年金は大丈夫? (8) 現行年金制度を廃止

 現行の年金制度が定着することで日本の社会がどのように変容したのでしょうか。
・年金制度が整うことによって、子供が自分の親の面倒をみる必要がなくなった。その結果、親子の同居が減り、家族の解体が進んだ。
・親子の同居が減ったことで、従来は家族で行っていた高齢者の介護も、政府が援助せざるを得なくなった。
・親の立場からは、政府が老後の面倒を見てくれるので、子供を産む必要が減った。これが少子化を一層進めることになった。
・親子の同居の必要がなくなったことで、人口が過度に都市に集中することになった。
 政府が老後の面倒を見ることで、社会保障の負担が増えた。しかも少子化の進行で、この負担は増える一方となった。この負担を賄うために社会保険料の徴収では足りず、税金まで投入する羽目になった。しかも、この税金も、いくら投入すればいいのかが分からないほど負担が増す見込みとなった。
・社会保障の負担が増えたことで、財政赤字が深刻化した。
・財政赤字が深刻化したことで、絶えず増税を迫られることになった。
・社会保障の負担の増加は、企業の利益を圧迫し、家計の可処分所得も減らすことになった。その結果、投資や消費が恒常的に減ることになった。
・投資や消費の縮小で、経済成長が鈍化した。
・常に増税が予測されることで、経済成長への期待もしぼんでしまった。
・経済が成長しないことと、財政赤字の拡大によって、ますます景気後退懸念が高じた。
・老後は、働かなくても、政府が面倒を見てくれるという依存心が蔓延した。あるいは、親の面倒は国が見てくれるため、親孝行の美徳が失われた。

 すなわち、年金制度があると、
 家族の支え合いの必要が減るので子供を産む必要がなくなる
   ↓
 少子化の進行で社会保障の負担が増える
   ↓
 財政赤字が深刻化し、増税圧力が常にかかる
   ↓
 投資や消費が減って経済成長が鈍化
   ↓
 政府への依存心が増し、親孝行の美徳も失われる

 

年金がなくなるとどうなるか  

 では、現実問題として、どのようにして、年金制度を廃止すればよいのだろうか。

 大川隆法総裁の著書『夢のある国へ──幸福維新』などで明らかにした年金解決案を軸に、具体的な年金処理の方法を考えてみたい。

 本格的な破綻シミュレーションを作るには、実態把握を含めて政権与党となって官僚機構をフル活用する必要があるので、ここでは破綻処理の基本的な枠組みを考えてみる。

参考

 まず、我々の支払った年金保険料が約5分の1程度しか残っていない以上、支給は大幅に制限せざるを得ない。制限の方法は、受給者を3階層に分けて考える。

1 「年金がなければ路頭に迷う」という人
 第一層は、年金の支給がストップしたら、ただちに生活が困窮する層。ここは生活保障的な意味で、残った積立金を原資に支給を続ける。
 事情により身寄りがない人、生活が成り立たないレベルの人には、今までどおり年金を支給します。
 主に今まで保険料として集めてきた年金積立金の残りを使います。
 弱者へのセーフティネットは忘れない。現在の年金受給世代は過渡的措置を講じる。

 本来、こうした高齢者こそ、政府が助けるべき人たちで、生活保護に近い形の支援をすることになる。ただ、リタイア後も健康が許すならば仕事ができるよう、さまざまなサポートを惜しむべきではない。この分野は、ドラッカーが指摘しているように、宗教団体やボランティア団体が最も活躍できるところだ。

2 年金がなくても生活できる人
 第二層は65歳以降も収入があるか、老後資金があるか、あるいは扶養者がいる層。ここは支給を原則支給をストップし、今まで払い込んだ保険料は形を変えて返済します。どういうことかというと、現金の代わりに「年金国債」を発行し、渡すのです。この国債は、普通の国債のように「10年で返す」といった期限がない「永久国債」とします。「永久国債」にあたるものが発行された前例は、18世紀のイギリスや、江戸時代の薩摩藩、明治時代の日本にもあります。これは、無利子で返済期日のない永久国債。普通の国債のように転売することも、使わずに子孫に相続することもできます。一種の通貨を発行するイメージです。「返済期限のない国債」に違和感があると思われますが、少し利子をつけたり、「年金国債を持っていたら相続税が安くなる」といった条件をつければ、子孫に資産を残したい方や、一部の企業は欲しがるでしょう。

 無利子国債として他の税目(相続税など)を優遇する場合と、低利の利息をつける場合とを検討すること。事実上の永久国債で、子孫に残したり、譲渡したりもできるようにする。転売が可能になるが、政府に直接償還を求めることはできない。この措置で、政府の財政負担はかなりの程度まで軽減できる。個人や企業も社会保障の負担がゼロになる。永久国債は、政府に対して償還を求めることができない国債で、政府の「株式」を発行することに極めて近い。通常の永久債や永久国債の場合は、毎年、固定した利息がつくが(利息1%なら100年で元が取れる)、年金制度の破たん処理という性格上、難しい。

 自分の収入があったり、老後資金に余裕があって生活を自衛できる層、あるいは、扶養してくれる家族がいる層は、明治期の士族たちのように自立の道に入ってもらうのです。

 国民の側のメリットとして、以下の3点がある。
 ・転売することができるので、市場で当面の資金を手にすることができる。
 ・子孫に有利な条件で相続できるようにする。
 ・将来、政府が黒字財政になれば、償還に応じることとする。

 政府が年金事業に失敗した「企業」だとして、その「再建」ができれば、政府の「株主」としてメリットが大きくなるという仕組みだ。

3 富裕層
 今までの保険料を「年金国債で返しつつ、もう一つお願いをします。年金保険料や重税を課すのではなく、「国家未来事業債を買っていただくのです。
 第三層は、富裕層。第二層同様に、払い込んだ保険料を債券化するが、さらに追加で払い込んでもらい、「国家未来事業国債」として渡す。つまり、富裕層は、これまで負担してきた年金保険料分を今後も負担してもらうが、払い込んだ保険料分は、年金の支払いではなく、インフラ整備など国家の未来事業に充てるという考え方です。この資金で経済成長させ、将来の税収につなげる仕組みです。具体的には、全国にリニア新幹線を敷設する交通革命や、ロボット・宇宙産業などへの投資を行います。例えば、3千万円の年金払込実績があれば、さらに2千万円を出資してもらい、5千万円の国家未来事業国債を発行する。これをリニアや宇宙開発などの開発資金に充てる。バラマキに消える赤字国債より、税収につながるのでよほど健全な国債です。

 この「年金国債」による政府の「再建」をより積極的に進めるのが、「国家未来事業債」の枠組みだ。

 資金的に余裕のある富裕層には、これまで払った年金保険料に上乗せして「出資」してもらい、「国家未来事業債」に組み替えるというもの。例えば、年金保険料を計3千万円払いこんでいたある家庭が、追加して2千万円を出し、合計5千万円の未来国家事業債をもらうという具合だ。

 公的年金の積立金は約130兆円ある。ここに追加して「出資」してもらうことで、リニア新幹線や大都市改造など大規模なインフラ投資を展開することができる。この現代の「富国強兵」によって、経済成長を加速させ、税収を増やし、政府の「再建」を早めるというプランだ。「国家未来事業債」については、通常の永久国債のように利息をつけることもあり得るだろう。

 

 現役世代は「簡単には政府の世話になりたくない」と、貯蓄を増やしたり、民間の年金商品を買ったり、家族・親族との絆を強めるなどして自分で備え始めるだろう。

 政府としては、最低限の民間の年金保険に入ることを義務づけ、老後にまったく備えがない家庭をできる限りなくしていく対応も必要だ。

 この「現代の秩禄処分」の大改革は、制度的な問題よりも、国民の持つ「勤・倹・譲」の徳目や、「能力や誇りや自立」を引き出し、奮い立たせることのほうが重要となるだろう。

 「今までの年金では破綻する」という現実を受け入れることで、「やはり老後は、家族で支え合おう」という文化が息を吹き返すのではないでしょうか。

 今の若い世代向けには、新しい年金方式の導入を検討し、選択の自由を与える。

 

自分で老後の資金を積み立てさせる「積立方式」の年金制度を新設
 若い世代については、積み立て方式の新しい年金を作り直すことも考える。

 

 この破綻処理案のポイントは、「自活できる人には年金を支給しない」ということだ。

 

年金をやめればどうなるか

 加入者数と保険料の収入がともに多い厚生年金を例に検証してみたい。

 現在、男性が65歳まで働いた場合の生涯賃金の平均は、約2億円。ここから厚生年金の保険料が、個人負担分だけでも約1800万円引かれる。だが近い将来、年金支給額は夫婦で月額8万円台に激減し、65歳から80歳まで合計すると約1500万円しか返ってこない。現行制度を維持しても、確実に損をする。

 これに対し、生涯現役社会を見据え、厚生年金を廃止した場合、22歳の男性が、75歳まで働き続ければ、生涯の給料は最大で4300万円増えると見込まれる。

 これだけのお金があれば、民間企業が提供する個人年金に加入したり、資産運用などすれば、十分に老後に備えられるはずだ。

 しかもこちらの方が、政府にお金を預けて知らないうちになくなるよりも、自分で管理できて安心。政府の側も、株の運用益などへの減税で、個人の自立を後押しすればいい。

 

年金廃止で考えられる3つのパターン

パターン(1)  75歳定年
 若者の給料は4300万円増える

世代ケース

75歳までにいくら 稼げるか

勤労者が納めた、厚生年金保険料(9.091%)が戻った場合の手取り増

勤労者と事業者が納めた、厚生年金保険料日(18.182%) が戻った場合の給料増

22歳

2億3,967万円

2,178万円

4,357万円

30歳

2億1,620万円

1,965万円

3,930万円

40歳

1億7,450万円

1,586万円

3,172万円

50歳

1億2,325万円

1,120万円

2,240万円

60歳

6,765万円

615万円

1,230万円

(40歳男性が、75歳まで働き続ければ、保険料は個人負担で1586万円、会社負担を含めると3172万円かかる。それを賃金に還元した場合の試算。試算は、国税庁「民間給与実態統計調査」の事業所規模10人以上の男性平均年収を基にした)

パターン(2)  65歳定年 + 75歳までアルバイト
 若者の給料は3800万円増える

世代ケース

75歳までにいくら稼げるか

勤労者が納めた、厚生年金保険料が戻った場合の 手取り増

勤労者と事業者が納めた、厚生年金保険料が戻った場合の給料増

22歳

2億1,172万円

1,924万円

3,849万円

30歳

1億8,825万円

1,711万円

3,422万円

40歳

1億4,655万円

1,332万円

2,664万円

50歳

9,530万円

866万円

1,732万円

60歳

3,970万円

360万円

721万円

     (アルバイトは年収153万円で計算)

パターン(3)  働けなくなったら
 家族で助け合い、最後は政府が生活を保障する

 基本的には、家族で支え合うのが望ましい。それを後押しするために、贈与税と相続税を撤廃し、家族間での「助け合い文化」を取り戻す

 生活保護を見直し、セーフティーネットの機能を強化する

 

 公的年金の廃止は、次のような効果をもたらします。
・年金廃止で、親子の同居が増え、地域の連帯が強化され、家族や地域の絆が深まる。
・少子化が解決に向かう。人口増に転じる可能性もある。
・社会保障の負担がなくなり、可処分所得が増える。
・消費や投資が活発になり、景気が回復する。
・財政も健全化に向かう。
・増税の必要がなくなる。
・シルバー産業のニーズが高まり、一つの基幹産業となり得る。
・自助努力の精神が見直され、親孝行の美徳が復活する。

 

すなわち、年金制度がなくなると、
 家族の支え合いの必要が高まり子供を産む必要が出てくる
   ↓
 少子化が食い止められ、人口増加に向かう
   ↓
 社会保障の負担が減り、財政も健全化に向かう
   ↓
 投資や消費も増え、経済成長が促される
  ↓
 自助努力の精神が見直され、親孝行の美徳が復活する

 経済的にも、道徳的にも好ましい結果がもたらされる可能性が高い。確かに、年金の廃止は、短期的には社会的な不安や混乱を招くかもしれない。しかし、中長期的に見れば、むしろ日本復活の大きなきっかけになる可能性が高い。

「家族の絆」も取り戻せる
 年金を廃止し、現役世代の収入が増えれば、お金を使う人も増え、企業の業績も改善し、好景気になるだろう。また、高齢の親に仕送りできる余裕も生まれ、親と一緒に生活する世帯も増えるなど、「家族の絆」を取り戻すことにもつながる。

 ただ、現行制度で保険料を納めなくてもいい専業主婦にとっては、年金がなくなれば負担が増してしまう。これについては、所得税などの税制を見直す必要がある。

保険料の未納問題も起きない
 それでも、「働けない障害者や、生活苦の家庭はどうするのか」と疑問が残るだろう。しかし、年金がなくなれば、政府が年金制度の維持のために投入している約11兆円の負担を減らすことができ、本当に苦しむ国民を救う財源に充てられる。

 そもそも年金がなければ、保険料の未納問題も起きず、真面目な人が未納者分の負担を肩代わりしなくても済む。

 あくまで年金廃止の趣旨は、働ける人にはどんどん稼いでもらい、どうしても働けない人への社会保障に転換することにある。

 政府が進める重い負担に耐え、少ない年金を当てにした暮らしを続けるか、それとも、自分で生活設計を立てるか。どちらが、国民の自由度が広がり、幸福になれるのだろうか。

 

年金廃止でやってくる未来

政府
 年金廃止は40.3兆円の大減税に 匹敵する(2015年度の場合の額)
 廃止までの移行期間は、10年程度を目途にする

企業
 保険料の負担が削減できる結果、賃金・雇用が増える
 消費活性化で、業績が向上する

国民
 年金がなくなることで、勤労者の給料が最大で約2割増加する
 生涯現役で働く人が増え、 医療費や介護費も減少に転じる
 個人年金と生命保険への加入者が増え、「自立する社会」に変化
 高齢者の面倒をみる世帯が増加し、「家族の絆」が復活する

 

 年金の破綻処理だけでは社会的な混乱を招く可能性もあるため、次の2つの政策を同時に実施するのである。

 一つは「人口増加策」。年金問題は人口問題である。人口さえ増え続ければ、実は年金制度は成り立つ。無論、永遠に人口が増え続けることはないから永続性はない。しかし、少子化を食い止めることができれば、年金の不安はかなり軽減できる。

 教育費の負担の安い公立教育を充実させ、都市部に安くて広い住宅を供給して子供を育てやすくする。さらには大都市は英語を準公用語として使えるようにして移民を増やすのだ。

 明治維新の頃、日本と同じ3千万人台の人口だったアメリカは今や3億人を超えている。こうした政策によって、日本も人口を増加させることは可能だろう。

 

 もう一つは「75歳まで働ける社会の実現」だ。65歳から75歳までの期間を、「政府から生活費をもらって暮らすのか」、「自分で生活費を稼いで暮らすのか」を比較した場合、どちらが健全で幸福で理想的だろうか。

 75歳まで現役で働くことができれば、社会保障の負担も減るし、本人の人生もより意義深いものにもなる。従って高齢マーケットに向けて、新たな産業を興す必要がある。

 できもしない約束をして結果的に甚大な被害を国民に与えた年金制度設計の関係者(高級官僚及び政治家)に厳しくその責任を追及する必要がある。

 年金破綻処理は明治維新で行われた「秩禄処分」を超える大改革となるだろう。約130年前に始まった社会保障制度の文明実験が今、終焉の時期を迎えつつある。だからこそ、社会保障のあるべき姿について白紙ベースで考え直す必要がある。

 年金をやめればどうなるか。今回は、加入者数と保険料の収入がともに多い厚生年金を例に検証してみたい。

 現在、男性が65歳まで働いた場合の生涯賃金の平均は、約2億円。ここから厚生年金の保険料が、個人負担分だけでも約1800万円引かれる。だが近い将来、年金支給額は夫婦で月額8万円台に激減し、65歳から80歳まで合計すると約1500万円しか返ってこない。現行制度を維持しても、確実に損をする。

 これに対し、生涯現役社会を見据え、厚生年金を廃止した場合、22歳の男性が、75歳まで働き続ければ、生涯の給料は最大で4300万円増えると見込まれる。

 これだけのお金があれば、民間企業が提供する個人年金に加入したり、資産運用などすれば、十分に老後に備えられるはずだ。

 必要な根本治療とは、諸悪の根源である年金の「賦課(仕送り)方式」を止めて、「積立(貯金)方式」に移行することです。

 つまり、若い世代に対して「あなた方の払った保険料は、引退世代に『仕送り』されずに、あなた方の将来のために積み立てられることになりました」ということです。

 若い世代は「払った年金がちゃんと返ってくる」と歓迎するでしょう。

 「経済成長」や「人口増加」政策によって、国民の生活を潤し、家族で助け合うという本来の「社会保障」を充実させることもできる。

 「75歳まで働ける仕組みづくり」をして、長寿社会に備え、そもそも年金が不要になる人を増やすこと。

 年金制度は抜本的に改革し、「積み立て方式、参加自由」とすること。

 今の公的年金制度は「税金」と同じで、必ず保険料を納めなければならないが、本来の年金は、「自分が老後欲しいお金を、現役時代に積み立てておく」というのが趣旨のはず。

参考

 現在の社会保障制度がこれほど複雑になったのは、「いろんな立場の人に、いい顔をしよう」としてきたからです。

  どうしても分かりやすくしたいなら、いっそ「所得税も法人税も一律10パーセント。それ以外は他の税金も社会保険料もナシ」というぐらいシンプル化すべきではないか。これぐらいシンプルにして初めて、誰にでも分かりやすく、だからこそ、公平感を感じられる制度になると思う。

参考

年金改革は、現代の「秩禄処分」?

高度成長と人口増加政策

 年金問題を根本的に解決しようとするなら、増税や給付額の削減という小手先のごまかしではなく、「高度成長」「人口増加」を図ることです。これを実現するために幸福実現党は、減税や自由化政策による高度成長と人口増加政策を推進し、人口3億人国家、GDP世界一を実現させようとしているのです。

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 年金制度については、高度成長と人口増加で未来への不安が解消された段階で、抜本的な見直しを行うべきです。

 

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