を侵害する行為として違法となる。

 ロッカーや更衣室などは労働者が職務を遂行するために着替え等をする場所です。こういった場所に政治活動のためのビラやポスターを貼ったりすることは企業内の秩序を乱すものとして認定されます。このような場合には、ビラやポスーをはがして現状復帰することとし、かつそれを行なった者には規則の定めるところにより制裁として懲戒処分も行なうことができるとされます。

中国電力事件 最高裁第3小(平成4・3・3)

 ただし、そのビラやポスターが企業内の秩序を乱すおそれがないと認められた場合は、就業規則に違反して更衣室に貼ったり、休憩時間中に許可を得ず配布したとしても、規定の違反になるとは認められず、処分を却下した例もあります。

・国鉄札幌運転区(国労札幌支部)事件の最高裁判決(昭和54年)

 企業は、「職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保するため、その物的施設を許諾された目的以外に利用してはならない旨を、一般的に規則をもって定め、または具体的に指示、命令することができ、これに違反する行為をする者がある場合には、企業秩序を乱すものとして、当該行為者に対し、その行為の中止、原状回復等必要な指示、命令を発し、または規則に定めるところに従い制裁として懲戒処分を行うことができる」とされ、ロッカーへのビラ貼付の中止等を命じたことを不法不当なものとすることはできないとした。

・電電公社目黒電報電話局事件の最高裁判決(昭和52年) 

 政治活動として行われた勤務時間中のプレートの着用について、「一般私企業の使用者が、企業秩序維持の見地から、就業規則により職場内における政治活動を禁止することは、合理的な定めとして許されるべき」であり、プレート着用行為は、「公社職員として職務の遂行に直接関係のない行動を勤務時間中に行ったものであって(中略)、職務上の注意力のすべてを職務遂行のために用い職務にのみ従事すべき義務に違反し、職務に専念すべき局所内の企業秩序を乱すものであった」とされた。

 

○政治・宗教活動に対する規制 ・明治乳業事件の最高裁判決(昭和58年)

 形式的にいえば就業規則等に違反するものであっても、「ビラの配布が工場内の秩序を乱すおそれのない特別の事情が認められるときは、右各規定の違反になるとはいえない」として、休憩時間中に許可を得ないで工場内で行われたビラ配付について、特別な事情が認められる場合に当たり、規定に違反するものではないとされた。

 電電公社目黒電報電話局事件においては、休憩時間中のビラ配付について、その態様において直接施設の管理に支障を及ぼすものでなかったとしても、上司の適法な命令に抗議するものであること等から、「休憩期間中であっても、企業の運営に支障を及ぼし企業秩序を乱すおそれがあり、許可を得ないでその配付をすること」は就業規則に反し許されないとされた。

 

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