仕事が原因の「うつ病」の背景

 効率や成果主義ばかりを言って、社員の心のケアをしなかったため、成果は出たけど肝心の人が枯れてしまった会社がたくさんあります。うつ状態の人が増えると、組織力が低下して結局は成果が上がらなくなるので、企業側も心のケアを考えざるを得なくなっている。

 労働者の6割以上が仕事に関して「強い不安やストレス」を感じている。仕事が原因で、うつ病などの精神障害に陥ったという。

 こうした状況の背景を指摘する。

変化スピードの速さ

  IT技術などはドッグイヤー(1年が7年分)はおろか、今はマウスイヤー(ネズミの1年=1年が10数年)だ。加えて企業の吸収・合併など、組織の変化も激しく、その中で成果を求められてオーバーフローになっている人が多いという。

  そこに、コスト競争からくる「人減らし」が追い討ちをかける。企業は人件費を下げるため正社員を減らすので、正社員一人あたりの仕事量が増えている。それを補うため、派遣社員やパート、請負業者など、いろいろな立場の人たちが入ってきて、人間関係も複雑になりがちだ。

 昇進など、傍目にはうらやむべき状況にありながら、急には仕事能力が上がらずに苦しむ、言わば「勝ち組うつ」の人は少なくない。勝った人も、敗れた人とは別の意味で、競争に伴う苦しみから逃れられない時代なのだ。

   とはいえ、そうした厳しい競争によって、日本経済の優位や消費者の便益が得られているのも事実。仮にそうした競争をやめてしまえば、経済の停滞や「ゆとり」という名の堕落がやってくる。それに比べれば、やはり競争の存在自体は肯定されるべきだろう。

  となると必要なのは、競争の重圧で潰れてしまわないためのストレス・マネジメントだ。だがメンタルヘルスの問題は、職場で気軽に相談しにくい。昔ながらの「飲みニケーション」によるガス抜きも、アフターファイブはプライベートという感覚が強い当節は流行らないし、情報管理や守秘義務強化の流れで、親友や家族にも仕事の話を打ち明けにくい。

 だれの力を借りなくても、自分で自分のストレス・マネジメントをする手法と、職場の「うつ」を予防するための基本的スキルとは何だろうか。

 

「人との勝ち負け」より「輝いていた自分」に目を向けて

 自分のマイナス面を打ち消そうとしても、なかなかできません。むしろ、つらい時こそ、自分の輝いていた面を思い出し、自己肯定の気持ちを取り戻すことが大切

 

自分のキャリアを「棚卸し」

 これは自分の能力面を客観視するため、通常、次の3つをシートに書き出す。

  • ヒストリー(歴史)……自分が生まれてからの人生の節目を一つひとつ振り返る。仕事に就いてからは、どんな会社のどういう部署で、どんな職種に就いてきたか。
  • コンピテンシー(能力、特性)……それらの仕事を通して、どんなスキルや能力(交渉力、営業力など)を身につけてきたか。
  • ファクト(事実)……そうした能力が自分にあると言えるだけの、実績や評価があるか。

 そのときどきに、自分がどんな気持ちでそれをやっていたか。特に、うれしかったこと、人からほめられたこと、自分が輝いていたところも、あったはずです。それも書いてみてください

 紙に書いたことは目を通して、自分の中に飛び込んでくる。マイナス面だけでなく、いい面もある自分が客観的に見えてくるんです。それが自分を受け入れて、うつ状態を抜け出すきっかけになることも少なくない

 自分一人でこれをやるなら、次のようなやり方もいいそうだ。

◎罫線のない紙に書く

 罫の入ったノートより、むしろ画用紙やチラシの裏など罫のない紙に自由に書き出すといい。

◎文字だけでなくイメージも

 鉛筆や文字に限らず、カラーのサインペンやクレヨンなどで、絵やイメージを入れてもいい。

 

「勝ち組うつ」の予防と対策のポイントとして

  • 勝ち組うつになるパターンとして、謙虚さを忘れて傲慢になり、いざという時に周りから足を引っ張られて惨めな気分に陥ることがある。他人との比較にハマって一喜一憂せず、理想を高く持ち、常に謙虚な気持ちで自分を高める努力をしよう。
  • 現在、勝ち組うつで苦しんでいる人は、自分が勝ち組に至るまでに多くの人の援助と協力があったはず。その人たちへの感謝の気持ちを思い起こしてみることで、心のバランスを取り戻すことができる。

参考