就業規則(10)

服務心得の具体的事項

○セクハラ

 会社の服務規定として記載する場合の例として、「従業員は、勤務場所等において、他の社員等(当社社員、当社に派遣され業務を行っている者、出向先・取引先の社員を含む)に対し性的な言動を行い、就業に影響を与えたり、秩序や風紀を乱すような性的言動を行ってはならない」ということを記載します。

さらに、「職務上の地位を利用して他の社員に交際を強要したり、性的関係を強要するなどの行為をしてはならない」ことも記載しましょう。

 さらに、服務規定ではセクハラの具体例も記載すると防止効果も期待できます。下記のような記載例となります。

就業規則規定例 第○条(セクハラの防止)  従業員はセクハラに該当するおそれのある次の各号の行為を行ってはならない。 ① 相手の意に反する性的な冗談等を言うこと ② 性的なうわさ、経験談を相手の意に反して話したり、尋ねたりすること ③ ひわいな写真・絵画等を見ることの強要や配布・掲示を行うこと ④ 業務遂行に関連して相手の意に反する性的な言動を行うこと ⑤ その他、相手の望まない性的言動により、円滑な業務の遂行を妨げると判断されること

懲戒規定への記載について

 労働基準法第89条により、「制裁」に関する内容については、定めをする場合は就業規則に記載しなければならない事項とされています。

 常時10人以上の労働者を使用しない事業主の方も、服務規律等を定めた他の文書において当該懲戒規定を定めてください。

 以下の記載例を参考にして、就業規則その他服務規律等を定めた文書を整備してください。就業規則については、管轄の労働基準監督署まで就業規則の変更届を行ってください。

 

○労働者の企業外での行動に関する規律

 職場外でなされた行為であっても、企業の社会的評価の低下・毀損につながるおそれがあると客観的に認められる場合は、企業秩序の維持確保のためにこれを規制することが許される場合があるとされます。

 私生活における犯罪行為については、企業の名誉を大いに毀損するものであるという考えから、職場外の職務遂行に関係の無いことであっても規律違反とする判決が多い。

・国鉄中国支社事件(最1小 昭49.2.28)

労働者の私生活上の犯罪行為が、「従業員の職場外でされた職務遂行に関係のない所為であっても、企業秩序に直接の関連を有するものもあり、それが規制の対象となりうることは明らかであるし、また、企業は社会において活動するものであるから、その社会的評価の低下毀損は、企業の円滑な運営に支障を来たすおそれなしとしないのであって、その評価の低下毀損につながるおそれがあると客観的に認められるがごとき所為については、職場外でされた職務遂行に関係ないものであっても、なお広く企業秩序の維持確保のために、これを規制の対象とすることが許される場合もあり得る」とされた。

横浜ゴム事件 最高裁第3小(昭和45・7・28)  工員たる労働者が終業後に飲酒・泥酔し他人の居宅に侵入して起訴され、罰金刑を受けたことをもって「会社の体面を著しく汚した」とまではいえず、懲戒解雇事由にはあたらないとされた。

 

○酒気帯びに関する規律

 就業中の飲酒運転を禁止する定めですが、就業中については労働者の就業および職場に関する規律として規定を設けることが考えられます。そこで「その他酒気を帯びて就業するなど、従業員としてふさわしくない行為をしないこと」などのようにある程度包括的に定めてもよいですが、就業中の飲酒運転による社会的ダメージは相当大きいと考えれますから、より明確に「就業においては酒酔い運転及び酒気帯び運転をしないこと」とするとなおよいと考えれます。  

 しかし、業務中ならともかく、仕事から離れた私生活上で行った飲酒運転に関して、会社が服務規律を定め、これに違反した場合に懲戒をしたりできるのでしょうか。

 就業中のことではありませんから、就業及び職場に関する規律として直接規定するわけにはいけません。しかし、従業員としての地位・身分に基づく規律として位置づけることは考えられます。最近の傾向としては、従業員の私生活上の飲酒運転であっても企業の信用を損なう恐れが非常に大きいと考え考えられますので、なるべく明確に具体的に定めておく必要があると思われます。そこで、例えば、「飲酒運転その他の行為によって会社の名誉または信用を傷つけてはならない。」などと規程することが考えられます。

 

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