障害年金の認定が厳しすぎる・・・

 診断書に書かれた障害の程度が障害認定の2級の基準に入っているはずなのに、2級でなく3級にされたり、3級はおろか「不支給」とされることがあります。また、診断書の程度が3級のはずなのに「不支給」とされることがあります。

障害の程度2級とは
 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

・必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない
・家庭内のきわめて温和な行動(軽食作り、下着程度の洗濯)はできるが、それ以上の活動は出来ないもの又は行ってはいけないもの
  病院内の生活で言えば、活動の範囲が病棟内に限られる
  家庭内の生活で言えば、活動の範囲がおおむね家屋内に限られる

障害の程度3級とは
 労働が著しい制限を受けるか、または労働に制限を加えることを必要とする程度のもの

・傷病が治った者にあっては、労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加える必要があるもの
・傷病が治らない者にあっては、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とするもの

 そして、精神障害に関しては、障害年金の診断書の記載項目にある「日常生活能力の程度」の結果と「日常生活能力の判定」の平均を出し、両者を以下のマトリックス表に照らし合わせて等級の目安を出すようになっております。

程度

判定

(5)

(4)

(3)

(2)

(1)

3.5以上

1級

1級

又は2級

     

3.0以上 3.5未満

1級

又は2級

2級

2級

   

2.5以上 3.0未満

 

2級

2級

又は3級

   

2.0以上 2.5未満

 

2級

2級

又は3級

3級

又は非該当

 

1.5以上 2.0未満

     

3級

又は非該当

 

1.5未満

 

     

非該当

非該当

 日常生活能力の程度(5段階評価)

(5) 精神障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の介助が必要である
  ・家庭内生活においても、食事や身のまわりのことを自発的にすることができない  
  ・在宅の場合に通院等の外出には、付き添いが必要   など

(4) 精神障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である
  ・著しく適正を欠く行動が見受けられる
  ・自発的な発言が少ない、あっても発言内容が不適切であったり不明瞭であったりする  
  ・金銭管理ができない   など

(3) 精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である
  ・習慣化した外出はできるが、家事をこなすために助言や指導を必要とする
  ・社会的な対人交流は乏しく、自発的な行動に困難がある  
  ・金銭管理が困難   など

(2) 精神障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には援助が必要である  
  ・日常的な家事をこなすことはできるが、状況や手順が変化したりすると困難を生じることがある  
  ・社会行動や自発的な行動が適切に出来ないこともある  
  ・金銭管理はおおむねできる  など

(1) 精神障害を認めるが、社会生活は普通にできる

 

日常生活能力の判定(程度の軽いほうから1~4の数値に置き換え、その平均を算出)
 4 助言や指導をしてもできない  
 3 助言や指導があればできる  
 2 おおむねできるが時には助言や指導を必要とする  
 1 できる

 上表にて障害等級2級や3級に入っているはずなのに、障害等級に認められないことがあるのはなぜか? この辺を考察したいと思います。なお、以下は私 伊﨑 の私見によるものもありますが、これまで障害年金のサポートしてきた経験によるものと、先輩社労士から教わったものもありますので、おおよそ当たっていると思います。

 

1 日常生活能力の考察

・「自殺願望が非常に高く、一人にしておけない」 2級 ○
 目を離すと自殺を企ててしまう可能性があり、周りが常に本人を見守っていなければならない状態の人です。自発的に何かをしようという気がなく、病気の予後も不良の場合が多いので、ほぼ2級に認定されます。

・「薬の大量内服を繰り返している」 2級 ○
・「カッターによる自傷行為を繰り返している」 2級 ○
 高い確率で2級に認定されます。
 ただし、「会社に在職していた」、「病歴が短かく、予後が判断しにくい」などの場合、2級にならないことがあります。

・「過去に薬またはカッターによる自傷行為を繰り返していた」 2級 ○~△
 過去に「自傷行為」の経験のある方は、審査でも2級の可能性が高いでしょう。
 ただし、「会社に在職していた」、「病歴が短かく、予後が判断しにくい」などの場合、2級にならないことがあります。

・「布団から立ち上がれないほど意欲の減退が強い」 2級 ○
 1日のほとんどの時間を布団の中で過ごし、家事や身の回りのことができず、外出も億劫、他人との接触も面倒と言ったように、多くのことができない場合を言います。審査では、意欲の減退もその程度を見て評価しますので、このような状態が長く続いている場合は、2級の可能性が高いといえます。

・「現在入院中である」  2級 ○~△
 2級の可能性は高いと言えます。
 入院期間がどの程度あるかによって2級の可能性が決まりますが、3ヵ月程度の長期入院の場合は2級の可能性が高く、1ヵ月程度の短期入院の場合、2級の可能性は低い。。
 1度の入院よりも何回か入退院を繰り返しているほうが2級の可能性が高いです。
 ただし、向こう1年のあいだに職場復帰が見込まれるなど予後不良と判断できない場合や、入院したことにより症状がかなり軽減されたと言う場合は、2級にならないことが多いです。

・「過去に何度か入院したことがある」 2級 ○~△
 過去に重い状態を経験した場合を言います。過去の病気の経緯からも予後を判断しますので、過去に「入院」の経験のある方は、審査でも2級の可能性が高いでしょう。
 なお、長期入院でも、1度だけの入院では病状が軽いと評価されます。

・「過去1、2年の間に入院を3回以上している」 2級 ○
 病気に継続性(予後不良)があることが重要になります。「過去1、2年の間に入院を3回以上繰り返している」は病状に継続性があることを示しています。入院という悪い状態を繰り返している場合は、2級認定は高い確率です。

・「中程度の症状はあるが病歴が短い」  3級 ○
 病歴が1年6ヵ月~2年程度の場合を言います。病歴が短い方の場合、予後が定まらないので、様子を見て3級に認定されることが多い。

・「2年程度継続して仕事・家事ができない」  2級 △ (2級か3級かは五分五分)
 症状が重く労働および日常生活能力が制限されている場合です。自宅での生活を強いられている状態です。2年程度では2級に該当するかどうかは五分五分です。
 なお、この期間が3年、4年と長くなればなるほど、2級の可能性が上がります。
 さらに過去に入院経験があると2級の可能性はさらに上がります。

・「家事は何とかやっている」  2級 ×  3級 ○ 
 家庭内での単純な日常生活はできるという場合、2級は難しい。

 

2 労働能力の考察

・「会社に在籍していて現在休職中」  3級 ○
 症状が軽減すればいつでも会社に戻れる状態であるが、「将来にわたって悪い状態が続く」という場合は2級相当ですが、近い将来、労働による収入が得られる可能性がある休職中の場合は、低い評価をされます。
 休職中で「入退院を繰り返している」と言う場合、2級か3級か微妙なところです。
 現在の症状が非常に重く、予後不良(今後、会社に戻ることは困難)と判断された場合や、過去にも休職を何度か繰り返した場合は、2級に認定されることがあります。

・「安定した労働に就けない」  3級 ○
 軽、中度の症状があって短い期間での転職を繰り返している場合を言います。2級に認定される可能性は低く、3級の可能性が高いです。

・「過去2~3年で就労した期間が半分以下」  3級 ○
 就労した期間があるということで、3級に認定される可能性が高いです。
 ただし、過去5年、10年と短い期間で入退職を繰り返しているような方は、長期にわたって安定した労働に就けていないということから、2級に認定される可能性があります。

・「短い期間での転職を繰り返し、現在は就労不能」 2級 △ (2級か3級かは五分五分)
 過去数年間の就労状況、現在の病状や働いていない期間の長さが重要ポイントです。
 1ヵ月程度の短い就労の繰り返しですと、一時的な労働しか出来なかったと判断されます。この場合、就労が出来るとはいえないとされ、2級の可能性が十分にあります。
 就労期間が長かった場合は、一時的な労働とは見てもらえません。2級になるかは微妙なところです。

・「長続きはしないがアルバイトをしている」  3級 △
 就労している場合、2級の可能性は非常に低い。3級の可能性も微妙なところです。

・「一般雇用 自家用車で通勤 月5日~10日勤務」  3級 △~×
 欠勤はあるものの、出勤ができた日もあると言う場合、一定の労働能力は有していたとされ、3級も難しいことがあります。障害認定では、3級は『軽作業程度が可能なレベル』なのですが、微妙なところです。認定医の裁量によるところが大きい。

・「一般就労は困難 障害者枠での勤務を目指している」  2級 △  3級 ○

・「就労は難しいが、ある程度の日常生活はできる」  3級 ○
 ほぼ3級に該当します。障害年金の認定基準では、労働に著しい制限を受けている場合を3級としています。
 この著しい制限とは、労働できないか、あるいは労働できても一時的なもの(たとえば週2日勤務など)に限られる場合を言います。。
  現在働けない状態だが、近い将来働ける可能性があるとした場合、2級は難しいものです。
 症状が重くても、会社に在籍しているときは2級が認められにくいのです。

 

 診断書の裏面の ⑪「現症時の日常生活活動能力及び労働能力」において、日常生活は『何とかやっている』とか『何とか仕事はしている』のような書き方をされて、実態とそぐわない場合は、 不利な結果を招くことが多いです。できれば医師に実態に合うように訂正を求めるべきと思います。