就業規則(16)

第5章 賃金

 給与の改定は、就業規則に基づいて行うもので、就業規則の定めが、例えば「会社は、毎年1回4月に社員の給与の見直しを行うことがある」のように、昇給、据え置き、降給、いずれのパターンも想定した定め方とされている場合には、特別な問題はありません。この場合には、業績不振のため、今年は、全員の日給額を据え置く旨を従業員に通知するだけでもよいでしょう。しかし、「昇給は、毎年1回、4月に行う」などと、昇給することを前提とした定め方をしている場合は、就業規則違反となる可能性があります。

 就業規則の賃金規程によくあるのが、次のような記載です。

注意すべき就業規則規定例

第 条(昇 給)

 昇給は、基本給を対象に、毎年4月に従業員各人の勤務成績を査定して決定し、支給する。ただし、各人または会社の業績によっては、昇給の額を縮小し、又は見送ることがある。

 これでは昇給を見送ることができても、今まで以上に賃金を下げることはできません。現状維持は必須になってしまいます。

 労働者に対し賃金を削減する等の現状の労働条件を下げる(労働条件の不利益変更という)場合には、原則その労働者の同意が必要になります。だから会社の業績が悪いからといって勝手に賃金を下げる訳にはいかないし、これは法的にも非常に難しい問題をはらんでいます。

就業規則規定例

第○条 (賃 金)  

 ・・・   

 会社は、社会・経済情勢の変化、または第○条に定める業務内容の変更等による賃金の見直しを行う必要があると認めた場合は、従業員の賃金の昇給または降給等の改定を行うことがある。

 

 時間外労働手当の代わりに毎月一定額の手当を支給する場合は、労働契約書や就業規則(賃金規程)に「時間外労働手当として支払うものである」との内容を明記し、その計算方法何時間分の割増賃金になるのかについて明示する必要があります。

就業規則規定例

第○条 (外勤手当)

 営業部門に所属する従業員で、主として事業場外で業務に従事し事業場外のみなし労働時間制が適用される従業員に対し、個別に提示した外勤手当を支給する。なお、外勤手当は時間外労働の割増部分を一部含むものとする。

2 第○条の時間外労働の割増賃金で算出された時間外労働の割増賃金が当該外勤手当の額を超えるときは、その差額を支払うものとする。

 定額の残業手当の支給は、人件費の予定が立てやすく事務の手間を軽減できる等もありますが、本来の時間外手当より多額を支給することとなる可能性も高く、良策かどうか疑問が残ります。

 

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